2 廃棄物処理対策
(1) 改正「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の施行
近年の経済活動の活発化、国民のライフスタイルの変化に伴い、廃棄物の発生量が増加し、その種類も多様化している一方で、廃棄物処理施設の確保が困難となっており、また廃棄物の不法投棄等の不適正な処理が大きな社会問題となっている。
このような状況に対応するため、?廃棄物の減量化・再生の推進、?廃棄物の適正処理の確保、?処理施設の整備の三点を主な柱として「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」が平成3年10月に改正され、4年7月に施行された。改正「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」においては、減量化・再生等を含む廃棄物の計画的な処理の推進、廃棄物の適正処理に関する事業者等の協力、廃棄物処理業者及び廃棄物処理施設に対する規制の強化、特別管理廃棄物の区分の創設、廃棄物処理センターの指定、不法投棄等に対する罰則の強化等の措置が講じられた。
(2) 一般廃棄物対策
一般廃棄物処理施設の整備については、平成4年度においては一般会計総額1,006億円の補助金(生活関連枠含む)により、ごみ処理施設、し尿処理施設、埋立処分地施設等整備を図った。
また、厚生省では、近年の廃棄物の急増に対しては、その減量化を図ることが重要であるという観点から、ごみの減量化・再生利用を地域ぐるみで推進するため平成4年度において市町村が実施する分別回収等の事業を推進するための補助制度を創設するとともに、ごみの資源化、不用品補修及び再生品の展示を併せて行う施設(リサイクルプラザ)に加えて、罐、びん等を選別して再生を行う施設(リサイクルセンター)の整備について助成を行った。
さらに、廃棄物の適正処理に関する調査研究等を実施した。
(3) 合併処理浄化槽の普及促進等
合併処理浄化槽は、生活排水対策の有効な手段として社会的に期待を集めている。合併処理浄化槽に対する補助制度(合併処理浄化槽設置整備事業)については、国庫補助金の予算額が85億円に増額され、同事業を実施する市町村数も平成3年度の1,119市町村から平成4年度は約1,400市町村に拡大した。なお、事業実施市町村及び道府県の財政負担を大幅に軽減するため、平成元年度からのこの事業の実施に伴う地方負担の80%が地方交付税で措置されている。
合併処理浄化槽の本格的な普及等を背景に、生活環境審議会浄化槽専門委員会において、浄化槽行政上の課題について検討が行われ、5年2月、同専門委員会報告書「今後の浄化槽行政のあり方について」がとりまとめられた。主な内容は次のとおりである。?集落等を単位とした面的整備、生活排水処理計画の充実、既設単独処理浄化槽の合併処理化等の推進による合併処理浄化槽の計画的普及、?浄化槽設置者等の維持管理組織に対する積極的な支援等による適正かつ効率的な浄化槽の維持管理の実施、?市町村における処理体制の整備、民間における取組みの活用等による浄化槽汚泥の適正処理及び再生の推進、?窒素除去等の生活排水の高度処理技術をはじめ浄化槽に関する技術開発の推進。
また、生活排水の適正処理を図るため、市町村における生活排水処理計画の策定を推進するとともに、同計画に基づきコミニティ・プラント、合併処理浄化槽等の計画的な整備を図った。
(4) 産業廃棄物対策
産業廃棄物については、依然として不法投棄等の不適正な処理がみられるとともに排出量の増大や質的な多様化を生じている。これに対し、「アスベスト廃棄物処理ガイドライン」、「建設廃棄物処理ガイドライン」「漁業系廃棄物処理ガイドライン」の周知徹底を図るとともに、平成4年8月に感染性廃棄物を適正に処理するため、「感染性廃棄物処理マニュアル」を示したところである。
また、有害な産業廃棄物の減量化のため、技術開発、産業廃棄物の情報管理システムの整備、再生利用に関する技術開発事業、特別管理産業廃棄物の指定に伴う各種基準の設定及びその処理技術の開発、産業廃棄物の排出・処理状況の調査、不法投棄等による汚染の修復のための技術開発を行っている。
なお、平成元年度における行政処分等の状況は、立入検査5万8,339件、報告徴収1万2,350件、産業廃棄物処理業の許可の取消し又は一時停止61件、措置命令又は改善命令10件となっている。
近年、産業廃棄物の排出量が増加するとともに、その種類が多様化し、産業廃棄物の処理施設に対する需要が著しく増大していることにかんがみ、平成4年5月に「産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律」が制定され、同年9月に施行された。同法においては、厚生大臣等の主務大臣が認定した産業廃棄物処理施設や共同利用施設等を集積した特定施設の整備の事業の認定制度が設けられ、これに対し各種の財政上、税制上の優遇措置を講ずるとともに、都道府県が周辺公共施設を整備することが必要な地区を指定する制度が設けられ、また、債務保証、起業化助成等の事業振輿措置を行う産業廃棄物処理事業振興財団が設立された。
