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第1節 

1 共通的な施策の展開

 地域地域における多様な生態系の健全性を維持・回復するとともに、様々な場の中で自然と人間との豊かなふれあいを保ち、自然と人間との共生を図るため、国土空間の自然的社会的特性を踏まえつつ、以下のような施策を実施した。

(1) 原生的な自然の保全

ア 原生自然環境保全地域による保全
 人の手が加わっておらず、原生の状態が保たれている自然環境の保全を図るため、国は、自然環境保全法に基づき、原生自然環境保全地域を指定することとされている。
 平成7年度末現在で、遠音別岳、十勝川源流部、大井川源流部、南硫黄島及び屋久島の5地域が指定されている。(第2-1-1図)
 平成7年度においては、6年度に引き続き遠音別岳原生自然環境保全地域について現況把握調査(再調査)を実施した。
イ 世界遺産地域の保全
 世界遺産一覧表に記載された、屋久島、白神山地について管理計画を策定するとともに、引き続き適切な保護・管理を行った。また、屋久島において遺産地域の管理、調査研究等の拠点となるセンターの整備を完了させ、白神山地(青森県)における同様のセンターの整備に着手した。
ウ 自然公園の特別保護地区の保全
 国立公園又は国定公園の景観を維持するため、特に必要があるときは、その区域内に国は特別保護地区を指定することができるとされている。
 平成7年度には、大雪山国立公園において、1,085haを追加指定した。
 平成7年度末現在で、国立公園内に261,042ha、国定公園内に66,452haが指定されている。
エ 森林生態系保護地域
 国有林野内において、主要な森林帯を代表し、又は地域特有の希少な原生的な天然林を保存する森林生態系保護地域を平成7年度末までに26箇所、約32万ha設定するとともにその適正な保護・管理を行った。



