国務大臣 環境庁長官
青木 正久
平成元年の環境白書をここに公表いたします。本年は、平成元年という時代の節目を迎え、環境政策につきましても新たな展開が求められております。
我が国は、今後21世紀に向けて人口の大半が都市あるいは都市的環境の下で生活することが予想され、豊かな国民生活を実現するためには、良好な都市の環境を築くことが不可欠となっております。しかし、我が国では、これまで経済的効率性を重視した都市整備が行われてきたため、人口・産業・交通の都市集中等に伴う環境汚染の発生にみられるように、ともすれば住民の生活環境の質が損われがちでした。さらに、近年では、地下水や市街地土壤等の新たな環境媒体への汚染の広がりがみられるなど環境問題は多様化・複雑化しつつあります。
こうした問題に対処するためには、経済構造、都市構造、生活様式にまでさかのぼった新たな対応が必要であります。そのため、今年の白書では、人と環境との関わりを総合的にとらえる「人間─環境系」の視点から、「人と環境の共生する都市─エコポリス」の形成を目指した、都市における新たな環境政策のあり方を示しております。
また、今や世界的は課題となったオゾン層の破壊、地球温暖化等の地球環境問題に対しても、我が国は、「世界に貢献する国家」として積極的に取組んでいく必要があります。そこで、昨年の白書に引き続き、今年の白書でも、地球環境問題への我が国の取組の現状と今後の施策の展開の方向に重点を置いて記述をしております。
この白書によって、国民の皆様の環境問題に対する御理解が深まり、地球や都市の環境から地球環境に至るまで、健全で恵み豊かな環境が形成されていくことに寄与できれば幸いであります。
平成元年5月