1. | 日時 | 平成17年5月13日(金)16:00~18:19 | |
2. | 場所 | 環境省第1会議室 | |
3. | 出席者 | ||
(座長) | 角野 康郎 | ||
(委員) | 岡野 邦夫 黒川 俊二 高橋 新平 矢原 徹一 |
勝山 輝男 小林 達明 濱野 周泰 |
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(利用関係者) | (雑草リスク評価関係) 独立行政法人 農業・生物系特定産業技術研究機構 畜産草地研究所 主任研究官 西田 智子 (緑化植物利用関係者) 中野緑化工技術研究所 所長 中野 裕司 |
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(環境省) | 名執野生生物課長 上杉生物多様性企画官 中島自然ふれあい推進室長 長田移入生物専門官 |
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(農水省) | 更田花き対策室課長補佐 | ||
(林野庁) | 佐古田森林保護対策室室長 | ||
(水産庁) | 近藤生態系保全室課長補佐 | ||
4. | 議事 |
【環境省 名執課長】 野生生物課長の名執でございます。
本日は大変お忙しいところを、また、夕方の遅い時間から、この特定外来生物の植物専門家グループ会合、第3回会合にご出席いただきまして、ありがとうございます。
また、先生方には、外来植物の関係を初めとしまして、野生生物の保護にいろいろ日ごろよりご助言、ご協力をいただいていることを、この場をお借りして御礼申し上げたいと思います。
昨年の11月から今年の1月にかけてご検討をいただきました第一次の指定の関係でございますけれども、ここの植物のグループ会合で指定するのが適当とされた水草類3種につきましては、ことしの1月31日の全体専門家会合でこれを第一次の指定候補とすることが適当ということになりまして、ほかの37種類とともに2月にはパブリックコメントにかけられまして、この結果が4月5日の全体専門家会合で再度検討をされて、この37種類の指定については、特に変更の必要がなしということで、この特定外来生物の指定に係る政令案につきまして、4月22日に閣議決定が行われて、その後、政令の公布が行われまして、6月1日からこの外来生物法が施行されるということになっていることをご報告しますとともに、第一次選定に当たりまして、先生方のご協力に厚く御礼申し上げたいと思います。
また、これから第二次の選定作業が始まるわけでございますけれども、第一次指定が水草3種だけだったということで、陸上の植物をどうするかというようなこと、それ以外に特に緑化の植物の扱い、あるいは園芸植物の扱い、雑草の扱い、それから、外来植物に関する影響評価の仕方をどのようにするかというようなこと、検討していただかなければいけない事項が多々あるかというふうに思っております。事務局といたしましては、7月末を目途に、第二次指定の候補が選ばれればというふうに考えているところでございます。
本日は、第二次指定に向けての第1回目の検討ということで、先ほど申し上げた課題などにつきまして、選定の考え方についてのご議論をいただきたいというふうに考えているところでございますので、忌憚のないご意見をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【長田専門官】 それでは、議事進行につきましては、角野座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【角野座長】 それでは、これより本日の議事に入らせていただきます。よろしくお願いいたします。
議題1は、特定外来生物等(植物)の第二次選定についてということになっております。前回までの会合では、第一次の特定生物の植物3種を選定するという作業を進めてきたわけですが、きょうから第二次の選定に入るわけです。それに先立ちまして、その後の状況説明も含めまして、今後の進め方について、事務局から説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【環境省 中島室長】 それでは、私の方から説明をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。座って説明をさせていただきます。資料の1から7まで一括してご説明したいと思います。
スケジュールにつきまして、まず、資料の1をごらんいただきたいと思いますが、先日、4月5日に第3回全体専門家会合が開催されまして、第一次選定種37種類についてパブリックコメントの結果の報告の後、その37種類を選定するという最終的な確認をいただいたところであります。そのときに第二次指定、第二次以降のその特定外来生物の指定について、これから進めていくということが確認されているということでございます。6月1日に法律が施行されますが、これを挟みまして7月の末までの間に、それぞれの分類群ごとの会合を開催させていただきまして、第二次の特定外来生物の選定の検討をしていただきたいというふうに考えております。法律の施行が6月1日ですけれども、その少し後、6月9日に第4回の全体専門家会合を予定しておりまして、そのときにそれぞれの分類群ごとのグループ会合の結果を報告をしていただくというようなことを考えております。7月の下旬に最終の第5回の全体専門家会合が開催を予定していますけれども、このときに専門家会合としての結論を出して、第二次のリストをつくるというふうに考えております。
パブリックコメント、それからWTO通報につきましては、その後、手続をいたしまして、最終的には12月ごろと考えておりますけれども、政令の公布をやっていくというようなのが、今回第二次の選定フロー、スケジュールということになっております。
それから、続きまして、資料2でございますけれども、4月5日の第3回全体専門家会合におきまして、第二次選定、これから進めていくということが確認されたわけですけれども、そのときに今の全体の考え方を整理したのがこの紙でございます。
簡単にご説明いたしますが、第一次選定を踏まえた検討対象の考え方ということで、第一次選定につきましては、条件が整っている37種類を選定したと。第二次の選定においては、第一次選定のときに要注意外来生物リストというのを、暫定版ということで整理をさせていただきましたけれども、これを主な検討対象とすると。それから、新たに知見が得られたものや、IUCNのワースト100リストに掲げられた生物などについても検討対象として取り上げていくということで、検討の母集団については、大体ここに挙げられているような種類を検討の母集団としていこうということでございます。
それから、その次の丸につきましては、基本方針におきましては、ほかの法令の措置で外来生物法と同じような規制がなされていると認められているものは選定の対象としないというふうに整理をされているんですけれども、科学的な知見がないというようなことによって、ほかの法令の規制対象かどうか明確でないものもあるということで、そういったものについては規制対象とする可能性がないかどうか検討しようということになっております。具体的には植物防疫法の関連でこういったものが出てくる可能性があるということでございます。
それから、セイヨウオオマルハナバチにつきましては、第二次選定のスケジュールとは少し別に、年内程度を目途に指定についての検討作業を進めるということで、先ほど小グループ会合が行われましたけれども、ことし、野外における被害について、その知見を集めるということで、今年度行う調査について検討がなされております。これについては第二次選定のスケジュールとは別に行われるということでございます。
2番ですけれども、選定に当たっての検討方法ですが、第二次選定におきましては、第一次選定の場合は、文献によりましてしっかりとした知見があるというものを中心に選定作業を進めたわけでございますけれども、第二次選定におきましては、専門家会合の討議によって、生態系等の被害が確実と推定されるようなものにつきましても、生物学的な根拠を記述しつつ、選定の検討に当たっての根拠として採用していきたいというふうに考えております。
それぞれの分類群ごとにこの考え方を踏まえて、「外来生物の特徴と選定に際しての留意点」というものを、第一次のときにもつくっておりますけれども、これを改訂しながら、検討を行っていきたいというふうに考えております。
これが分類群共通の基本的な考え方ということでございます。
続きまして、資料の3でございますけれども、第二次以降の特定外来生物等の選定の作業手順という資料でございます。これにつきましても、第一次の選定のときに、同様の資料をつくっておりまして、特定外来生物の選定に関して、被害防止基本方針の中で基本的な事項が書いてございますので、それを抜粋しつつ、それをもう少しかみ砕いて記述していると、そういう資料でございます。
