環境省自然環境・自然公園特定外来生物等の選定について

第5回 特定外来生物等分類群専門家グループ会合(両生類・爬虫類)議事録


1.日時   平成19年4月24日(火)14:00~15:00

2.場所   法曹会館2階 寿

3.出席者

(座長)
長谷川 雅美
(委員)
石橋  徹   安川 雄一郎
(環境省)
星野野生生物課長
水谷外来生物対策室長
田中移入生物専門官

4.議事

【環境省 田中専門官】 それでは、予定の時刻になりましたので、特定外来生物等分類群専門家グループ会合(爬虫類・両生類)の第5回会合を開催したいと思います。
 なお、本日、千石委員は、病気でご療養中のため、欠席となっております。
 はじめに、野生生物課長の星野からごあいさつ申し上げます。

【環境省 星野課長】 こんにちは。野生生物課長の星野でございます。
 委員の皆様方には、お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。
 第5回特定外来生物等専門家グループの爬虫類・両生類会合ということで開催させていただきました。
 ご案内のように、第二次の指定、昨年の2月になりますけれども、無事終了いたしました。それを受けまして、今後、新たな視点に向けて、昨年来、検討を進めているところでございますけれども、この点につきましては、また、今後、ご協力をいただきたいと思っております。
 本日は、未判定外来生物の輸入に係る届出がございました、アノール属の一種であります、アノリス・アングスティケプスという種類、輸入の届出がございましたので、これについてご検討をいただくということでお集まりいただきました。よろしくご審議のほどをお願いいたします。

【田中専門官】 続きまして、外来生物対策室長の水谷からごあいさつを申し上げます。

【環境省 水谷室長】 この4月から外来生物対策室の方になりました、水谷といいます。よろしくお願いします。
 まだ法律の中身とか、運用にかかわる課題とか、若干、勉強中のところもございますけれども、皆様方の議論に追いつけていけるように頑張りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【田中専門官】 次に、お手元にお配りした資料の確認をさせていただきます。
 順番に読み上げます。
 まず、議事次第、委員名簿、資料一覧。続きまして、資料1、未判定外来生物について。資料2、未判定外来生物の輸入届出の概要。資料3、アノリス・アングスティケプス(Anolis angusticeps)に関する情報。参考資料、特定外来生物分類群専門家グループ会合関連資料となっておりますが、委員の先生方のみ、特定外来生物被害防止基本方針という冊子をお配りしております。こちらについては残部が不足しておりますため、会議後、回収させていただきます。
 もし資料に不備がございましたら事務局にお知らせください。よろしいでしょうか。
 それでは、議事進行につきましては、昨年度から引き続き、長谷川座長にお願いしたいと思います。長谷川先生、よろしくお願いいたします。

【長谷川座長】 それでは、これより本日の議事に入らせていただきます。
 議題(1)は、未判定外来生物の判定について(アノリス・アングスティケプス(アノール属の1種))となっております。
 では、資料1、資料2について、事務局から続けてご説明願います。

