2 廃棄物処理対策
(1) 廃棄物に関する問題点とその対策
近年の経済活動の活発化、国民のライフスタイルの変化に伴い、廃棄物の発生量が増加し、その種類も多様化している一方で、廃棄物処理施設の確保が困難となっており、また廃棄物の不法投棄等の不適正な処理が大きな社会問題となっている。
こうした状況に対応するため、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づき、?廃棄物の減量化・再生の推進、?廃棄物の適正処理の確保、?処理施設の整備の三点を主な柱とした施策を進めた。また、施設整備を促進するため、廃棄物処理センター制度の円滑な活用のほか、「産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律」に基づく特定施設の整備を推進した。
また、廃棄物の輸出入については、国内における廃棄物の適正処理の観点から廃棄物の輸出入に関するルールを確立しその管理の徹底を図ること等を目的に平成4年12月16日に公布された「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律」が5年12月15日に施行された。これにより廃棄物の輸出及び輸入に関する、厚生大臣の確認及び許可制度が設けられるとともに、輸入された廃棄物は当該物に係る処理基準に従って適正に処理する必要があることとされた。
さらに、廃棄物の最終処分に関する基準については、平成5年3月の水質汚濁に係る環境基準の改正等を踏まえ、その拡充・強化等について検討し、必要な施策を講じていく必要があることから、5年11月30日付けで環境庁長官から中央環境審議会に対し「廃棄物の最終処分に関する基準の一部改正等について」諮問がなされた。
(2) 一般廃棄物対策
一般廃棄物の発生量の増加に対処するために、平成5年度においては一般会計総額1,454億円(NTT償還時補助を除く)の補助金により、ごみ処理施設、し尿処理施設、埋立処分地等の一般廃棄物処理施設の整備を図った。
また、厚生省では、近年の廃棄物の急増に対しては、排出自体の抑制及び再生利用の促進を図ることが重要であるという観点から、平成5年度から「ごみ減量化総合戦略」として、ごみ減量化・再生利用を推進する施策を一体的に実施した。具体的には、ごみ減量化推進全国大会の開催等による普及啓発活動、リサイクルプラザ(ごみの資源化と併せて不用品の補修及び再生品の展示等を行う施設)及びリサイクルセンター(罐、びん等を選別して再生するための施設)の整備に対する助成、ごみの減量化・再生利用を地域ぐるみで推進するために市町村が実施する分別回収等の事業への助成、焼却灰の再生利用に関する研究等を推進した。
また、平成6年3月に、廃棄物処理法第6条の3に基づき、廃タイヤ、廃テレビジョン受像機(25型以上)、廃電気冷蔵庫(250リットル以上)、廃スプリング・マットレスを市町村において適正な処理が困難な廃棄物として指定を行い、このような廃棄物については、製造、販売等を行う事業者の協力を得て処理ができることとした。
また、近年大都市においては、生活水準の向上、都市活動の多様化などにより一般廃棄物の発生量の増加が著しいものの、一方で用地の確保難等から最終処分場及び廃棄物焼却施設の整備が困難な状況になっており、その対策が急務となっているが、こうした処理対策の一環として平成5年5月に海防法施行令を改正し、環境庁長官が指定する海域に限って、陸域に近接した台船上においても廃棄物の焼却ができるように措置した。
(3) 合併処理浄化槽の普及促進等
合併処理浄化槽は、生活排水対策の有効な手段として社会的に期待を集めている。合併処理浄化槽に対する補助制度(合併処理浄化槽設置整備事業)については、国庫補助金の予算額が140億円に増額され、同事業を実施する市町村数も平成4年度の1,399市町村から5年度は約1,700市町村に拡大した。なお、事業実施市町村及び道府県の財政負担を大幅に軽減するため、元年度からのこの事業の実施に伴う地方負担の80%が地方交付税で措置されている。
合併処理浄化槽の本格的な普及等を背景に平成5年2月にとりまとめられた「今後の浄化槽行政のあり方について」(生活環境審議会浄化槽専門委員会報告)において提言された、?集落等を単位とした面的整備の促進、?浄化槽設置者等の維持管理組織による適正かつ効率的な浄化槽の維持管理の実施、?水道水源地域等特定の地域の公共用水域の保全のための制度的な対応等について検討を行った。その結果、平成6年3月に公布された「水道原水水質保全事業の実施の促進等に関する法律」においては、特に市町村が行う各戸単位の住宅等における合併処理浄化槽の整備事業については、事業を実施する市町村は、実施区域内において雑排水を排出する者に対し、必要な助言又は勧告を行うことができ、また、国は、その事業に対し補助を行うことができる旨の規定が設けられた。
さらに、生活排水の適正処理を図るため、市町村における生活排水処理計画の策定を推進するとともに、同計画に基づきコミニティ・プラント、合併処理浄化槽等の計画的な整備を図った。
(4) 産業廃棄物対策
産業廃棄物については、依然として不法投棄等の不適正な処理がみられるとともに排出量の増大や質的な多様化を生じている。このため、厚生省では、受け皿となる処理施設の整備促進を図りつつ、マニフェスト(特別管理産業廃棄物管理票)の適正な管理を行うとともに、「建設廃棄物処理ガイドライン」、「漁業系廃棄物処理ガイドライン」、「感染性廃棄物処理マニュアル」、「廃石綿等処理マニュアル」の一層の周知徹底を図った。さらに不法投棄等による環境汚染が起こった場合の原状回復の方策に関し、行政措置、民事上の賠償責任、費用負担等のあり方について検討を開始した。また有害廃棄物に関し、特別管理産業廃棄物の指定の拡大と各種基準の設定について検討を行うとともに、処理方法等についてのマニュアルの作成、減量化・再生利用の処理技術の開発、情報管理システムの整備等の対策を実施した。