前回、第一次のときと変わっているところがありますので、そのあたりを中心にご説明をしたいと思いますが、特定外来生物の選定に関する基本的な事項ということで、対象になるものが、おおむね明治元年以降に導入されたものであるとか、あるいは個体として識別可能な大きさを持っているものだとか、ほかの法律で同じような規制の対象にしていないというものを、選定の前提とするということですけれども、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、要注意外来生物の暫定版のリストを主な検討対象として、さらに新たに知見が得られたものとか、IUCNのワースト100といったようなものを第二次以降の指定の検討対象とすることとしております。
それから、被害の判定の考え方ですけれども、これにつきましては、以下のいずれかに該当する外来生物を選定するということで、基本方針が書いてありますのは、在来生物の捕食、それから競合による駆逐、それから生態系基盤の損壊、交雑による遺伝的かく乱等によって、我が国の生態系に関して重大な被害を及ぼし、あるいはそのおそれがある外来生物と選定するということでございまして、次のページに参りまして、その結果、重大な被害というものはどういうものかということで、次の状況がもたらされるかどうかを検討するということで、4つ掲げております。
1つ目が、在来生物の種の絶滅をもたらし、またはそのおそれがあること。2つ目が、地域的な個体群の絶滅をもたらし、またはそのおそれがあること。3つ目が、在来生物の生息、生育環境を著しく変化させる、またはそのおそれがある。4つ目が、在来生物相の群集構造、種間関係、または在来生物の個体群の遺伝的な構造を著しく変化させる、あるいはそのおそれがあるということで、こういった状況がもたらされるかどうかというところが、最終的な判定の基準になってくるというふうに考えております。
今のは生態系に係る影響ということで、続いて、人の生命あるいは身体に係る被害ということですけれども、これにつきましては、人に重度の被害をもたらす危険がある毒を有する外来生物、あるいは重傷を負わせる可能性があるものということで、植物の場合は、余り対象がないかもしれませんけども、こういう整理をしております。
それから、農林水産業に係る被害というところですけれども、これにつきましては、農林水産物あるいは農林水産業に係る資材に対しまして、反復継続して重大な被害があるかどうかというものを検討するというふうになってございます。
続きまして、その次のページに、被害の判定に活用する知見の考え方という囲みがございますけれども、これにつきましては、国内の科学的知見も海外の科学的な知見も同じように活用していきたいということでございますけれども、必ずしも知見が十分でない場合がございますので、先ほども申し上げたように、そういった文献がないものであっても、なるべくその情報を集積して、専門家に対してヒアリングだとか、あるいは、この会合における意見等で科学的な知見を十分に活用していきたいと。それでもって、被害あるいはそのおそれの判断を行っていきたいということでございます。
それから、選定の際の考慮事項という3番ですけれども、選定に当たっては、原則として生態系等に係る被害の防止というものを第一義に考えて、さらにその外来生物の生態系特性や被害に係る現在の科学的な知見の現状、それから適正な執行体制の確保、社会的に積極的な役割を果たしている外来生物に係る代替物の入手可能性などという例示なんですが、指定に伴う社会的、経済的影響も考慮して随時選定をしていくというふうにしております。
例えば既に定着して蔓延しているものであるとか、あるいは大量に販売・飼育されているといったようなものは、適正な規制の実施体制の確保ができるかどうかというようなことを検討する必要がありますし、それから、一方、その被害の防止の観点からは効果、そういったものについても効果があるだろうというふうなこともありますので、そのあたりをよく検討していきたいと。
それから、第二次の選定の対象としないものにつきましては、その理由を明らかにしていって、その後、また被害の判定に向けた情報収集、検討を継続していきたいというふうに考えております。
続きまして、その次の次のページに未判定外来生物につきまして記述がございますが、特定外来生物とともに、輸入だけをとりあえずストップするという制度でございますけども、未判定外来生物というものがあります。これにつきましても、この会合の中で選定をしていくということになるわけでございますけども、その選定の前提ということで、原則として、まだ、これまで我が国に導入された記録がないもの、あるいは、少し入っているかもしれないけれども定着していないあるいは輸入されていない、といったようなものをこの選定の対象とする、と。
もう一つは、先ほどと同じですが、ここはちょっと省略しますが、選定対象となる外来生物ということで、(2)ですけれども、これにつきましては、ある特定外来生物と似た生態的な特性を持っているものということで、そういったものを原則として特定外来生物が属する属の範囲内で種を単位として、一定必要に応じて属かあるいはそれらの一定の生物分類群を単位として選定するというふうにしてございます。ここは第一次選定のときと変わってございません。
最後に、種類名証明書添付不要生物とあります。最後のページですが、これにつきましては、特定外来生物あるいは未判定外来生物に該当するかしないかの判断を容易にするということで、種類名証明書の添付をしていただく必要があるものを選定していくことにしております。これにつきましては、未判定外来生物につきましては、生態が似ているものということですけれども、種類名証明書添付の方は、形態が似ているものと、そういうものを種類名証明書添付、ここでは不要生物とありますが、裏返しでございまして、不要生物の選定をするということは、逆に証明書の添付が必要なものを選定するということでございます。
以上が特定外来生物等の選定の作業手順でございます。第一次のときと基本的にはそれほど変わってございませんが、おさらいの意味を含めまして説明をさせていただきました。
続きまして、資料の4でございます。これが「外来生物の特徴と第二次選定に際しての留意点」ということでございまして、資料、ちょっと、(案)というものを書き漏れてございますが、(案)でございます。失礼いたしました。
それで、植物に関しまして、幾つか今回その特定外来生物を選定していく上で必要な情報をまとめてございます。
まず、1番として、特徴と選定に際しての留意点ということで、幾つか項目を挙げておりますが、まず1番目、導入形態・利用形態というところでございます。外来植物には、農業、園芸、緑化などの目的で意図的に我が国に持ち込まれているものが多数ある、と。同時にその家畜用飼料等の輸入に伴って非意図的に導入されているものも多いという現状でございます。意図的に持ち込まれているものにつきましては、流通量、利用量等について、概略を把握することが可能ではないかというふうに考えております。
2番目が生物学的な特性と被害に関する知見ということでございますけれども、観賞目的で栽培されている水草などが逸出して野外で増加して、希少な植物の生育地で増加する例が見られている。
それから、緑化の目的で使用される外来植物が、使用場所からの逸出によって生態系に影響を与えるおそれがあることは指摘されております。ただ、植物の種数は非常に多くて、その全貌につきましてはまだ明らかとはいえないという状況にあるということでございます。
それから、関係する他の法令でございますけれども、外国から輸入される植物は、植物防疫法によりまして検疫を受けることが義務づけられているんですけれども、寄生植物などの一部の植物を除いては輸入が禁止されるというものではないということでございます。
4番が規制により期待される効果ということですが、意図的に導入される外来植物につきましては、本法の規制によりまして、新たな輸入を規制する、あるいは、一部地域で定着したものの人為的な移動を防ぐということで、被害の防止に一定の効果があると考えております。
それから、非意図的に導入される外来植物の移動につきましては、本法の規制によりまして、直接効果があるというものではないんですけれども、非意図的に導入されていても、それが今度は意図的に導入される、あるいは被害が拡大するという、そういう可能性だとか、防除の必要性などを検討する必要があるということでございます。
最後に利用形態・導入形態ごとの特徴ということで、4つの区分、第一次選定のときにも、この4つの区分をしたんですけども、この4つの区分ごとに特徴を述べておりますが、まず、最初に水草でございまして、日本に輸入されております水草の種類はどんどん増加している傾向にあります。それが野外でふえて、希少な植物の生育地で増加する例が見られているということでございますが、水草はほかの植物と比較しますと、水を媒介に短期間で広範囲に広がる傾向があるということとか、多様な栄養繁殖手段が発達しておって、増加の速度が早いというようなものが特徴でございます。法律に基づきまして規制を行うことが影響防止の上で効果的であろうというふうに考えられます。
2番目が園芸植物(陸生)というふうにしておりますけども、水草と同様に、その数多くの園芸植物が輸入されておりますが、現状では、定着して悪影響を及ぼす種類は限られておって、定着してもそれほど長期間にわたって群落を維持するということがないというものも多いということでございます。