さらに、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の改正により新たに位置づけられた廃棄物処理センターの第1回目の指定が行われた。
また、平成4年5月、公害防止事業団法が一部改正され、産業廃棄物処理施設の建設譲渡事業が環境事業団(4年10月に従来の公害防止事業団から名称変更)の業務に追加され、産業廃棄物処理施設の整備促進が図られた。
通商産業省では今後の産業廃棄物の処理及び再資源化対策に必要な各種の試験研究及び調査を行っている。また廃棄物の再資源化を促進するため、(財)クリーン・ジャパン・センターの実証プラント、散在性廃棄物等に関する調査研究等の各種の再資源化事業に対する補助を行った。
なお、製造業(電気・ガス業を含む。)からの廃棄物の再資源化の状況は第4-1-5表のとおりである。
建設省においては、公共投資の拡大等によりますます増大すると予想される建設廃棄物について、発生の抑制、再生利用の促進、適正処分の徹底を基本方針として、平成3年3月に定めた「建設廃棄物対策に関する当面の推進方針」を定め、それに基づき具体的対策を実施するとともに、平成5年1月には、「建設副産物適正処理推進要綱」を定め、発注者及び施行者に対する指導・徹底を図っている。
また水産庁では引き続き漁業者団体を中心としたFRP漁船、漁網等の漁業系廃棄物の処理計画策定について助成した。
(5) 「再生資源の利用の促進に関する法律」の施行
近年の国民経済の発展に伴う生産及び消費の拡大、国のライフスタイルの変化等を背景に、再生資源の発生量が増加し、その相当部分が利用されずに廃棄されている。また、廃棄物等による環境への負荷の増大が、将来の発展の基盤である環境を損なうおそれについて広く認識されつつある。
このような状況にかんがみ、有限な資源の有効利用を図るとともに、廃棄物の発生の抑制及び環境の保全に資するため、平成3年10月から「再生資源の利用の促進に関する法律」が施行された。同法に基づき再生資源の利用を総合的かつ計画的に進めるための基本方針が定められるとともに、関係省庁の連携のもと、特定業種(紙製造業、ガラス容器製造業、建設業)における再生資源の原材料としての利用、第一種指定製品(自動車、エアコンディショナ、テレビ受像機、電気洗濯機、電気冷蔵庫)における構造、材料等の工夫、第二種指定製品(アルミ製及びスチール製の飲料罐)における分別回収を容易にするための表示、指定副産物(鉄鋼スラグ、石炭灰、上砂、コンクリートの塊、アスファルトコンクリートの塊、木材)の再生資源としての使用の促進等の措置が講じられた。
(6) 広域処理場整備の推進
大都市圏域において、圏域を一体とした広域的な最終処分場確保の要請に対応するため、厚生省及び運輸省においては、広域的な廃棄物の埋立処分場計画(いわゆるフェニックス計画)の推進を図ってきた。大阪湾圏域においては、大阪湾広域臨海環境整備センターが広域処理場の建設工事等を引き続き進め、廃棄物の受入れ、埋立処分を行うとともに次期計画策定のための調査を行った。
東京湾圏域については、関係地方公共団体等により廃棄物の広域処理について検討が行われており、厚生省及び運輸省においても昭和62年4月に関係地方公共団体に提示した東京湾フェニックス計画の基本構想を具体化するための調査を実施した。厚生省においては中部圏及び北部九州圏についても基本調査及び基礎調査を行った。
(7) その他
廃棄物の最終処分場跡地に起因する環境汚染を防止しつつ、跡地の適正な利用を図るため、平成元年11月の環境庁、厚生省の連名通知等に基づき跡地管理の基本的方向について指導するとともに、環境庁は跡地管理の適正化に関する調査を行った。
運輸省においては、港湾における廃棄物処理対策として平成4年度は、29港1湾において事業費約292億円(うち国費約76億円)をもって廃棄物埋立護岸の整備に対する補助を実施したほか廃浦処理施設の整備に対する補助及び一般海域におけるごみ・油の回収事業等を行った。
また、環境庁においては、廃棄物の減量化及び環境への負荷の低減を図るため、リサイクルの促進に関する各種普及啓発事業及び調査研究を行うともに、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」に規定される有害廃棄物の処分基準に関する調査等を行った。
さらに、建設省においては、環境保全に留意しつつ下水汚泥の緑農地利用、建設資材化等の資源化を図った。