1 環境教育・環境学習の推進
(1) 環境教育・環境学習一般
近年、環境問題においては、主に日常生活や通常の事業活動に起因する都市・生活型公害や地球環境問題の比重が高まるとともに、身近な自然とのふれあいや快適な環境の保全・創造を求める国民のニーズが増大している。こうした複雑・多様化する環境問題に対応していくためには、国民一人ひとりが人間と環境との関わりについて理解と認識を深め、環境に配慮した生活・行動を行っていくことが必要である。今後は、環境基本計画を踏まえ、幼児から高齢者までのそれぞれの年齢層に対して、学校、地域、家庭、職場、野外活動の場等多様な場において互いに連携を図りつつ、環境保全に関する教育及び主体的な学習を総合的に推進することが重要である。
環境庁では、環境問題解決への国民の参加意識の高揚を促すとの視点から、小中学生の環境に関する活動を支援する「こどもエコクラブ」事業を地方公共団体と連携しつつ実施した。平成9年3月末までに約2,950クラブ、約45,000人の小中学生に対し、環境に関する分かりやすい情報や活動例の紹介、GLOBE計画への参加支援等を行った。また、映画の製作、教材の作成・配布、NGOとの協力による環境教育シンポジウム、快適環境シンポジウムの実施など、環境保全知識の普及、啓発に関し幅広い活動を行った。
また、環境教育は、関係省庁が連携し、総合的に推進していくことが重要であるが、特に環境庁と文部省との間の協力、連携が必要であることから、両省庁間で緊密な連携を図った。
さらに、近年、急激な経済成長を遂げているアジア太平洋地域における環境教育の方向性と推進方策を展望するため、日米環境保護協力協定に基づき、環境庁、文部省、米国環境保護庁等の主催により、平成8年11月9日に東京において「アジア太平洋環境教育シンポジウム」を開催した。
文部省では、社会教育による環境保全に関する取組として、環境問題等の各種の学習機会、実践活動の機会の提供や、環境教育等の地域課題や学習需要等に応じた事業を独自に企画・開発し、社会教育施設等を中心として実施する地域社会教育活動総合事業を行う市町村に対し、必要な経費を補助した。
また、省資源・省エネルギー国民運動の推進に当たり、関係省庁により環境問題に的確に対応し、地球環境と調和したライフスタイルの形成に資するための普及啓発等を行っており、経済企画庁においても消費者の自主的活動の推進等を図った。
(2) 学校教育における環境教育
学校教育においては、各教科、道徳、特別活動等の相互の連携を図りながら、学校教育全体の中で環境教育を総合的に推進するため、引き続き環境教育指導資料の作成・配布、環境教育推進モデル市町村の指定(10市町村)、環境教育フェア(宮城県)及び環境教育担当教員講習会(東京学芸大学等)の開催とともに、GLOBE計画に基づき、環境のための地球学習観測プログラムモデル校の指定(21校)を行った。
また、児童生徒による自然とのふれあいなどの体験活動を通して環境問題への理解等を深めるため、引き続き自然教室等の事業を実施した。
また、再生紙を用いた教科書の使用が進められることは、児童・生徒のリサイクルへの理解を深める契機となることから有意義なことである。再生紙を用いた教科書の数は現在増えており、平成9年度に小・中・高等学校等で使用される教科書においては、54.4%の教科書の主に表紙、見返し、口絵等に再生紙が用いられている(第3-1-1表)。
また、環境教育の充実等をねらいとした、青少年の大自然の中での長期キャンプ等の自然体験活動を総合的に推進する事業の振興を図るため、推進会議の設置、自然体験活動の実施、体験発表会の実施を行う市町村に対し、必要な経費を補助している。さらに、小中学校の児童生徒の心身に健全な育成を図るため、豊かな自然環境の中で集団宿泊活動を通じた学校教育活動を行う自然教室事業について、地方公共団体及び学校法人に対し必要な経費の一部を補助しており、平成8年度は6億9,390万円の助成を行った。
(3) 広報活動
ア 一般広報
関係機関の協力によるテレビ、ラジオ、新聞、雑誌等各種媒体を通じての広報活動や、広報誌「かんきょう」の配布、広報用パンフレット等の作成・配布を通じて環境保全の重要性について広く国民に訴え意識の高揚を図った。また、報道機関に対しては、記者会見や資料配布等による発表などを通じ情報提供を行った。
イ 「環境の日のつどい」の実施
環境基本法に基づき、事業者及び国民の間に広く環境の保全についての関心と理解を深めるとともに、積極的に環境の保全に関する活動を行う意欲を高めるために、6月5日に「環境の日」が設けられた。また、平成6年12月に閣議決定された環境基本計画の理念をも踏まえて、環境保全活動の一層の充実発展を期すため、「環境の日のつどい」を実施した。
ウ 「環境月間」の実施
「環境月間(6月)」においては、「考えてみませんか 地球にやさしい暮らし方」をテーマとした環境展「エコライフ・フェア」及び環境保全に功労のあった人等の表彰等、環境保全をテーマとした各種行事を実施するとともに、地方公共団体等に対しても関連行事の実施を呼びかけ、環境問題に対する国民意識の一層の啓発を図った。
エ 「環境美化行動の日」の設定の呼びかけ
各地で行われている環境美化運動を全国的に普及し盛り上げていくため、環境庁と厚生省が中心となり、「環境美化行動の日」の設定を各地方公共団体に呼びかけた。