3番目が緑化植物でありまして、工事法面の早期緑化などに用いられてきた外来の緑化植物が、在来の植物相に影響を与えられているということが指摘されております。現状では、外来植物にかわって地域性に配慮した在来植物を緑化に活用することというのは、経済性、あるいは生産量、生育性等の観点から少し難しくて、直ちに緑化用植物の輸入あるいはその使用を規制することは容易でない状況にあります。
最後、雑草ですけれども、非常に多くの雑草がある中で、自然生態系の中に進入して、植物相に影響を及ぼすものがあるというものが指摘されております。雑草につきましては家畜用飼料に混入するなどして、非意図的に導入されるものが多いという現状でございます。
次のページからさらに水草、園芸植物、それから緑化植物、それと、雑草に関する留意点ということで、それぞれの区分ごとの現在の使われ方だとか、あるいはその植物的な特性だとか、そういったものが記述を少し詳しくしておりますけども、きょうは余り時間がございませんので、先ほど大ざっぱに説明したことで代表させていただきまして、資料の方は後ほどごらんいただけたらありがたいと思います。
続きまして、資料の5でございます。
ただいまの第二次選定に際しての留意点を踏まえまして、今後の検討の進め方について、ペーパーにしてございます。すみません、これにつきましても(案)がなくなっていますけども、(案)というものを書いていただきたいと思います。失礼いたしました。
それでは、今後の検討の進め方について(植物)ということですけれども、特にこの紙で今後の第二次選定の検討をどういうふうに進めていくかということを、事務局の考え方として示しております。
まず、一番最初の黒丸ですけども、外来植物は利用形態、導入のされ方に応じて、下記のとおり(1)から(4)のグループに分けて、グループごとに生態系等に係る影響を評価する仕組みを、グループ間の整合性にも配慮しながら構築しつつ、早急に規制を行う効果が高いものから優先的に選定作業を進めることが必要であるというふうに考えております。
2つ目の黒丸ですが、繁殖能力や環境への適応力が高いことなどによって、在来の固有種、あるいは希少な植物の生息環境に侵入し、地域的な絶滅をもたらしたり、植物群落の構造を著しく変化させるおそれがあるものについて選定作業を進めるということを基本にしたいと思います。
科学的な知見が十分でないとされるものにつきましても、被害の予防の観点から、利用関係者に対して管理されている施設や場所以外に逸出、遺棄しないようにするなど、取り扱いに際して注意を喚起するとともに、引き続き科学的知見の充実に努めると。これにつきましては要注意外来生物のリストの整理のような形で行っていきたいということでございます。
最後の黒丸が、国外において大きな被害を発生させた外来植物であって、国内に未定着のもののうち、日本の環境条件下において定着の可能性が高いもの、これにつきましては、利用形態、導入のされ方によらず、規制あるいは被害の予防の効果が特に大きいというふうに考えられますので、これにつきましても積極的な選定作業を進めていきたいということでございます。
以上が総論でございまして、次に、水草についてどうするかということですけれども、水草については、ほかの種との競合により、広範囲にわたって優占種となって、在来の植物の個体群の存続を脅かす水草類で、自然性の高い生態系に侵入して被害をもたらすもの、これにつきましては対応の緊急性を考慮して選定作業を進めてまいりたい。なお、被害に係る指摘はあるものの、広範に販売、栽培等がなされて、直ちに規制をかけることが容易でない状況にあるもの、これについてはその扱いについての情報を別途整理することとしたいと考えています。
2番目の園芸植物ですけれども、園芸植物につきましては、生態系等に係る被害の防止の観点から、影響を評価する仕組みを構築していきたい。侵略的な外来植物として、ほかの種との競合によって、広範囲にわたって優占種となって、在来の植物の個体群の存続を脅かすなど、生態系に重大な被害をもたらしているものが明らかなものについて、法律に基づく規制を行うことは効果的と考えておりまして、園芸植物で自然性の高い生態系に侵入して、在来の植生構造を著しく変化させるなどの重大な被害をもたらすものがあれば、対応の緊急性を考慮して選定作業を進めていきたいと考えております。
次が、緑化植物でございますけれども、緑化植物につきましては、外来生物法の、国会、衆議院の環境委員会におきまして附帯決議がなされておりますし、また、中央環境審議会の外来生物小委員会の委員長談話というものがありまして、その中で指摘をされております。その指摘の内容はその下の参考1と2にございますけれども、参考1の方は、衆議院の環境委員会、16年5月25日ですけれども、附帯決議として、政府に対して本法の施行に当たって次の事項について適切な措置を講ずべきであるということで、「政府や自治体が行う緑化等の対策において、外来生物の使用は避けるよう努め、地域個体群の遺伝的攪乱にも十分配慮すること」ということが言われております。
それから、参考2の方ですが、岩槻委員長談話というふうに呼んでおりますけれども、「地域に特有の生物多様性を保全する必要のある地域において緑化植物を用いる場合には、単に外来植物の利用を避けることだけに注目するのではなく、在来種と同種の外国産植物の利用に起因する遺伝的攪乱のおそれにも留意するため、地域の生物多様性の現状に応じて総合的な緑化対策のあり方を検討し、実施していくことが必要と考えます」ということが述べられております。
この2つのことを踏まえまして、環境省、農林水産省、国土交通省の関係3省が連携して、生態系等に係る被害の防止の観点から、緑化植物の利用実態の把握、それから、緑化植物による生態系等への被害の発生構造の把握、代替的手法や代替的緑化植物の適用可能性の検討など、緑化における外来植物の取り扱いに関する総合的な検討を進めることにしております。このため、これらの進捗を踏まえつつ、継続的に検討を行うものとするというふうにしております。
今申し上げました各省の連携による取り組みと申しますのは、具体的には、環境省、国土交通省、農林水産省の3省で、国土交通省につきましては都市地域整備局それから道路局、河川局、港湾局、この4部局、農林水産省につきましては、農村振興局、生産局、林野庁と、この2局1庁ですね、それと環境省の自然環境局を研究会のメンバーといたしまして、先ほど申し上げましたような各省の関連公共事業において、緑化植物がどのように使われているのかという利用実態の把握ですとか、緑化植物による被害の発生構造を把握することですとか、それから、代替的手法あるいは代替的な緑化植物の適用可能性に関する検討ですとか、こういったことを3省で情報交換をしながら進めていきたいというふうに考えておりまして、昨日、早速この研究会の準備会合を開催したところであります。既にそれぞれの省庁において取り組みを進めておるところもありますので、そういった情報をまずは情報交換をしたということでございます。
そういった政府側の取り組みをまずは取り組みとして進めてまいって、その進捗を専門家会合に報告することにしたいと思いますけれども、それらを踏まえて継続的に検討を行っていくというふうにしてございます。
それから、4番目の雑草ですけれども、雑草につきましては、非意図的なものが多いということで、今回の法律の規制になじむものが少ないということですけれども、生態系等に係る被害の観点から影響を評価する仕組みを構築すると、その必要があるということと、一方で非意図的なものであっても、導入のリスクを低減するということとか、防除の必要性が高い地域で計画的に防除をやるといったことは検討をする必要があるだろうと。ですから、深刻な被害を与えるものについては、優先的に選定作業を進める必要があるだろうというふうにまとめております。
以上が今後の検討の進め方につきましての説明でございました。
続きまして、資料の6でございますけれども、最初の方でご説明いたしましたように、今回は選定の対象、検討対象とする母集団が、幾つかの要注意外来生物リストと、それからIUCNの100のリストというふうにございまして、それをすべての分類群をまとめてありますけれども、例えば資料の1枚目ですと、これは第一次指定を上段に掲げております。
継続検討中のものとしてセイヨウオオマルハナバチがございまして、要注意外来生物リスト(暫定版)というものが真ん中あたりにございます。ここに掲げられております種類が、当面、主に検討の対象とするというものでございました。
そのほか、一番下には、その他(新たな知見が得られたもの等)というものがございまして、専門家の方々との意見交換によって、新たに情報が得られたもの等につきましてここに掲げておるということでございます。植物につきましては、暫定版ですけれども要注意外来生物リストに掲載されているものが60種、新たな知見が得られたものとして3種類をここに掲げております。
次の紙が、IUCNがまとめた、「世界の侵略的外来種ワースト100」の掲載種の一覧です。これにつきましては、この中で既に一次指定あるいは要注意外来生物リストに載っておるものがございます。そのほか、今回、外来生物法の対象にならなかったものとして、植物防疫法の対象種、在来の生物あるいは明治維新以前に導入されている生物、感染症に関係するもの、それと微小生物というものが対象外ということで、それを除いて、上記以外という部分で、この網かけになっている部分が検討対象というところでございます。ほとんど植物でございます。植物で25種類でございます。