(2) すぐれた自然の保全

ア 自然環境保全地域による保全
 自然環境の保全を図るため、国は自然環境保全法の規定に基づき、原生自然環境保全地域以外の区域で、自然的社会的条件から見て自然環境を保全することが特に必要な区域を自然環境保全地域として指定することとされており、平成7年度末現在、10地域が指定されている。
 また、都道府県においても、条例に基づき、周辺の自然的社会的条件から見て当該自然環境を保全することが特に必要な区域を、都道府県自然環境保全地域として指定することができることとされており、平成7年度末現在、516地域が指定されている(第2-1-1表)
 平成7年度においては、白神山地自然環境保全地域において、6年度に引き続き自然環境の現況把握調査を実施した。
イ 自然公園の指定、公園計画の見直し
(ア) 自然公園の指定
 自然公園には、我が国の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地を指定する国立公園、国立公園の風景に準ずる優れた自然の風景地を指定する国定公園、都道府県の風景を代表する風景地を指定する都道府県立自然公園がある。現在までに多くの自然公園が指定され、自然環境の保全に資するとともに、野生体験、自然観察や野外レクリエーション等の自然とふれあう場として重要な役割を果たしている。
 平成7年度末現在、我が国の自然公園は、28の国立公園(205万ha)、55の国定公園(133万ha)及び303の都道府県立公園(195万ha)からなり、その合計面積は533万haで国土面積の14%を占めている(第2-1-1表及び第2-1-2表)。
(イ) 海中公園地区の指定
 海中公園制度は、海中の景観を維持するため、環境庁長官が国立・国定公園の海面の区域内に海中公園を指定し、必要な規制を行うとともに、その適正な利用を図るものである。
 平成7年度には、足摺宇和海国立公園足摺地域に海中公園地区を2地区追加指定した。
 平成7年度末までに、国立公園に31地区、国定公園に30地区、合計61地区2,295haの海中公園が指定されている。
(ウ) 公園計画の再検討
 自然公園の適正な保護及び利用を図るため公園計画を定めることとされているが、国立公園を取り巻く社会条件等の変化に対応するため、昭和48年度から自然保護の強化を基調として公園計画の再検討を行っている。また、再検討が終了した公園については、おおむね5年ごとに公園計画の点検を実施することとしている。
 平成7年度には、大雪山国立公園、支笏洞爺国立公園等の再検討を終了するとともに、足摺宇和海国立公園(足摺地域)、阿蘇くじゅう国立公園等の点検を終了した。
 また、国定公園の公園計画についても、国立公園に準じて国及び都道府県において再検討を進めており、平成7年度には西中国山地国定公園の再検討を終了した。
 なお、都道府県立自然公園は、公園計画が定められていない公園があるため、公園計画を定めるよう指導を行った。
(エ) 乗入れ規制地域の指定
 平成2年度に自然公園法が改正されたことに伴い、国立公園又は国定公園の特別地域のうち環境庁長官が指定する区域において、車馬若しくは動力船を使用し、又は航空機を着陸させることが規制されることとなった。
 これは近年普及の著しいスノーモービル、オフロード車あるいはモーターボート等の乗入れによる植生や野生生物の生息・生育環境への被害を防止するためのものである。
 平成7年度には、大雪山国立公園旭岳周辺地区等2公園6地区を追加指定した。
 平成7年度末までに国立公園に25地域、国定公園に8地域の合計33地域23万7,922haの乗入れ規制地域が指定されている。
ウ 自然公園における自然保護
(ア) 自然公園における風致景観の保護
i) 自然公園における行為規制
 自然公園内には、風致景観の保護のため、特別地域、特別保護地区及び海中公園が指定されている(第2-1-2表)。これらの地域において各種行為を行う場合は、環境庁長官又は都道府県知事の許可が必要であり、その際、「国立公園内(普通地域を除く。)における各種行為に関する審査指針」の適用等により、風致景観の適正な保護に努めている。国立公園内の特別地域及び特別保護地区における環境庁長官に対する各種行為の許可申請件数は第2-1-3表のとおりである。
 また、普通地域においても一定の行為は都道府県知事への届出を要することとしている。
 なお、普通地域内におけるゴルフ場造成については指導指針を定め、風景の適正な保護に努めている。
ii) 風致景観の管理手法の検討調査
 自然公園の風致景観の核心部を構成する貴重な自然を有する地域の保護管理を図るため、地域特有の生態系に変化をもたらす要因の解明調査等を行い、保護管理手法の樹立に努めている。平成7年度は、大山隠岐国立公園の隠岐島国賀海岸の保全対策に関する調査等を実施した。
(イ) 自然公園における環境保全対策
i) 美化清掃事業
 自然公園の利用者のもたらすゴミは、単に美観を損ねるだけでなく悪臭の発生などの環境汚染を引き起こすだけでなく野生生物の生態系にも悪影響を及ぼすことがある。そこで、特に利用者の多い国立公園内の主要な地域の美化清掃を積極的に推進するため、現地における美化清掃団体の育成強化を図り、それらの団体が行う清掃活動事業に対し補助を行っている。
 また、8月の第1日曜日を「自然公園クリーンデー」とし、関係都道府県等の協力の下に全国の自然公園で一斉に美化清掃を行った。
ii) 特殊植物等の保全事業
 国立公園又は国定公園内に生育している貴重な植物で、その生育環境と一体的に保護する必要のあるものの保護増殖対策を総合的に実施するため、尾瀬湿原(日光国立公園)等について、植生復元等に要する経費を関係地方公共団体に対し補助した。
iii) オニヒトデ等駆除事業
 オニヒトデ及びシロレイシガイダマシ類が異常発生している国立公園、国定公園の海中公園地区のサンゴ礁景観を保護するため、オニヒトデ及びシロレイシガイダマシ類の駆除に要する経費を関係地方公共団体に対し補助した。
iv) 自動車利用適正化対策
