マイクロエレクトロニクス、新素材、バイオテクノロジー等のいわゆる先端技術を中心とした技術の開発・利用に伴い、発生源、排出形態、影響の面で新たなタイプの環境汚染の可能性が指摘されており、先端技術の産業利用に当たっては、環境面への影響を事前に十分検討して将来環境問題が生ずることがないよう配慮していくとともに、先端技術の成果の環境保全分野への応用を積極的に図っていくことが重要である。
バイオテクノロジーのうち遺伝子組換え技術については、従来より、実験段階における安全確保のための指針及び産業利用に係る指針が関係省庁より公表され、組換え体の閉鎖系利用及び開放系利用が開始されている。組換え植物の開放系での利用については、平成10年度末までに、我が国では69件の野外試験が行われており、トマト、イネ、ダイズ等について、組換えDNA実験指針(科学技術庁)及び農林水産省の指針に基づいた段階的な安全性確認、野外試験等による生態系評価等が行われ、国内の一般ほ場での栽培または加工利用を目的とした種子の輸入が可能となっているものがある。また、組換え動物については、組換えDNA実験指針に基づいた非閉鎖系区画実験が行われている。また、通商産業省では、自然条件下の限定された区域で用いるバイオテクノロジーの新たな利用形態に対応するため、平成10年5月に「組換えDNA技術工業化指針」の改正を行った。
なお、これまで、遺伝子組換え技術等バイオテクノロジーの開発・利用により、環境保全上特段の問題が生じた事例は報告されていない。
また、中央公害対策審議会企画部会バイオテクノロジー専門委員会において、遺伝子操作生物の開放系利用に係る環境保全の基本的考え方がとりまとめられた(平成3年12月)。環境庁では本報告を踏まえ、環境影響評価のための技術的事項のとりまとめを行うとともに、具体的行政措置の在り方については、科学的知見の進展と国際的な議論の動向に十分留意しつつ、引き続き検討していくこととしている。
近年、微生物等を用いてトリクロロエチレン、油等に汚染されている土壌、地下水、海岸等の浄化(環境修復)を行う技術(バイオレメディエーション)が注目されているが、環境庁においては、その健全な利用を促進することを目的として環境修復のための生物利用のあり方等についての検討を行っており、平成11年3月には、「微生物を用いた環境浄化の実施に伴う環境影響の防止のための指針」をとりまとめ、公表した。また、通商産業省においても、バイオレメディエーションに関する研究開発等を実施している。また、国立環境研究所においては、環境保全研究に有用な環境の汚染及び浄化に係る微生物の遺伝子保存及び遺伝子操作生物の利用・影響等に関する研究のための基盤整備を行うとともに、バイオテクノロジーの環境保全への利用の取組として、微生物を用いた汚染土壌・地下水の浄化機構に関する研究を実施している。