それから、最後の3枚目が、これは日本生態学会の方でまとめられております、「日本の侵略的外来種ワースト100」のリストを区分しておりますけれども、これにつきましても、同じように第一次指定、それから、要注意外来生物リストと植物防疫法対象種、在来生物、感染症関係、微小生物を除いて、上記以外というところが対象になるということでございまして、これにつきましては植物で5種類ということでございます。ここに掲げてあります種の中で網かけになっている部分が、今回第二次選定でやはり検討対象としていきたいというものでございます。
それから、資料7でございますけれども、繰り返しになりますが、もう一度スケジュールについて、確認をしておきたいと思いますが、本日、5月13日の第3回の植物専門家会合で、外来生物の特徴と第二次選定に際しての留意点という紙、あるいは進め方についての検討をいただくということで、6月1日を予定しておりますけれども、第4回の、次回の植物の専門家会合につきまして、影響評価の構築に向けた課題の整理、あるいは第二次の選定が必要と考えられる生物に係る情報についてを資料として出して検討していただきたいと。
その後、全体会合を挟みまして、6月ないし7月に最後の植物の専門家会合ということで、このときに第二次の特定外来生物としての選定が必要と考えられる生物に係る情報と評価について、それから生態系等に係る被害の影響評価の枠組みの考え方について、緑化植物に関する総合的な取組みについての状況報告といったようなことをやっていきたいと。ここで専門家会合として第二次指定で何をリストアップするかを検討していただきたいと。その結果をもって、7月下旬の最終の全体専門家会合でリストを決定するというような形で進めていきたいというふうに考えております。
それから、すみません、参考にお配りしている1枚紙がございまして、これまで第一次選定後、委員の皆様にアンケートで、今後その第二次選定に選定に向けて、どういう植物を検討対象にしていけばいいかという点についてお尋ねをしておりまして、その結果をまとめた横長の紙がございます。それにつきまして、詳細の説明は省きますけれども、水草それから陸生の園芸植物、それから緑化植物、雑草、それぞれにつきまして、区分をして表現してございます。一番右の欄に推薦されている委員の方のお名前を掲げてございます。お一人からの推薦というものもありますし、複数の委員の方から推薦されているというものもございますので、今後の検討に当たっての参考にしていきたいというふうに考えております。
一応、私の方からの説明は以上でございます。
【角野座長】 どうもありがとうございました。
今の資料7まで一度にまとめてご説明いただいたわけですが、このうち、資料5以降の今後の検討の進め方については、質疑の最後の方でまとめて議論したいと思います。
それで、まず、資料4まで、作業の手順ですとか留意点についてのところでご質問等ございましたら、お願いしたいんですが、いかがでしょうか。
矢原さん、どうぞ。
【矢原委員】 確認ですけども、水草の中には水辺の水生の植物を含み、雑草の中には畑地雑草だけではなくて、荒地植物を含むという理解でよろしいでしょうか。
【中島室長】 はい、そうでございます。
【角野座長】 ほかにいかがでしょうか。
資料4までは、全体会合で確認されたこと、並びに植物に関して特に留意すべき点というのをまとめたものであるわけですけども。
どうぞ。
【小林委員】 ちょっと答えにくい質問だと思いますが、資料3の2ページの一番上に、具体的な、「………種の存続又は我が国の生態系に関し、重大な被害を及ぼし、」という内容が4項目にわたって、これ、多分、今回初めて出てきたんではないかなと思うんですが、この最後のところの「在来生物相の群集構造、種間関係」等々という部分ですが、この「在来生物相の群集構造」というのは、具体的にはどういうレベルのこと。というのは、外来生物に明治までさかのぼっておるわけですね。そうすると、江戸以前が在来生物相ということになりますか、そういうような群集構造なのか。要するに現状では既に攪乱が起きている環境というのが、もう相当な範囲ある。あるいは、農林業地域ではもちろんそういうふうな二次的な意味で人為がかかった部分が非常にあると思いますが、そういうものを、これ含むのか含まないのかどういうふうにお考えでしょうか。
【中島室長】 基本的にはどういう種を侵略的なものとして特定外来生物に選定していくかということで、最もわかりやすい例示として、種の絶滅をもたらす、あるいはその地域的に個体群の絶滅をもたらすというものを掲げておりますが、それ以外にも非常に広い範囲で影響があるだろうということで、生息生育環境を変化させるものと同時に、影響がわかりにくいものについても、生物学的には非常に長期間にわたって考えれば影響があるだろうということで、生態系なり生物相の構造をかなり変化させてしまう、絶滅というところまでいかなくても、かなり変化させてしまうようなものだとか、それから遺伝的な構造を変化させてしまうというようなものについて、ここら辺については著しく変化させるというような表現にしておりますけれども、そういったものを対象にするということです。
基本的には、在来生物相というのを明治維新よりも前のものというふうに考えていくのがいいのかもしれないんですけども、これから入ってくるものについて、それがこういった影響を与える、影響を与えるおそれがあるかどうかということを判定するというときに、それは基本的には今あるその生物相なり生態系を対象として考えていかなくてはいけないと思う。それぐらいしかできないと思いますので、特に江戸時代以前の生物相というのを念頭に置いて作業するということではないというふうに考えております。
ちなみに、この4つの基準につきましては、1回目の第一次の選定のときにも、同じこの作業手順の資料で、この4つにつきましては既に記述をしていたところであります。それで、前回、4月5日の全体会合におきまして、委員からご指摘がございまして、4番目の後半、「遺伝的構造を著しく変化させ、」というところを追加してほしいということで、ここの部分が追加になっております。その部分だけは第一次のときとは変わっておりますけども、基本的には第一次のときに提出している資料と同じものでございます。
【角野座長】 そういうお答えでいいでしょうか。
特に、最近入ったものとか、これから入ってくるもので大きく種間関係等を、あるいは群集構造に影響を与えるものを対象にした、主にしているものだと思います。
ほかに。どうぞ。
【矢原委員】 今の件に関する補足意見なんですが、群集構造とか種間関係って、大変わかりにくいんですけども、植物同士の関係と、それから、食物連鎖の食う食われるという関係がかなり生態学的には異質で、植物を食う動物であれ、動物を食う動物であれ、その食物連鎖の中にある関係において、ある特定の種がふえると非常に大きな変化を引き起こす場合がありますので、そういう意味で、ここで書いてある群集構造の種間関係を著しく変化させるというのは、何か特定の、特に食う食われるという関係の中にある種が、急速に分布を拡大するとか、ふえるとか、そういうことというふうに具体的にはとらえることが1つ重要かなという気がするんですが。抽象的にその関係が変わるというよりも、やっぱり特定の種がどんどんふえていく変化に対して評価をして対策をとるというのが基本じゃないかなという気がします。
【角野座長】 どうぞ。
【中島室長】 そこで、その1つの種が、特定の種が分布を、数がどんどんふえて分布を拡大するというその事実関係だけで、すなわち特定外来生物に指定をするというところは、少し飛び過ぎかなということで、我々としてはその間の現象として、ほかの種に対してかなり大きな影響を与えているはずなので、そのあたりをここで少し表現しているということでございますけれども、基本的には矢原先生おっしゃったとおりのことで考えていきたいと思います。
【角野座長】 ほかにいかがでしょうか。
(なし)
【角野座長】 特にないようでしたら、次へ進みたいと思います。
今回からは二次選定なんですけれども、きょうは二次選定をどういう認識を持ってやっていくのか、ただいまの作業手順とか留意点を踏まえてやっていくわけですけれども、この特定外来生物の指定というのは、生態系への被害を及ぼす種を、種に指定していこうということなんですが、指定することによって、非常に大きな社会経済的な影響を与えるという、そういうケースも出てきています。だから、ただ指定すればいいという、そういう問題でもないわけですね。特に代表的なものが緑化植物であるわけです。第一次の選定では、緑化植物は見送ったわけですけれども、第二次の選定では、緑化植物にも影響を与えているもの、非常に問題のある種類いろいろありますので、まず、緑化植物についてどういうふうに考えていけばいいのかといったこと、そういうことについて、やっぱり共通の認識を持ちたいというふうなことがありまして、きょうはそういったことにつきまして、これからどういう考え方でいくのかということ、そういった総合的な枠組みというのをちゃんと踏まえた上でやらないと、個々の種を取り上げてこれが悪い、あれが悪いという話だけでは、問題は根本的に解決しませんので、少し共通認識を持つために勉強したいということで、ちょっと事務局の方に準備していただいています。それで、お三人の方から、ちょっとその辺のところをご説明いただくという手はずになっています。最初に緑化植物の総合的な取り組みに関して、緑化工学会の方から、こういう問題に積極的に取り組んでおられる小林委員の方からご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【小林委員】 資料は、この「生物多様性保全のための緑化植物の取り扱いに関する提言」というのをごらんください。それともう一つ、きょう配られた資料で生物多様性緑化の基本方針8カ条という1枚ものの、真っ白なコピー用紙が入っていると思います。この2つをもとに説明したいと思います。
