1 日時 |
平成17年5月23日(月)14時~16時 |
2 場所 |
新宿御苑インフォメーションセンター2階 |
3 出席者 |
(委員)長谷川 雅美(座長)、石橋 徹、千石 正一、安川 雄一郎 |
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(環境省)野生生物課長、生物多様性企画官、自然ふれあい推進室長、移入生物専門官 |
(農林水産省)水産庁生態系保全室長 |
4 議事概要 |
(事務局より委員交代の報告、資料の説明)
<第二次以降の特定外来生物等(爬虫類・両生類)の選定について
- 要注意外来生物リスト(暫定版)について全体会合でどのような整理があったのか。
- (事務局)要注意外来生物リスト(暫定版)は、普及啓発のために作成したもの。他の分類群では被害に係る知見が明らかでないために指定しないもののほかに、ある程度被害の知見が明らかだが、利用の実態を踏まえる必要があるものも含まれており、分かりにくいとの指摘がある。今回の暫定版のリストは、第二次選定が終わる段階でわかりやすく再整理し、改めて公表することになっている。
- 第二次選定にあたっては、被害に係る文献がなくても生物学的根拠を記述し、検討にあたっての根拠とするということだが、生物学的な情報源はどのように提示していくのか。
- (事務局)第二次選定では、検討対象種全てについて個表として被害の知見や利用の情報を入れている。文献がないものは専門家の意見やこの専門家会合での指摘などを入れていきたいと思う。
- 根拠について、できるだけ正確に科学的根拠という形で提示するべき。
第二次選定に際しての留意点と進め方について
- 資料6に「遺棄防止のための普及啓発を先行して実施する」とあるが、具体的にどういうことか。
- (事務局)外来生物を取り扱っている方々に遺棄防止の普及活動をしていきたいと考えている。具体的にはこれからである。
- 資料5で「非意図的導入は意図的導入と比較して少ない」とあるが、爬虫類ではヤモリ、両生類ではシロアゴガエル、コヤスガエルなどが観葉植物のような物資にくっついて来る。遺棄防止のための普及啓発と同時に、そのような持ち込みを防ぐための普及啓発もやってもらいたい。
- ヤモリやカエルなどは建築資材、造園資材など工事の資材に関連して運ばれることが多い。八丈島の例では植木に付いてきたとされる。国内移動でも非意図的導入による帰化が多く起きている。ヤモリやシロアゴガエルなど分布の拡大に対する非意図的導入の影響はかなり大きいと考えた方がよい。注意喚起が足りないと思う。
- 普及啓発については、愛好家の中にこの法律を知らない人もおり、具体的にどうしたらよいか分からない人も多い。一般人への周知の努力を力を入れて行うべき。
- (事務局)非意図的導入に対しても規制による効果は大きいと考えている。流通を防ごうという呼びかけがしやすくなる。普及啓発については各業界団体に対して個別に説明会を実施しており、DIY協会等にも協力要請をしている。ホームページだけに限らず、いろいろな形で普及をはかりたいと考えているので適切な対象団体等があれば教えていただきたい。
- 資料5について、非意図的な導入は少ないではなく、潜在的な危険性は大きいといった趣旨の文面にしてはどうか。
- 非意図的に導入される種類は限られるので、「種類は少ないが影響は大きい」という形で考えた方が良い。
- 今の意見をもとに事務局の方で考えていただきたい。
- 資料6今後の検討の進め方において、当面は駆除について検討はされないのか。
- (事務局)資料6は第二次選定をするにあたっての説明であり、第一次で選定されたものに関しては個別に防除の方法を検討している。
- 資料5の「生物学的特性と被害に対する知見」で両生類ではカエル類の記述だけがあるが、この段階でカエル類だけというのはどうか。他の潜在的なリスクがあるものについても入れておく方が良い。
- カメ類について、繁殖能力は種によってかなり違うのでひとくくりにはできないが、大きく成長すると捕食者がいなくなることと、長寿のため生涯産卵数が非常に多いことで、結果として影響が大きい。
- カメ類についても見かけ上は低リスクであっても、新たに遺棄された個体によって定着の機会が増すなどのリスクがあることを認識した方が良い。
- 今の意見をもとに事務局の方で整理していただきたい。
第二次選定の検討対象種について
〔ミシシッピアカミミガメ〕
- (事務局)事務局としては、アカミミガメは各地で定着しているが被害に係る知見が明らかでないことから、今回は選定しないこととしたい。また選定されると大量に遺棄されるおそれもある。
- カメ類について「いくつかの種類に逸出個体が見られる」とあるが、これは今回検討対象種にあげられたもの全てに該当する。
- アカミミガメの分布が拡大している背景には、野外で再生産されている個体より遺棄されている個体の方が圧倒的に多いことがある。遺棄を防止すれば、かなり効果がある。
- 見つかる個体群を見ると幼体が極端に少なく、大型のメスが多いので、大きくなり手に余って捨てているのだろうと推測できる。
- 大磯丘陵のアカミミガメの調査では、個体数は多いがマークをつけた個体が再捕獲されていない。自力再生産ではなく、遺棄されることで個体群を維持している。繁殖しているとは思うが、親がいるからといって全ての場所で繁殖しているかは分からない。
- 個人が遺棄しただけでは考えにくいほど急激に増えているので、この例では夜店での余りものが遺棄されたものもあると考えられる。ストックの際に保温のコストがかかるため、冬場に捨て、暖かくなったら幼体を仕入れ直すといったことが普通に行われている。