 自然公園内の優れた自然環境を有する地域への自動車乗り入れの増大により、植生の損傷、快適・安全な公園利用の阻害等自然公園の保護と利用両面にわたる種々の弊害が生じているため、「国立公園内における自動車利用適正化要綱」(昭和49年3月)に基づき、道路交通法に基づく交通規制や自家用車等に代わるバス運行などの対策を講じている。
v) 特定国立公園重点管理等事業
 国立公園内の貴重な生態系の適正な保護を図るため、吉野熊野国立公園大台ヶ原のトウヒ林及び利尻礼文サロベツ国立公園のサロベツ原野の保全対策等の事業・調査を継続した。
 また、知床国立公園、霧島屋久国立公園屋久島地域及び中部山岳国立公園白馬地域において、関係営林署の協力を得て重点管理事業を実施した。
(ウ) 管理体制の強化
 国立公園の管理については、国立公園・野生生物事務所等を各国立公園に設置し、地方公共団体、民間団体の協力を得て、その適正を期しているところであるが、近年の国立公園を取り巻く諸情勢の変化に対処するため、今年度も以下のような地域の特性に応じた管理体制の強化に努めた。
i) 国立公園・野生生物事務所等
 国立公園内における風致景観を保護管理し、公園事業者に対する指導、公園利用者への自然解説等広範囲な業務を行うため、国立公園・野生生物事務所を置くとともに、国立公園管理官を公園の各地区に配置している。平成7年度末現在の国立公園管理官定数は159人である。
 また、各公園ごとに地域の実情に即した適切な管理を行うため、管理計画を作成しており、平成7年度は大雪山等11公園16地域について管理計画を作成した。
ii) 民間団体の活動
 (a) (財)自然公園美化管理財団は、自然公園の美化清掃、公園施設の維持管理、自然保護思想の強化普及等の事業を中部山岳国立公園上高地地区、十和田八幡平国立公園八幡平地区等19支部において実施した。
 (b) 公益信託自然保護ボランティアファンドは、自然公園の美化清掃、動植物の保護・調査、自然解説などの活動を行っているボランティア17団体に対する助成を実施した。
(エ) 自然保護のための民有地買上げの推進
 国立・国定公園内の風致景観の維持並びに国設鳥獣保護区内の野生鳥獣の保護及び生息地等保護区内の国内希少野生動植物種の保護とこれらの地域における民有地の所有者の有する私権との調整を図るため、都道府県が行う買上げについて、補助を行っている。
 過去5か年の実績は、第2-1-4表のとおりであり、これまで65地区6,588ha(事業費125億7,100万円)が買い上げられている。
エ 生息地等保護区
 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(以下「種の保存法」という。)に基づき国内希少野生動植物種の生息・生育地として重要な地域である生息地等保護区の指定を進めることとしている。これまで羽田ミヤコタナゴ生息地保護区(栃木県大田原市)とキタダケソウ生育地保護区(山梨県芦安村)の2ヶ所が指定されており、生息・生育状況調査や巡視等の管理業務が行われている。
オ 鳥獣保護区
 鳥獣の捕獲を禁止し、生息環境の改善に努めるなど、鳥獣の保護を図る地域として鳥獣保護区を設定し、さらに必要に応じて特別保護地区を指定することとしている。平成7年3月末現在、54の国設鳥獣保護区(49万ha)、3,608の都道府県設鳥獣保護区(281万ha)が設定されており、その合計面積は329haで国土面積の9%を占めている。また、40の国設鳥獣保護区と575の都道府県設鳥獣保護区に合計26万haの特別保護区が指定されている。
カ 史跡、名勝、天然記念物
 動植物種及び生態系を中心とした我が国を代表する自然を保全するため、古墳、貝塚、城跡等の遺跡で歴史上又は学術上の価値の高いものを史跡に、庭園等の名勝地で芸術上または観賞上価値の高いものを名勝に、動植物、地質鉱物等で学術上価値の高いものをそれぞれ天然記念物に指定し、現状変更等を制限している。平成7年度末現在の指定件数は、史跡1,341件(うち特別史跡57件)、名勝260件(うち特別名勝28件)、天然記念物915件(うち特別天然記念物72件)である。また、史跡等の保存上、特に必要がある場合は公有化を図るとともに、当該史跡等の活用を図るため、整備等の保護事業を行った。さらに、近年の国土開発の進展による天然記念物の減少に対処するため保護増殖事業を実施した。
キ 保安林等
 保安林について、優れた自然環境の保全を含む公益的観点から、計画的な配備、適正な管理等を行っている。さらに国有林野においても、森林生態系保護地域、植物群落保護林、特定動植物生息地保護林等を平成7年度末までに796箇所、約47万7千ha設定するとともに、その適切な保護管理を行った。
ク 都市の緑地保全
 緑の基本計画に基づく緑地保全地区の指定を積極的に進めるとともに、緑地保全地区(近郊緑地特別保全地区を除く)については、事業費29億8,200万円で土地の買入れを、事業費3億円で緑地の保全と利用を図るため必要な施設の整備を行った。
 首都圏及び近畿圏の近郊緑地保全区域のうち、近郊緑地保全特別保全地区については事業費7億4,000万円で土地の買入れを、事業費1億円で緑地の適正な保全と利用を図るため必要な施設の整備を行った。
 都市における緑地の保全を図り、風致に富むまちづくりを推進する観点から風致地区の指定の推進を図った。
ケ ナショナル・トラスト運動による保全
 イギリスの「ナショナル・トラスト」に示唆を受け、募金活動等を通じ広く国民の自主的参加により良好な自然環境等を有する土地の取得、管理を行い、保全を図っていこうとするナショナル・トラスト活動は、現在、和歌山県の「天神崎保全市民運動」など全国各地において推進されている。
 こうした活動は国民自らの手による自然保護活動として極めて有意義なものであり、さらに普及、定着していくことが期待される。
 このため、平成7年度には、自然環境保全法人(自然環境の保全のため良好な自然環境を有する土地の買取り、管理に関する業務を行うことを主たる目的とする公益法人)を特定公益増進法人として認定し、これに対する寄付金について損金算入を認める等の税制上の優遇措置を講じる制度の普及に努めるとともに、ナショナル・トラスト活動の推進を図るため、第13回ナショナル・トラスト全国大会においてシンポジウム等を開催し、活動の趣旨の一層の周知を図った。



