2 海岸汚染防止対策
(1) 未然防止対策
ア 船舶等に関する規制
「海防法」に基づき、油、有害液体物質等及び廃棄物の排出規制、焼却規制等について、その適正な実施を図るとともに、船舶の構造設備に関する技術基準への適合性を確保するための検査、海洋汚染防止証書等の交付を行った。
イ 未査定液体物質の査定
有害液体物質に関する規制が実施されたことに伴い、環境庁では未査定液体物質の査定を行っており、これまでに査定、告示した物質は115物質(平成2年12月末現在)となっている。
ウ 海洋汚染防止指導
運輸省及び海上保安庁では、海洋汚染防止講習会を通じ、「海防法」の油、有害液体物質及び廃棄物に関する規制等を中心として、その周知徹底及び海洋環境の保全に関する意識の高揚に努めた。
さらに、海上保安庁では、通常の海洋汚染防止指導に加え、「環境週間」に合わせ「海洋汚染防止推進週間」を設け、集中的な訪船指導を実施するとともに、海洋汚染モニター制度を活用し、海洋汚染防止思想の普及及び海上公害関係法令の周知徹底を図った。
エ 廃油処理施設の整備
船舶廃油を処理する廃油処理施設のうち公共のものの改良を行った。民間を含めて廃油処理施設は平成2年10月現在、81港133か所で整備されており、このうち、廃軽質油を処理するものは、35港、49か所である。
(2) 排出油等防除体制の整備
海上保安庁は、海上における油等の排出事故に対処するため、常時出勤体制の確保、防除資機材等の整備を図った。また、船舶所有者等に防除資機材を備えさせるとともに、民間における海上防災のための中核機関として設立されている海上災害防止センターの指導・育成を図っている。なお、同センターは平成2年1月、京都府経ヶ岬沖で座礁したタンカー「マリタイムガーデニア」(7,027総トン)から排出された油の防除等2年中に10件の排出油等の防除を実施した。
さらに、全国の主要港湾に設置されている流出油災害対策協議会等の指導・育成を図るとともに、官民合同の大量の油等の排出事故対策訓練を実施したほか、石油の国家備蓄の進展に合わせ、排出油防除体制の強化について指導した。
(3) 港湾及び周辺海域の浄化対策
港湾及び周辺海域の環境保全のため、平成2年度には港湾公害防止対策事業(有機汚泥等のしゅんせつ等)を東京港、大阪港等10港で行ったほか、港湾環境整備事業として、伏木富山港等22港1湾で廃棄物埋立護岸を整備するとともに東京湾で広域廃棄物処理場整備のための実施設計調査を実施した。
また、港湾区域外の一般海域におけるごみ・油の回収事業を行った。さらに、閉鎖性が高くヘドロの堆積した海域の環境改善を目的として海域環境創造事業(覆砂や海浜整備)を瀬戸内海等の2海域及び2港において実施した。
(4) 海洋汚染防止技術の研究開発
運輸省においては、海洋汚染の防止を推進するため、海洋汚染を伴わない船底の防汚技術に関する研究を実施した。
さらに、礫間処理、曝気・導水等による水質浄化技術の研究開発を行った。
海上保安庁では、海岸に排出され光や微生物により変化した有害液体物質の廃出源を究明するため、その変化プロセスの予測に関する研究を継続して実施したほか、閉鎖性水域において、風と潮流との複合作用による汚濁物質の移動・拡散・集積を的確に予測するモデルの開発を行った。
水産庁では、漁網等による海洋汚染問題に対処するため、分解性プラスチック類の漁具資材への応用技術の開発、FRP廃船再利用に関する研究を実施した。