2 野生動植物の捕獲・譲渡の規制、生息・生育環境の整備等
(1) 種の保存法に基づく各種施策の推進
国内外の絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存を体系的に図るため、平成5年に施行された種の保存法に基づき、各種施策を推進した。
種の保存法では、本邦に生息・生育する絶滅のおそれのある種を国内希少野生動植物種に、ワシントン条約及び渡り鳥等保護条約に基づき国際的に協力して種の保存を図るべき絶滅のおそれのある種を国際希少野生動植物種にそれぞれ指定し、個体の捕獲・譲渡等や器官・加工品の譲渡等を規制している。国内希少野生動植物種については、必要に応じ、その生息・生育地を生息地等保護区として指定し、各種の行為を規制している。また、個体の繁殖の促進や生息・生育環境の整備等を内容とする保護増殖事業を積極的に推進することとしており、その適正かつ効果的な実施のために保護増殖事業計画を策定することとしている。
国内希少野生動植物種としては、哺乳類2種、鳥類38種、は虫類1種等の計51種が指定されている。
生息地等保護区については、すでに指定されている2か所に加え、平成8年6月には山迫ハナシノブ生育地保護区、北迫母様ハナシノブ生育地保護区(以上熊本県高森町)及び藺牟田池(いむたいけ)ベッコウトンボ生息地保護区(鹿児島県祁答院(けどういん)町)の3か所を指定した。
保護増殖事業計画として、既に策定されているアホウドリ、トキ等の8種に加え、ハナシノブ、ベッコウトンボ、イタセンパラ、イヌワシ、レブンアツモリソウ、アベサンショウウオの6種について新たに策定した。
絶滅のおそれのある野生動植物の保護増殖事業や調査研究、普及啓発を推進するための拠点である野生生物保護センターについては、既に完成している釧路湿原野生生物保護センター等3か所に加えて、長崎県対馬、北海道羽幌町及び沖縄県国頭村の3か所での整備を推進した。
国有林野においては希少な野生動植物の生息・生育地域について、必要に応じて森林生態系保護地域、森林生物遺伝資源保存林、植物群落保護林等の保護林を設定するとともに、これらの生息・生育地の保護管理を適切に行った。また、ツシマヤマネコ等の国内希少野生動植物種を対象とした保護のための巡視を実施するとともに、その生息・生育地等の維持・整備のために必要な調査を行い、調査結果に基づき、生息・生育地及びその周辺の環境の維持・整備等を図る事業を実施した。
(2) 保護増殖事業等の推進
絶滅のおそれのある野生動植物種の保存を図るための保護増殖事業、調査等を引き続き以下のように実施した。
? トキについて、引き続き佐渡トキ保護センターにおいて個体を飼育した。また、日中間の協議に基づき、中国におけるトキ保護のための調査等を行った。
? 西表野生生物保護センターを中心に、イリオモテヤマネコをはじめとする西表島の希少野生動植物の生息状況調査を行った。
? ツシマヤマネコの生息地への再導入を目的とした飼育下での繁殖を行うための調査、捕獲作業や、生息状況のモニタリングを実施した。
? アホウドリの既存繁殖地の環境を維持改善する工事を実施するとともに、新たな繁殖地に個体群を誘致するための事業を実施した。新たな繁殖地において、1つがいが初めて巣立ちに成功し、さらに2つがいの産卵が確認される等、定着しつつあることが確認された。
? タンチョウについて、冬季の給餌及び生息状況の把握のための調査モニタリングを行い、生息数については平成9年1月の一斉調査により586羽が確認された。また、本種の保存に資するため、個体群分散の検討に着手した。
? シマフクロウについて、巣箱の設置及び給餌事業を実施した。野外におけるつがい形成促進のための検討を行った。
? ミヤコタナゴの生息地において、本種の生息に影響を与える外来種を駆除するとともに、生息環境の改善、安定化のための事業を実施した。また、生息地保護区において生息環境の整備や監視などを行った。
? 小笠原の希少植物について、人工増殖の技術開発と自生地への再導入を実施した。
? イヌワシについて、西日本の個体群の生息環境の把握調査を行った。また、個体群の維持が特に困難な九州地区において、繁殖率の高い地域からの雛の移入を検討した。
? アベサンショウウオについて、保護増殖に資するための生息状況及び生息環境の把握調査を行った。
? ハナシノブについて、生育地の維持管理方法の調査・検討を行った。また、生育地保護区において、生育環境の維持改善を実施した。
? イタセンパラについて、生息状況と生息環境の調査及び保護対策の状況把握と検討を行った。
? 北海道の希少海鳥(エトピリカ、ウミガラス、チシマウミガラス)について、生息状況把握と、今後の保護増殖事業の方法についての検討を行った。