(3) 自然とのふれあいの確保

ア 利用のための施設の整備
(ア) 国立・国定公園の利用施設
i) 基幹整備
 優れた自然環境を有する国立・国定公園において、これら自然環境の保全に配慮しつつ、自然とのふれあいを求める国民のニーズに応え、安全で快適な利用を推進するため、歩道、野営場、園地、公衆トイレ等利用の基幹となる施設を整備した。特に、国立・国定公園内の公衆トイレや野営場のうち、緊急に改善を要する施設についての再整備を引き続き実施した。なお、7年度における国立・国定公園の利用施設の整備状況は第2-1-5表のとおりである。
ii) 自然公園核心地域総合整備事業(緑のダイヤモンド計画)
 国立・国定公園の核心となる特に優れた自然景観を有する広域な地域において、自然の保全や復元のための整備を一層強化するとともに、高度な自然学習や自然探勝のためのフィールドの整備を中部山岳国立公園上高地地域、白山国立公園市ノ瀬地域及び日光国立公園奥日光地域の3箇所において着手した。
iii) エコ・ミュージアム整備事業
 平成7年度から国立・国定公園の主要利用拠点において、子どもたちがいきものや自然の植生などとふれあい、自然を学ぶことができる自然ふれあい体験のための中核施設(エコ・ミュージアム)の整備を、釧路湿原国立公園塘路地区、阿蘇くじゅう国立公園長者原地区及び揖斐関ヶ原養老国定公園関ヶ原地区の3箇所において着手した。
iv) エコロジーキャンプ整備事業
 国立・国定公園の中で家族が長期滞在し、自然とのふれあいができる環境にやさしいキャンプ場の整備を引き続き実施した。
(イ) 国民休暇村
 国民休暇村は、国立・国定公園の自然環境の優れた休養適地に、低廉で快適な宿泊施設を始め、自然に親しむための各種の施設を総合的に整備するものであり、平成8年3月末現在、34箇所が利用に供されている。
 国民休暇村の施設のうち、園地、歩道、野営場等の公共施設については、国又は地方公共団体が整備し、宿舎、ロッジ、スキーリフト等の有料施設については(財)国民休暇村協会が整備、運営している。
 国民休暇村の年度別利用者数の推移は第2-1-6表のとおりである。
(ウ) ふるさと自然ネットワーク
 自然豊かな地域を訪れ、自然の中で様々な活動を行い、自然と向き合いながら充実した時間を過ごしたいといった国民のニーズが急速に増大し、多様化している。このような要請に応えるため、トンボやホタルなどの小動物が生息する身近な自然環境を保全活用し、いきものとふれあい、自然の中で憩うことのできる場づくりを推進している。具体的には、多様なメニューの中から地域のニーズにマッチした事業(?環境と文化のむら、?ふるさといきものふれあいの里、?ふるさと自然のみち、?いきものふれあい浜辺、?ふれあい・やすらぎ温泉地、?国民保健温泉地)を選定し、国民が自然との共生を実感できる「ふるさと自然ネットワーク」を整備するものである。(第2-1-7表)
 7年度は新規9箇所、継続9箇所において整備を実施した。
(エ) 長距離自然歩道
 長距離自然歩道は、国民が広く自らの足で自然や史跡などを訪ねることにより、健全な心身を育成し自然保護に対する理解を深めることを目的とするもので、自然公園や文化財などを有機的に結ぶ長距離にわたる自然歩道として、昭和45年度から整備を進めている。四季を通じて利用できるよう、また、安全で快適に利用できるよう配慮しつつ、整備を行っており、平成8年3月末現在総延長は約1万8,000?に及んでいる。
 平成7年度は、引き続き東北自然歩道の整備を行うとともに、全国で7番目の自然歩道として新たに中部北陸自然歩道の整備に着手した。また、老朽化した東海、九州、中国、四国及び首都圏の各自然歩道の施設について再整備を行った。
 なお、平成6年における利用者数は、3,567万人に達した。概要は第2-1-8表のとおりである。
(オ) ふるさと自然公園国民休養地
 ふるさと自然公園国民休養地は、都道府県立自然公園内において、都市住民が積極的に自然に働きかける活動を通じてより深く自然とふれあい、自然と人間との調和のあり方を身につけることに重点を置き整備する地域であり、博物展示施設(ふるさと自然公園センター)、園地、野営場、歩道等必要な施設の整備を行うものである。平成7年度は、2地区において整備を行った。
(カ) 国民宿舎、国民保養センター
 国民宿舎は、自然環境に恵まれた休養適地における、国民の低廉かつ快適な宿泊休養を目的とした施設であり、国民保養センターは、自然公園等の休養適地に主として地域住民の日帰りレクリエーション活動と保健休養を目的とした施設である。
