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吉野熊野国立公園 特徴
植生 動物
山岳地域
大台ヶ原の西部(通称:西大台地区)には、隆起準平原上に広大なブナ林が残されています。この林は、現存する表日本型ブナ林としては、我国有数のもので、学術的にも貴重です。また、日出ヶ岳などの稜線部には、大峰山脈と共に、我が国の南限とされるトウヒ林が見らます。大峰山脈では、八経ヶ岳山頂付近にシラビソ純林やコメツガ林、トウヒ林が成立し、一部は天然記念物に指定されています。
大台ヶ原、大杉谷、大峰山脈の山腹に広がる自然林は、哺乳類を始め、鳥類、昆虫類にとっての格好の生息地となっています。特に哺乳類ではニホンジカ、ニホンカモシカ、ツキノワグマなどの大型獣、ニホンザル、キツネ、ホンドリス、ノウサギ、イタチ、タヌキなどの中・小型獣が生息し、我国に生息する哺乳類の殆んどを見ることができます。



海岸地域
この地域は黒潮などの影響を受け、暖地性のラン、シダがよく繁茂し、北限とされるユノミネシダのほか、オオタニワタリ、ハチジョウシダ、グンバイヒルガオ、ハマユウ、ノアサガオなどの暖地性植物が、海岸地域などに生育します。
海岸地域には海鳥類が豊富で、熊野尾鷲海岸などの島嶼、岬部などに、アオサギ、クロサギ、アマツバメなどの繁殖地がみられます。
また、この地域は黒潮に近く、イシサンゴ類や熱帯魚などが生息するほか、みなべ町沖では日本固有種であるオオカワリギンチャクが生息します。


地形・地質
山岳地域
大峰山脈は、標高1,915mの八経ヶ岳を最高峰に、稲村ヶ岳、山上ヶ岳、大普賢岳、行者還岳、弥山、仏生嶽、釈迦ヶ岳、大日岳、天狗山などの標高1,500~1,900mの山々が連なる近畿地方を代表する山岳地域です。
大台ヶ原は、古生層、中生層~新生層の堆積岩からなり、標高1,500m前後に広大な平坦面をもつ我国ではまれな非火山性の隆起準平原です。地区内を流れる東ノ川が深いV字渓谷をつくり、滝や岩壁が連なっています。
大台ヶ原の東には大杉谷があり、堆積岩の斜面が大きく侵食、流下し、千尋滝、ニコニコ滝、七ツ佂滝など、8つの大滝や淵が連続します。



河川地域
我国有数の多雨地帯である大峰、大台ヶ原の豊富な水を集め、熊野灘に注ぐ熊野川及び支流の北山川の中・下流域では、激しい浸食作用によりほぼ全域にわたり深いV字谷となっています。
北山川の中流にあたる瀞峡は、大峰山脈や大台ヶ原を源とする熊野川の支流である北山川下流域の峡谷で、上流から奥瀞、上瀞、下瀞に分かれ、そのうち下瀞が「瀞八丁」とも呼ばれています。マグマで硬くなった地層が浸食されて垂直に切り立った絶壁や奇岩、深い淵が連なる変化に富んだ景勝地で、ウォータージェット船などで類い希なる渓谷美を探勝することができます。
那智山地域
妙法山、烏帽子山などからなる壮年期の山地で、第三紀層に貫入した花崗斑岩が周囲に比べ侵蝕が遅いためとり残されてできたものです。高さ日本一の133mに及ぶ名瀑那智滝は、この両地層の境の急崖を流れ落ちるものです。


海岸地域
海岸部は、三重県尾鷲湾から和歌山県千里の浜まで、紀伊半島中南部の海岸線約560㎞に及びます。このうち、熊野灘では、鬼ヶ城以北のリアス式海岸、南北約30㎞にも及ぶ七里御浜・王子ヶ浜の礫浜、紀の松島の多島海景観など、変化に富んだ海岸景観が楽しめます。本州最南端の潮岬は陸繋島で、東側に位置する大島とともに海岸段丘が見られ、海岸線には海食崖がよく発達しています。また、潮岬より西側の枯木灘は、岬と入り江、砂浜などが交錯した複雑な海岸となっており、すさみ町のフェニックス褶曲は世界的にも有名な褶曲露頭です。田辺湾に位置する鳥の巣半島では、干潮時に広く平坦な海食台が現れ、国の天然記念物にも指定されている泥岩岩脈が見られます。



人文景観
吉野熊野国立公園は、中世から近世にかけて栄えた大峯修験と熊野信仰という宗教上の聖地を区域内に含み、これに関わる史跡や遺跡が多く見られます。この拠点であった吉野山、洞川、山上ヶ岳、前鬼及び熊野三山と呼ばれる那智山、本宮、新宮には古社寺が残り伝統を伝えています。
特に、大峰山脈の北端に位置する吉野山は、多くの史跡、社寺が残っています。 “花の吉野” として名高い吉野山のサクラ林も、大峯修験に由来して植林され、成立したものと言われています。


