1 健康被害の救済及び予防
(1) 公害健康被害補償予防対策等の推進
ア 「公害健康被害の補償等に関する法律」の実施
(ア) 補償給付等の充実
被認定者に関する補償給付については、労働者の平均賃金の動向等を踏まえて必要な給付額の改定を行うとともに、被認定者の健康の回復等を図るため、公害保健福祉事業を引き続き実施する。
(イ) 健康被害予防事業の実施
公害健康被害補償予防協会(以下「協会」という。)は、協会に設けられた基金を基に、調査研究、知識の普及及び研修の各事業を直接行うとともに、地方公共団体等が旧第一種地域等を対象に行う計画作成、健康相談、健康診査、機能訓練、施設等整備等の各事業に対し助成金の交付を行う。
(ウ) 費用負担
旧第一種地域に係る補償給付額(公害保健福祉事業に係る原因者負担分を含む。)の所要額は、平成7年度において約903億円と見込まれており、これらの費用を賄うため、固定発生源分については汚染負荷量賦課金を徴収し、自動車分については、自動車重量税収の一部を引き当てる。
イ 水俣病対策の推進
水俣病については、認定業務の推進、水俣病総合対策事業、国立水俣病研究センターを中心とする総合的研究等の施策を推進する。
(ア) 認定業務の促進等
認定業務の促進を図るため、検診医の確保、県外申請者のための検診の実施等検診審査体制の強化と円滑な実施、「水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法」に基づく環境庁長官自らの認定業務の実施等について関係者の理解と協力を得て、県と一体となって努力する。
平成3年11月の中央公害対策審議会答申「今後の水俣病対策のあり方について」を踏まえ、地域住民に対し健康診査等を行う健康管理事業、水俣病とは認定されないが四肢末端の感覚障害を有する者に療養費及び療養手当を支給する医療事業等を内容とする水俣病総合対策事業の円滑な推進を図る。
(イ) 国立水俣病研究センターの充実
国立水俣病研究センターの充実に努め、水俣病に関する医学的調査及び研究の一層の推進を図るとともに、研究資料の保存と活用機能を備えた水俣病研究資料館「水俣病リサーチリソースバンク」を新設する。また、WHO指定機関としての活動を行うとともに、海外水銀汚染に関する調査研究等の国際協力を引き続き実施する。
(2) 環境保健に関する調査研究の充実
環境保健の問題は、健康被害の未然防止を図ることが重要であり、平成7年度においては以下のような各種調査研究を行っていく。
ア 環境保健施策基礎調査等
環境庁においては、引き続き環境保健サーベイランス・システムの構築のための調査、局地的汚染の健康影響の調査手法確立のための調査、花粉症と大気汚染物質の関係等についての調査及び紫外線、電磁波の健康影響調査を行う。
なお、協会においても、大気汚染の影響による健康被害の予防に関する調査研究を引き続き行う。
イ カドミウムの慢性影響に関する調査研究
従来の研究成果を踏まえ、実験動物を使用したカドミウムの長期微量投与実験等の研究を行う。
ウ カドミウム環境汚染地域住民健康調査
環境庁では、カドミウム汚染地域住民の保健管理及び今後の保健対策を進める上での基礎資料とするため、昭和60年度から標記調査を行っており、平成7年度においても実施する。
エ 環境汚染健康影響基礎調査
有害重金属の環境汚染等による健康影響を事前に予測し、適切な保健対策を推進するための基礎資料を得ることを目的として、有害重金属の曝露(ばくろ)状況等を調査する。