環境省自然環境・自然公園特定外来生物等の選定について

第6回特定外来生物等分類群専門家グループ会合(爬虫類・両生類)議事概要


1 日時 平成19年8月22日(水)17時~18時
2 場所 経済産業省別館1012号会議室
3 出席者 (委員)長谷川 雅美(座長)、石橋 徹、千石 正一、安川 雄一郎
(環境省)外来生物対策室長、移入生物専門官
4 議事概要

(事務局より挨拶)

〔未判定外来生物について・未判定外来生物の輸入届出の概要〕

(事務局から資料1及び資料2を説明)

(事務局)未判定外来生物は、外来生物法第21条に定められたものであり、今回議論の対象となるアノール属の2種、オオガシラ属の4種、北米産ヒキガエル属の4種及び南米産ヒキガエルの2種は、ぞれぞれグリーンアノール及びブラウンアノール、ミナミオオガシラ並びにオオヒキガエルの特定外来生物への指定に伴い、未判定外来生物に指定されたもの。輸入の届出者からは、関連情報として図鑑のコピーが届出書に添付されていた。

(議論は特になし)

〔アノール属の2種、オオガシラ属の4種、北米産ヒキガエル属の4種及び南米産ヒキガエル属の2種に関する情報〕

(事務局から資料3を説明)

(事務局)アノール属の2種:アノール属において、ナイトアノールは最大級の、ガーマンアノールも大型の種であり、高木の樹冠部に生息して大型昆虫や樹上性のトカゲ類などを捕食する。両種とも本来の生息地外で定着した事例がある。両種の定着事例から判断すると、南西諸島や小笠原諸島などで定着する可能性がある。定着した場合には、捕食や競合を通して在来生物群集に影響を与えるおそれがある。
 オオガシラ属の4種:東南アジア原産の比較的大型になる樹上性の高次捕食者であり、南西諸島や小笠原諸島などで定着する可能性がある。定着すれば、捕食や競合によって鳥類、爬虫類、両生類などを含む在来生物群集に影響を及ぼすおそれがある。
 北米産ヒキガエル属の4種:北アメリカ原産のヒキガエル類であり、本州以南の温暖地で定着する可能性がある。定着すれば、昆虫をはじめとする小動物を捕食すること、在来のヒキガエル類と競合することによって在来生物群集に影響を与えるおそれがある。また、体表から毒を分泌することから、希少種を含む捕食者に影響を与えるおそれがある。
 南米産ヒキガエル属の2種:南アメリカ原産のヒキガエル類であり、南西諸島や小笠原諸島などで定着する可能性がある。定着すれば、昆虫をはじめとする小動物を捕食すること、在来のヒキガエル類と競合することによって在来生物群集に影響を与えるおそれがある。また、体表から毒を分泌することから、希少種を含む捕食者に影響を与えるおそれがある。

(事務局)前回、アノリス・アングスティケプスの判定をした際に、未判定外来生物の判定をどのような枠組みで考えていくのかを議論した。そのときの整理として、未判定外来生物は国内にまだ定着していないため、今後、生じるさまざまな可能性を考慮しなければならないということであった。アノリス・アングスティケプスの場合には、日本全国ではなく小笠原諸島や南西諸島の一部などの特定の地域で定着する可能性があるということであった。このように、あらゆる場合を想定して、少しでも被害を及ぼすおそれがあるものは、「生態系に被害を及ぼすおそれがある」とし、被害を及ぼすおそれがなければ「生態系に被害を及ぼすおそれがない」という判断をする。今回の12種についても、それぞれの原産地はさまざまだが、広いエリアで定着しそうなもの、また、一部のエリアで定着しそうなものがいる。いずれも国内の一部の地域では定着の可能性があり、定着すれば在来の生物群集に影響を及ぼすおそれが否定できないということで、資料3を作成している。

○北米産のヒキガエルは、ニホンヒキガエルやミヤコヒキガエルとサイズが同じくらいであり、餌や産卵場所もよく似ていることから競合するおそれがある。競合についての情報を資料3に加えてもよいと思う。日本産ヒキガエル類との交雑については、調べてみないとわからない。

○外来生物法の枠組みでは、未判定外来生物については定着の可能性が全くないと断言できなければ特定外来生物に指定せざるをえない、定着の可能性が予測できないということは重大な被害が起こりうる、という方針で判定を行うということでよいか。

