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第1節 地球環境問題への取組

1. 近年、先進国を中心とする経済活動水準の一層の高度化に加え、開発途上国を中心とした貧困と人口の急増・都市集中、更には国際的な相互依存関係の拡大等を背景として、地球環境問題が顕在化し、国際的取組の機運が急速に高まってきている。
 地球環境問題に対しては、国連環境計画(UNEP)を中心として国連教育科学文化機関(UNESCO)、世界気象機関(WMO)、国連食料農業機関(FAO)等の国連機関のほか、経済協力開発機構(OECD)、国際学術連合(ICSU)、世界銀行等国際金融機関、各国政府等が様々な取組を行っている。特に、平成元年度は7月にパリでアルシュ・サミットが開催され、主要課題の一つとして地球環境問題が取り上げられ、また、9月には、我が国において世界の有識者を集めて、「地球環境保全に関する東京会議」が開催され、さらに、11月にはオランダで「大気汚染と気候変動に関する閣僚会議」が開催されるなど国際会議が相次ぎ、「地球環境元年」とも言うべき1年となった。
2. 我が国においても、昭和55年9月以来環境庁長官主宰により、学識経験者からなる「地球的規模の環境問題に関する懇談会」(座長:大来佐武郎元外相)が開催され、とりまとめた意見を報告書の形で4回公表している。昭和57年4月にとりまとめた意見は、国連の「環境と開発に関する世界委員会(WCED)」の設立に結び付き、昭和63年6月には、WCEDの報告書を受けた我が国の具体的取組のあり方について第4回の報告書として意見をとりまとめ公表した。
 また、昭和63年5月に閣議決定された昭和63年版環境白書では「地球環境保全に向けての我が国の貢献」を副題として掲げ、地球環境問題をメインテーマとして取り上げた。平成元年度に入ってからは、前年8月に環境庁内に設置された地球環境保全企画推進本部が、今後我が国が取り組むべき方向についての環境庁の考え方を5月に中間報告として公表した。また、5月には、19大臣及び地球環境問題担当大臣並びに自由民主党関係役員から構成される「地球環境保全に関する関係閣僚会議」の開催が閣議で口頭了解され、6月には地球環境保全に関する施策について、10月には地球環境保全に関する調査研究、観測・監視及び技術開発の総合的推進について申し合わせを行った。
 6月の申し合わせでは、
? 我が国は地球保全に向けて、国際的地位に応じた役割を積極的に果していくことが必要であるとした上で、当面の施策の基本的方向として、地球環境保全のため国際的な枠組みづくりに積極的に参加すること
? 地球環境に関する観測・監視と調査研究を推進すること
? 地球環境保全に資する技術の開発・普及に努めること
? 開発途上国の環境保全努力も支援するための政府開発援助を拡充すること
? 政府開発援助等の実施に際しての環境配慮を強化すること
? 地球環境への負荷がより少ない方法で経済社会活動が営まれるよう努力することを申し合わせた。
 10月の申し合わせでは、地球環境保全に関する調査研究、観測・監視及び技術開発の総合的推進の方向を確認した上で、その着実な推進のために、?関係閣僚会議において毎年度、地球環境保全に関する調査研究、観測・監視及び技術開発について総合推進計画を定め、その結果について報告を受けること、?環境庁は地球環境保全に関する全般的な情報の窓口となる部署を定めるとともに、関係省庁においても、環境庁の窓口との連携を図り、情報の窓口となる部署を定めることが申し合わされた。
 なお、7月に、地球環境保全施策を政府一体となって円滑に推進するため、行政各部の所管する事務の調整を担当する、地球環境問題担当大臣に環境庁長官が指名されている。

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