環境庁では、平成5年3月の水質汚濁に係る環境基準の改正等を踏まえ、同基準に追加された15物質のうち、既に規制対象となっているトリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンを除く四塩化炭素、1,1,1-トリクロロエタン、ベンゼン、セレン化合物等の13種の物質について、最終処分基準の設定を検討するために必要な調査検討を行った。
また、厚生省においては、産業廃棄物に関する情報の把握として、産業廃棄物排出処理状況調査や処理業者の件数、施設設置状況等の調査を行った。
なお、平成2年度における行政処分等の状況は、立入検査6万969件、報告徴収1万1,872件、産業廃棄物処理業の許可の取消し又は一時停止59件、措置命令又は改善命令13件となっている。
近年の産業廃棄物の排出量の増加、その種類の多様化及び産業廃棄物の処理施設に対する需要の著しい増大にかんがみ、「産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律」に基づき、厚生大臣等の主務大臣が認定した産業廃棄物処理施設、共同利用施設等を一体とした特定施設の整備の事業の認定、同事業に対する各種の財政上、税制上の優遇措置を実施するとともに都道府県による周辺公共施設の整備が必要な地区を指定する制度が設けられた。また、産業廃棄物処理事業振興財団による債務保証、起業化助成等の事業振興措置が講じられた。
さらに、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく廃棄物処理センターが岩手県、大分県に加え平成5年度においては、長野県、愛媛県においても指定された。
また、環境事業団の業務として、産業廃棄物処理施設の建設譲渡事業が行われた。
通商産業省では今後の産業廃棄物の処理及び再資源化対策に必要な各種の試験研究及び調査を行った。また、廃棄物の再資源化を促進するため、(財)クリーン・ジャパン・センターの実証プラント、散在性廃棄物等に関する調査研究等の各種の再資源化事業に対する補助を行った。
建設省においては、公共投資の拡大等によりますます増大すると予想される建設廃棄物について、発生の抑制、再利用の促進、適正処分の徹底を基本として、地方の状況等に即した建設副産物対策行動計画(リサイクルプラン)の策定、平成5年1月に定めた「建設副産物適正処理推進要綱」に基づいた発注者及び施工者に対する指導・徹底など総合的な施策を実施した。
また水産庁では、漁業者団体を中心としたFRP漁船、漁網等の漁業系廃棄物の処理計画策定について助成した。
(5) 「再生資源の利用の促進に関する法律」の施行
近年の国民経済の発展に伴う生産及び消費の拡大、国民のライフスタイルの変化等を背景に、再生資源の発生量が増加し、その相当部分が利用されずに廃棄されている。また、廃棄物等による環境への負荷の増大が、将来の発展の基盤である環境を損なうおそれについて広く認識されつつある。
このような状況に鑑み、有限な資源の有効利用を図るとともに、廃棄物の発生の抑制及び環境の保全に資するため、平成3年10月に施行された「再生資源の利用の促進に関する法律」に基づき、再生資源の利用を総合的かつ計画的に進めるための基本方針が定められるとともに、関係省庁の連携のもと、特定業種(紙製造業、ガラス容器製造業、建設業)における再生資源の原材料としての利用、第一種指定製品(自動車、エアコンディショナ、テレビ受像機、電気洗濯機、電気冷蔵庫、ニカド電池を使用する機器である電動工具等16品目(平成5年6月に追加指定))における構造、材料等の工夫、第二種指定製品(アルミ製及びスチール製の飲料罐、ペットボトル(平成5年6月に追加指定)並びにニカド電池(平成5年6月に追加指定))における分別回収を容易にするための表示、指定副産物(鉄鋼スラグ、石炭灰、土砂、コンクリートの塊、アスファルトコンクリートの塊、木材)の再生資源としての使用の促進等の措置が講じられた。
(6) 広域処理場整備の推進
大都市圏域において、圏域を一体とした広域的な最終処分場確保の要請に対応するため、厚生省及び運輸省においては、広域的な廃棄物の埋立処分場計画(いわゆるフェニックス計画)の推進を図ってきた。大阪湾圏域においては、大阪湾広域臨海環境整備センタ―が広域処理場の建設工事等を引き続き進め、廃棄物の受入れ、埋立処分を行うとともに、次期計画策定のための調査を行った。
東京湾圏域については、関係地方公共団体等により廃棄物の広域処理について検討が行われており、厚生省及び運輸省においても昭和62年4月に関係地方公共団体に提示した東京湾フェニックス計画の基本構想を具体化するための調査を実施した。厚生省においては中部圏及び北部九州圏についても基本調査及び基礎調査を行った。
(7) その他
廃棄物の最終処分場跡地に起因する環境汚染を防止しつつ、跡地の適正な利用を図るため、平成元年11月に環境庁、厚生省の連名通知等に基づき跡地管理の基本的方向を示したところであるが、さらに平成5年度は跡地管理の適正化に関する調査の一環として、最終処分場の地下水汚染防止技術の高度化に関する調査を行った。
運輸省においては、港湾における廃棄物処理対策として平成5年度は、29港1湾において事業費約292億円(うち国費約76億円)をもって廃棄物埋立護岸の整備に対する補助を実施したほか廃油処理施設の整備に対する補助及び一般海域におけるごみ・油の回収事業等を行った。
また、環境庁においては、廃棄物の減量化及び環境への負荷の低減を図るため、リサイクルの促進に関する各種普及啓発事業及び調査研究を行うとともに、「有害廃棄物の国境を越える移動及び処分の規制に関するバーゼル条約」に規定される有害廃棄物の処分基準に関する調査等を行った。
さらに、建設省においては、環境保全に留意しつつ下水汚泥の緑農地利用、建設資材化及び積極的に再生資材を活用した下水道事業を実施した。