【田中専門官】 では、ご説明いたします。
 資料1、資料2について、続けてご説明してまいりたいと思います。
 まず、資料1をごらんください。
 資料1につきましては、外来生物法上の未判定外来生物に関する規定を改めてご確認いただく意味でお配りさせていただいております。順にご説明してまいります。
 まず、法律の中で未判定外来生物がどのように位置づけられているかということですが、法律の概要のところに、法律の関連条文を抜粋しております。
 第21条というところに、「未判定外来生物(在来生物とその性質が異なることにより生態系等に係る被害を及ぼすおそれがあるものである疑いのある外来生物として主務省令で定めるものをいう。)」となっております。こちらを「輸入しようとする者は、あらかじめ、主務省令で定めるところにより、その未判定外来生物の種類その他の主務省令で定める事項を主務大臣に届け出なければならない」というふうになっておりまして、特定外来生物の場合は、在来生物とその性質が異なることにより、生態系に係る被害を及ぼすおそれがあるものというふうになっているんですが、未判定外来生物の場合は、その疑いのある外来生物というふうになっております。
 あと、輸入しようとする者は、あらかじめ、未判定外来生物の種類その他の情報を、主務大臣、今回のような未判定外来生物については主務大臣は環境大臣と農林水産大臣というふうに規定されておりますので、その両者に届け出なければならないというふうになっております。
 そして、22条の方ですけれども、この届出があったときには、主務大臣、環境大臣及び農林水産大臣は届出を受理した日から6カ月以内に、その届出に係る未判定外来生物について在来生物とその性質が異なることにより生態系等に被害を及ぼすおそれがあるか否か、つまり特定外来生物と同じような性質を有するか否かということについて判定をし、その結果を届出をした者に通知しなければならないということになっております。
 23条につきましては、輸入をしようとする者は、生態系等に係る被害を及ぼすおそれがあるものでないという通知を受けた後でなければ、その未判定外来生物を輸入することはできないという規定になっております。
 詳細については、法律の施行規則で規定されておりまして、施行規則の28条で別表が定められているんですが、その中で特定外来生物に指定されている、グリーンアノールとブラウンアノールを除くアノール属全種が未判定外来生物に指定されております。
 こちらは、平成17年6月1日に行われた第一次指定の際にグリーンアノールとブラウンアノールが特定外来生物に指定されたのとあわせて、それに似ている性質を持っている可能性があるということで未判定外来生物に指定されたものでございます。
 それから、29条でございますけれども、法律の21条または24条の届出、24条というのは21条とほぼ同じなんですけれども、日本に輸出をしたいという人は届け出る規定でございます。いずれにしても、その届出については以下に掲げる事項を、日本語で記載された届出書を提出して行うということになっておりまして、未判定外来生物を輸入あるいは輸出しようとする者は、住所、氏名、輸入または輸出しようとする未判定外来生物に間接的に掲げる事項として、生物の学名、輸入しようとする国、生態特性に関する情報、次に掲げる情報として、本来の生息地または生育地の分布状況、それから、文献その他の根拠を示す資料、その他、既に入手している情報であって提出が可能なものといったものを届出の際に提出することになっております。
 これを図で示したものが2ページ目にあります法律の概要というところですけれども、真ん中に「未判定外来生物」というところがございます。
 未判定外来生物については、先ほど申しましたように、主務省令で指定するわけですけれども、先ほど申したとおり、グリーンアノールとブラウンアノールを除くアノール属全種が未判定外来生物になっておりまして、輸入の制限が課されていると。輸入しようとする者は届出の義務があるというところでございます。
 判定が終わるまで、最長6カ月ということになりますが、一定期間の輸入が制限されます。
 それから、その下に主務大臣の判定というひし形の部分がございますが、こちらについては、主務大臣が被害を及ぼすおそれがあるかどうかについて判定をして、被害を及ぼすおそれがないということになれば、外来生物法上の規定は設けられないということになりますが、被害を及ぼすおそれがあるということになりますと、その6カ月の間に特定外来生物に指定していくということになります。
 現在、主務大臣の判定に当たって、専門家の先生方の知見をいただきたいというふうに考えていまして、専門家会合の結論をいただきたいというところでございます。
 それから、3ページ目以降ですが、こちらは特定外来生物被害防止基本方針において、未判定外来生物についてどのような記述がなされているかというところでございます。
 まず、未判定外来生物については、基本方針の中の第5、その他特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する重要事項というところに記載されているんですが、まず未判定外来生物の選定。今回は既に選定されているものの判定ということでございますので、今回の議論の中心ではないんですが、簡単にご紹介さし上げたいと思います。
 まず、未判定外来生物は、我が国に導入された記録のない生物または過去に導入されたが野外で定着しておらず、現在は輸入されていない外来生物を選定の対象にするということになっておりまして、大量に輸入されていたり、あるいは既に国内に定着し蔓延しているようなものについては、その輸入制限が基本となる未判定外来生物の選定対象にはしないということとなっております。
