1 環境教育・環境学習の推進
(1) 環境教育・環境学習一般
近年、環境問題においては、都市・生活型公害や地球的規模の環境問題の比重が高まるとともに、身近な自然とのふれあいや快適な環境の保全・創造を求める国民のニーズが増大している。こうした複雑・多様化する環境問題に対応していくためには、国民一人ひとりが人間と環境との関わりについて理解と認識を深め、環境に配慮した生活・行動を行っていくことが求められており、学校、家庭、地域、企業、野外等の様々な場における環境教育や、国民等の自主的な環境学習の推進が一層重要となっている。平成5年11月に制定された環境基本法においても、環境の保全に関する国の基本的施策として「環境の保全に関する教育及び学習の振興」が揚げられている。
環境教育・環境学習を幅広く定着させていくためには、総合的、継続的な取組としていくことが肝要である。そのため、情報提供ネットワークの整備、情報内容の充実、拠点の整備、民間活動の支援などの課題がある。
環境庁では、環境問題解決への国民の参加意識の高揚を促すとの視点から、テレビ放送、映画の製作、環境教育研究会の開催、教材の作成・配付などを行ったほか、環境保全ビジョン・シンポジウム、環境教育シンポジウム、快適環境シンポジウムの実施や環境保全活動の促進拠点のあり方に関する調査を行うなど、環境保全知識の普及、啓発に関し幅広い活動を行った。
また、平成元年度に都道府県及び政令指定都市で設置された「地域環境保全基金」の活用等により、各地域における環境教育事業の積極的、効果的な展開が図られるようにするため、これらの地方公共団体を中心に環境教育担当者を集めた環境教育研修や情報交流を進めるための全国連絡会議を実施するとともに、環境教育事業に関する事例等の情報を収録した環境教育データベースの供用を行った。
さらに、環境教育は、関係省庁が連携し、総合的に推進していくことが重要であるが、特に環境庁と文部省との間の協力、連携が必要であることから、両省庁間で緊密な連絡を図ることを申し合わせている。
文部省では、社会教育による環境保全に関する取り組みとして、環境問題等の各種の学習機会、実践活動の機会を提供する社会教育活動総合事業や、環境教育等の地域課題や学習需要等に応じた事業を独自に企画・開発し、社会教育施設等を中心として実施する社会教育活性化支援事業を行う市町村に対し、必要な経費を補助した。
また、省資源・省エネルギー国民運動の推進にあたり、関係省庁により環境問題に的確に対応し、地球環境と調和したライフスタイルの形成に資するための普及啓発等を行っており、経済企画庁においても消費者の自主的活動の推進等を図った。
(2) 学校における環境保全に関する教育
学校における環境保全に関する教育については、従来から社会、理科、体育、保健体育を中心に指導を行ってきており、平成元年3月に改訂した小、中、高等学校の学習指導要領においては、環境に関する指導内容の一層の充実を図ったところである。また、環境教育の一層の推進を図るため、教師用指導資料を作成しており、これまで中学校・高等学校編と小学校編をそれぞれ全国に配布し、引き続き事例編を作成している。さらに、国内の環境教育関係者が一堂に会して今後の環境教育のあり方について討論し、環境教育の普及・振興を図り、併せて環境教育に関する教員の資質向上を図るため、第3回環境教育シンポジウム・研究協議会を愛媛県で開催した。また、新たに、学校と家庭・地域が一体となった環境教育の推進を図る環境教育推進モデル市町村として10市町を指定した。