1 地下水汚染の現況
昭和57年度及び58年度に環境庁が実施した地下水汚染実態調査の結果、トリクロロエチレン等による汚染が各地で認められた。また、59年度以降63年度までの5年間に、各地方公共団体が行った地下水汚染の概況調査の結果をみても、約2万7千本の井戸のうちトリクロロエチレンについては2.7%、テトラクロロエチレンについては4.1%の井戸で水道水の暫定水質基準を超える濃度が検出されており、地下水の汚染が各地でみられている。
平成元年度より、「水質汚濁防止法」に基づき地下水質の汚濁状況を常時監視することとなり、都道府県ごとの地下水質測定計画に従って国及び地方公共団体は地下水質の測定を行った。これにより、トリクロロエチレン等以外の有害物質についても、初めて全国的な地下水質の状況が明らかとなった。
概況調査(地域の全体的な地下水質の状況を把握するための調査)は、47都道府県の1,120市区町村で実施され、評価基準を超過した井戸の割合(超過率)は、シアン0.1%、ヒ素0.3%、トリクロロエチレン0.9%、テトラクロロエチレン1.2%であった(第3-5-1表)。
また、汚染井戸周辺地区調査(概況調査等により新たに発見された汚染について、その汚染範囲を確認するために実施する地下水の水質調査)では、ヒ素5.6%(7本/125本)、トリクロロエチレン3.1%(60本/1,948本)、テトラクロロエチレン11.4%(222本/1,948本)の超過率であった。定期モニタリング調査(汚染の継続的監視等継続的なモニタリングとして実施する調査)では、トリクロロエチレン13.0%(145本/1,118本)、テトラクロロエチレン24.9%(279本/1,121本)の超過率であった。
なお、いずれの調査においても、他の有害物質については、評価基準を超過した井戸はなかった。
昭和59〜63年度の概況調査結果と元年度の概況調査結果は、調査地点が異なること等単純な比較はできないが、トリクロロエチレン等の超過率は小さくなっている(第3-5-1表)。
この他、環境庁では、トリクロロエチレン等以外の科学物質について地下水汚染実態調査を行っており、昭和63年度の調査において、ジクロロエチレンによる地下水汚染の拡大が懸念される状況であることが明らかになった。なお、ジクロロエチレンによる地下水汚染については、地下中におけるトリクロロエチレン等の生物的または非生物的分解が関与している可能性が高いと考えられる。