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第3節 

1 地域づくり等における様々な取組

(1) 快適な環境(アメニティ)の確保
ア 地域づくりと快適な環境(アメニティ)
 豊かな緑や清らかな水辺、美しい街並みや歴史的な雰囲気などといった快適な環境(アメニティ)は、私たちの生活に潤いとやすらぎをもたらす。国民の生活環境に対するニーズの高まりに伴い、身近な環境の質を積極的に高め、このような快適な環境を確保していくことがますます重要な課題となってきている。
 快適環境づくりの施策は、緑や水といった快適な環境に親しむための施策の整備や良好な自然の保全、環境に配慮した生活・行動ルールの確保等、ハード・ソフト両面に渡り様々なものが考えられる。このため、行政、住民、事業者等の各主体の役割分担を明確にしつつ、地域の特性に応じて選択し、快適性向上のための方向づけを行い、総合的、計画的な施策の展開を図る必要がある。
 以上のような観点から、環境庁では、快適環境づくりの意識を全国的に普及させるためのシンポジウムの開催(第17回快適環境シンポジウム)、快適環境づくりにおいて顕著な実績を挙げている地方公共団体の表彰(第7回アメニティあふれるまちづくり優良地方公共団体表彰)等を行った。
 また建設省では、モデル都市において、都市環境計画の策定、公開空地上の緑化施設、透水性塗装等の環境基盤施設の整備に要する費用について助成を行うとともに、重点整備地区における街路、公園、下水道等の社会資本整備に対し予算の重点配分を行う都市環境基盤整備推進モデル事業(エコシティ整備推進事業)を引き続き推進した。また、下水道施設について、「アクアパークモデル事業」等のモデル事業を引き続き推進した。さらに地球温暖化防止等の地球環境保全を促進する観点から、エネルギーの面で適切な配慮がなされるとともに周辺の自然環境等と調和し、健康で快適な生活ができるよう工夫された「環境共生住宅」の整備・促進するため「環境共生住宅市街地モデル事業」にて支援を行った。
イ  良好な大気の確保
 国民が身近な環境の状況について正しく認識することにより、大気保全意識を高めることが重要との観点から、全国星空継続観察、酸性雨等の簡易測定調査モデル事業、音環境モデル都市事業及びかおり環境都市モデル事業等市民参加型の事業を実施した。また、環境基本計画の趣旨を踏まえ、各地域において地方公共団体、住民等の協力により良好な音環境を保全しようとする取組を支援するため、「残したい 日本の音風景百選」の事業を実施した。
ウ 良好な水域の生態系の確保
 水質汚濁防止法等による水質汚濁の防止に係る規制や、下水道等の事業や自然環境保全法等による排水規制を適切に推進し、水域における生態系の良好な確保に努めている。
 住民が水辺環境に関心を持ち、生活の中で水と人との関係を考えていくことができる基盤づくりや、自発的に環境保全に参加できる環境づくりを推進するため身近な水辺環境保全再生事業を実施して小動物や植物が生息できる水辺環境の再生等水辺空間を再生・創造している。
 河川の良好な生態系を確保するため、「多自然型川づくり」、「魚がのぼりやすい川づくり」等を推進した。
エ 景観保全
 新・美しい村づくり特別対策の推進等により、生活環境の整備にあわせて、緑や水を生かした美しい景観や環境保全等に配慮した整備を行い、地域住民が誇りを持って快適に居住でき、都市住民にとっても魅力ある農山漁村の景観・環境の形成を行った。
 各地域において、河川と一体となった景観の保全・創造のために、「マイタウン・マイリバー整備事業」、「ふるさとの川整備事業」等を推進した。
オ 歴史的環境への配慮
 各地域における快適な環境を確保するべく文化財(史跡、名勝、天然記念物)保護に係る各種制度を活用した。豊かな歴史的環境の確保・保全のため、史跡等の公有化及び整備・活用を推進し、また、天然記念物を直接観察し身近に触れることができるよう、天然記念物の学術的価値や現況等に応じた学習施設・観察施設等を整備し、地域づくり等を推進した。