 それから、個体として識別が容易な大きさ、形態を有し、特別な機器を使用しなくても同定が可能なもの。これは特定外来生物選定の前提と同様なんですが、菌類、細菌類、ウイルス等は対象としないということとなっております。
 それから、これも特定外来生物と同様でございますけれども、遺伝子組換え生物に関する法律、植物防疫法などの他法令上の措置により、外来生物法と同等程度の輸入、飼養その他の規制がなされていると認められるものは、未判定外来生物の選定の対象としないということとなっております。
 それから、選定対象となる外来生物については、特定外来生物のように被害事例の報告や被害を及ぼすおそれの指摘はなされていないものの、ある特定外来生物と似た生態的特性を有しており、その特定外来生物と生態系等に係る同様の被害を及ぼすおそれがあるものである疑いのある外来生物について、原則として特定外来生物が属する属の範囲内で、種を単位として、必要があれば、属、科等、一定の分類群を単位として選定するということになっております。
 現在は、特定外来生物として第一次選定の際にご検討いただいた中で、グリーンアノールとブラウンアノールを特定外来生物に指定するというご結論をいただきましたので、それらと似た生態的特性を有している可能性があるものとして、アノール属が属の単位で未判定外来生物に指定されているということでございます。 
 それから、選定に関する意見の聴取についてですが、基本的には特定外来生物と同様でございます。専門の学識経験者の皆様からのご意見をいただく際に、特定外来生物の指定にあわせて未判定外来生物の指定に関するご意見をいただくということで、第一次選定の際にグリーンアノールとブラウンアノールを除くアノール属を未判定外来生物に指定することについて、いろいろご意見を伺わせていただいたところでございます。
 それから、パブリック・コメントとWTO手続についてですが、これも特定外来生物と同様な手続きを行うということになっております。
 裏の方に参りまして、判定に係る届出事項の内容というところですけれども、先ほど法律の説明の中でご説明したように、未判定外来生物を輸入しようとする者は、原産国や生態的特性に関する情報を主務大臣に届出させるということになっております。
 この未判定外来生物が、当然、輸入の届け出を出すということになっているのは、被害を及ぼすおそれがない可能性があるというふうに考えて届出者は届けを出してくるということなんですけども、未判定外来生物が生態系等に係る被害を及ぼすか否かの判定は主務大臣が最終的に行うということになっております。
 それから、おそれがあるか否かについて、輸入をしようとする者には情報提供の義務は課さないと。被害を及ぼすおそれがないということを輸入の届出をする者がみずから証明する義務は法律上は課されていないんですけれども、自主的な情報提供を受けるということとするというふうになっております。
 また、判定の手続きでございますけれども、届出があった場合には、第2の2から4、これは基本方針の第2の2から4ということなんですが、特定外来生物の指定に関する考え方が記載されている部分でございます。この第2の2から4までの考え方に沿って、予防的な観点を踏まえつつ、最新の科学的知見を用いて適正に判定することとしております。
 それから、判定に支障のない範囲で判定期間を極力短くするよう努めるものとするとなっておりまして、未判定外来生物の場合、特定外来生物に関する記述、考え方について、この予防的な観点を踏まえつつという記述がございますが、予防的に行うということで、未判定外来生物については基本的に情報が少ないということではあるんですが、その中で最大限、利用可能な情報を活用して、被害をもたらすおそれについて判断をしていくという必要があるということでございます。
 それから、最後ですが、届出の行われない未判定外来生物についても、必要があれば国の科学的知見を充実させて被害を及ぼすかどうかの判定を順次行うよう努めるものとするとされておりまして、届出がないものについても知見が集積されて、特定外来生物にすべきという結論を出すということもあり得るということでございます。
 ここまでが法律の制度の概要の説明でしたけども、続きまして、未判定外来生物の輸入届出の概要について、資料2を使って説明したいと思います。
 今回提出されました未判定外来生物の輸入届出については、3月13日付で届出がなされまして、3月15日にこちらの方に届きまして受理をしております。
 届出の種類は、先ほどご説明した法律の第21条、未判定外来生物を輸入しようとする者の届出ということです。
 この届出に当たっては、未判定外来生物の種類、入手国名、生態的特性に関する情報等をあわせて提出する必要がありますので、届出者の届出の中にありましたものをこちらの表の形でまとめております。
 未判定外来生物の種類としては、アノール属の一種である、アノリス・アングスティケプスについての届出が行われたということです。後ほど資料3で詳しくご説明いたしますが、入手国名はキューバとなっていまして、生態的特性に関する情報として、本来の生息地・生育地の分布状況というところでは、キューバ及びバハマとなっております。
 それから、文献その他の根拠を示す資料については、届出書自体に英語の文献が三つついておりました。こちらは、英語の論文一つと、あと、英語のホームページを打ち出したもの二つからなっておりまして、内容については後ほどご説明差し上げます。資料3に反映されておりますが、twig anole、エダトカゲの性質を持つというようなことが書かれております。
 未判定外来生物の説明と届け出の概要についてご説明いたしました。以上でございます。

