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第7節 

2 化学物質環境安全性総点検調査について

(1) 環境調査
 平成4年度においては、環境調査(水系)は全国55地区の水質、底質及び50地区の魚類を対象として行った。このうち、重点調査物質として、ベンチオカーブは55地区、アセトニトリル、アクリロニトリル、p−トルエンスルホンアミドの3物質は54地区で調査を実施した。その他、ジメチルスルホキシド、o−トルエンスルホンアミド等13物質については、10〜28地区で調査を実施した。
 大気環境調査は、全国18地点において、8物質を対象に調査を実施した。
ア 環境調査(水系)
 17物質のうち、ジメチルスルホキシド、o−トルエンスルホンアミド等8物質が水質から検出された。また、ジメチルスルホキシド、o−トルエンスルホンアミド等9物質が底質から、ジメチルスルホキシドとイソプロチオランの2物質が魚類から検出された(第1-7-1表)。今回の調査結果に対する評価の概要は以下の通りである。
(ア) ジメチルスルホキシド
 特に水質及び底質で高い検出頻度を示しており、今後、環境中濃度について関心を払っていく必要がある物質のひとつと考えられる。しかし、今回のデータをみるかぎりにおいては、水質の検出濃度は低く、また、魚類における検出濃度は水質より概ね1桁高い程度の濃度であり、直ちに問題を示唆するものではないと考えられる。今後一定期間をおいて、環境調査を行い、その推移を監視することが必要と考えられる。
(イ) o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド
 水質及び底質で検出されたが、その検出頻度及び検出濃度は低く、今回の調査結果が特に問題を示唆するものではないと考えられる。
(ウ) モリネート
 水質及び底質で検出されたが、その検出頻度及び検出濃度は低く、今回の調査結果が特に問題を示唆するものではないと考えられる。
(エ) シメトリン
 水質及び底質で検出され、除草剤であることから一部の藻類については低い濃度で影響がみられることが報告されており、今後環境中濃度について関心を払っていく必要がある物質のひとつと考えられる。今回のデータをみるかぎりにおいては、水質及び底質の検出頻度は低いが、今後、環境調査を行いその推移を監視するとともに、生態系に与える影響を調査研究することが必要と考えられる。
(オ) イソプロチオラン
 特に水質で高い検出頻度を示しており、今後、環境中濃度について関心を払っていく必要がある物質のひとつと考えられる。しかし、今回のデータをみるかぎりにおいては、水質及び魚類の検出濃度は低く、直ちに問題を示唆するものではないと考えられる。イソプロチオランは平成5年3月に水質要監視項目に指定されていることから、その状況を見守ることで十分と考えられる。
(カ) ベンチオカーブ
 底質で検出されたが、その検出頻度は低く、今回の調査結果が特に問題を示唆するものではないと考えられる。
(キ) ベンタゾン
 水質で検出されたが、その検出頻度及び検出濃度は低く、今回の調査結果が特に問題を示唆するものではないと考えられる。
(ク) アセトニトリル
 水質及び底質で検出されたが、水質の検出濃度は低く、また底質も前回調査とその状況が大きく異ならないことから、今回の調査結果が特に問題を示唆するものではないと考えられる。
(ケ) アクリロニトリル
 底質で検出されたが、その検出頻度は低く、また検出濃度も前回調査より低く、今回の調査結果が特に問題を示唆するものではないと考えられる。
イ 環境調査(大気)
 8物質中2物質(二硫化炭素、ベンチオカーブ)が検出されたが、検出頻度はいずれも低く、特に新たな問題点を示唆するものではないと考えられる(第1-7-2表)。


(2) 水質・底質モニタリングの概要
 水質・底質モニタリングは、化学物質環境調査の一環として昭和61年度から新たに開始された。この調査は、多種類の化学物質を同時に感度良く分析できるという特徴を持ったガスクロマトグラフ/質量分析計(GC/MS)を用いて、環境調査の結果等により水質及び底質中に残留していることが確認されている化学物質(主に第1種特定化学物質)について、その残留状況の長期的推移を把握することにより環境汚染の経年監視を行うことを目的として実施しているものである。
 平成4年度においては、全国18地区において20物質を対象に調査を実施した。その結果、水質からはβ−HCH等7物質が検出され、底質からは調査対象とした20物質全てが検出された(第1-7-3表)。
 調査地区別にみると、4地区の水質からは調査対象物質はすべて検出されなかった。それ以外の14地区の水質からの検出物質数は、1〜5物質であり、全体的に低い状況である。
 底質からの検出状況は、水質に比べて全体的に高く、5物質以上検出された地区は16地区あり、このうち、過半数の11物質以上検出された地区は9地区となっている。調査対象物質ごとの最高値をみると、閉鎖性の内湾部の汚染レベルが高いことが示唆される。


(3) 生物モニタリングの概要
 生物モニタリングは、「化学物質審査規制法」に基づく第1種特定化学物質及び環境調査結果等から当該化学物質による環境汚染の進行を未然に防止する上で注意深く監視を行う必要があると考えられる物質について、生物(魚、貝、鳥)を対象に環境汚染の経年監視を行うものである。
 平成4年度においては、全国20地域で30物質について生物中の残留濃度を調査した。その結果、PCB、クロルデン類(5物質)等については、使用が中止されているものの、なお環境中に広範囲に残留しており、今後ともその残留状況を注意深く追跡していく必要がある。
 また、有機スズ化合物による環境汚染の状況については、指定化学物質等検討調査結果と合わせ、中央環境審議会環境保健部会化学物質専門委員会において次のように評価された。
(トリブチルスズ化合物)
 トリブチルスズ化合物は、環境中に広範囲に残留しており、その汚染レベルは、水質において改善の兆しがみられるものの、水質に比べ汚染が蓄積されやすい生物においては、概ね横ばいで推移している。現在の汚染レベルが直ちに危険な状況にあるとは考えられないが、一部高い濃度が散見されており、引き続き環境汚染対策を推進するとともに、環境汚染状況を監視していく必要がある。
(トリフェニルスズ化合物)
 トリフェニルスズ化合物は、生物を中心に環境中に広範囲に残留しており、その汚染レベルは、一部高いものもあるものの、改善しつつある。現在のトリフェニルスズ化合物の生産状況にかんがみれば、今後汚染状況は、さらに改善されていくことが期待されるが、引き続き環境汚染対策を継続するとともに、環境汚染状況を監視していく必要がある。

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