1 環境管理の推進
(1) 今後の環境行政は、単に現在の公害を防止することにとどまらず、水、大気、土壌、森林の環境資源を適正に保全・活用するとともに、より快適な環境づくりを目指すことが必要である。
このためには、地域において自然的社会的条件、地域住民の意向等を踏まえた地域環境の望ましいあり方を明らかにした上、その実現のために、諸施策を総合的、計画的に実施する地域環境管理を推進する必要がある。
(2) そのための地域環境管理計画については、これまで多くの地方公共団体で策定・検討が進められてきているが、その策定の推進、内容の充実等を図ることが必要である。
このため、環境庁においても、地域環境管理計画の運用状況及び具体的施策について調査検討するとともに、地方公共団体に対し、同計画の策定の推進及び円滑な運用について指導、助言を行っている。
また、地域に存する環境資源を適正に保全・活用する観点から、環境資源情報の整備、地域開発環境配慮指針及びふるさと環境資源活用地域振興計画の策定を行う県に対し助成を行った。
(3) 首都圏等の大都市圏においては、環境基準の達成率が低いものが多いなど依然として環境の状況が好ましくない一方で、快適な環境に対する住民のニーズは一層高まっている。また、内需拡大等の動きの中で多くの大規模なプロジェクトが計画・構想されており、広域的な観点に立った環境管理の推進が必要となっている。
このため、引き続き「広域環境資源保全活用調査」において首都圏等の大都市圏の環境資源の適切な保全・活用方策について検討し、平成2年9月に、首都圏における広域環境管理のあり方について取りまとめを行った。
また、都市地域における環境問題の解決のため、都市生態系の再生・保全に向けた手法の開発のための調査を行った。
(4) 都市地域において深刻化している窒素酸化物による大気汚染や生活排水等による水質汚濁の都市・生活型公害をはじめ、現下の環境問題の現状やその保全の重要性を国民一人一人が深く認識し日上生活等の中で環境保全に資するように行動していくことが極めて重要となっている。
地域の環境保全に関する知識の普及・啓発事業を継続的かつ着実に実施するため、平成元年度に全国の都道府県及び政令指定都市に地域環境保全基金が設置された。この基金による平成2年度事業についてみると、知識の普及・啓発に係るもののうち、ビデオ、スライド等の資料の作成が最も多く、次いでシンポジウム、フェスティバル等の実施が多い。また、地域の環境保全活動の核となるセンター機能の設置等環境保全活動の基盤整備を行った自治体や、地域での住民団体等の環境保全実践活動への支援を行った自治体もあった。
(5) 近年、特に都市部等においては、地価の高騰、都市空間の不足を背景として、地下空間の開発の要請が高まり、とりわけ通常土地所有者の利用が及ばない地下空間(大深度地下)を鉄道、道路、水路等の公共目的に利用するため、関係省庁において制度化の検討が進められている。地下空間の利用に伴っては、地盤沈下、温泉源への影響等環境への影響が発生することが懸念される。
環境庁では、このうち、特に慎重な配慮が必要な地盤環境への影響について、専門家による「地下開発地盤環境管理検討会」において、昭和63年度より調査を行っている。