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第6節 先端技術に関する環境保全施策の推進

 近年、マイクロエレクトロニクス、新素材、バイオテクノロジー等のいわゆる先端技術を中心に技術開発の進展が著しく、それに伴って我が国の産業構造も変化を遂げつつある。
 このような技術の開発・利用に伴い、発生源、排出形態、影響の面で新たなタイプの環境汚染の可能性が指摘されている。
 こうした状況の変化を踏まえ、先端技術の産業利用に当たっては、環境面への影響を事前に十分検討して将来環境問題が生ずることがないよう配慮していくとともに、先端技術の成果の環境保全分野への応用を積極的に図っていくことが重要である。
 このため環境庁では、先端技術の進展に対応した環境保全の基本的方向について、昭和62年4月「環境技術会議報告書」を取りまとめるとともに、先端技術のうちでも、環境影響の可能性について関心の高まっているIC分野について技術情報資料の公表、環境庁、厚生省、通商産業省、労働省の4省庁合同の「IC産業環境保全実態調査」(61年度)を行ってきた。新素材分野についても、技術情報の収集・整備を進めて、平成元年12月「機能性高分子環境保全関連資料」を公表した。
 バイオテクノロジーのうち遺伝子組換え技術については、従来より、実験段階における安全確保のための指針及び産業利用に係る指針が関係省庁より公表され、組換え体の閉鎖系利用及び開放系利用が開始されている。組換え植物の開放系での利用については、平成6年度末までに、我が国では10件、世界では2,100件以上の野外試験が行われており、米国では、平成6年5月から組換え植物(トマト)の販売が開始されている。我が国においても、組換えDNA実験指針(科学技術庁)及び農林水産省の指針に基づき組換え植物(トマト、イネ及びペチュニア)について、段階的な安全性確認、野外試験等による生態系評価等が行われ、この結果に基づき、その開放系利用計画が指針に適合していることを確認し、平成4年以降一般ほ場での栽培が始められている。また、組換え動物については、平成6年8月、組換えDNA実験指針の運用が改訂され、動物を用いる非閉鎖系区画実験の考え方が示されたところであり、これに基づく実験が行われている。
 なお、これまで、遺伝子組換え技術等バイオテクノロジーの開発・利用により、環境保全上特段の問題が生じた事例は報告されていない。
 また、バイオテクノロジーと環境保全に関し審議するため中央公害対策審議会企画部会に設置されていたバイオテクノロジー専門委員会の報告書が、平成3年12月にとりまとめられ企画部会に報告された。報告書においては、遺伝子操作生物の開放系利用について、個別の利用計画ごとに環境影響評価が必要であること等が指摘された。環境庁では本報告を踏まえ、環境影響評価のための技術的事項のとりまとめを行うとともに、具体的行政措置の在り方については、科学的知見の進展に十分留意しつつ、引き続き検討していくこととしている。
 また、環境庁においては、微生物等を用いてトリクロロエチレン等の有害物質に汚染されている土壤・地下水等の浄化(環境修復)を行う技術(バイオレメディエーション)について、その健全な利用を促進することを目的とした検討に着手した。
 また、国立環境研究所においては、バイオテクノロジーの環境保全への利用の取組として、環境保全のためのバイオテクノロジーの活用とその環境影響評価に関する研究を実施するとともに、系統微生物維持施設において、環境保全研究に有用な環境の汚染及び浄化に係る微生物の遺伝子保存を図ってきたところであるが、さらに遺伝子操作生物の利用・影響等に関する研究を充実して行うため、平成5年10月に遺伝子工学実験棟を整備したところである。また、通商産業省や農林水産省においては、環境調和型水素製造技術等のバイオテクノロジーの環境保全への活用に関する研究に着手している。

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