 国民宿舎、国民保養センターの年度別利用者数等の推移は第2-1-9表第2-1-10表のとおりである。
(キ) 保健保安林、レクリエーションの森
 主として都市近郊等における生活環境保全機能及び保健休養機能の高い優れた森林である保健保安林の安全快適な利用の促進を図るための施設整備につき助成等を行ったほか、環境保全保安林整備事業を推進した。また、国民が自然に親しみ得る森林環境の整備を行う「豊かな森林づくり」対策(14箇所)等につき助成した。
 国有林野については、自然休養林等のレクレーションの森(約41万ha)において、施設又は森林の整備等を行うとともに、スポーツ施設、保健休養施設等を総合的に整備するヒューマン・グリーン・プランを積極的に推進した。また、「レクリエーションの森」において、利用者の協力を求める「森林環境整備協力金」制度を拡充し、森林環境整備事業として実施した。
(ク) 「山村で休暇を」特別対策等
 都市住民などが山村に滞在して余暇を過ごすことを促進し、山村の活性化を図るため、森林の中を散策できる空間や交流のための基盤となる施設などの整備を計画的に実施する「山村で休暇を」特別対策のほか、都市山村交流活動の推進に必要な体験・学習の場、交流拠点等の整備を促進する「緑とのふれあいの里整備特別対策事業」を実施した。
(ケ) 家族キャンプ村
 家族キャンプ村は、国民の自然志向の高まりと観光レクリエーション需要に対応して地域住民が手軽に利用できる低廉なオートキャンプ施設を中心とした観光基盤施設である。恵まれた自然の中に自然環境保全に十分配慮しつつ整備を行うことにより、人々と豊かな自然との触れ合いの場を確保するとともに地域振興に資するものである。
 平成7年度は秋田県本庄市、山梨県早川町及び広島県高野町の3地区の整備に着手した。
(コ) 家族旅行村
 家族旅行村は、主として家族が恵まれた自然の中で手軽に利用できる観光レクレーションの場を確保するとともに、あわせて地域の振興に資することからその整備を進めており、平成7年度においては、3地区の整備を推進している。
(サ) 少年自然の家
 少年自然の家は、少年を自然に親しませ、集団宿泊活動を通じてその情操や社会性を豊かにし、心身を鍛練し、もって健全な少年の育成を図ることを目的とする社会教育施設である。国立少年自然の家については、全国14箇所に整備する計画の下に順次その建設を進め、平成3年度に全ての施設の設置を終了した。平成7年度は既設国立少年自然の家の施設整備等の充実を図った。
(シ) 天然記念物整備活用事業
 天然記念物を国民の身近な存在とすることによって、その保全について国民の理解を一層理解するため、天然記念物の学術的価値や現況等に応じた学習施設・観察施設等を整備する天然記念物整備活用事業を実施している。
イ 自然解説活動等の展開
 人々の自然への理解を深め、自然に対する愛情とモラルを育成するため、ビジターセンターや自然研究路等の施設を活用し、以下の行事を通じ、自然教育を積極的に推進した。
 ? 4月29日の「みどりの日」に新宿御苑や全国の国立公園等で「自然とふれあうみどりの日の集い」を実施した。
 ? 7月21日から8月20日の「自然に親しむ運動」の期間中に、全国の自然公園等で自然観察会等の自然とふれあい各種行事を実施した。なお、その中心行事として南房総国定公園(千葉県)において、第37回自然公園大会を開催した。
 ? 自然の中を歩くことにより、自然への理解を深めることを目的として、10月を「全国・自然歩道を歩こう月間」とし、47都道府県の自然歩道において、「全国・自然歩道を歩こう大会」を実施した。また、そのような活動に協力するボランティアの育成とその活動強化のため「パークボランティア強化事業」を足摺宇和海国立公園大月地区等7地区で実施するとともに、自然解説活動における指導者育成のための「自然解説指導者育成事業」を実施した。一方、自然公園における動植物の保護や美化思想の普及、事故の防止等利用の適正化のために委嘱している自然公園指導員に対する研修を実施し、利用者指導の充実を図った。
 また、公益信託自然保護ボランティアファンドの発展・充実に努めた。 一方、一般の森林利用者に対し、森林や林業への理解を深めるため、県民の森や森とのふれあいの施設において、森林体験ツアーをはじめ各種の森林、林業解説活動を展開した。
 国有林野においては、森林教室、体験セミナー等を通じて、森林とのふれあいを楽しみながら理解を深める森林倶楽部(森林ふれあい推進事業)等を実施した。



