次のページ

環境白書の刊行に当たって

国務大臣 環境庁長官 地球環境問題担当
石井 道子
 平成9年版の環境白書をここに公表いたします。
 本年は、ブラジルで開催された地球サミットから5年目に当たります。6月に国連環境開発特別総会が、また12月には地球温暖化防止京都会議が開かれるなど、いわば地球環境の年ということができます。
 今日の環境問題は、地球の生態系を損ない、将来世代の生活や産業にも大きな影響を及ぼし、人類の生存基盤を脅かす問題となりつつあります。また、大量生産o大量消費o大量廃棄型の社会が進展し、国内においても、自然破壊や環境汚染への不安が高まっており、祖先から受け継いだ健全で恵み豊かな自然環境を将来に伝えていくことが重要な課題となっています。
 この一年間にも、ナホトカ号流出事故による海洋環境汚染への対応、環境影響評価法案の国会提出や容器包装リサイクル法の本格施行など、具体的な対応が次々に求められました。まさに、環境保全への取組は、待ったなしの状況にあるのです。
 しかし、私たちは、「自分以外の誰かが環境対策をしてくれるだろう。」、「私自身は環境にそれほど悪影響を与えていない。」、「まだ、そんなにあわてなくてもいいのではないか。」などと考えがちではないでしょうか。
 本年の環境白書では、「地球温暖化防止のための新たな対応と責任」をテーマに、特に地球温暖化問題に焦点を当て、総合的に理解できるように記述を行いつつ、具体的な対策を提言しています。また、近年、非常に身近な問題となっている廃棄物・リサイクル問題や化学物質による環境汚染の問題も取り上げました。
 地球温暖化問題、廃棄物問題、環境保全活動の推進などの課題は、私たちの価値観やライフスタイルと密接に結びついており、その解決のためには、生産・消費のパターンやライフスタイルの見直しなど、現在の経済社会システムそのものを持続的な発展が可能なものへと変えていく努力が不可欠です。このため、あらゆる人々や組織の連携のもと、全体として効果を上げるような仕組みを一刻も早く構築し、一人ひとりの具体的な行動を今日から積み重ねていくことが重要なのです。
 国民の皆様一人一人が、どのように環境保全に取り組んでいけばよいかを具体的に考えていただく上で、この白書が参考になれば、これに過ぎる喜びはありません。
平成9年6月

次のページ