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第4節 

3 富栄養化対策

 富栄養化は、元来、流域からの窒素、燐等の栄養塩類の供給により湖沼が徐々に肥沃化される現象を指すものであったが、近年、人口、産業の集中等により、湖沼に加えて内湾等の海域においても窒素、燐等の栄養塩類の流入が増大し、藻類その他の水生生物が増殖繁茂することに伴い、その水質が累進的に悪化する現象がみられるところがあり、水質保全上問題となっている。
 このため、湖沼においては透明度の低下や水色の変化による美観の劣化のほか、水道におけるろ過障害や異臭味問題等種々の障害が生じている。また、海域においては赤潮による漁業被害等が問題となっている。
 このような富栄養化に伴う障害の発生にかんがみ、次のような施策が講じられている。
 富栄養化対策を実施するに当たっては、その要因物質に関する環境上の目標を明らかにすることが必要である。このため、湖沼について、富栄養化の要因物質である窒素及び燐に係る環境基準を昭和57年に告示し、国及び都道府県において類型指定のための検討が行われており、平成元年度までに琵琶湖(2水域)等合計44水域(40湖沼)について類型指定が行われた。また、海域における富栄養化防止に係る水質目標については、環境庁において検討を行っている。
 湖沼の富栄養化の防止については、湖沼に係る窒素・燐の一般排水基準を定め、昭和60年7月から排水規制を実施しているが、平成元年7月には排水規制の対象となる湖沼を追加し、現在燐については1,066湖沼、このうち78湖沼は窒素についても排水規制を実施している。また、窒素・燐の発生源対策に関する調査等を行った。
 瀬戸内海の富栄養化による被害の発生を防止するため、関係府県は「瀬戸内海環境保全特別措置法」に基づき燐及びその化合物に係る削減指導を行ってきている。
 伊勢湾、東京湾については富栄養化対策連絡会において関係都県等と情報交換、連絡調整等を行った結果を踏まえ、関係都県等で昭和57年から富栄養化防止対策を行っている。また、栄養塩類の削減方策に関する調査を行った。
 さらに、近年大規模な開発プロジェクトが数多く計画・構想されている東京湾地域について、その水域環境を保全し、適正な利用のあり方を検討するための調査及び水質を予測する汎用モデルを開発するための調査を実施した。また、今後推進すべき施策の基本的方向について「東京湾水域環境懇談会」において検討を行い、議論の結果を「かけがえのない東京湾を次世代に引き継ぐために」と題する中間報告として取りまとめた。
 また、瀬戸内海において多発している赤潮プランクトンを対象としてその発生機構等を明らかにするための解析調査等を行うとともに、東京湾等で近年問題となっている青潮についてその発生機構解明等のための調査を行った。

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