(4) 森林、農地、水辺地等における自然環境の維持・形成

ア 森林
 森林の保全を図るため、森林計画制度に基づく適切な森林施業の推進を図るとともに、林地開発許可制度の適切な運用、保安林制度の適切な実施、森林整備事業の計画的な推進、森林病害虫等防除対策の推進により森林資源の維持培養と森林の多面的機能の発揮を図った。
(ア) 森林計画
 木材の生産、山地災害防止、水源のかん養、自然環境の保全・形成等森林の有する多面的機能を総合的かつ高度に発揮させるため、森林計画制度の適切な運用を図った。
 特に、複層林施業又は長伐期施業の促進により森林の公益的機能の高度発揮を図る特定森林施業計画の認定や、間伐、保育等森林の整備を促進するための市町村森林整備計画の適切な実施を図るとともに、特定保安林の区域内の施業を早急に実施すべき森林について、施業方法等を関係地域森林計画において定めた。
(イ) 林地開発許可制度
 森林の土地の適正な利用を確保することを目的とした林地開発許可制度の適正・円滑な運用を図るため、都道府県知事が行う許可処分及び連絡調整に必要な審査、監督等につき指導、助成した。
(ウ) 保安林
 保安林の指定面積は、平成7年度末現在で約906万haであり、山地災害防止、水源のかん養、自然環境の保全・形成、保健休養の場の提供等の森林の有する公益的機能を高度に発揮させるため、保安林整備計画に基づき、計画的な保安林の指定及び機能が低下している保安林の機能確保のための特定保安林の指定を行うとともに、保安林の適正な維持管理に努めた。
(エ) 森林整備事業
 森林資源の質的高度化、多様な森林の整備、利用等を基本方針とした「森林整備事業計画」に基づき、地域の特性に応じて広葉樹林の造成・整備、複層林や育成天然林施業等による適切な森林の造成及び保育・管理を図るため、森林整備事業を計画的に推進した。
(オ) 森林の保全管理
 森林の有する多面的機能の確保に資するため、森林病害虫等防除法等に基づき、森林病害虫等の防除等を実施した。特に、松くい虫被害対策については、松くい虫被害対策特別措置法等に基づき、環境の保全に配慮しつつ、各種防除措置等を総合的に実施した。この他、保安林及び林野火災等が多発する森林については、緑のレンジャー及び森林保全推進員による森林パトロール、林野火災予防資機材の配備等に加え、防火森林、防火林道の整備について助成するとともに、防火の森整備等の実施について助成した。また、全国山火事予防運動の実施等啓発活動を実施した。
 国民参加による森林づくりを図るため、分収林制度を積極的に推進するとともに、「緑と水の森林基金」の造成・整備を推進し、国民の期待にこたえた森林資源の整備、利用等に関する総合的な調査研究、普及啓発等を実施した。
 国有林野については、その有する諸機能のうち重点的に発揮させるべき機能によって、国土保全林、自然維持林、森林空間利用林、木材生産林に類型化し、これを踏まえつつ、天然林施業の推進や複層林の造成を含めた人工林の適正な整備、広葉樹林の積極的な造成等を図るなど、自然環境の維持・形成に配慮した森林施業を推進した。
イ 農地
 環境保全、自然に恵まれた美しい景観の提供といった農業・農村の持つ公益的機能を発揮させるという観点から適切な形での農地等の維持・形成を図っている。ため池等の周辺において生態系空間(ビオトープ)を保全する事業や生活環境の整備等を生態系の保全に配慮しながら総合的に行う事業等に助成し、多様な生物相と豊かな環境に恵まれた農村空間(エコビレッジ)の形成を促進するほか、生態系の多様性を確保するための効果的な農業用施設等の配置や維持管理のあり方及び希少野生動植物種等の保全に配慮した農業農村整備事業の実施方法等について検討を行った。
 土地改良施設や地域住民の保全活動を推進していくための調査研究、人材育成などを都道府県に基金を造成し支援するほか、農村地域の美しい景観や環境を良好に整備、管理していくために、地域住民、地元企業、自治体等が一体となって身近な環境を見直し、自ら改善していく地域の環境改善活動(グラウンドワーク)の推進を図るための事業を行った。
 また、自然環境の維持・形成に資するため、農業集落排水事業を促進するとともに、地域の実情に応じ、特定環境保全公共下水道等の整備を進めた。
 環境保全型農業の推進については、農業の持つ物質循環機能を生かし、生産性との調和などに留意しつつ、土づくり等を通じて化学肥料、農薬の節減等による環境保全型農業の全国的な展開を図った。このため、都道府県における環境保全型農業の推進指導、市町村における推進方針の策定及びその実践のための施設整備に加え、畜産由来肥料の高度活用を図るためこれら肥料の品質特性・肥料効果の確保等を実施するとともに環境保全型農業の理解を深めるための地域の拠点施設を整備した。また、家畜ふん尿の適正な処理と耕種農業における堆きゅう肥の利用を促進するため、畜産環境保全に関する農家指導及び耕種部門との連携、家畜ふん尿の処理利用施設の整備等を行った。
 市街化区域内農地のうち、生産緑地地区に指定されたものについては、緑地としての機能が維持されるよう、適正な保全を図ったほか、都市住民の交流の場としての活用を図るため、市民農園整備事業等により、市民農園の整備を推進した。
ウ 水辺地等
 地域住民が身近に水に接する場である水辺地においては、排水規制、浄化施設の整備等従来からの水質保全施策に加え、住民が水辺環境に関心を持ち、生活の中で水と人との関係を考えていくことができる基盤づくりや、自発的に環境保全に参加できる環境づくりの施策を展開した。特に、カエルやメダカ等の動物やヨシ等の植物が生息できる水辺環境の再生や「名水百選」の中でも水質の悪化等が懸念されるものについて従来の形への復元等水辺空間の再生・創造により、住民による自発的な水環境保全活動を支援した。

