3 廃棄物の適正な処理の推進
(1) 廃棄物処理の現況
ア 一般廃棄物の処理
一般廃棄物については、市町村が定める処理計画に沿って処理が行われている。ごみ処理状況は、第1-4-2表 のとおりである。平成8年度におけるごみ排出総量は、約14万t/日であり、微増となっている。また計画処理量の89.7%が焼却、破砕等減量処理されている。
廃棄物処理施設の整備については、平成8年度を初年度とする第8次廃棄物処理施設整備計画に基づき、整備を行っている。
イ 産業廃棄物の処理
廃棄物の排出状況は第1-4-3表 のとおりであり、産業廃棄物処理業者の許可件数も年々増加しており、平成8年度末時点で11万5,361件である。
(2) 廃棄物の適正処理対策
ア 廃棄物の適正処理に関する問題点とその対策
廃棄物処理施設の確保や廃棄物の不法投棄等の不適正な処理の問題に対応するため、平成9年に改正された廃棄物処理法に基づき、廃棄物の減量化・再生利用の推進とあわせて、廃棄物処理施設の適正な設置・維持管理の確保を図るとともに、産業廃棄物管理票制度による不法投棄の未然防止及び不法投棄が行われた場合の迅速な原状回復の円滑な実施を図った。また、平成9年度に行ったダイオキシン類削減対策としての廃棄物焼却施設の構造基準等の強化、処分基準、委託基準、保管基準等の廃棄物処理に関する諸基準の強化・明確化等にあわせて、平成10年6月には、浸出水のモニタリングや遮水工の強化等を内容とする廃棄物の最終処分場の構造・維持管理基準の強化・明確化や、最終処分場の廃止の際に都道府県知事が当該最終処分場の状況を確認するための基準を設定した。
また、ダイオキシン対策等の高度な環境保全対策の必要性等、適正なごみ処理を推進するに当たっての課題に対応するためには、ごみ処理の広域化が必要であることから、都道府県に対し平成10年度末までに、ごみ処理の広域化計画を策定するよう指導した。
さらに、大阪府豊能郡のごみ焼却施設における高濃度のダイオキシン類による汚染事例を踏まえ、平成10年11月に廃棄物処理施設における排ガスの洗浄・冷却水の流出等による生活環境保全上の支障を防止するために必要な基準改正を行うとともに、開放型冷水塔改造事業等に対する国庫補助を行った。
イ 一般廃棄物対策
一般廃棄物の発生量の増加に対処するために、平成10年度は、補正予算を含めた一般会計総額2,643億1,800万円の補助金により、ごみ処理施設、汚泥再生処理センター、埋立処分地等の一般廃棄物処理施設の整備を図った。特に、ダイオキシン類排出削減のための施設整備に対し重点的な補助を行うとともに、いわゆるPFI手法による一般廃棄物処理施設整備に対する補助等を行った。
ウ 産業廃棄物対策
排出事業者処理責任の原則の枠組みの中で、公共の関与による処理施設の整備促進を図っており、廃棄物処理法に基づき廃棄物処理センターを岩手県、大分県、長野県、愛媛県、香川県、新潟県、高知県、兵庫県において指定している。
また、「産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律」に基づき、産業廃棄物の適正処理のための様々な支援措置を講じているが、平成10年度は、産業廃棄物処理事業振興財団により、産業廃棄物処理施設の近代化、高度化事業に対する債務保証、起業化助成等の事業振興が行われた。
農林水産省では、園芸用使用済プラスチックの適正処理技術等の開発・実用化のための調査・実証、農業団体等による使用済プラスチック処理施設の設置等に対し助成措置を講じた。
また、水産庁では、種々の生物による環境浄化作用を活用した漁場環境改善方策に係る検討・調査を実施したほか、不用となったFRP漁船等漁業系廃棄物の計画的かつ適正な処理を促進するための技術開発調査を実施した。
エ 広域処理場整備の推進
大都市圏域において、圏域を一体とした広域的な最終処分場確保の要請に対応するため、厚生省及び運輸省においては、広域的な廃棄物の埋立処分場計画(いわゆるフェニックス計画)の推進を図ってきた。
近畿圏では、大阪湾広域臨海環境整備センタ―の広域処理場において一般廃棄物等を受入れる管理型区画が平成12年度に満杯になる見込みのため、平成8年度末に新たに基本計画に位置づけた神戸沖処分場の整備を進めている。
首都圏では、厚生省及び運輸省において昭和62年4月に「東京湾フェニックス計画の基本構想」をまとめ、関係7都県市に提示しており、これら関係7都県市により構成される首都圏サミットの場で、引き続き廃棄物の広域処理について検討が行われてきた。厚生省では、首都圏に関し広域処分場建設に関する調査を行うとともに、運輸省と連携してフェニックス計画実現に向けて働きかけを実施してきたが、平成10年度の首都圏サミットでは実現に向けた共通の認識は確認されなかった。
オ 廃棄物の処理における環境配慮等
平成9年に改正された廃棄物処理法に基づき、平成10年6月よりごみ焼却施設等の設置に際し、周辺地域の生活環境影響調査を実施しなければならないこととした。
また、不適正な一般廃棄物の最終処分場については、改善事業に対して補助を行う等の適正化の推進を図った。
さらに、現在開発されている最終処分に関する技術の中から環境保全効果の認められるものについて評価を行い、より高度な技術の開発・普及を促進するための調査を行った。
運輸省では、港湾における廃棄物処理対策として平成10年度は、42港1湾において廃棄物埋立護岸の整備に対する補助を実施したほか廃油処理施設の整備に対する補助及び一般海域における浮遊ごみ・油の回収事業等を行った。さらに、資源のリサイクルの促進のため、首都圏の建設発生土を全国の港湾建設資源として広域的に有効活用するプロジェクト(いわゆるスーパーフェニックス)を平成6年度に開始し、平成10年度は石巻港、三河港、広島港、宿毛湾港において建設発生土の受入れを実施した。
建設省では、環境保全に留意しつつ下水汚泥の緑農地利用及び建設資材化を推進したとともに、下水汚泥等を原料とした再生資材を積極的に活用した下水道事業を実施した。
厚生省では、最終処分場の延命化を図る上で有効な焼却灰等の溶融資源化施設を広域的・計画的に整備するための事業を行った。
カ 空き缶の散乱防止
缶飲料の生産量が急速に増大し、1年間で発生した缶飲料の空き缶は、昭和56年には100億缶程度であったものが、平成9年には381億缶を超える状況にあり、これら缶飲料の空き缶の一部が道路、海岸、河川敷等に散乱し環境美化の観点から問題となっている状況が続いている。環境庁では、全国の空き缶散乱の実態等を把握するため、昭和55年度以降調査を実施しているが、平成9年度に全国の約700市区町村について実施した調査の結果では、散乱状況に改善はみられず、特に河川敷、海岸・湖岸、公園・広場等については悪化した状況にある(第1-4-4表 )。
空き缶散乱防止対策として、地方公共団体では、空き缶散乱防止に関する条例等の制定、投げ捨て防止のキャンペーン、清掃の強化等の取組を行っており、また、国では、関係11省庁から成る「空き缶問題連絡協議会」における申合せに基づき、普及啓蒙活動の充実を図っているなど、それぞれの立場から様々な取組が行われているが、根本的な解決には至っていない。