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国立公園ものがたり 国立公園制度 100 周年記念事業
国立公園ものがたりとは?
日本の国立公園は、アメリカなど世界のいくつかの国立公園と異なり、集落や農林水産業などが行われている地域も含めて公園区域に指定していることから、公園内に人々の暮らしや産業があるのが大きな特徴です。そのため、国立公園の管理は、これらの人々の暮らしや産業などとの調整を図りながら、地域の人々とともに進めています。
『国立公園ものがたり』は、国立公園制度100周年となる2031年にかけて行う「国立公園制度100周年記念事業」の一つとして、日本の全ての国立公園において作成する聞き書き集(※)です。この『国立公園ものがたり』を通して、地域の宝である国立公園の自然、その自然と共に生きてきた人々の歴史、文化、ストーリーを見つめなおし、次の世代、次の100年にしっかり引き継いでいただけることを願っています。
※聞き書き集とは、話し手に自身の生き様を語ってもらい、その人の言葉をそのまま書き起こしてまとめたものです。口調や方言などもそのまま文章化することから、読み手は話し手の人柄や感情をリアルに感じ取ることができます。
地域の人が紡いできた国立公園のストーリーを、地域の言葉でお楽しみください。
北海道地区



釧路湿原国立公園
本誌の舞台は、日本最大の湿原と壮大な蛇行河川で知られる釧路湿原です。釧路湿原は1987年に国立公園に指定されました。広大な湿原の歴史は約2万年前に始まります。そこから長い年月をかけて海はやがて湿地となり、いくつかの湖沼ができあがり、現在の姿が形づくられました。
釧路湿原には、地域の人に「ヤチ」と呼ばれ、不毛の大地として扱われていた時代がありました。高度経済成長期、そんな「ヤチ」には開発議論が浮上します。しかし、湿原の価値に気付き、湿原の保全という道なき道を進んだ人たちがいました。「地域の宝である湿原を守る」という思いと行動は人から人へと伝わり、ラムサール条約湿地の登録、国立公園の指定につながります。本誌にはその思いを広めた人たち、受け継いだ人たち、そしてその思いを未来に向けて形にする人たちの声を集めました。



大雪山国立公園
本誌の舞台は北海道の中央にそびえる大雪山国立公園です。1934年、北海道最高峰の旭岳を主峰とする大雪火山群を中心に、トムラウシ山から十勝岳連峰、石狩岳連峰などの壮大な山々や、石狩川と十勝川の源流地域を含む「北海道の屋根」といわれる広大なエリアが、北海道で最初の国立公園として指定されました。
アイヌの人々は、大雪山を「カムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)」と呼び、森や川を敬いながら暮らしてきました。自然の全てに神が宿ると考え、その恵みに感謝しながら生きる姿勢。それは人と自然のあるべき関係を示しているのかもしれません。本誌では、この地で火山や森、湖とともに生きる人、開発と衰退といった大きな歴史の流れを感じながらも暮らしを続ける人、さまざまな地を巡った末にこの地にたどり着いた人の声を集めました。
九州・沖縄地区



西海国立公園
本誌の舞台である西海国立公園は、公園区域の大部分が海に面しており、複雑な海岸線や碧い海、大小の島々からなる多島海など、美しい自然景観を見ることができます。また、多くの渡り鳥や大陸系の植物がみられ、大陸との繋がりを感じることができることも、西海国立公園の魅力といえるでしょう。
西海国立公園に暮らす人々は、そのような自然景観を常に身近に感じながら、山や海からの恵を存分に享受してきました。年齢とともに地元を離れていく人がいる反面、この地域 “ならでは” の魅力に気付き、自然環境の保全や地域の活性化に力を尽くしている人も多くいます。本誌『国立公園ものがたり』では、この魅力に気付き、この地域を愛してやまない人々の声を集めました。



雲仙天草国立公園
本誌の舞台である雲仙天草国立公園は、日本で最初に国立公園に指定された公園の一つです。当初は雲仙地域のみが指定されていましたが、22年後に天草地域が加わり、今の国立公園の姿になりました。雲仙温泉街の賑やかさ、ダイナミックな火山景観、天草の美しい海洋景観などの目に見える美しさに加え、外国人保養地であった歴史、山岳信仰・修行の場としての歴史、キリスト教の歴史など、様々な歴史に由来する独自の文化を持っていることも特徴です。
雲仙に暮らす人々は常に火山による大地の息吹を、天草に暮らす人々は内海の穏やかさや外海の壮大さを、誰よりも肌で感じながら暮らしを営んできました。自分たちが生まれ育ったこの地域を誇りに思い、未来のためにこの地域の活性化や自然環境の保全に力を尽くしている人が多くいます。本誌『国立公園ものがたり』では、この地域を愛してやまない人々の声を集めました。