(5) 自然的環境の整備

ア 都市における緑地の整備等
 都市緑地保全法に基づき、市町村による「緑地の保全及び緑化の推進に関する基本計画(緑の基本計画)」の策定を推進し、それに基づく都市の緑とオープンスペースを確保するための施策を総合的かつ計画的に展開した。
イ 都市公園等
 平成7年度は、第5次都市公園等整備五箇年計画に基づき、国民の安全の確保、活力ある長寿社会の形成及び国民の心身の健康の増進、都市住民との自然とのふれあい、都市のうるおいの創出、広域的なレクリエーション需要への対応、地域の実情及び多様なニーズへの対応を図るため、事業費3,728億2,700万円をもって、次の事項に重点をおいて都市公園整備事業の積極的推進を図った。
 国営公園については、全国で16箇所において整備を進めた。
 大震火災時において避難地、避難路等として機能する都市公園(防災公園)及び防災緑地、高齢者、障害者等に配慮した福祉施設と一体となった都市公園(いきいきふれあい公園)、国民の健康の維持増進に特に配慮した都市公園(健康運動公園、ウエルネスパーク)の整備、都市において野鳥等とのふれあいの場となる自然生態観察公園、民有地の緑化により自然とのふれあいの場を形成する自然ふれあいモデル地区事業、都市住民が土と自然にふれあえる場となる市民農園、地域の特性等をいかした整備を行い地域活性化の核となる地域活性化拠点公園、農山漁村における居住環境の向上を目的とする公園(カントリーパーク)等各種施策に応じた都市公園等の整備を積極的に推進した。
ウ 国民公園及び戦没者墓苑
 旧皇室苑地の皇居外苑、新宿御苑及び京都御苑は国民公園として、昭和46年度以降は環境庁が管理し、広く一般に利用され親しまれている。
 皇居外苑(北の丸地区を含む。)は114.9haの面積を有し、そのうち、皇居前広場はクロマツと芝生を中心として、北の丸地区は森林公園として整備されている。また、新宿御苑は明治時代における代表的庭園であり、全体的には近代西洋庭園ということができる。58.3haの苑内には1,500本の桜樹のほか、全苑にわたり花を観賞できるよう花木が整備されており、年間約100万人の入園者が訪れている。さらに、京都御苑は京都市のほぼ中心に位置し、南北に1,300m、東西に700mの長方形をした敷地のうち京都御所などを除く65.3haの苑地で、京都市の中央公園的役割をも果たしている。なお、新宿御苑及び京都御苑では、子ども達が自然に接する機会をより多くもつことを目的とした「母と子の森」を設置しており、自然観察会等の場として活用されている。
 千鳥ケ淵戦没者墓苑は面積1.6ha余りの苑地で、戦後海外各地から収集された遺族に引き渡すことのできない戦没者の遺骨337,427柱(平成7年5月現在)が安置されている。
 これら公園の快適な利用に資するため、平成7年度において、苑路改修、池の浚渫等のほか、園内の清掃、芝生、樹木の手入れを行うとともに、天皇皇后両陛下の御結婚を記念して昭和36年に建設された皇居外苑和田倉噴水と周辺園地を皇太子同妃両殿下の御結婚を機に、新たに和田倉噴水公園として整備した。また、皇居外苑二重橋前高欄改修、牛ヶ淵水門水路の改修、京都御苑御門改修、新宿御苑菊栽培小屋の建替、千鳥ヶ淵戦没者墓苑の藤棚整備を行った。
エ 河川環境等の整備
(ア) 河川
 河川環境に関する基礎情報の収集整備のため、河川並びにダム湖及びその周辺における生物の生息状況の調査を行う「河川水辺の国勢調査」を130河川58ダムで実施した。また、河川環境に関する専門的知識を有する地域の方々の参加を得て、きめ細かな河川環境の管理に資する「河川環境保全モニター制度」を実施した。
 河川環境の整備については、河川環境管理基本計画の策定を推進し(平成7年度末655水系策定済)、これに基づき、自然環境の保全に配慮するとともに、河川の高水敷等を整備し、水と緑の公共空間として地域住民に憩いとレクリエーションの場を提供するため、河川の自然環境の適正利用のための施策を推進し、また、流域の水循環の適正化を図るための種々の施策を推進した。
 環境に配慮した河川の整備を行い、良好なうるおいのある水辺空間の保全並びに形成を図る「河川環境整備事業(河道整備事業)」を202河川(事業費178億600万円)で、河川水面利用を中心とした河川利用の適正化、推進を図る「河川環境整備事業(河川利用推進事業)」を14河川(事業費30億8,900万円)で、周辺の景観や地域整備と一体となった河川改修を行う「ふるさとの川整備事業」を133河川で、河川改修と市街地整備を併せて行う「マイタウンマイリバー整備事業」を4河川で、堤防の強化と併せ側帯上に植樹を行う「桜づつみモデル事業」を91箇所で実施した。また、河川改修に際して、生物の良好な生育環境に配慮し、併せて美しい自然景観を保全あるいは創出する「多自然型川づくり」、河川横断施設とその周辺の改良、魚道の設置等により魚類の遡上環境の改善を行う「魚がのぼりやすい川づくり推進モデル事業」、高齢者、障害者に配慮し、すべての人に優しい河川環境を整備する「まほろばの川づくりモデル事業」、劣悪な環境になっている河川を周辺の地域環境にふさわしい本来の川らしい川に再生し、個性ある地域づくりに資するため、質の高い河川整備を行う「河川再生事業」を実施した。
 なお、環境保全上の観点から一部に反対運動のある長良川河口堰建設事業について、平成3年度に建設省及び水資源開発公団は、学識経験者の指導の下に環境庁とも調整を図りつつ環境に関する追加調査を実施した。この追加調査の結果は、平成4年4月に公表され、その中で水質や回遊性魚類等について大きな影響はないものと判断している。また、同省及び同公団では、学識経験者の指導を得ながら平成6年度に1年間かけて、環境等の調査を実施し、魚道の機能等が確認されたところである。これらの調査結果や、平成7年3月から4月にかけて行われた円卓会議での議論、地元自治体等の意見を踏まえ、治水上浚渫を急ぐこと、利水上も必要であることと等から、建設大臣の判断により5月23日から本格運用に入ったところである。握していくため、学識経験者からなるモニタリング委員会を設置し、環境面等の諸観測を引き続き実施しているところであり、今後とも河川環境に十分配慮しながら、河口堰の運用を行うこととしている。
(イ) ダム周辺
 ダム貯水池において整地、法面保護、緑化対策等を図り、ダム湖の活用、親水性の向上を図る「ダム湖活用環境整備事業」を新たに長瀬ダム等3ダムを加え、合計38ダム(事業費30億1,955万円)で実施した。また、ダム周辺の魚類の生態系を含む河川環境の回復を目的とした「ダム水環境改善事業」を新たに小渋ダムを加え、合計6ダム(事業費11億3,285万円)で実施した。
 さらに堆砂及び水質改善対策と併せて常時一定水位で利用可能な湖面を確保し、ダム湖の親水性を向上させる「レクリエーション湖面整備ダム事業」を1ダム(事業費9億6,800万円)において実施した。また、地方公共団体等が主体となるレクリエーション事業と一体となって共同ダム事業を行う「レクリエーション多目的ダム事業」を3ダム(事業費26億2,537万円)において実施した。