(事務局)「被害を及ぼすおそれがない」ということが証明できなければ、「被害が起こりうる」と判断せざるを得ない。

○外来生物法はブラックバス対策法としてはよくできているが、他のすべての生物に適用するには無理がある。例えば、生きたものの運搬を禁ずるとあるが、植物が生きているか、死んでいるかは誰が判断するのか。

○資料3には、小笠原や沖縄などで定着するおそれがあると書かれているが、一部の地域に入るのが問題なのであれば、条例などで対応すればよい。それを法律で全国的に規制するのはおかしい。

(事務局)重要な保全対象地域への在来種の移動については、外来生物法を制定した際の課題であった。この法律だけですべてをコントロールできるものではないと認識している。国内移動について、今後どのような仕組みで対応すればよいか検討していきたい。

○ガラパゴスなどで行われているように、南西諸島や小笠原諸島などへの物資の国内移動について検疫を行うなどの規制ができるようになれば、それらの地域で定着し被害を及ぼすおそれがあり、かつ、本土で問題を起こさない生物については、本土で流通させても問題はないと考える。

○外来生物法の制定に伴いカミツキガメが遺棄されたことは、外来生物法ができたことによって生じた社会現象であり、マイナス効果として反省すべきである。そういったことも含めて法律を見直す必要がある。また、環境省と文科省が連携し、初等教育で環境教育を充実させ、子供の頃から生物多様性保全の重要性を教える必要がある。

○国外の野生生物については、定着のおそれがないからといえ無制限に輸入するのは、生物多様性保全の観点から制限されてしかるべきである。そういった意味では、外来生物法は機能している。定着の可能性がゼロであると証明されない限り、新たな野生生物を日本に輸入することは制限すべきである。

○爬虫類・両生類会合としては、「アノール属の2種、オオガシラ属の4種、北米産ヒキガエル属の4種及び南米産ヒキガエル属の2種は、資料3のとおり、生態系に係る被害を及ぼすおそれがある生物であるため、特定外来生物に指定すべし」との結論を得たいと思うがよろしいか。

(一同了承)

〔今後のスケジュール〕

(事務局)この後、全体会合委員に本日の結論について文書による照会をし、その後、パブリックコメントやWTO通報の手続を行うこととしたい。

〔その他〕

(事務局から「参考資料 カエルツボカビについて」を説明)

○環境省として、カエルツボカビを特定外来生物に指定する可能性はあるのか。目に見えないものを規制するのが難しいことは理解しているが、カエルツボカビはIUCNの世界の侵略的外来種ワースト100に選定されている。一方で、我が国は遅れをとっている。

(事務局)カエルツボカビも生物である以上外来生物法の対象になりうるが、目に見えないものについては税関等での規制が現実的でなく、指定は困難。まず、我が国で発見されたカエルツボカビの正体を特定し、それが我が国の両生類にどのような影響を及ぼすのかを明らかにしなければならない。そのうえで対策が必要なのか、外来生物法が使えるのかを検討すべきである。現状把握を最優先課題としており、影響が特定できれば、どのような対策を講じればよいかを判断することができる。

○未判定外来生物の判定では、海外の事例を参考に最悪の事態を想定して判定している。カエルツボカビの場合は影響を把握してからということであるが、海外では被害が生じているので、最悪の事態を想定する必要があるのではないか。

(事務局)我が国で一番影響が出そうな南西諸島では、最悪の事態を想定しながら対応している。また、様々な関係機関に協力要請をしながら現状把握に努めている。カエルツボカビについては、外来生物法という枠組みで対応しているわけではない。

○今回のカエルツボカビについては、偶然気づいた人が専門家で研究できる状況にあり、そのような人たちが集まって何とか対処したという状況であった。関係法令がないことや、予算がないことで環境省では動きにくいというのはわかるが、海外から不意に侵入する生物のような環境危機について、国がすぐ動けるような仕組みがあってしかるべきであり、そのようになることを希望する。

○カエルツボカビを特定外来生物にすれば、宿主となるカエルを扱っている人々に多大な影響を与えるので、慎重に検討してほしい。

○目に見えないものの規制は重要。カエルツボカビに限らず、未知の病原体が蔓延する可能性もあるので、病原体を検疫する体制の整備が必要である。

○カエルツボカビについては悪い方向には行っていないが、場合によっては野生生物について輸入をストップできるような強制的な手法がとれるようにする必要がある。

(文責:環境省自然環境局野生生物課外来生物対策室 速報のため事後修正の可能性あり)