 さらに宿場町や城下町等の伝統的建造物群及びこれと一体をなしてその価値を形成している環境を保存するため市町村が定める区域のうち、我が国にとってその価値が特に高いものを重要伝統的建造物群保存地区として選定し、建造物保存修理、防災施設等の設置、建物や土地の公有化などの事業に対し補助を行った。平成9年年4月1日現在、全国で44地区(39市町村)が選定されている。
 歴史的風土特別保存地区における土地の買入れ及び歴史的風土の保存のための必要な施設の設備を推進した。
(2) 民間環境保全活動の促進
 ナショナル・トラスト活動の推進を図るため、7年度に引き続きシンポジウム等を開催し、ナショナル・トラスト活動の趣旨の一層の周知を図った。
 自然公園における動植物の保護や美化思想の普及、事故の防止等利用の適正化のため、約3,000名の自然公園指導員を委嘱するとともに研修を実施し、利用指導の充実を図った。
 また、国立公園の保護管理、利用者指導、自然解説活動を広く国民の参加を得て実施するため、国立公園・野生生物事務所において約1,700名のパークボランティアの養成及びその活動に対する支援を行うとともに、公益信託自然保護ボランティアファンドの発展・充実に努めた。
 さらに、自然解説活動における指導者の研修を実施するとともに、自然解説活動を推進する専門的人材の育成及び確保の在り方の検討を行った。
 一方、一般の森林利用者に対して、森林や林業に関する理解を深め、森林の案内や野外活動の指導を行う森林インストラクターを育成するとともに、その知識及び技能の向上を図った。
 国民参加により身近な自然環境の状況を把握するとともに啓蒙普及を図る「身近な生き物調査(環境指標種調査)」を実施することにより、自然環境保全活動を活性化した。
 海と干潟の生物環境保全調査の定点調査事業や水域環境クリーンアップ事業を通じ、ボランティア団体等が海や干潟等で行う生物、水質・底質の定点調査及び海浜清掃等の支援を行った。
(3) 都市と農山漁村の交流
 農山漁村地域において、その自然、文化、人々との交流を楽しむグリーンツーリズムの推進、「農山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律」の円滑な実施のため市町村モデル整備構想を策定するとともに、農林漁業体験民宿等の経営研修等を行う「農山漁村でゆとりある休暇を」推進事業を実施した。山村においては、山村滞在型余暇活動の推進及び地域の活性化を図るため、森林や基盤施設を整備する「山村で休暇を」特別対策を40地域で実施したほか、体験・学習の場や交流拠点を整備する「緑とのふれあいの里整備特別対策事業」を22地域で実施した。また、都市住民(家族等)が森林所有者との契約によって森林づくりを行うことを推進するため、実施体制や基盤施設整備等を整備するファミリーの森林づくりモデル事業を実施した。
 また、豊かな自然と景観に恵まれた漁港、漁村においては、都市住民等へ海と自然とのふれあいを提供するため、親水機能を有する護岸やキャンプ場等の整備を行う漁港交流広場整備事業を全国41地区で、また、漁港における景観の保持や美化を図るため、植栽や親水施設等の整備を行う漁港環境整備事業を全国148地区で実施した。さらに、漁港内において漁船とプレジャーボート等とのトラブルを防止し、漁業生産活動の円滑化を図り、都市と漁村との交流促進を促す海洋性レクリエーション空間の創出に資する漁港利用調整事業(フィッシャリーナ整備事業)を全国15地区で実施した。これらに加え、漁業と調和した健全な海洋性レクリエーションの発展を促進するため、漁業関係者と遊船漁業者等との協議会を実施したほか、海洋利用に関するルール・マナーの啓発を行い、また沿岸域を熟知している漁業者自らが主体となって遊漁船業、ダイビング案内、釣り場等の管理運営等を行うことにより、良好な自然環境の保全を図りながら都市住民との交流を促進した。
 さらに、森林所有者と国民が共同で育成途上の森林を育てる分収育林(緑のオーナー制度等)等による森林の整備を積極的に推進するとともに、「緑と水の森林基金」の助成・整備を推進し、国民の期待にこたえた森林資源の整備、利用等に関する総合的な調査研究、普及啓発等を実施した。

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