この提言は、2002年の2月に発表し、印刷しました提言でございまして、この特定外来生物法とは関係なしにつくったものでございます。
まず、ちょっとそのいきさつを簡単に説明しておきますと、まず、緑化植物というのは非常に公益性がある存在でございます。防災であるとか、あるいは景観的なものであるとか、あるいはさまざまな環境機能を果たしているということで、これは、その役割というのは今後とも当然引き続き必要な存在というふうに考えております。しかしながら、たくさんの外来種が使われてきたというのも事実でございますし、それから、植物の取り扱いという意味では、若干ちょっと問題があるんではないかというふうなことも私ども感じておりました。そういう中で、特に生物多様性保全を国家戦略としてやっていくという中で、これは非常に生物多様性と関連がある問題であるから、きちんと研究者の立場でまとめなければいけない問題だということで、この文書をまとめたものでございます。
この文書は、基本的には、公共事業の発注者であります官庁、それから自治体、それから業者、それから国民、それぞれに対して書いたものですが、私たちの主なターゲットというのは、その公共事業の発注者である官庁、自治体、それからさまざまな公団、そういうことが主な対象です。と申しますのは、緑化植物に関しましては、例えばほかの園芸植物とかは違いまして、個人的な利用という局面は余りそんなに多くない。大部分は公共事業で行われているわけです。ですから、その発注者側である官庁が考え方をはっきりさせれば、かなりの部分は解決できるということで、この文書をまとめております。
その内容ですけども、まず、この資料の1ページの提言の目的というところからいきますと、本文のまず5行目のところから、どういう問題が生じているかというのが始まっております。この中で、「緑化植物として導入した移入種」、現在、外来種と言っているものですが、「………が逸出して地域の侵略種になり、在来の植物を駆逐するなど生態系を攪乱する問題が生じている」という認識。それから、次の段落の初めの方にあります、こういう侵略種の問題を避けるために自生種の利用というのが試みられております。それは、従来郷土種というような言葉で言われていたものですが、実際にはその中身には、その郷土種の種というのが、海外産の種がほとんどを占めているというような実態がございます。そういう中で、特にコマツナギなどで顕著なように、遺伝的には相当に違う、別種と言ってもいいんではないかというようなものも郷土種として入れ込まれているというふうなことがありまして、単に郷土種にすればいいということでは、どうもこれは解決しないということがございます。
それから、その次の段落では、伊豆大島のトベラというふうなものがございますが、いわゆる浸透交雑によります影響がある。例えばニシキウツギを植えなさいといって注文したところが、実際にはハコネウツギが植わって、さらにそれらの形質が浸透するというふうなことも起きております。
そういうふうに緑化植物の生物多様性保全にかかわる問題といたしましては、そういう、まず1として侵略的外来種の問題、それから浸透性の交雑の問題、それから外来の系統の導入による在来の地域性系統の遺伝子攪乱の問題と、この3つがあるということで、この3つの問題を総合的に解決することが重要であるというふうな内容になっております。
2ページ以降、細かい説明が始まるわけですけれども、2ページ、3ページ目は今申したことの繰り返しのようなところがございますので、4ページに移っていただきたいと思います。
4ページの3-3に地域についての考え方というのがございますが、これはこれまでその郷土種の利用というのが、国立公園の中でそういうふうな、国立公園の中の特別保護地区、そういうようなところで郷土種を用いるようにというふうなことはあったわけですけども、やはり地域区分といったもの、ゾーニングといったものをきちんとやってほしいというふうなことです。これは例えば従来原生自然環境保全地域であるとか、森林生態系保護地域であるとか、そういうふうな指定がございますが、そういうものは基本的には非常に原生的な環境であるということでございます。ですが、近年の絶滅危惧種の問題等を見ますと、里山等で絶滅危惧されるような生物が非常に多いということがわかっておりますので、そういうことに配慮した、新たな生物多様性の地域計画、そういうふうなものが必要なのではないかというふうなことを言っております。
それから、その次のページですが、それは調査・計画ということです。これは実際つくる側の話ですけども、緑化というのはこれまでどうも後追いというところがありまして、土木工事が終わってその後始末をやるのが緑化というふうなことがあったわけですけども、それではなくて、計画段階から関与することが非常に重要だということを申しております。
その中で、あらかじめ緑化植物を導入する場合に地域生態系への影響評価をやる必要があるということ。それで、この辺がこの後お話があると思いますが、WRA、ウィード・リスク・アセスメントというふうなことと関連するのだと思います。そういうふうな影響も評価しながら植物を使っていくというふうな観点が必要であろうということを述べております。
さらに、その次のページに、計画目標と時間設定ということで、具体的には植物を準備するというのは、やはり非常に時間がかかりますよということです。そのために計画的な配慮が必要だということです。
下の方、5番目として、緑化植物の生産と供給というのがございます。これは主にその地域性の種苗の利用について提案をしております。市場の種苗における原産地の記載について、あるいは契約生産について、あるいは公共事業体直営の種苗生産についてというふうなことで、これまで苗木には産地というものがついておりませんでした。これを、最近は食品ではトレーサビリティーの非常に議論が盛んですけども、何らかそういうふうな、出元がはっきりしたような苗木を使うということで、きちっとしていくというふうなことを提案しております。
そのあと、いろいろございますが、例えば5-5の植生復元における植物再導入の問題というふうなところでは、これはここにおられる矢原委員が当時おっしゃっておられたことをほとんど書き写したような格好になっていると思います。
それから、6として基盤造成と緑化植物の導入というところで、技術的な対応について検討が必要だということを述べております。
6-2、植物導入手法の選択と問題点ということで、どんなふうな緑化手法があるかということで、現状の技術を整理しながらその可能性を述べておるわけですが、まず、外部から植物を全く導入しないような緑化手法として、無播種・無植栽、何も植えない、基盤だけつくるような緑化手法もあるよと。それから、現地産の植物、それから埋土種子を利用したような緑化手法もありますよというふうなことが述べられております。
それから、次に地域性系統あるいは自生種を用いた緑化手法ということで、先ほど述べました地域性の種苗を用いた緑化手法について述べてあります。
それから、最後に移入種を管理しながら用いる緑化手法ということで、都市的なところ、あるいは人間の管理がきちっと及ぶところでは、この移入種を使うということも十分考えられていいんではないかというふうなことで、全体の地域計画との関係ということで、そういうようなこともやっております。
こういうふうな内容がこの提言の内容でございます。
最後の方に提言の実践に向けての関係者の取り組みというのを書きましたが、ちょっと長いのと、それと少し時間がたって、現在新しいバージョンの文書を準備しておりますが、それをまとめたものがこの1枚紙の基本指針8カ条ということでございます。その中では、こんなふうなことを言おうとしております。
まず、第1点として、地域在来の生物の多様性に配慮した緑化を行っていく上で、外来種の問題は重要である。と同時に、浸透性交雑や遺伝的な地域性の攪乱についても配慮していく必要があるということ。
それと第2点ですが、そういうふうな植物の取り扱い基準を含めた生物多様性地域計画を策定する必要があるというふうなこと。
それから、3番目として、公共事業、その中の緑化事業の発注者は地域の重要性にかんがみて総合的な生物多様性緑化施策を展開する必要があるということ。
