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第1節 

2 廃棄物処理対策

(1) 廃棄物に関する問題点とその対策
 近年の経済活動の活発化、国民のライフスタイルの変化に伴い、廃棄物の発生量が増加し、その種類も多様化している一方で、廃棄物処理施設の確保が困難となっており、また廃棄物の不法投棄等の不適正な処理が大きな社会問題となっている。
 こうした状況に対応するため、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づき、?廃棄物の減量化・再生の推進、?廃棄物の適正処理の確保、?処理施設の整備の三点を主な柱とした施策を進めた。また、施設整備を促進するため、廃棄物処理センター制度の円滑な活用のほか、「産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律」に基づく特定施設の整備を推進した。
 さらに、平成5年3月の水質汚濁に係る環境基準の改正等を踏まえ、6年9月に廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令並びに海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令の一部改正を行い、ジクロロメタン等の13物質について、これらの物質を一定以上含む産業廃棄物を特別管理産業廃棄物として追加指定し、その最終処分基準を設定するとともに、自動車等の破砕後の残渣であるいわゆるシュレッダーダストについて、安定型処分場における処分を禁止し、管理型処分場での処分を義務付けることとし、環境に有害な廃棄物に対する規制を強化した。
(2) 一般廃棄物対策
 一般廃棄物の発生量の増加に対処するために、平成6年度においては一般会計総額1,287億円(NTT償還時補助を除く)の補助金により、ごみ処理施設、し尿処理施設、埋立処分地等の一般廃棄物処理施設の整備を図った。
 また、ごみの発生量が増加しその質も多様化するなかで、ごみゼロ社会を目指し快適な街づくりを実現するため、平成6年度から「単に燃やして埋める処理」から廃棄物についてその排出抑制に努め、リサイクル可能なものは極力リサイクルを行い、その後になお排出される可燃性のものは焼却処理等を行うとともに積極的な余熱利用を行う「廃棄物循環型処理」を推進するための施設整備を行った。
 さらに、廃棄物の減量化・再生利用の推進等について、平成6年10月に厚生省の生活環境審議会廃棄物減量化・再利用専門委員会及び平成6年7月の通商産業省産業構造審議会廃棄物処理・再資源化部会による報告書が取りまとめられた。
(3) 合併処理浄化槽の普及促進等
 合併処理浄化槽は、生活排水対策の有効な手段として社会的に期待を集めている。合併処理浄化槽に対する補助制度(合併処理浄化槽設置整備事業及び特定地域生活排水処理事業)については、国庫補助金の予算額が補正予算も含め166億円に増額され、同事業を実施する市町村数も平成5年度の1,663市町村から6年度は約1,828市町村に拡大した。なお、元年度からこの事業の実施に伴う地方負担の一部について地方交付税措置が構じられている。
 合併処理浄化槽の本格的な普及等に向けて、平成5年2月にとりまとめられた「今後の浄化槽行政のあり方について」(生活環境審議会浄化槽専門委員会報告)に沿って、?集落等を単位とした面的整備の促進、?浄化槽設置者等の維持管理組織による適正かつ効率的な維持管理の実施、?水道水源等の水質保全のための制度的な対応等の推進を図っている。特に、平成6年3月に公布された「水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律」においては、各戸単位の住宅等における合併処理浄化槽の整備事業を実施する市町村は、実施区域内において雑排水を排出する者に対し、必要な助言又は勧告を行うことができ、また、国は、その事業に対し補助を行うことができる旨の規定が設けられた。
 さらに、この法律に基づく都道府県計画策定地域においては、市町村自らが設置主体となって各戸単位の合併処理浄化槽の整備を行う特定地域生活排水処理事業が新たに創設された。
 さらに、生活排水の適正処理を図るため、市町村における生活排水処理計画の策定を推進するとともに、同計画に基づきコミュニティプラント、合併処理浄化槽等の計画的な整備を図った。
(4) 業廃棄物対策
 産業廃棄物については、排出量の増大や質的な多様化が進んでいる一方で、受け皿となる処理施設の確保が困難となってきており、また産業廃棄物の不法投棄等の不適正な処理が大きな社会問題となっている。このため、厚生省では、排出事業者処理責任の原則の枠組みの中で、公共の関与による処理施設の整備促進を図っており、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づき廃棄物処理センターを岩手県、大分県、長野県、愛媛県、香川県に加え平成6年度には新潟県、高知県においても指定した。
 また、産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律に基づき、産業廃棄物の適正処理の推進のための様々な支援措置を講じているが、平成6年度においては、産業廃棄物処理事業振興財団により、産業廃棄物処理施設の近代化、高度化事業に対する債務保証、起業化助成等の事業振興が行われた。
