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第1節 地球環境問題への取組

(1) 世界人口の増大と人間活動の規模の拡大等を背景として、今日の環境問題は、オゾン層の破壊や地球の温暖化等その影響が、一国内でとどまらずひいては地球規模まで広がっている。また、開発途上国でも大気汚染・水質汚濁等の公害問題が顕在化しており、その解決のために国際的な取組が求められている。
 以上のような地球環境問題に対し、昭和47年の国連人間環境会議の勧告に基づき設立された国連環境計画(UNEP)を中心として活動する国連教育科学文化機関(UNESCO)、世界気象機関(WMO)、国連食糧農業機関(FAO)等の国連機関のほか、経済協力開発機構(OECD)、国連学術連合(ICSU)、世界銀行等国際金融機関、各国政府等が様々な取組を行っている。
(2) 我が国においても、昭和55年9月以来環境庁長官主催により、学識経験者からなる「地球的規模の環境問題に関する懇談会」(座長:大来佐武郎元外相)が地球環境問題に対する取組のあり方につき検討を重ねてきている。同懇談会は、これまでに4回にわたり報告書を提出しているが、以下に述べるとおり国連の「環境と開発に関する世界委員会」の活動とも大きくかかわっている。
? 昭和57年4月に出された同懇談会の2回目の報告書を踏まえ、日本政府は同年5月にナイロビで開催されたUNEP管理理事会特別会合に環境庁長官を代表とする代表団を派遣し、21世紀の地球環境の理想像の模索及びその実現に向けた戦略策定を任務とする特別委員会の設立を提唱した。これを受けた58年12月の国連総会の決議に基づき、この特別委員会は「環境と開発に関する世界委員会(WorldCommission on Environment and Development / WCDE)」として59年5月に発足した。
? WCEDの報告書は、昭和62年2月の東京での最終会合において取りまとめられ、同年4月に公表された。この報告書においては、「持続可能な開発(sustainable development)」を中心的概念として数多くの提言がなされており、今日の地球環境問題に関する世界的な関心の高まりに大きな影響を与えた。同報告書は、同年の国連総会においても取り上げられ、同年12月には、報告書を受けた国連機関、各国政府等の行動に関する決議が採択された。
? WCEDの提唱国である我が国は、近年の国際的地位の高まりに対応し、地球環境保全のために積極的に世界に貢献する義務を有している。このような認識の下で、地球的規模に環境問題に関する懇談会は昭和62年11月に特別委員会を設け、WCED報告書を受けた我が国の具体的取組について検討を行い、この成果を同懇談会の4回目の報告書として63年6月に公表した。同報告書「地球環境問題への我が国の取組-日本の貢献:よりよい地球環境を目指して-」においては、()地球環境問題に関する科学的地見の強化、()地球環境保全のための啓発・教育・訓練、()地球環境保全のための諸事業の推進、()地球環境保全を推進するための体制の整備と援助の拡大の4つの柱に沿って、我が国の地球環境問題への取組が具体的かつ網羅的に提言されている。環境庁では、同提言を迅速かつ円滑に企画・立案・推進していくため、「地球環境保全企画推進本部」を63年8月に設置するなどの取組を行った。

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