それから、4番目として、植物の侵略性を判定するWRAモデルを我が国の自然条件と社会条件にあわせて開発する必要があるということ。これは非常に重要なことだと思っております。と申しますのは、仮に代替的な技術を開発するということになりましても、やはりこういう基準を満たすようなものというのがないと、なかなか代替技術というのはできません。例えば、これはこうでなくてはいけないということではなくて、あくまで例えばですけども、緑化用の草本では、草丈が30センチ以上ではだめだというふうなことが仮に決まるとすれば、それは明らかな技術革新の目標になりますので、はっきりするわけです。そういうのではなくて、単にある種だけが特定外来生物に指定されるということになりますと、代替技術の開発というものは、なかなか難しくなるので、そういうふうな包括的な侵略性の判定、基準、そういうものが望まれると思います。
5番目として、侵略的な外来植物にかわって、自生植物あるいは侵略性のない植物を用いた緑化技術を開発する必要がある。
6番目として、植物の地域性に配慮するために、苗木に産地記載を標準化する必要があるということ。
それから、7番目として、地域性種苗を使う必要がある場所についてですけども、そういうものを使う場合は、植物を動かせる地理的範囲として、植物の種内変異に関する研究を進める必要があるというふうなこと。
それから、8番目ですが、これは国民に対して生物の多様性の重要性とともに、緑化と申しましても、いきなりでき上がりということではなくて、ゆっくりとした生態系の発達を見守るような姿勢について理解を国民にお願いしたいというふうなことで、こういうような基本指針を現在考えているところです。
以上でございます。
【角野座長】 どうもありがとうございました。
ご意見やご質問もおありかと思いますけども、それは御三方のお話が終わりましてから、まとめて時間をとりたいと思います。
引き続き、緑化植物を現場で利用されている立場から、中野さん、ご説明をお願いしたいと思います。
【中野氏】 緑化植物、特に牧草、その他、外来種と称するものを今まで使って、治山緑化あるいは法面緑化という行為をしてきたという立場から、意見を申し述べさせていただきます。
意見としましては、パワーポイントでご説明申し上げますけれども、お手元にいろいろ資料を準備させていただきました、お時間があるときにお目を通していただければと思います。
今、小林先生の方からご説明があった緑化植物の検討会、緑化工学会でやった委員の中に私も入っておりまして、現場、実際に使う者の立場からいろいろな意見を申し述べさせていただきました。
実際使う側の立場から、先ほどもご説明のあった資料の「生物多様性保全のための緑化植物の取り扱いに関する提言」は、発注者サイドの方々に、外来植物の牧草を使わないで、在来の植物を使って自然に返していくという場合は、こういう問題があるんですよ、ということをこの文書を見てご理解いただきたいと考えつくりました。
業界サイドでは、牧草を用いないで緑化を行ってゆくためにはさまざまな問題があります、ということ自体がなかなか言えない雰囲気にある。むしろ、そのような話をするとそういう技術をまだ造っていないのかという意見が出されるということが実態でございます。法面の緑化は自然に返して行くことが最終的な目的ですからこの30年間試行してまいりました。けれども、技術的な面ではなく、設計、仕様などを含むいろんな制度が障害になりまして、なかなか進まなかったということがあります。
このような状況の中で余りにも急進的な進め方、牧草などの緑化植物を一斉に、全国一律に禁止といったふうなところへ進めてまいりますと、非常な混乱が起きてしまう可能性がある。現在、問題になっております外来牧草あるいはニセアカシア、こういったものは治山緑化、はげ山の緑化を含めて、国土の保全といったものに大きく寄与してきたということがあります。
現在、地域の生態系が、あるいは地域の生態系がある牧草によって問題が起きてきているといった部分と国土の保全とのバランスといったものを考えていく必要があるということです。特に、はげ山の緑化、それから災害、特に今回地震等、激甚災害、あるいは火山といったものがございますけれども、こういったところをきちっと土砂の浸食、流出を防止するといった場合において、効果的に、急速に緑化し土砂の流出を防ぐことのできる植物が残念ながら在来の植物には見出せません。ですから、そういったことを踏まえてどういうふうなことをやっていけるか、何もしないで土砂が流れるままにしておけばいいということもまた問題でありましょうし、かといって、地域生態系が牧草によりいろいろ押されてしまうというものも問題でございますので、その辺のバランスをどういうふうにとっていけるかということです。こういったことがありますので、余り急進的に進めるということではなくて、段階的にお進めになっていただきたいということです。
時間のファクター、これは植物ですから、時間とともに変化をしてまいります。足尾、あるいは東名、名神といった部分、これはもう50年から30年前に外来牧草を、あるいはニセアカシアを使って治山緑化、あるいは法面の緑化を行った事例がございます。そういったところはだんだん、だんだん周辺の自然が、周辺植生が侵入して、しだいに自然に返りつつある。そういったものが成立しますと、牧草が消えていくという、時間の流れがございます。そういった報告事例もありますが、現在までの議論をいろいろ見させていただきますと、そういった部分が何か抜けているような感じがしております。
治山緑化あるいは法面の緑化では、地域の生態系、イコール自然というふうな物の言い方をし、そういったところへ配慮するために移入種を使わないというふうに考えておりますけれども、そういった場合、自然の回復が行われるためにはどのぐらいの時間のスパンで見ていかなければいけないのかということをお考えになっていただきたいと思っております。
自然の治癒力、植生遷移というふうに言っていいと思いますけれども、そういったファクターをぜひ入れてほしいと思います。
それから、植物材料の供給のファクター、今、小林先生からご説明がありましたけれども、在来あるいは地域性系統と称するような、郷土種と称するような植物の生産といったものは、現在全くなされておりません。全くというと語弊がございますけど、ごくわずかです。とても全国、そういったものでカバーするといった状態にはありません。
なおかつ、そういったものを生産するということは、非常に経費高になってしまいます。現在の公共工事のコスト縮減、あるいは事業量の減少という形の中で、コストが割高になっていくと、あるいはさらに時間を要する、生産までの時間が要しますので、そういったところがどこまで許されるのか、全体の枠組みを考えていかなければなりません。
治山、法面の緑化はそのほとんどが公共事業でございますので、税金を使っての仕事ということになります。そういうことですので、牧草を使わないで地域の種苗を使う緑化を行おうとするならば、国民、地域住民の経費負担が増加することになるだろうと思います。経費が増えても、それでもやるんだというふうなコンセンサスづくりが必要になってまいります。
現在、要注意植物という形であげられておりますけれども、「要注意」という言葉を見ますと、これは危ないと、使うなという自主規制をかけていくような雰囲気の用語と一般の感じでは受けてしまいます。ところが、はげ山等、急激に緑にし土砂の流出を止めることが必要な部分に対しては牧草のような緑化植物以外に対応できるものがないというのが実情です。そういった部分を踏まえますと、もう少しいろんなゾーニング等といったものを考えながら、取り決めをしてゆかなければいけないというふうに思っております。
それからもう一つ、これは植物だけを問題としているため、なかなか議論に上ってこないんだろうと思いますけれども、地域条件が変化しているというファクターがどうも見落とされているなという気がしております。こういった外来の緑化植物、緑化植物のほとんどは外来というふうにお考えになってもよいと思いますけれども、こういったものは人為的に攪乱した場所に生育するという性質をもつものです。また、法面などの緑化を行うためにそのような撹乱地に生育する性質をもつ植物を導入しているということです。そのような性質をもつため侵略、侵入といわれる、導入した場所の外へ逸出するということになるんだろうと思います。私どもは緑の絆創膏と称しておりますけれども、牧草など緑化植物を用いることは、我々が傷つけてしまったところに、応急処置的に絆創膏で覆ってやるというスタイルで考えております。その後、自然の営力で、自然に返っていく。その間、緑の絆創膏で浸食の防止といったものを防ぐことができればいいという観点で考えております。その緑の絆創膏として在来の植物を使おうとすると非常に高価になってまいります。その辺がどこまで許されるのかということであります。
特にシナダレスズメガヤ等がやり玉になっておりますが、外部に逸出し地域の植物を駆逐し、あるいは地域環境、土壌環境を変えているという報告がなされています。それはそのとおりでございます。
しかしながら、それはいろんな地域の環境そのものが変わっているために、本来、自然環境の中に入っていけないはずのこういった外来草本が入り込んでしまっているということであります。上流では治山緑化をしまして土砂の流出を抑えております。それが下流に行って悪さをしているというふうなことになります。そうしますと、どちらがいい悪いというふうな議論ではありませんからそのような事実を踏まえた上でどのように交通整理をしていけるのかなということになってくるのだろうと思います。
