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知床国立公園 特徴
地形・地質・景観
知床半島は、長さ約70km、幅は基部で約25kmの細長い半島です。半島の主峰である羅臼岳の山頂からは、両側の海からそそり立つように1,200~1,600mの急峻な山々が一列に連なっている圧巻の景観を望むことができます。知床連山と呼ばれるこれらの山々は、火山活動によって形成されたものです。
半島西側の海岸線には高さ100mを超える断崖が続いています。これは流出した溶岩が、流氷に激しく浸食されて形作られたものです。また、フレペの滝のように、溶岩の間に地下水が流れ、断崖から滝となってオホーツク海に流れ落ちている光景も多く見られます。これらの険しい断崖は、人や天敵の侵入を拒み、ケイマフリなどの海鳥類の貴重な繁殖地になっています。一方、流氷が強い勢いで接岸しない半島東側は、比較的なだらかな海岸線が続き、先端部まで番屋が点在しています。このように、知床では、中央にそびえる知床連山を境に、半島の西と東で対照的な地形が見られるのが特徴です。
動植物・生態系・文化
動物・生態系
哺乳類は、陸上哺乳類36種、海生哺乳類22種の生息が確認されています。これらの中には、トド、マッコウクジラといった国際的に希少な種も含まれます。また、知床の代表的な動物といえば、日本最大の陸上動物であるヒグマです。知床半島の生息数は数百頭と推測され、世界でも屈指の高密度であるといわれています。
鳥類は285種が記録されており、絶滅危惧種であるシマフクロウやオジロワシ、クマゲラなども生息しています。また、国立公園や周辺地域はオオワシにとって世界的に重要な越冬地で、越冬個体が1,000羽以上にもなります。このように、たくさんの野生動物が狭い範囲の中で生息していけるのは、知床ならではの海、川、森のつながりによるところが大きいのです。
知床に到来する流氷は、アイス・アルジーと呼ばれる植物プランクトンを伴ってやってきます。春になり流氷が溶けると、アイス・アルジーは爆発的に増殖し、それを食べる動物プランクトンが増えます。サケ科魚類の稚魚が、これらの動物プランクトンを食べながら知床を旅立ち、海を数年回遊した後に、知床に戻ってきます。そして、川を遡上するサケは、ヒグマやワシ類の食料となり、陸域の生態系の礎となっているのです。
世界自然遺産
世界遺産の基準を満たすとして認められた知床の自然の特徴・価値を分かりやすく言えば、①流氷がもたらす海の恵み、②サケ類がのぼる川が結ぶ海と陸とのつながり、③海・川・森が支える貴重な野生生物の3つです。
登録基準「生態系」
・知床は北半球で最も低緯度に位置する季節海氷域であり、その影響 を大きく受けた高い生産性がみられ、海と陸の生態系の相互関係の 顕著な見本である。
登録基準「生物多様性」
・知床は海洋性及び陸上性の多くの種にとって特に重要であり、これらの中には多くの希少種が含まれている。
・知床は多くのサケ科魚類、トドやクジラ類などの海生哺乳類にとって世界的に重要である。
・知床はケイマフリなどの世界的に希少な海鳥類や、オオワシやオジロワシなどの渡り鳥の生息地として重要である。
植物
急峻な知床では短い距離で標高に応じた植生の変化が見られ、低いところから順に、トドマツやミズナラなどからなる針広混交林、ダケカンバ林、ハイマツ帯へと移りかわります。陸上の維管束植物相は872種からなり、そのうち233種が高山植物で、シレトコスミレなどの固有種や、希少種も多く含まれます。
文化
知床では、数千年にさかのぼる先史時代の遺跡が数多く残されています。その中でも10世紀前後にはオホーツク海沿岸で栄えたオホーツク文化の影響を受け、シマフクロウやヒグマを神と崇め、狩猟や漁労などをしながら、豊かな自然を大切にした文化を育んできました。現在でも、地域の主要な産業である漁業は、生産力の高い豊かな海に支えられ、シロザケ、カラフトマス、スケトウダラ、コンブなどの水産資源の持続可能な利用が図られています。