【長谷川座長】 ありがとうございます。
 それでは、ただいまのご説明につきましてご質問等がありましたら、ご発言をお願いいたします。

【安川委員】 今の説明についての質問ですか。

【長谷川座長】 今の説明に関して。特によろしいですか。
 改めて未判定外来生物の輸入の背景に関して説明をいただいたということで本題の方に入りたいと思います。
 アノリス・アングスティケプスの取り扱いについて検討に入りたいと思います。
 事務局の方から、資料3、アノリス・アングスティケプスに係る情報について資料を用意していただいておりますので、説明をお願いいたします。

【田中専門官】 それでは、資料3をご説明いたします。
 資料3は、アノリス・アングスティケプス(Anolis angusticeps)に関する情報です。
 当該種の原産地は、キューバ及びバハマ諸島となっております。このフベントゥド島というのは以前にピノス島と呼ばれていたキューバの島の一つでございます。
 定着実績につきましては、国内外での定着事例は知られていないということでございます。
 評価の理由を飛ばしまして、被害の実態・被害のおそれについてですが、生態系に係る被害として、本種は細い枝先に定位してアブラムシなどの小型昆虫を中心に捕食すると。このようなタイプの爬虫類は日本にいないため、本種の定着によって小型の昆虫が減少したり、そのことを通した在来の小型の捕食者が減少したりすることが懸念されます。
 また、被害をもたらす要因のうち、生物学的要因についてですが、本種はキューバ産のアノール類の中でも分布域が広く、さまざまな環境に適応できるものと考えられます。
 また、社会的要因については、これまでに輸入や国内での取り引きはほぼなかったということでございます。
 続きまして、特徴並びに近縁種・類似種などについてですが、キューバには50種を超えるアノール類が分布しておりまして、種によって、樹冠や樹幹、あるいは低木のやぶや、地上、がけ地など、さまざまな環境に分かれて生息しております。
 今回の種については、細い枝先を好む種の典型的なものでございまして、ほかのアノール属に比べまして短い四肢や尾を持つと。体表には樹皮のような細かい模様があるということです。
 写真が、先ほど資料2の届出者から提出されたもののカラーの、別添の方についてございます。ご参照ください。
 また、グリーンアノールやブラウンアノールより小型のものでございます。
 枝先に定位してあまり動かず、ほかのアノール類に比べるとディスプレイ行動などの頻度が低く、走ったり飛び跳ねたりすることも少なく、待ち伏せ型の捕食を行うというような報告がされております。
 その他の関連情報としましては、キューバ産のアノールにはブラウンアノールやナイトアノールなど他地域で外来種となった種が複数知られております。
 また、ほかのアノール類に比べて野外での発見が難しいということもありますので、もし野外に定着すれば生息把握や捕獲といった確認がほかのアノール類よりも困難になることが予測されます。
 それで、戻りまして、評価の理由のところですけども、特定外来生物ブラウンアノールと原産地が大きく重複し、野外放逐されれば、日本の南側に定着するおそれがあると。アノール類の中でも特定外来生物グリーンアノールと近縁種でございまして、国内に定着すれば生態系への被害が懸念されますという評価とさせていただいております。
 以上です。

