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第2節 

1 地盤沈下の現況

 地盤沈下の歴史は古く、大正の初期から注目され始めた。代表的な地域における地盤沈下の経年変化は、第4-2-1図に示すとおりである。
 地盤沈下は地下水の過剰な採取が主な原因となるものであり、また、地下水の採取は工業用、建築物用のみならず、水道用、農業用、水産養殖用、消雪用多岐にわたっている。(第4-2-2表)。
 昭和62年度までに、地盤沈下が認められている主な地域は47都道府県のうち36都道府県60地域となっている(第4-2-3図)。
 最近における我が国の地盤沈下の特徴をあげると次のようになる。
(1) 地盤沈下の全国的な状況としては、全体的にはここ数年横ばいの傾向にあり、一部地域では依然として著しい地盤沈下が続いている。
 昭和62年度において最も著しい地盤沈下が認められた地域は、62年春から夏にかけて渇水にみまわれた関東平野北部地域で、このうち埼玉県(栗橋町)では4.8cm、栃木県(野木町)では4.3cm、茨城県(五霞村)では4.0cmの地盤沈下が認められた。このほか、年間4cmを超える著しい地盤沈下が認められた地域は、宮城県塩釜市および長野県諏訪盆地である。
 近年、消融雪用地下水の採取に伴う地盤沈下が大きな問題となっている積雪地域においては、地下水採取量の抑制に加え、昭和62年の降雪量が小さかったこともあり、61年度に比べ、地盤沈下は減少した。


(2) かつて著しい地盤沈下を示した東京都区部、大阪市、名古屋市等の既成都市域は、その後の地下水採取規制等の対策の結果、地盤沈下の進行は鈍化あるいはほとんど停止している。その他の地域は、長期的には改善傾向にあるものの、(1)で示した地域など一部地域において依然として地盤沈下が継続している。
(3) 長年継続した地盤沈下により、多くの地域で建造物、治水施設、港湾施設、農地及び農業用施設等に被害が生じており、ゼロメートル地域では洪水、高潮、津波等による甚大な災害の危険性のある地域も少なくない。

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