それから、緑化植物そのものを個別的に種名を挙げて使用制限をしたとしても、根本的な解決にはなかなかなってはいかないだろうと考えます。特定の種をやり玉に上げますと、その代替になる牧草、これはまた出てくるだろうと思います。そうしますと、またそれも禁止というようになり、全部牧草そのものを全部使用禁止するというところまでしていかなければいけないということになってしまいます。
そのような問題がありますから、国土の保全、公益的な観点から行っている上流の治山あるいは法面の緑化による浸食防止と地域の生態系を侵しているということのバランス、リスク管理といったものを、きちっと踏まえた上で扱う必要がありますし、あるいはそういったことを踏まえた形でのゾーニングをいかにしていけるかということが重要となるものと思います。上流の方では土砂の流出防止のために牧草などを使うが、下流に逸出し定着したものに対してはどのような対策をしていけるかということになるんだと思います。
外来の緑化植物を用いる場合は、プラスの要因とマイナスの要因、両方ございますので、それをどのように客観的に判断をしていけるのか。リスク評価ということがいろいろ言われておりますけれども、そういった部分を議論しつつ、総合的な観点から取り組んでいかなければいけない問題だろうと思っております。
繰り返しますけれども、この山腹緑化工、治山緑化工と称するもの、あるいは法面緑化工といったものは、国土の保全、国民共通の財産であります国土の保全に寄与しております。それから、国民の生命、財産、上流で土砂浸食が激しくなりますと、洪水等いろいろな問題が起きてまいります。こういったものを防いでいる1つの大事な技術です。このような技術により上流部の土砂の流出や浸食防止等を行っているためにこそ、その地域生態系といったものが回復する最初の基盤づくりができているということだろうと思います。そのような事実を踏まえた上で、景観や生態系あるいは遺伝子的な部分も含めて、いかに保全していけるかというところを考えながらやっていくということになるだろうと思います。現在、この生態系等をどのように守ってゆくかといったことが中心の話でございますけれども、ぜひ、その根底にあります防災的な観点あるいは公益的な観点といったものとのバランスをお考えになっていただきたいと思います。
これは足尾の例ですが、銅の精錬によって発生した煙害により全山はげ山になったものですが、牧草、外来牧草あるいはニセアカシア等を植え込んで、治山緑化をし50年から30年経過した部分です。もう非常なはげ山が30年という時間を経過した後緑が回復してツキノワグマが帰ってきているということが言われております。カモシカ等も帰ってきております。
ただ、このカモシカの足元を見ていただきますと、これは牧草です。自然に返りつつも、まだ牧草と周辺自然植生との交代の途中です。ですから、このように牧草が上流部に生育している状態がまずいということになると大変な問題が発生してしまいます。外来生物法では、特定外来生物に指定した場合、国内に入れないのと同時に駆除ということがあげられておりますから、現在、外来牧草が定着し繁茂することにより土砂の流出がとまっており、その結果、周辺の植物が侵入定着し自然が回復しているということになります。もし、牧草が外来生物に指定された場合、これらの牧草を駆逐するということになりますが、その場合、薬剤の散布はできないため、根こそぎとってしまう、表面の葉っぱをとっただけでは、牧草ですからどんどん繁殖をします。根っこごととらなければいけない。ニセアカシアもそうだろうと思います。根っこごととらなければいけない。そうしますと、せっかく自然の回復が進んでいる上流の土砂の浸食が再び始まってしまうと、そういう皮肉な結果にもなりかねないということになってしまいます。
これは東名、名神の緑化を行った30年後の例です。牧草をまきまして、急速に緑化をしたところですが、30年、40年たちますと、周辺クロマツ等侵入しまして、かなりの緑が回復し、周辺の二次林と同様の景観にまで回復しております。こうなりますと、牧草はほとんど消えてなくなっております。
現在、法面緑化で問題になっておりますのは、昭和50年代半ば以降、それまでモルタルコンクリート吹付工によって被覆してきた部分にまで緑化が求められるようになり、緑化を行った箇所です。法面に牧草をまいております。それから、これはイタチハギでありますけども、ハギ類の種子をまいて緑化しております。浸食防止のためにモルタルコンクリートで被覆してきたわけですが、これをもう少し環境に配慮しようよ、緑になった方がいいということで技術開発し実施した部分です。岩盤緑化というふうに称しますけれども、これが非常に経費的に安価で、従来は緑化できなかった岩盤にできるということで急速に伸びてまいりました。このような部分に対してまで在来の植物を使ってゆくということになると、いろいろな面で経費増になっていくということが予想されます。そうしますと、これを再びモルタルコンクリートなど構造物により法面保護を行うという議論が一方では起こって行くのではないかと思います。
ワイルドフラワーというものも外来生物の問題の1つとしてあがっておりますけれども、花をいっぱいの法面をつくることも、景観をよくしましょうということで、一時、進められました。これは修景を求める市民・行政サイドからの要望ということで始めたもので、新たな観光スポットができたと、その当時は喜んでいただきました。ただ、この中からオオキンケイギク等、かなり繁殖力の強いものがやはり攪乱したところへ逸出しておりまして、問題になってきました。こういったものも全面禁止しなければいけないのか、場所等を選んで管理しつつやっていけるのかということの交通整理になるだろうと思います。
これはヨモギです。中国産のヨモギです。数十年前は日本産のヨモギがとれておりましたけども、労務者の老齢化、賃金の高騰ということで、全部中国へ採種地は移っております。ヨモギなどの夏草型の植物をつかうと、夏場の緑はきれいですが、冬は全部葉を落として枯れてしまいます。そうしますと、基盤がむき出しになってしまいます。一冬越えますと、すぐには流れませんが、だんだんだんだん風化して落ちていくという現象も起きてしまいます。法面の緑化を仕事とするものにとってはリスキーなものになってくる可能性が高いものになってしまいます。
これは20年前に磐梯吾妻国立公園の中を通る土湯道路の法面で、在来植物のヨモギ、メドハギを使って緑化した例です。在来植物を使うという事例としては最初の例だというふうに思っております。秋施工のため雪解け等で流されまして、手直しをしながら、やっと生やしました。最初はヨモギ、メドハギの群落ですが、5年ほどたちますとススキが侵入してきます。
15年経過と、まだススキが繁茂しております。20年たつと周辺から、ツツジ類が主でありますけれども、飛び込んだものがやっとススキの頭を越えて生育し始めております。これから樹木が生育し自然に返っていくという段階になったということです。
これは三宅島の例でございます。都道周辺は従来から牧草をまいて法面の緑化をしておりました。これが噴火後の復旧に対し外来の草種を使うことを避けるという議論がされた結果、牧草の使用を自粛するという方向へ進み出しました。代替として何を使うのかについて確認したところノシバということでした。国内ではノシバの採種はしておりませんから、中国産のノシバを使うことになってしまいます。そうしますと、噴火跡地に、最初の段階で定着する三宅島自生のノシバと交雑してしまうことになってしまう。果たしてそれがいいのかどうかと。そういった議論が、これは全くなされません。設計担当者レベルでは、名前でしか判断ができません。そういったことを聞きつけましたので、ちょっと待ってくださいと、かえって問題がややこしくなりますよということで、この20年にわたってどういうふうに牧草が推移していたか調べまして、レポートしたものです。牧草を播種して1年目、3年目、4年目まではかなり牧草が旺盛に生育しております。ただ、4年後になりますと、ぽつぽつと周辺からススキなどが侵入してきております。8年後、10年後になりますと様々な種類が定着し、19年になりますと、ススキの頭を抜けてトベラ等が伸び始めるという結果になっております。三宅島の例と土湯の例を比較すると牧草を使っても、在来植物で始めても、時間的には同じような経過をたどっていくということがわかります。
ここで注意していただきたいのはこれは三宅島の大路ですが、風が強いところ、風衝地、これは草原となり、牧草がずっと残ります。島の北端で、風がびゅんびゅん当たるところです。やはりこういうところは牧草が後々まで残ります。あるいは、硬い、風化しにくい山ですね、そういったところも牧草は残ってまいります。そのような立地条件の厳しいところは一端牧草のような生長が早く強い植物で被覆した後、苗木を植え付けるなどの手を入れるなり、最初からそれなりの予算をつけてきちっとしたことをするということが必要になってくるだろうと思います。立地条件に応じた対応を考えてゆかなければならないということになります。
これはもう一つの例で、三宅島の中にもう少し早く自然っぽいものをつくっていこうということで、トベラの苗木を導入した例であります。そうしますと5年程度で低木林が造成できる。単純群落となっておりますので、これがいいか悪いかの判断は必要となりますけれども、このような自然回復に対してお手伝いする技術はたくさんあります。ただ、従来より行っている方法に比較するならばかなり経費高になっていくということは許容していただかなければなりません。