【長谷川座長】 ありがとうございます。
 それでは、ただいまの説明につきまして、ご意見、ご質問がありましたらご発言をお願いいたします。

【安川委員】 まず、生態系にかかわる被害ということに関してですけれども、特に沖縄というか、琉球列島の場合は樹上性の傾向が結構強い、アオカナヘビというグループのトカゲ類(アオカナヘビ、サキシマカナヘビ、ミヤコカナヘビをさす)がいまして、その仲間は結構、この細い枝先に、この種と違って待ち伏せ型ではないかもしれないんですけれども、かなり木の枝先にいる昆虫を食べたりする。それから、キノボリトカゲの幼体なんかについても、やはりいくつかの種がこの地域に分化しているんですが、これもやっぱり、小型の枝先の、他の競合するような大型の個体がいないようなところをねらってえさを食べているような様子なんかが確認できるので、そのあたりが、あまり、まだ生態的な調査がおくれているグループなので文献とかはないんですけれども、競合相手になる可能性がかなりありますね。
 それから、バハマ諸島と書いてありますが、バハマ諸島も結構南北に広がっていて、バハマ諸島でも最北部にはいないんですけども、かなり北の方にいるので、ブラウンアノールが大体同じ分布ですけれども、それがフロリダ半島の北部だとか、テキサスだとかジョージアとかの、アメリカ合衆国でもどんどん北上しているところを考えると、入った場合、琉球列島の中でも沖縄諸島以南というだけでなくて、奄美だとか、九州南部だとか、本土の温暖地にも定着する可能性がある。大体、気候的に温暖化が進んでいるせいなのか、例えば九州の方でキノボリトカゲが定着している場所が見つかったりといったこともありますので、そういう地域に多数持ち込まれた場合、これが本土にも定着する可能性があるのではないかと思っています。
 以上です。

【長谷川座長】 評価の理由としては、定着するおそれがあるということと、定着した後に生態系への被害が懸念されるということで、今、具体的に安川委員の方から、琉球から南西日本において定着するおそれもかなりあるだろうということと、生態系の中ではアオカナヘビとニッチが重複するという面では新たな競合関係をもたらす可能性、さらに、枝先に生息するような昆虫への捕食圧といった面が具体的にも懸念されるというご発言だったと思います。
 石橋さん、つけ加えることが何かございますか。

【石橋委員】 さっきの質問のときに質問するべきだったかもわからないですけども、この議論の枠組みというか、入り口の部分を先にちょっと整理、今、個々の生態とか、そういう問題について議論が始まっているわけですけども、その入り口の部分をちょっと先に整理していただきたい部分があるんですが。
 これはもう、生物として、日本の生態系というのを考えたときに、そこに定着するか、しないかという議論からのスタートでいいわけですよね。要は、定着するには理由があるわけで、ある日忽然と森にその生き物が現れるわけではないので、現実問題として、この生物が日本に定着するプロセスとか、そういうものもあると思うんですよ。そういうものの要因によって、外来種になり得る生き物か、なり得ない生き物か。例えば私の関連している議論の土俵でいきますと、飼育動物として考えられた場合には、例えば飼っているうちに飽きられて、もてあまされて遺棄されやすい生き物であるとか、値段が安い生き物であるとか、大事にされない生き物であるとか、そういったこともあるでしょうし、資材によって運ばれてくるという意味では、例えば今、キューバからすごく観葉植物が妙に輸入されるのがブームであるとか、何か、輸入されるプロセスですよね、輸入される可能性、こういったものを今回は考慮しないで、とにかく(日本の自然環境に逸走したあとの)生き物として仮定して、忽然と琉球の森にこの生物がぽんとあらわれた場合には定着する可能性があるのかどうかという、そういう議論をすればよろしいんですね。

