前のページ 次のページ

第3節 

2 土壌汚染対策

(1) 環境基準の設定
 平成3年8月23日に、「公害対策基本法」第9条に基づく「土壌の汚染に係る環境基準」が定められた。同基準は、原則として農用地の土壌を含めたすべての土壌について、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準であり、土壌環境保全行政の目標として定められたものである。
 基準の設定に当たっては、環境としての土壌が果たしている多様な機能のうち、水質を浄化し及び地下水をかん養する機能を保全する観点から、水質汚濁に係る環境基準の健康項目とされている9物質を対象に、土壌からの溶出濃度が水質環境基準以下であること、及び食料を生産する機能を保全する観点から、農用地にあっては、「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」に基づく対策地域の指定要件に該当しないことを基本的考え方としている。
 この環境基準は、土壌の汚染状態の有無の判断基準として、また、汚染土壌に係る改善対策を講ずる際の目標となる基準として活用されることが期待される。
(2) 農用地土壌汚染防止対策
 基準値以上検出地域のうち平成3年11月15日現在までに6,150ha(63地域)が対策地域として指定され、そのうち5,070ha(61地域)について対策計画が策定された。排土、客土、水源転換等を内容とする公害防除特別土地改良事業等(国庫補助)により4,090haで対策工事が完了し、県単独等の事業による完了面積390haと合わせて4,480haで対策事業が完了(3年度末完了予定を含む。)している。基準値以上検出地域面積に対する対策事業の進捗率は63.5%で。る(第4-3-1表)。
 なお、カドミウム汚染地域においては、対策事業等が完了するまでの暫定対策として、汚染米の発生防止のための措置が講じられている。
 このほか、重金属類による農用地の土壌汚染の全般的な状況を把握するため、定点において土壌環境基礎調査を実施している。
 また、農用地の土壌が汚染されている地域等において、客土、土壌改良等の効果について現地改善対策試験を実施している。
 さらに、近年、下水汚泥等を原料とする再生有機質資材の農用地における利用が増加する傾向にあるため、農用地における土壌中の重金属等の蓄積防止に係る管理基準に基づき、土壌汚染の未然防止に努めている。


(3) 市街地土壌汚染対策
 市街地の土壌については、環境基準の達成維持に向け、土壌の汚染が明らか又はそのおそれがある場合及び土地改変等の機会を捉えて環境基準の適合状況の調査を実施し、汚染土壌の存在が明らかになった場合には可及的速やかに環境基準を達成するために必要な措置が講じられるよう、事業者等の自主的な取組を促進することとしているが、民間事業者等による市街地土壌汚染対策の円滑な実施に資するため、対策に必要な経費について、公害防止事業団が融資事業を行っている。
 さらに、トリクロロエチレン等による土壌・地下水汚染が全国的に問題となっていることから、効果的、経済的な処理対策を確立するための調査を実施した。
(4) 鉱害防止対策
 金属鉱業等においては、「鉱山保安法」に基づき鉱害防止のための措置を講じている。しかし、金属鉱業等に係る鉱山の施設には、操業停止後も引き続き鉱害を発生するおそれがあるものが少なくないため、「金属鉱業等鉱害対策特別措置法」に基づき鉱害防止事業の計画的な実施に努めてきており、平成3年度中には、以下の措置を講じた。
ア 休廃止鉱山に係る鉱害防止のため、休廃止鉱山鉱害防止等工事費補助金制度により、当該防止工事の促進を図ってきている。
 平成3年度には、鉱害防止工事(堆積場の覆土・植栽等)35鉱山、危害防止工事(坑口閉そく)7鉱山、亜炭鉱放置坑口閉そく工事2鉱山、義務者不存在分坑廃水処理24鉱山、義務者存在分坑廃水処理43鉱山についてそれぞれ助成した。
イ 金属鉱業事業団では、使用済特定施設の鉱害防止事業に必要な資金及び土壌改良事業に係る事業者負担金に対する融資・債務保証、鉱害防止積立金の管理、鉱害防止技術の開発のための調査研究、地方公共団体の実施する鉱害防止事業に対する調査指導及び設計等の指導支援の業務を実施している。

前のページ 次のページ