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環境白書の刊行に当たって

国務大臣 環境庁長官 地球環境問題担当
中村 正三郎
 平成4年の環境白書をここに公表いたします。
 この白書では、特に、「持続可能性」という新しい考え方を切口にして環境行政のこれまでの進み具合や直面する内外の課題などを説明いたしました。
 現代の私達には利益の大きな活動であっても、長年の間には、地球の生態系を変化させ、私達の子や孫に取り返しのつかない犠牲を強いるものがあります。地球の温暖化、オゾン層の破壊、熱帯林の減少など地球環境問題は、まさしくこうした種類の問題です。持続可能な経済社会を実現できるか否かに人類の存亡がかかっています。未来を見越して今のうちから対策をとっていくことが欠かせないのです。持続可能性の観点とは、せんじ詰めれば、未来の世代を視野にいれた行動を現在の私達がとっていくということと申せましょう。
 そこで、来る6月にはブラジルに世界各国の最高指導者が集まり、「地球サミット」を開きます。ここでは、持続可能な開発をテーマに討議をして21世紀に向けた行動計画などを決める予定となっています。
 このようななか、特に世界有数の規模の経済活動を行っている我が国には、長持ちのする持続可能な形の経済社会を作ることに今のうちから力を入れていくことが内外から求められています。また、我が国などの先進国が今以上に努力するとしても、地球環境を守るにはそれだけでは不十分であり、途上国における努力も期待されています。しかし、途上国は貧困のために環境対策が行き届かないなど多くの困難を抱えています。この白書では、こうした途上国の実情を初めて詳しく紹介し、地球全体の利益を守る観点から世界が協力し合うことを訴えました。
 内外の環境行政が本格化してから、平成3年度はちょうど20年目に当たります。ここに来て、未来の人々に不当な犠牲を強いないこと、地球の利益を守ること、といった新しい大きな課題が生まれています。この白書で述べましたとおり、環境行政はこれらの課題に積極的に挑戦してまいります。国民の皆様のご理解とご協力を切に期待申し上げます。
平成4年5月

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