【長谷川座長】 そうですね。評価の理由には、今、石橋委員がおっしゃられた、野外に放置されればという以前の話についても確かにあると思います。ですから、ちょっと事務局の方で補足説明をお願いしたいんですけど、この生物、アノリス・アングスティケプスが申請された理由というところは、ペットとして大量に入ってくるという話だったのか、それとも何か別の理由だったのかというあたりは、これは、この場で伺ってもよろしいんでしょうか。

【石橋委員】 それを議論する場なのかどうかという話なんですよ。それを議論するのはもう別の話で、今日の判定の、そのディスカッションの土俵は、要するにもう、とにかく日本にその生き物たちがぽんと来たときにはどうなのかという可能性を議論するのか、それ以前に、まさに、要するに用途なんかも出てきてしまうわけですよ。こういう用途で、こういうふうに使いますよ、最後は安楽死しますというような届けだったらオーケーなのかという話になってしまいます。
 それを言っていてもこの場では始まらないので、どういう枠の中で、今日、議論するのかというのを先にきちんと決めないと飼育をしている人たちの納得が得られないわけですよ。じゃあ、こういうふうにすれば、逃がさなきゃいいんでしょうみたいな話になってきますから、こういうふうに飼っていたら逃げるわけがないじゃないかとか、申請した人が飼う予定の地域が北海道じゃないかとか、そういうような話がどんどん出てくるわけですよ。そういうことを議論として一切今日ここでしないならしないで、この枠の中から議論がスタートですという部分をちょっと明確にしておかないと、話が非常に、この法律の場合には、いろんな話が蒸し返されたりとか、二転三転してしまいますので、その枠組みを先に決めていただいた方が判定という作業に移りやすいかなと、そういう話を伺っているわけです。

【長谷川座長】 では、事務局からお願いします。

【田中専門官】 今回の届出について、資料2でご説明したわけですけども、法律上の枠組みとしては、何のために今回輸入するのかというところは問うていないと。資料2にそれが書いていないわけなんですが。届出者は何らかの意図、目的で輸入したいということではあるともちろん考えますけども、そこは、今回、考慮しなくてよいというのが1点。
 もう1点、今回、その届出が、内容によっては生態系への影響がないかもしれないというお話だったと思うんですが、結局、1回、輸入したいという届出があった際には、特定外来生物に指定するか否かという判定をするということになっていますので、先ほど法律の概要についてご説明しましたとおり、届出を受理した日から6カ月以内に判定をして結果を通知するということで、特定外来生物に指定するのか、あるいは特定外来生物に指定しないで規制を解除するのかというところをこれから判定する必要があるということになります。
 それで、仮に、特定外来生物に指定しないで生態系などへの被害のおそれがないということになった場合は、この種については、今後、輸入とか、あるいは飼養等の規制がかからなくなってしまうと。飼養等の規制については現在もかかっていないわけですけども、特定外来生物に指定されれば、輸入規制とともに飼養等が規制されることになります。
 なので、規制がされない場合はいろんな目的で今後は輸入がどんどんされてしまうというおそれがあるということですね。そのあたりを踏まえて、今回、生態系への被害のおそれがあるから指定するのか、あるいはしないのかというのをご議論いただければと思います。

