1 循環
(1) 大気環境について
ア 緩衝緑地
公害の防止、緩和等のための緑地(緩衝緑地)、幹線道路の沿道環境を保全するための緑地または大気汚染公害の防止を目的とした緑地(大気汚染対策緑地)及び産業廃棄物処理施設周辺の生活環境の改善を目的として、産業廃棄物処理施設と一体的に整備する緑地(産業廃棄物処理施設一体緑地)の整備を推進した。(平成8年度事業費100億8,300万円)
(2) 水環境保全について
ア 環境保全上健全な水循環の確保
(ア) 森林保全
「森林整備事業計画」に基づく複層林や育成天然林施業等による保水能力の高い多様な森林の整備を積極的に実施するとともに、流域を単位として森林整備を集団的、計画的、組織的に行う造林事業を推進した。
また、「治山事業五箇年計画」に基づき、森林の有する水資源かん養機能の拡充強化と国土の保全に資すること等を目標として、重要な水源地域における森林を「緑のダム」として面的、総合的に整備するとともに、集落の生活用水確保に資する森林の整備を実施する水源地域整備事業を460か所について計画的に推進した。
(イ) 河川等の浄化対策
河川の水環境改善にかかわる事業として、汚泥のしゅんせつ、浄化用水の導入、河川水の直接浄化等の事業を「河川環境整備事業」として実施した。汚濁水と清浄水を分離し、流水の適切な保全を図る「流水保全水路整備事業」、湖沼内の汚泥のしゅんせつと湖周辺の環境整備とを一体的に実施する「レイクタウン整備事業」、ダム貯水池における濁水・富栄養化現象を防止・軽減するため、「ダム貯水池水質保全事業」及び「特定貯水池流域整備事業」を実施した。また、特に汚濁の著しい河川等においては、「水環境改善緊急行動計画」に基づき市町村や地域住民等の取組と一体となって河川事業、下水道事業を重点的に実施したほか、流域においても浄化事業を行う「総合浄化対策特定事業」を実施した。
このほか、河川の流況改善等については、建設省所管のダム建設事業として、新たに6事業を加え、浄化用水等環境用水の確保を図る「水環境対策ダム事業」を含めて合計299事業を実施し、積極的に流況の改善を図った。
(ウ) 環境保全活動に密着した水辺環境の整備
住民に身近な水路、水辺の環境を整備する「身近な水辺環境再生事業費補助」(事業費6億5,000万円)などにより、積極的に水辺環境の整備を推進した。また、水質汚濁防止法に定める生活排水対策重点地域内の住民に身近な水路のうち、生活排水による汚濁が著しい15市町村の水路において浄化施設の整備を行った。
(エ) 港湾の浄化対策
事業費37億7,732万円(うち国費14億1,867万円)で東京港、福山港等10港において汚泥しゅんせつ等を実施した。また、海域環境創造事業(シーブルー事業)を実施した。
(オ) 海域の環境整備対策
運輸省は、一般海域におけるごみ、油の回収船を東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海に配備しており、平成8年度は事業費16億2,500万円で回収事業を実施した。また、底質浄化のための覆砂を行った。さらに、建設省においては海域浄化対策事業を長浜海岸等3海岸で実施した。
イ 水利用の各段階における負荷の低減
(ア) 下水道事業
a 下水道事業
下水道事業は生活環境の改善、浸水の防除、河川、湖沼等の公共用水域の水質保全、下水道資源及び施設の有効利用によるリサイクル社会への貢献等により都市のアメニティ向上等多方面にわたる役割を有しているが、我が国の下水道の整備状況は、平成6年度末処理人口普及率が54%にしかすぎず、いまだ十分な整備水準とは言えない状況にある。
平成8年度は「第8次下水道整備五箇年計画」(総額23兆7,000億円)の初年度として、普及が後れている中小市町村の下水道整備及び未着手市町村における新規着手の推進、水質保全のための高度処理の積極的導入を始め、大都市等における下水道の質的向上、下水処理水等の下水道資源の多目的活用を推進した。
具体的には、緊急下水道整備特定事業を含む総事業費3兆3,296億円で、公共下水道(継続1,346か所、新規42か所)、流域下水道(継続121か所、新規2か所)、都市下水路(継続222か所、新規14か所)、特定公共下水道(継続2か所)及び特定環境保全公共下水道(継続695か所、新規105か所)等の事業を推進するとともに、水循環・再生モデル事業を実施するほか、特定水域高度処理基本計画等の各種計画の策定を推進した。
b 流域別下水道整備総合計画
流域別下水道整備総合計画等の策定を推進するため、調査費1億8,900万円で調査を実施した。
c 技術開発及び調査研究
下水道事業調査費8億2,700万円で、下水道施設のコスト節減のための総合的な技術開発を重点的に実施した。さらに、国立機関公害防止投資研究として、下水処理水の高度処理技術の確立、下水処理施設での有機有害物質の挙動に関する研究を実施した。
d 日本下水道事業団
地方公共団体等からの委託により終末処理場の建設事業等を実施するほか、下水道技術者の研修、技術検定及び下水道に関する技術開発、試験研究等を行った。
また、財政投融資資金を活用した、広域的に下水汚泥を収集処理する下水汚泥広域処理事業(エースプラン)については、兵庫地域、大阪北東地域及び大阪南地域において事業を実施した。
(イ) 合併処理浄化槽設置整備事業
合併処理浄化槽は、農山村等の人口の散在した地域において特に有効な生活排水処理施設であり、平成8年度には約73,000基が整備された。また、市町村自らが設置主体となって、合併処理浄化槽を面的に整備する事業(特定地域生活廃水処理事業)の対象地域として、新たに過疎地域等が追加され、同地域における生活排水対策の進展が図られた。
(ウ) 農山漁村地域における水質保全対策
都市と比べ立ち後れている農山漁村地域の生活環境の改善を図るため、農村地域においては農業集落から発生するし尿や生活雑排水を処理し、処理水を農業用水として、発生汚泥を有機質肥料等としてリサイクルし、また、農業用用排水の水質保全等を図るとともに、公共用水域の水質保全に資する農業集落排水事業を1,771地区について実施した。また、林業集落排水施設整備を推進するとともに、漁村地域にあっては漁業集落排水施設整備を全国202地区で実施した。
(エ) 廃油処理施設の整備
事業費2億2,500万円(うち国費1億1,250万円)で千葉港における廃油処理施設の改良を実施した。