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第2節 

4 海洋環境の保全

 海洋は、陸上の汚染が水の働きにより移されて蓄積し汚染物質が最終的に行き着く場所となることが多く、汚染が世界的に確認されている。汚染の問題には、有機塩類の過度の流入による海域の富栄養化、有機汚濁物質、重金属類等による海洋の浄化機能の障害、浮遊するプラスチックごみによる野生生物への絡まりや海生生物の飲み込み等がある。
 平成11年にわが国周辺海域において海上保安庁が確認した海洋汚染の発生件数は589件で、平成10年に比べ108件(約15%)の減少であった(3-2-7図)。このうち油による汚染は339件と全体の5割以上の高い比率を占めている。油以外のもの(廃棄物、有害液体物質(ケミカル)、工場排水等)による汚染は224件、赤潮は26件であった。汚染は船舶からのものが5割以上を占める。原因別には、汚染排出源が判明している494件のうち故意によるものが283件を占め、取扱い不注意、海難等がこれに続く。
 油による海洋汚染は、タンカーの事故のほか、船底の汚水やタンカーの洗浄水の不法投棄、油田での事故、パイプラインなどからの流出、陸上施設からの排水への混入等多くの汚染経路がある。これらの汚染経路により、水生生物の生態系などに影響を及ぼす可能性もあることから、海洋環境の状況を的確に把握し、適切な対応を講じていく必要がある。
 平成9年1月の島根県隠岐島沖でのナホトカ号の事故及び同年7月の横浜港沖でのダイヤモンドグレース号の事故により流出した油が海洋環境に与える影響については、事故直後より、水質、底質、大気、生態系等の調査を実施している。漂着油の回収作業が展開されたことにより重大な環境影響は確認されていないものの、生物の生活史全体を観察しなければ影響の有無を断定し難いことから、今後とも継続的、段階的な調査監視が必要である。

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