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活動報告

2010年度 2012年度2009年度

シンポジウム:みんなで守り育む世界の森2010 講演記録

  • 開催日時:2011年1月18日(火)13:30?17:00
  • 開催場所:JICA地球ひろば 講堂
  • 参加者数:73名

プログラム及び当日配布資料はこちら(PDF 5MB)をご覧ください。

基調講演:企業による海外での森林保全活動?成功の秘訣

コンサベーション・インターナショナル日本プログラム代表
日比 保史氏

「何本植えるか」ではなく、「なぜ植えるか」を考える

現在、非常に多くの企業が社会貢献の一環として植林活動に取り組んでいます。関心が高いのは素晴らしいことですが、そもそもなぜ企業が植林をするのでしょうか。一つは、社会貢献、環境貢献ということがあるでしょう。また、活動を通じて企業イメージを高めるということも本音としてあるでしょう。企業が植林するのは、CSR(企業の社会的責任)のため、ということもあるのではと思います。では、単に植林をすればCSRを果たしていることになるのでしょうか。

日本企業は植林がお好き
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何のために植林をするのかという、そもそもの議論が十分されていないケースがまず多いことが問題です。海外で植林をする場合、NGOや地元のコミュニティ、政府・地方自治体などパートナーも多様ですが、そうした関係者と目的の共有ができていないケースが多いことも問題です。

わかりやすさの追求で、指標であるはずの本数が目的化

また、どうしても「わかりやすさ」ばかり追求してしまうケースが多いのも気になります。企業イメージやブランドイメージを高めたい場合、高度なプロジェクトを推進していると言っても、それが一般の人びとに理解してもらえないとダメだということで、よりわかりやすい取り組みをしたがる。また、当然企業が社会貢献をしようと思えば予算が必要で、最終的には経営者がOKを出さないとできないわけですから、ここでもわかりやすくないといけない。すると、実際私が経験した例ですが「予算はある。でも今年度中に使わなければいけない。あと数週間で例えば10万本とか、とにかく木を植えたい」となる。「なんで10万本ですか」と聞くと、「競合他社は5万本なのでその倍をというのが社長命令です」と言う。これは冗談でもない本当の話で、担当者は大真面目なのです。

成果の測定や評価についてもわかりやすさを重視するあまり、本来指標であるはずの「何本植えた」が目的化してしまっているケースが多い。さらに、計画の初期段階からパートナーとなるNGOや地元コミュニティ等を巻き込んでいないため、本数だけが目的化してしまったまま、どんどん計画が進んでしまうといったケースも多くみられます。

企業が一生懸命事業から上げた利益を社会貢献に使うわけですから、ある意味その企業が好きなように使っていいわけで、植林に使って何が悪いと思うかもしれない。でも、本当にそれが妥当か、効率的・効果的かという点が顧みられていないとすれば、CSR活動して取り組む以上、社会にとっての課題となります。社会の持続性とは何か、そのために貢献できる取り組みとは何かをまず考えることが必要です。「何万本植えたいが、どこに何をどう植えたらいいのか」とよく聞かれるのですが、まず「なぜ植えるのか」ということを最初に整理することが、企業がこうした活動に取り組んでいく際、一番の成功の秘訣になるのではと思います。

CSRとして植林よりもすべきこと
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日本の半分に相当する森林が毎年喪失

森林をめぐる状況が今どうなっているのかについて少しお話したいと思います。毎年1,400万haの森林が失われていると言われています。日本の国土の半分近くに相当する面積です。これにはいくつか原因があります。一つは農地転換です。森林を伐って農地にする、特に焼畑農業が多く行われています。また、森林を伐採し木材として売り利益を得ようということ、また、都市やインフラ、鉱山の開発もあります。こうした開発は森林がもたらす多様な恵みに価値を見出しているのではなく、物理的にその場所が必要、あるいは木材が必要ということから森林が破壊されるわけです。さらに、森林のままであっても管理が適切な形でされていないケースもあり、これは日本でも問題になっています。