【長谷川座長】 今のご説明で、1点、大事なことがあったと思いますが、輸入届出の概要のところでは、どのような用途でこの動物を輸入するかということについて理由は問わないというご説明がありました。ということになりますと、理由が問われない以上、今、先ほど石橋委員が懸念されたようなことというのは、ここで議論のしようがないということになると思います。ですから、あくまでも、被害の実態、あるいは生態系への影響がどのくらいであるかという点に関して議論するということで進めたいと思いますが、いかがでしょうか。

【石橋委員】 これは今後の話として非常に重要で、輸入申請がされたときにどういう議論がされるか、その結果、どういう答えが出ていくかということが、また、その輸入する可能性のある人々が絶えず認識しなければいけない問題ですので、ここで、つまり、もう、その動物が申請されて、仮に成田に到着して、成田の箱の中にいるという生き物は、日本の国土に入った以上は、もうこれはヤンバルの森にもぽんといるのと同等のリスクとして考えて、その土俵の上で、ではこの生物として定着したときにはどうなるかという議論のみを中心にここで判定するというのがこの会議のありようであるということが重要なわけですね。その土俵に立って話をしていけばいいわけですね。ありがとうございました。

【長谷川座長】 そのような認識で進めたいと思います。

【田中専門官】 事務局の方から。安川委員の方からも、在来のトカゲ類などと競合するおそれがあると。あるいは、本州は日本でも南部の方に定着するおそれがあるというようなお話がございましたけども、今回の評価というのはそのような方向で考えてよろしいかというのをお聞きしたいと思います。

【長谷川座長】 いかがでしょうかね。バハマですと、サグレイとカロリネンシス、アングスティケプスで、3点セットで、地上から木の幹、そして木の上の方、そして枝先という形で、樹上性のニッチを3等分する形で占めているという形なので、この種類が日本に入る余地がまだあるという点においても、また、その枝先にある固有の昆虫類といったものが、小笠原で実際に起きたような形で影響を受ける可能性も懸念されるということであれば、予防原則という、未判定外来生物の判定の基準にのっとって判断するのが妥当ではないかと考えます。
 そこで、今回、当爬虫類・両生類会合としましては、アノリス・アングスティケプスを、資料3のとおり、生態系に係る被害をもたらすおそれがある生物であるため、特定外来生物に指定すべしとの結論を得たいというふうに思いますけども、いかがでしょうか。

(異議なし)

【長谷川座長】 それでは、事務局の方から、今後どのようなスケジュールで指定に向けて作業されるのかということについてご説明をお願いいたします。

【田中専門官】 それでは、指定に向けたスケジュールについてご説明いたします。
 今回、爬虫類・両生類グループ会合として、特定外来生物に指定する種という結論をいただきましたので、この後、特定外来生物等専門家会合、いわゆる全体会合のご意見を聴取する必要がございますが、スケジュールで、6カ月以内に判定して通知しないといけないということもございますので、この1種について、各分類群の座長の先生方を集めて会合を開くということを考えますと、全体会合の座長ともご相談しました結果、意見聴取要領のただし書きに定められております、文書による意見聴取という方法をとりたいと考えております。
 全体会合の委員の先生方には、今回の議論の結果を資料とともにお送りいたしまして、文書による意見聴取を行います。その後、特定外来生物の指定というスケジュールについては、これまでの第二次選定などと同様に、指定に係るパブリック・コメントであるとか、あるいはWTO通報などの所要の手続を踏まえまして、届出を受理した日から6カ月以内に指定に向けた取り組みを進めていくということになります。
 また、そのパブリック・コメント等の結果を踏まえて検討するということになると思います。
 以上です。

【長谷川座長】 ただいまスケジュールの説明がございました。
 それでは、続いて議題(2)、その他とございますけども、事務局の方で特に具体的な議題はないと聞いております。
 委員の方から何かございましたらご発言をお願いしたいと思います。
 よろしいでしょうか。
 特に意見がございませんようですので、以上をもちまして第5回特定外来生物等分類群専門家グループ会合(爬虫類・両生類)を閉会いたします。

【田中専門官】 どうもありがとうございました。