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第4節 

1 絶滅のおそれのある野生生物の保護の推進

(1) 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律の制定
 環境庁が平成元年度に取りまとめた「緊急に保護を要する動植物の種の選定調査」によって、我が国に生息・生育する多くの野生動植物が絶滅の危機に瀕していることが明らかにされた。また、国際的にも種の絶滅の防止が緊急の課題となっている。
 このため、国内外の絶滅のおそれのある野生動植物の種の体系的な保存を目的として制定された「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(以下「種の保存法」という。)が平成5年4月1日から施行された。
 種の保存法では、本邦において絶滅のおそれのある種を国内希少野生動植物種に指定し、その個体の捕獲、譲渡し、輸出入等の規制を行うとともに、必要に応じ、その生息・生育地を生息地等保護区として指定し、各種の行為を規制することとしている。また、個体の繁殖の促進や生息・生育地の整備を図るため、保護増殖事業を積極的に推進することとしている。
 一方、ワシントン条約及び二国間渡り鳥等保護条約に基づき国際的に協力して保存を図るべき絶滅のおそれのある種については、国際希少野生動植物種として指定し、その個体の譲渡し、輸出入等を規制することとしている。
 なお、種の保存法の施行に伴い、「特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律」及び「絶滅のおそれのある野生動植物の譲渡の規制等に関する法律」が廃止された。
 国内希少野生動植物種として、平成5年2月に指定した鳥類38種に加え、6年1月に、ツシマヤマネコ、イリオモテヤマネコ、ミヤコタナゴ、ベッコウトンボ、レブンアツモリソウ及びキタダケソウの6種を指定した。
 また、国内希少野生動植物種のうち、アホウドリ、トキ、タンチョウ及びシマフクロウについて、平成5年11月、保護増殖事業計画を策定した。
(2) 絶滅のおそれのある野生生物の保護対策の推進
 絶滅のおそれのある野生動植物の保護対策として、引き続き以下のような調査や事業を実施した。
ア 絶滅のおそれのある野生動植物種のうち約110種を対象に地域の専門家や学会の協力を得て、生息・生育状況のモニタリング調査を実施した。
イ 国内希少野生動植物種であるオオセッカ、オオトラツグミ、オーストンオオアカゲラについて、生息状況の変化を把握するための調査を実施した。
ウ トキの保護事業や普及啓発の拠点施設である佐渡トキ保護センターを整備し、トキを旧センターから新センターに移転した。新センターにおいて、引き続き個体を飼育するとともに、細胞等の保存のための体制の整備を進めた。
エ イリオモテヤマネコについて、冬期の給餌及び生息状況の変化、給餌事業の効果等の調査を実施した。また、イリオモテヤマネコ等西表島に生息する希少野生生物の調査・研究、保護増殖事業及び普及啓発の拠点となる西表野生生物保護センターの整備に着手した。
オ ツシマヤマネコについて、冬期の給餌及び生息状況調査を実施した。また、ツシマヤマネコの飼育下における繁殖について検討した。
カ アホウドリの既存の繁殖地の環境を維持・改善する工事を実施するとともに、新たな繁殖適地に個体群を誘致するための事業を実施した。
キ タンチョウについて、冬期の給餌及び生息状況を実施した。生息数については、平成6年1月の一斉調査により628羽が確認された。
ク シマフクロウについて、巣箱の設置及び給餌事業を実施した。また、飼育下における繁殖、若鳥等の新生息地への導入を行うための拠点施設として、釧路湿原野生生物保護センターに、シマフクロウの飼育ケージを整備した。
ケ カワシンジュガイ及びスイゲンゼニタナゴについて、保護増殖のための事業を実施した。

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