毎年、約1400万haの森林が失われている
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陸域において森林というのは生物多様性の豊かな場所ですから、その喪失は地球の生物多様性の喪失を意味します。一説には20分に1種のスピードで生物が絶滅していると言われています。私が話を始めてから今までで、もう1種絶滅したという、笑っていられないような状況にあるわけです。

気候変動の問題もあります。気候変動が進めば森林の生態系も大きな影響を受けます。また、森林喪失は、単にそこに住んでいる生き物、生物多様性の喪失だけではなく、そこに吸収されているCO2も大気中に放出されることを意味します。人間の活動によって排出される温室効果ガスの約15?17%は森林破壊に起因すると言われており、その大半は途上国で起こっています。

森林の消失は、全温室効果ガス排出の約15%を占める
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さらに、地球の人口は今年の半ばには90億に達するという予測もあります。これだけ人口が増えていけば、食糧危機やエネルギー危機がまた起こる可能性も出てきます。森林を資源として利用するのか、農地拡大のために利用するのか、あるいは生態系サービスのために維持管理するのか。人口が急増する中、特に途上国で取り組みを進める際には、頭に入れておく必要があります。

森林生態系サービスの価値

生物多様性というと、絶滅危惧種を守ることだと思われがちですが、生態系サービスという観点からは、生き物が多様であることの結果、多種様々な恵みを人間が受けていることが重要になってきます。有名な研究では、4.7兆円程度の価値が全世界の森林にはあると言われています。この研究が発表された年の世界の GDPは18兆円でしたので、世界のGDPの1/4以上に相当する価値を森林は人間に提供していることになります。

生態系サービスの経済的評価
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このよう価値のある森林、生物多様性あるいは生態系が、地球規模で減少している、そして貧困問題へも影響していることに、どう具体的に対処していけるのか。特に途上国での森林事業においては、まず当然、年1,400万haのペースで進んでいる森林減少に歯止めをかけなければいけません。一生懸命植林をしている地域の隣で、地元の人たちが森に火をつけて伐採し、あるいは木材を担いで出てくるのに遭遇するといった、冗談のようなケースも実際あります。何のための植林なのかをまず考え、その上で森林減少を食い止められれば、気候変動や生物多様性、さらにもっと重要な貧困問題の解決につながるような事業を行えます。

生態系サービスに依存する貧困コミュニティ
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苗木ではなく現地との意識共有にお金をかける

事業の効果が持続的であるということも非常に重要なポイントになります。企業が同じ場所でプロジェクトを行うのは、普通1、2年、長くても10年位です。直接的な支援というのはそこで終わるわけですが、プロジェクトが生み出した効果もそこで終わってしまっては意味がありません。支援が途切れた後も、プロジェクトでやり始めたことを継続していけるような仕組みを現地の人たちと一緒につくっておくことが重要です。それには十分な資金が必要になるかもしれません。企業も大変ですから、いくらでも出せるわけではないでしょう。ただここで考えるべきなのは、やはり「苗木の値段×本数=植林費用」ではないということです。なぜプロジェクトをやるのか、どういうメリットがあるのか、プロジェクトが終わった後その地域はどうなるのかということを、現地の人たちとしっかり共有し、計画を一緒に作っていくところに、人も、時間も、お金もかかるのです。

途上国で求められる森林事業
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それから対象となる国や地域が、もともと何をしようとしているのかを理解することが重要です。自分達が森林を守りたい、植林をしたいというだけで入って行ったのでは、結局理解されません。各自治体あるいは国全体のいろいろな計画や戦略がありますから、それとまったくずれたことをやっていたのでは、結局二度手間なことをやってしまったり、他にやって欲しいことがあるのにといった声が出てきたりします。こうした点では、やはり地元や森林のこと、生物多様性のことが分かる人たちと最初から一緒にやることです。専門知識や技術、現地のコミュニティや政府とのコネクションを持っているところをまず見つけることが大切で、そうしたNGOとのパートナーシップが、より社会に貢献できる森林事業につながっていくと思います。途上国での植林事業は、地元の人たちに、今後何十年も森林との関わり方を変えてもらう、生活の仕方を変えてもらう、そういう事業であるということを肝に銘じる必要があります。

NGOとのパートナーシップの必要性・有効性
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