- 大量流通には商業的なものが絡んでいる。露店ではヤエヤマイシガメをイシガメとして売っているところがあり、大量に入ってきている。大量流通する業者について目を光らせる必要がある。
〔ヒョウモントカゲモドキのクリプトスポリジウム感染〕
- ヒョウモントカゲモドキが野外に定着しなくても、室内で飼育することで、クリプトスポリジウムが野外に放出され、日本の生態系に影響を与える可能性がある。クリプトスポリジウムは糞便からの水系汚染により広がっていく可能性が高い病原体で、近代都市の下水処理でも殺滅することは不可能。ヒョウモントカゲモドキそのものが野外に出る、出ない以前の問題である。媒介の可能性のある動物の調査など、先行して疫学調査の研究結果を待たなくてはいけない部分もあるが、こういった側面の理解は重要。野外のホオグロヤモリなどの個体が餌を求めて室内飼育個体と接触する可能性があり、クリプトスポリジウム感染の可能性が高い。沖縄本島で捕獲されたホオグロヤモリから検出された例が一例ある。ただし研究室内で感染した可能性もある。米軍関係者には爬虫類愛好家が多い。
- 輸入される野生爬虫類が罹る伝染病の多くは一過性だが、ヒョウモントカゲモドキは飼育ストックが国内で多く、その中でクリプトスポリジウムもストックされてしまう。また、国内流通が盛んでネット通販のような形で全国に流通している。輸入だけでなく、国内移動によっても病原体が運ばれてしまうということが問題である。また、故意に発症個体を売るということが現実に行われている。
- 今の指摘をもとに、資料6に「飼育動物を通じた野生種への感染症リスクの増大を防止する」といった文面を追加したらどうか。
- 法律の主旨からしても、絶滅させるおそれのある病気に関したことを入れるのは当然。
- ヒョウモントカゲモドキだけでなく、他の動物でもクリプトスポリジウムの問題はあり、飼い方や飼う場所についての指針・基準がなければ、野放しになるおそれがある。また、インターネットによる売買も多く、中には違法性が高いものも見かけられる。問題があることを広く社会的に呼びかける必要がある。政府の方にも何らかの働きかけを求める。
- クリプトスポリジウムの問題を指摘したが、この問題をヒョウモントカゲモドキの規制を強化するというニュアンスでとらえられると問題である。重要なのは、この問題は爬虫類に共通した問題であるということである。この問題をこの法律で扱うのは難しいが、取り上げてもらうことはありがたい。それを受けて、地方条例等で対応してくれることを期待したい。
- (事務局)この法律でどこまでできるかは難しいが、動物愛護管理法の中でカバーすべき点があると思う。国会で検討している案の中ではインターネット販売業者も取扱業者として規制の対象となる。具体的な飼い方までの指針・基準作りは難しい。感染の脅威に関して認識しているが、もう少し情報を整理したい。
〔ウシガエル〕
- オタマジャクシを中心としてペットとしての流通があり、それは通常の両生類・爬虫類の販売とは別のルートである。流通に関してペット用としての記述がないので個表に入れてもらいたい。コヤスガエルについてはペット用の流通は聞かないが、コキーコヤスガエルとは別の種類がたまに輸入されることがある。
〔チュウゴクスッポン〕
- チュウゴクスッポンについては、中国から大量に子供が輸入されている。日本本土で養殖されているスッポンのほとんどはニホンスッポンであるとされてはいるが、その中に外国産のスッポンが含まれている割合は高いと思う。なお、幼体時からニホンスッポンとチュウゴクスッポンの見分けは可能である。
- 今回検討対象種にあげられたカエル類については、カエル類が増えることによってカエルを餌資源とする上位の種が増え、何らかの影響を与えることが考えられるので、資料5の被害に関する知見にそのような点を入れてもらいたい。
- アカミミガメについては、指定に伴い遺棄が増えるとの理由で今は選定候補にしていないが、定量的なリスク評価をするべきではないか。
- アカミミガメを指定して輸入を禁止しても、カメ類全体の輸入を禁止しないと代替のものが入ってきてしまう。また、指定しても遺棄のおそれがある。指定する・しないの議論に終始するのではなく、どうやって外来生物による被害を防ぐかという根本に立ちかえる必要がある。
- アカミミガメの情報の中で「韓国やヨーロッパ諸国では輸入を禁止している」とある。日本でも輸入だけ禁止することはできないのか。大量に入ってくるのが問題なので、輸入を許可制にするなどの輸入制限はできないのか。
- 今の指摘について、韓国の状況など、どのような法整備がされて輸入禁止となったのかの検討は重要なので、情報に入れてもらいたい。
- (事務局)正確な資料は次回までに用意するが、韓国では輸入禁止だけでなく、国内の飼育等も禁止と聞いている。WTOの関連では、国内生産ものと輸入ものとを基本的に同じ条件で扱うという貿易の考え方を前提に制度を作っているのが現時点での状況。
- 輸入量が100万匹というのは突出した量である。第二次選定での検討は当然だが、何らかの形で輸入そのものを禁止しないと、大量の個体がさらに入り続ける。
- この法律は国内移動の問題については扱えない。国内移動は本来条例で扱うのになじむ内容である。今後の課題として、国内移動について各地方自治体で対処すべきであるという内容を盛り込めないか。
- (事務局)国と地方自治体の関係でいうと難しい。いくつかの県の条例では外来種の問題を扱っている。法律にならった形で条例化がすすむことを期待する。地方自治体との関係を重視し、情報提供もしていきたいと考えている。
まとめ
- 一部文案の変更の指摘もあったが、資料6の今後の検討の進め方に沿って検討を進めていく。
(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり)