前のページ 次のページ

第1節 

1 地球環境保全に関する国際的な連携の確保

(1) 多国間の枠組みによる連携
ア 国連
(ア) 持続可能な開発委員会(CSD)
 我が国は、1993年(平成5年)に策定した「『アジェンダ21』行動計画」を着実に実施するとともに、CSDに積極的に参加し、地球規模の持続可能な開発の実現とリオ+10(UNGASSで決定された2002年のアジェンダ21の包括的なレビュー)の成功に向けて努力を積み重ねていく。
(イ) 国連環境計画(UNEP)等
 UNEPは、これまで国際的な協力を得て、数多くのプログラムを12分野に構成して積極的に推進してきたが、1997年(平成9年)2月の第19回管理理事会において、UNEPの進むべき方向性を与え、優先的取組み分野を示した「ナイロビ宣言」が採択された。また1998年(平成10年)においてはUNEPの組織改革が進められている。我が国はUNEPの新しい体制での活動が、より効果的に機能し、世界的な環境保全に資するよう、我が国の有する環境分野での多くの経験と豊富な知見を生かし、今後とも積極的に貢献していく。
 さらに、UNEP国際環境技術センターについては、これまで、同センターの環境保全技術に関する情報の収集・整備及び発信への協力等を行ってきているが、今後ともこのような協力を継続するとともに、関係府県市等と協力しつつ同センターの円滑な業務の遂行を積極的に支援していく。
 また、国連教育科学文化機関(UNESCO)のアジア・太平洋地域教育開発計画(APEID)の下で、アジア・太平洋地域諸国の環境教育の専門家を我が国に招致してセミナーを開催する等、我が国はUNESCOと協力してアジア・太平洋地域における環境教育の充実・普及を図るとともに、ソーラー・エネルギー分野の人材養成を目的として、「ソーラー・エネルギー事業信託基金」を拠出する等地球環境科学事業を一層推進する。
 また、国連アジア・太平洋経済社会委員会(ESCAP)が1995年(平成7年)11月に開催した環境大臣会議において採択された「1995-2000年の環境上健全で持続可能な開発のための地域行動計画」等の効果的な実施に向けて我が国としても積極的に貢献していく。
イ 経済協力開発機構(OECD)及び国際エネルギー機関(IEA)
 1998年(平成10年)4月のOECD環境大臣会合の成果を踏まえつつ、我が国としては、平成11年度においても、グローバリゼーションの時代における持続可能な開発の実施を始め、OECDの環境分野における活動に積極的に参画・貢献する。
 またOECD/IEA加盟国24か国が提示した気候変動技術イニシアティブ(CTI)を積極的に推進していく。
ウ 世界貿易機関(WTO)
 1996年(平成8年)12月に開催された第1回WTO閣僚会議に提出されたWTOの貿易と環境に関する委員会報告書を踏まえ、我が国としては、貿易政策と環境政策を相互支持的にするための具体的な方策に関する議論に引き続き積極的に参加する。
エ アジア・太平洋経済協力(APEC)
 現在、APEC内で、平成7年の大阪での首脳会合で提起された、食料、エネルギー、環境、経済成長、人口の相互に関連した長期的な課題(FEEEP)への取組が行われているところであり、我が国としても、本取組の進展に積極的に貢献していく。
オ 先進国首脳会議(サミット)
 過去のサミットにおいて環境問題は次第に重要性を増してきており、先進国間においても地球サミットの成果の効果的なフォローアップを通じた環境上持続可能な開発を確保することが重要との共通認識がある。我が国としては、地球サミットの気運を持続し、リオ+10の成功に向けて環境問題への対応で国際的なイニシアティブを発揮していくことが重要と考えており、積極的な役割を果たしていく。
カ アジア・太平洋地域での取組
 アジア・太平洋地域は世界人口の過半数を擁し、多様な自然資源に恵まれているが、ダイナミックな経済成長に伴い、人口、貧困、都市環境等、21世紀に向け持続可能な開発を実現していく上で、数多くの課題を抱えている。これらの課題の克服のためには、地球環境保全のために地域における環境政策の連携を図り、地域協力を推進していくことが重要である。
 環境庁は、地球サミットの成果の実施に向けた地域環境協力の在り方を議論する「アジア・太平洋環境会議(エコ・アジア)」を平成11年以降も継続開催するとともに、エコ・アジア'93で実施することとされた「アジア・太平洋地域の環境と開発に関する長期展望プロジェクト」を踏まえ、環境と開発の調和を目指した行動計画策定に向けて検討を進める。また、「日本・中国・韓国三ヶ国環境大臣会合」及び「環日本海環境協力会議」の開催並びに「ESCAP/北東アジア環境協力会合」への支援を通じ、北東アジア地域、さらには地球規模の環境保全に関する政策対話の強化に努める。さらに、「こどもエコクラブアジア太平洋会議」の開催をはじめ、アジア太平洋諸国における環境教育の推進を目的とした情報・知見の交流に努める。
 個別分野に関しても、環境庁は「地球温暖化アジア太平洋地域セミナー」を今後とも開催するとともに、域内各国の酸性雨測定局のネットワーク化を図る「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク構想」を推進するほか、域内の研究協力を推進し各国の地球環境問題への対処能力の向上を図る「アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)」の事務局として積極的貢献を図っていく。
 また、平成10年度から本格的に研究を開始した「地球環境戦略研究機関」において、気候変動枠組条約締約国会議の成果を踏まえた国際的な地球温暖化対策の立案を始めとした、21世紀の持続可能な社会の実現のための戦略研究を、アジア太平洋地域を中心とする国際的連携の下で推進していく。
(2) 二国間の枠組みによる連携
 日米環境保護協力協定に基づくプロジェクトについて、情報交換等の協力を推進するほか、日・EUにおける環境協力、日ソ環境保護協力協定、日独環境保護協力協定に基づく活動、日中及び日韓環境保護協力協定に基づく協力活動、日独科学技術協力協定に基づく環境保護技術パネルの活動、並びに各国との科学技術協力協定に基づく共同研究・調査等の協力活動を進める。また、天然資源の開発利用に関する日米会議(UJNR)の保全・レクリエーション・公園専門部会における情報交換及び専門家の交流を引き続き行っていく。
 日中間の環境協力についても、「21世紀に向けた日中環境協力に関する共同発表」の下、「日中環境開発モデル都市構想」等具体的な協力を進めていく。
(3) 国際的な連携の確保に資する海外広報の推進
 諸外国の環境政策の充実及び我が国全体に対する正しい理解の促進のため、我が国が有する公害問題とその対策に関する多くの知見や現在の我が国の環境問題に対する取組を的確な情報として提供し、国際的な連携の確保に資することが重要である。特に、地球環境保全に関する我が国のイニシアティブを示すためにも、海外広報を一層積極的に行っていくことが必要となっている。このため、環境白書等定期刊行物、国際的に要望の高い行政資料の英文版、目的に応じた海外広報用資料などの作成・配布やインターネットを通じ、環境問題に対する我が国の取組につき積極的に海外広報を行っていく。

前のページ 次のページ