 不法投棄された現場を原状回復する方策についても、行政措置、民事上の賠償責任、費用負担等のあり方について検討し、中間的な取りまとめを行った。
 このほか、産業廃棄物に関する情報の把握として、産業廃棄物排出処理状況調査や行政処分等の状況、施設設置状況等の調査を行った。
 なお、平成3年度における行政処分等の状況は、立入検査5万6,914件、報告徴収1万2,140件、産業廃棄物処理業の許可の取消又は一時停止72件、措置命令又は改善命令17件となっている。
 通商産業省では今後の産業廃棄物の処理及び再資源化対策に必要な各種の試験研究及び調査を行った。また、廃棄物の再資源化を促進するため、(財)クリーン・ジャパン・センターの実証プラント、散在性廃棄物等に関する調査研究等の各種の再資源化事業に対する補助を行った。
 建設省においては、公共投資の拡大等によりますます増大すると予想される建設廃棄物について、発生の抑制、再利用の促進、適正処分の徹底を基本として、地方の状況等に即した建設副産物対策行動計画(リサイクルプラン21)の策定、平成5年1月に定めた「建設副産物適正処理推進要綱」に基づいた発注者及び施工者に対する指導・徹底など総合的な施策を実施した。
 農林水産省では、農業用廃プラスチックの適正処理技術等の開発・実用化のための調査・実証、農業団体等による廃プラスチック処理施設の設置等に対し、助成措置を講じた。
 また水産庁では、漁業者団体を中心としたFRP漁船、漁網等の漁業系廃棄物の処理計画策定について助成した。
(5) 「再生資源の利用の促進に関する法律」の施行
 近年の国民経済の発展に伴う生産及び消費の拡大、国民のライフスタイルの変化等を背景に、再生資源の発生量が増加し、その相当部分が利用されずに廃棄されている。また、廃棄物等による環境への負荷の増大が、将来の発展の基盤である環境を損なうおそれについて広く認識されつつある。
 このような状況に鑑み、有限な資源の有効利用を図るとともに、廃棄物の発生の抑制及び環境の保全に資するため、平成3年10月に施行された「再生資源の利用の促進に関する法律」に基づき、再生資源の利用を総合的かつ計画的に進めるための基本方針が定められるとともに、関係省庁の連携のもと、特定業種(紙製造業、ガラス容器製造業、建設業)における再生資源の原材料としての利用、第一種指定製品(自動車、エアコンディショナ、テレビ受像機、電気洗濯機、電気冷蔵庫、ニカド電池を使用する機器である電動工具等20品目における構造、材料等の工夫、第二種指定製品(アルミ製及びスチール製の飲料缶、ペットボトル並びにニカド電池)における分別回収を容易にするための表示、指定副産物(鉄鋼スラグ、石炭灰、土砂、コンクリートの塊、アスファルトコンクリートの塊、木材)の再生資源としての使用の促進等の措置が講じられた。
(6) 広域処理場整備の推進
 大都市圏域において、圏域を一体とした広域的な最終処分場確保の要請に対応するため、厚生省及び運輸省においては、広域的な廃棄物の埋立処分場計画(いわゆるフェニックス計画)の推進を図ってきた。大阪湾圏域においては、大阪湾広域臨海環境整備センターが広域処理場の建設工事等を引き続き進め、廃棄物の受入れ、埋立処分を行うとともに、次期計画策定のための調査を行った。
 東京湾圏域については、厚生省及び運輸省において昭和62年4月に東京湾フェニックス計画の基本構想をまとめ、関係地方公共団体に提示しており、関係団体において引き続き廃棄物の広域処理について検討が行われている。厚生省においては引き続き、東京湾圏域について広域処理場整備に関する調査を行い、また中部圏及び北部九州圏についても基本調査及び基礎調査を行った。
(7) その他
 廃棄物の最終処分場跡地に起因する環境汚染を防止しつつ、跡地の適正な利用を図るため、平成元年11月に環境庁、厚生省の連名通知等に基づき跡地管理の基本的方向を示したところであるが、環境庁においては、跡地管理の適正化に関する調査の一環として、最終処分場の地下水汚染防止技術の高度化に関する調査を行った。また、現在開発されている最終処分場に関する技術の中から環境保全効果の認められるものについて評価を行い、より高度な技術の開発・普及を促進するための調査を行った。さらに、廃棄物の減量化及び環境への負荷の低減を図るため、リサイクルの促進に関する各種普及啓発事業及び調査研究を行うとともに、廃棄物のリサイクルについては、現在環境保全面からの適切な基準が設定されていないことから、廃棄物のリサイクルに係る環境保全上のガイドラインを策定するための調査を行った。
 運輸省においては、港湾における廃棄物処理対策として平成6年度は、36港1湾において事業費約335億円(うち国費約87億円)をもって廃棄物埋立護岸の整備に対する補助を実施したほか廃油処理施設の整備に対する補助及び一般海域におけるごみ・油の回収事業等を行った。さらに、資源のリサイクルを促進するため、首都圏の建設発生土を全国の港湾建設資源として広域的に有効活用するプロジェクト(いわゆるスーパーフェニックス)を平成6年度に開始し、広島港、高知港において建設発生土の受入を実施した。
 また、建設省においては、環境保全に留意しつつ下水汚泥の緑農地利用、建設資材化及び積極的に再生資材を活用した下水道事業を実施した。
 さらに、厚生省では、最終処分場の延命化を図る上で有効な焼却灰等の溶融資源化施設を大都市圏において広域的・計画的に整備するための事業を行った。

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