(ウ) 砂防施設周辺等
 都市周辺の渓流において、自然環境との調和を図り、緑と水辺の空間を確保し生活環境の整備を行う「砂防環境整備事業」を23渓流(事業費15億9,900万円)で、景観や親水性の向上、生態系の回復等を図り、良好な渓流環境を再生する「渓流再生事業」を3渓流(事業費1億9,800万円)で実施した。
 さらに、土砂災害の防止と併せて渓流における景観・生態系等の自然環境を保全する砂防事業を推進するため、渓流環境整備計画策定のための検討を行った。また、これらの事業を実施するための基礎情報の収集整備のため、自然環境調査及び渓流空間利用実態調査からなる「水と緑の渓流づくり調査」を実施した。
 都市部におけるがけ崩れ対策については、崩壊対策の際、既存の樹木等の活用を図る緑の斜面保全事業を行った。
オ 港湾・漁港における環境の整備
(ア) 港湾
 環境と共生する港湾(エコポート)の実現を促進する観点から、全国の模範となる整備事例を早期に形成する「エコポートモデル事業」として、横浜港において実施した。また、環境改善が急がれる三大湾に位置する港湾などにおいて、環境の保全や生態系、親水性、浄化機能を活用した環境創造にむけた施策を総合的、計画的にとりまとめる「港湾環境計画」を三河港及び中城湾港について策定した。
 港湾において親水性を高め快適な環境を創造し、港湾を利用する人々に憩いの場を提供するため、平成7年度は伏木富山港等165港において緑地等の整備を行った。また、歴史的港湾施設の保存、活用を図るとともに、周辺の環境整備を一体的に進める歴史的港湾環境創造事業を実施した。
 マリーナは、その優れた景観と高い親水性からアメニティの高い潤いのある空間を創出することが期待される施設であり、自然環境の保全との調和を図りつつ、快適な環境を創造する観点から、その整備を推進している。平成7年度においては、公共事業により、尼崎西宮芦屋港等においてマリーナの整備を行ったほか、塩釜港等においてプレジャーボートスポットの整備を行った。また、周辺の環境と調和した安全で快適な海洋性レクリエーション基地の整備を推進するコースタルリゾートプロジェクトを昭和61年度より全国54箇所で行っている。
(イ) 漁港
 海水交流機能を有する防波堤等の整備、水産動植物の生息、繁殖が可能な護岸等の整備並びに自然環境への影響を緩和するための海浜等の整備を総合的に行う自然調和型漁港づくり推進事業を全国35地区で実施した。
 また、漁村の生活排水対策として漁業集落排水施設整備を全国139地区で実施したほか、漁港区域内の水域における汚泥・ヘドロの除去を行う水域環境保全対策や漁港内の浮遊ごみ等を処理するための施設整備等を行う漁港環境整備事業を全国131地区で実施した。
カ 海岸における環境の整備
 多様な海洋性レクレーション需要の増大に伴う海浜利用の進展に対処するとともに、快適で潤いのある海岸環境の保全と創出を図るため、砂浜の保全・復元により生物の成育・生息地を確保しつつ、景観上も優れた人と海の自然のふれあいの場を整備する海岸環境整備事業を平成7年度は、全国350箇所において事業費661億2,735万円で実施した。
 沿岸域の藻場・干潟の造成、ヘドロの浚渫等を行った。さらに新たに地方単独事業による藻場・干潟の再生、保全を支援するための地方財政措置を講じた。
キ 緑化推進運動への取組
 関係9省庁からなる緑化推進連絡会議(議長内閣官房長官)を中心に、国土の緑化に関し関係行政機関相互の緊密な連絡を図り、総合的かつ効率的な施策を推進し、全国的な幅広い緑化推進運動の展開を図っているところであり、「みどりの日」、「みどりの週間」を中心とする各種行事等を通じ、みどりに対する国民意識の高揚を図るとともに、自然とのふれあいの増進、国民参加の森林づくりの推進、みどりを通じた地域の活性化、都市における緑化の推進、さらには、地球環境保全等各般の施策を行うこととした「平成7年度緑化推進運動の実施」を取りまとめ、以下のような施策を実施し、運動の一層の展開と定着化を図った。
 ? 身近な場所に実のなる木等野鳥の好む樹木等を保全又は植栽し、野鳥の観察のための施設を整備することにより、野鳥の生息に適した環境の創出と野鳥に親しむ場の整備を図る「小鳥がさえずる森づくり」運動を推進し、特に優れた森づくりを実施した地方公共団体等の表彰を行った。
 また、民間資金による緑化を進めるため、(社)ゴルファーの緑化促進協力会の協力を得てゴルファーによる緑化協力運動を推進した。
 ? 国民の国土緑化思想の高揚を図り、国土緑化を推進するため、全国植樹祭等を開催する事業に助成したほか、森林を多目的に利用する計画の策定、国民参加の森林づくりを推進する仕組の構築とその普及・啓発を推進した。
 また、緑化に関する技術開発、保健・休養、文化、教育等の高度利用を図るモデル森林の整備改良及び樹木医の養成・確保、巨樹・古木林等の保全技術の確立・普及等に助成した。
 さらに、「みどりの日」、「みどりの週間」を中心に、国民各層が参加する緑化活動や緑の羽根募金運動等を全国的に展開した。なお、国民の自発的協力を基礎とする緑の羽根募金の基本的性格を維持しつつ、これを緑の募金として、その基盤の強化と取組の多様化を図ることを目的として、「緑の募金による森林整備等の推進に関する法律」が平成7年制定・施行され、森林の整備、緑化の推進及び国際緑化の推進が進められることとなった。
 ? 工場立地法に基づき工場緑化の推進に努めるとともに、都道府県を通じ工場緑化のコンサルティング、研修会の開催、啓蒙普及書の配布等の指導を実施したほか、緑化等により環境の向上に顕著な功績のあった工場に対し通商産業大臣表彰を行った。また、緑地等の整備を行う工場について日本開発銀行及び中小企業金融公庫から融資を行っている。
 ? 都市の緑化の推進については、「みどりの日」、「みどりの週間」を中心とした春季における都市緑化運動期間(4〜6月)や都市緑化月間(10月)等ににおいて全国各地で多彩な都市緑化推進関連行事を開催したほか、国際花とみどりの博覧会の理念を継承し、都市緑化推進運動の国民的な運動としての展開を図った。
 また、緑の相談所の整備、緑地協定の締結指導、(財)都市緑化基金及び地方における都市緑化基金の拡充、「住民、企業、行政」が一体となった地域緑化活動等を実施した。

(6) 調査研究の推進

 平成7年度においては、第5回自然環境保全基礎調査の一環として「植生調査」、「海辺調査」、「環境指標種調査」等を実施した。また、生物多様性保全の観点から、種の分布現況の全体像を把握する「種の多様性調査」と、重要な生態系が成立している地域を総合的に把握する「生態系多様性地域調査」からなる「生物多様性調査」を6年度に引き続き実施した(第2-1-2図)
 さらに、里地自然地域における自然環境の保全、絶滅のおそれのある野生動植物の保護や鳥獣の保護管理対策の強化に資するため、調査研究を推進した。

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