2 騒音の対策
(1) 騒音に係る環境基準
「公害対策基本法」第9条の規定に基づき、「騒音に係る環境基準」が昭和46年5月25日に定められた。同基準では基準値を、一般地域、及び道路に面する地域の2つに分け、それぞれにおいて地域の種類別、時間の区分ごとに設定している。
基準値は、一般地域については「とくに静穏を要する地域」における「夜間」の「35ホン(A)以下」から「相当数の住居と併せて商業、工業等の用に供される地域」における「昼間」の「60ホン(A)以下」の間で、地域の類型及び時間の区分ごとに設定されている。また、道路に面する地域については、車線数等により一般地域より5〜10ホン(A)高い基準値が設定されている。
都道府県知事は、類型をあてはめる地域の指定を行うこととなっており、平成元年度末現在で46都道府県において、585市、828町、96村、23特別区について地域指定が行われている。
(2) 「騒音規制法」による規制
「騒音規制法」では、騒音を防止することにより生活環境を保全すべき地域を都道府県知事(政令指定都市にあってはその長に委任)が指定し、この指定地域内にある工場・事業場における事業活動と、建設工事に伴って発生する相当範囲にわたる騒音を規制するとともに、環境庁長官が自動車から発生する騒音の許容限度を定め、さらに、都道府県知事は、道路交通に起因する自動車騒音について対策の要請等ができることとされている。
都道府県知事(政令指定都市にあってはその長に委任)による地域指定は、平成元年度末現在で47都道府県において、652市、1210町、183村、23特別区について行われており、全市区町村数の約63%である。
ア 工場・事業場騒音
指定地域内にあって金属加工機械等の政令で定める特定施設を設置している工場・事業場(以下「特定工場等」という。)が規制の対象となるが、指定地域内の特定工場等の数は平成元年度末現在で19万6,002である。
指定地域内の特定工場等には、規制基準の遵守義務が課せられており、都道府県知事(市町村長に委任。以下同じ。)は、特定工場等から発生する騒音が規制基準に適合しないことにより、周辺の生活環境が損なわれると認められる場合に、計画変更勧告や改善勧告、さらには改善命令を行うことができる。平成元年度中には、改善勧告は7件行われ、改善命令に至った事例はなかった。また、これらの騒音規制法に基づく措置のほか、苦情に基づく報告徴収等の調査後における騒音防止に関する行政指導が1,705件行われた。
なお、住工混在の土地利用により、現に騒音公害が発生し、問題となっている地域では、遮音壁の設置等の騒音防止対策、当該地域からの工場・事業場の移転等が公害対策の重要な手段となっている。しかし、騒音が問題となる工場・事業場の多くは中小規模であり、資金的な面等から移転が困難な場合が多いので、中小企業金融公庫等による工場移転についての融資、公害防止事業団による集団設置建物の建設あるいは工場移転用地の造成が行われている。
イ 建設作業騒音
指定地域内において行われる建設作業であって政令で定めるくい打作業等の特定建設作業が規制対象となるが、平成元年度の特定建設作業実施の届出件数は4万8,224件である。 都道府県知事は、特定建設作業に伴い発生する騒音が一定の基準に適合しないことにより生活環境が著しく損なわれると認める場合においては、騒音の防止の方法等に関し改善勧告又は改善命令の措置を行うことができる。平成元年度においては、改善勧告まで至ったものが、1件あり、苦情に基づく報告徴収等の調査後における騒音防止に関する行政指導が888件行われた。
(3) 近隣騒音
近年、深夜営業騒音、拡声機騒音、生活騒音等の近隣騒音は、騒音に係る苦情全体の約4割を占め、重要な対策課題となっている。
「騒音規制法」では、飲食店営業等に係る深夜における騒音、拡声機を使用する放送に係る騒音等の規制については、地方公共団体が必要な措置を講ずるようにしなければならないとされており、これまでのところ、深夜営業騒音については31都道府県、また拡声機騒音については44都道府県で条例による規制が行われている。
拡声機騒音については、拡声機の適正使用の推進について環境庁に設置された拡声機騒音対策技術検討会の検討結果を公表した。
また、生活騒音等の近隣騒音対策推進のため、住民の自主的な取組を促進する騒音対策モデル事業を実施した。