復活したミズアオイが産み落とした議論の場 ──麻機遊水池自然再生協議会の概要
麻機ではかつて、雨は音から先にやってきた。遠くでザワッと音がし始めたかと思うとやがて覆いかぶさるように迫り、バタバタバタと大音響になる。ハスの葉に打ち付ける雨だ。梅雨どき、ハスは見事な淡紅色の花を一面に咲かせていた。
一日降った翌朝、空は青く晴れ上がっても足元ではじわじわと水が増していた。水が少し下流から逆流してくるのだ。沼の間の農道が決まって沈んだ。朝雨が降ったら夕方学校から帰れない。今日降れば明日は通れない。人々は道を踏み外さないように両側に柳を植えた。
昭和30年代までのこの浅畑沼の情景は、今は人々の記憶の中にのみある。そして柳並木が残った。

記事:清藤奈津子 写真等提供:静岡県静岡土木事務所、前島幸彦、清藤奈津子