2 排水規制の強化等
(1) 規制項目の拡大及び基準値の強化
公共用水域の水質保全を図るため、「水質汚濁防止法」により特定事業場から公共用水域に排出される水については、全国一律の排水基準が設定されている。
この全国一律の排水基準のうち、有害物質に係る排水基準は、平成5年3月の人の健康の保護に関する環境基準の拡充・強化を踏まえ、ジクロロメタン等7項目の有機塩素系化合物、シマジン等4項目の農薬など合計13項目については、新たに排水基準を設定し、鉛及び砒素については基準値の強化を行い、6年2月1日より排水規制を実施している。改正後の有害物質に係る排水基準は第3-3-1表のとおりである。
また、内湾、内海等の閉鎖性海域の富栄養化を防止し海域環境の保全を図るため、海域について窒素及び燐に係る排水基準を設定し、平成5年10月1日より排水規制を実施している。(第4節4207/sb2.3.4.4>参照)
(2) 上乗せ排水基準の設定
全国一律の排水基準では環境基準を達成維持することが困難な水域においては、都道府県が条例でより厳しい上乗せ基準を設定し得るものとされており、昭和50年度以来すべての都道府県において上乗せ排水基準が設定されている。
(3) 規制対象の拡大
「水質汚濁防止法」は昭和46年の法施行当初は、日本標準産業分類の細分類による全産業業種約1,100のうち約500業種を規制対象としていたが、その後、逐次政令の改正により追加拡充され、平成6年度末現在、約600業種を規制対象としている。さらに、総量規制地域内においては、「指定地域特定施設」の制度が創設され、201〜500人槽のし尿浄化槽が規制対象となっている。
(4) 未規制項目の調査
有機スズ化合物(TBT、TPT)について全国で汚染が懸念されている箇所の発生源周辺水域で水質調査を実施した。また、透明度の低下等の海洋環境の悪化が海生生物に与える影響を把握するための調査・検討を行った。さらに、温排水については、昭和50年に中央公害対策審議会水質部会温排水分科会で取りまとめられた温排水問題に関する中間報告を踏まえ、温排水に係る知見集積を行った。
(5) 水道水源の水質保全対策
水道水に対する国民の関心の高まりに対応して、平成6年2月に制定された「特定水道利水障害の防止のための水道水源水域の水質の保全に関する特別措置法」(以下「特別措置法」という。)に基づき、同年5月に「特定水道利水障害の防止のための水道水源水域の水質の保全に関する基本方針」が閣議決定された。また、排出実態調査等を踏まえ、同年12月にトリハロメタン生成能に係る特定排水基準の範囲の設定等について中央環境審議会に諮問された。
一方、特別措置法と同時に制定された「水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律」に基づき、平成6年末までに4県7水道事業体から該当県に対して水道原水水質保全事業の実施の促進の要請がなされ、これらを受けて、平成7年3月31日現在、2県の3水道事業者に係る都道府県計画が策定され、3県の4水道事業者等に係る計画の策定が進められている。
(6) 水質汚濁事故対策
平成元年6月に「水質汚濁防止法」の一部を改正し、水質汚濁事故が発生した場合において事業者等が応急の措置を講ずること及びその講じた措置を都道府県知事等に届け出ること等について規定を整備した。