時間が押しておりますので、以上で話を終わらせていただきますけれども、外来植物を用いないで法面緑化を行う技術や手段はたくさんありますが経費、その他、公益的なものを含めまして、総合的に判断していかないと、非常にバランスのとれない状況が起きてくるということも考えられると思います。
以上で報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。
【角野座長】 どうもありがとうございました。
現場からの率直な意見をお聞かせいただいたと思います。
では、続きまして雑草リスク評価につきまして、西田さんの方から説明をお願いいたします。
【西田氏】 畜産草地研究所の西田と申します。きょうは雑草リスク評価モデルについて、ご説明させていただきます。
まず、きょうの内容ですけれども、オーストラリアではこういうウィード・リスク・アセスメントモデルが実際に運用されておりますので、そのオーストラリアで使われている雑草リスク評価モデルとはどういうものかというのを簡単にご説明いたしまして、では、その新しく植物を輸入する審査体制の中で、オーストラリアのウィード・リスク・アセスメントモデルがどういう位置づけにあるかということをご説明いたします。
私は、今、そのオーストラリアのウィード・リスク・アセスメントモデルが日本で使用することが可能かどうかという研究を行っておりますので、まだ、その研究途上にありまして、今回は中間報告、暫定という形で結果を皆さんにお知らせいたしたいと思います。
まず、オーストラリアの雑草リスク評価モデルですけれども、ウィード・リスク・アセスメントモデルというのは、これまでいろんなものが提唱されております。その中で、なぜ私がオーストラリアのモデルを選んだかといいますと、実際にオーストラリアという国家のレベルで運用されているということ、それから、ニュージーランドでも同様のモデルが運用されているということ、さらに研究段階ではありますけれども、小笠原諸島、あるいはハワイ、ちょっと形を変えた形でガラパゴス諸島においても雑草リスク評価モデルとして使用されている。つまり、複数の国家あるいは地域で使用されておりますので、これを用いるのがいいだろうということと、それから、評価に必要な情報は基本的には既存の文献から得られるということで、評価対象の植物が多い場合には、非常な利点となると考えております。
その評価モデルですけれども、評価をする植物についての49の質問に答えていくという形になっております。その評価の質問に答えて点数をつけていくんですけれども、委員の方はお手元の資料、雑草リスク評価モデルについてというものの2枚目ですね、そこに詳しく評価項目が書いてあります。その次に、それの点数表がありますので、それを後でお時間のあるときに見ていただきたいと思います。
そういうふうにして、評価対象の植物について点数を計算していきます。評価基準としては、これオーストラリアの基準ですけれども、0点未満は輸入してもよい。ゼロから6点に入るものは、もっと審査が必要である、情報が必要である。それから、6点を超える場合は輸入不可ということになっております。それがお手元にある表ですね。
この評価モデルなんですけれども、オーストラリアの場合では、新規輸入植物審査体制、これは3つの層からなっております。その中の2番目の層を形成して、審査体制の中核となっております。第1層というところで、まず、輸入申請があった場合には、その植物の履歴を調査します。オーストラリア国内において輸入許可のリストにあるか、あるいは不可、輸入禁止植物のリストにあるかというのをまず調べて、履歴がない場合に、第2の層に行きます。その履歴がないという植物があった場合には、それがオーストラリア国内に存在していないか、あるいは分布が限られて、かつ、公的防除の対象になっているかどうかが調べられます。これが先ほどご説明ありました未判定植物というカテゴリーがありましたけれども、これは恐らく潜在的検疫対象種ということで、事務局の方でも位置づけているのではないかと思いました。
その潜在的検疫対象種について、先ほど申しましたモデルを用いて評価していくことということになっております。そのモデルによって輸入許可、不可、これは点数に分けて、点数によっては分けられるわけですけども、そのカテゴリー分けをしていって、要審査となった場合は、もう一度その必要な情報を集めて、これは今までお話しした雑草リスク評価の部分は政府のお金で、予算で行うんですけれども、要審査となった場合の再審査の場合は、輸入申請者の費用負担ということになっております。それでもう一回雑草リスク評価にかけてもらって、それでも必要な情報が集まらないときは、実際の栽培試験、輸入後評価という形になっておりますけれども、栽培試験を行って審査を行うという形です。その結果はもう一度輸入、図の左上の方にあります、許可、不可というリストにフィードバックされるということになっております。
このオーストラリアで用いられているウィード・リスク・アセスメントモデルが実際に日本で使えるかどうかということで、私は研究を始めました。ちょっと細かいことを書いてありますけれども、時間がないようなので結果に行きます。
横軸、雑草性と書いてある方は、植物の専門家の方20名にお願いして、300種類の植物を対象に、それが雑草であるか、雑草でないかを大・中・小、数字で言いますと2・1・0の数字で判断していただきました。それから、同時に有用性、その植物が有用であるかどうかを大・中・小、これも2・1・0のスケールで判断していただきました。横軸、各点の横軸の座標はその20名の方の判断の平均値です。それから、縦軸、WRA点数と書いてありますけれども、これは6人の研究者の方に、先ほどのモデルで実際に植物を評価していただきまして、その得点の平均値です。まだ、これ6名分が集まっておりませんので、先ほど結果は暫定的であるというふうに申したんですけれども、今後、ちょっと変わる可能性もあります。
図中の横に入っている線、右の方に輸入可とか輸入不可とか判断基準がありますけれども、これはオーストラリアの基準です。これは今後日本で用いる場合は変わる可能性があると考えております。
グラフを見ていただいてわかりますように、大まかにはその専門家の方の雑草性の判断とWRAの点数というのは、正の相関があるといっていいと思いますので、基本的にはこのモデルは日本でも使用可能ではないかと考えております。ただし、図中、赤い点が2つほどありますけれども、有用性が大であると判断され、かつ、雑草性は小さいと判断されたもの、具体的に言いますとイチジクとゴマということなんですけども、それがこのオーストラリアの基準をそのまま持ってきますと輸入不可の範疇に入ってしまう。つまり、誤判定に入ってしまうというようなこともありまして、これをそのままでは使えないなというのが今の現状です。
また、右の方、雑草性大の植物なんですけれども、2つほど要審査の欄に入っておりますので、これがもう一度審査をし直したときに、確実に輸入不可の範疇に入るような、第二次的な審査方法を考える必要があるかなとも現在考えております。
その2つの植物のうち、1つは水草でありますので、水草については水草専用に考えられたウィード・リスク・アセスメントモデルというのが、チャンピオンという人たちが考えたものがありますので、本当の水生植物というか、水の中に入る植物については、このオーストラリアのウィード・リスク・アセスメントモデルとは別に、水草用のもので再評価し直す必要があるかなというのが、今のところ考えている結果です。
結果をまとめたものですけども、オーストラリアのウィード・リスク・アセスメントモデルは、基本的には日本でも適用可能ではないか。ただし、先ほど申しましたように問題点が幾つかありますので、これに対処する必要があると思います。簡単に考えられるのが基準点を変更するか、あるいは二次審査を考えるかということなんですけども、基準点の変更については、ハワイでこのモデルを適用しているデーラーという人は、有用植物であっても雑草でないものを雑草と判断して入れないということによって生ずる障害よりも、真の雑草を雑草でないと判断して入れてしまったことの方が後々の影響は大きいと考えて、デーラーの(研究の)場合も、やはり先ほどのグラフと同じように、幾つか誤判定のものはあるのですけども、審査基準は変えていないという事例があるので、私の方もそれは1つ大きな参考にして考えていきたいと思っております。
ご静聴、ありがとうございました。
委員の方は手元にこの資料がありますので、引用文献がちょっと細かいんですけれども、興味のある方は引用ください。
以上です。
【角野座長】 どうもありがとうございました。
以上、御三方からご説明いただいたわけですけれども、ご意見あるいはご質問等ございましたら、ちょっと時間が押しているんですけれども、ご遠慮なくお願いいたします。
では、矢原さん。
【矢原委員】 中野さんのご報告に関してきちっと議論するのがまず重要かと思うんですけども、議論の前提として、こういう議論のときにすぐに過去の緑化政策等にさかのぼった議論になりがちなんですが、中野さんもおっしゃいましたように、歴史的経緯の中で、コンクリートやモルタルよりも牧草なんかを使った方がいいという形でやってきて、さらに郷土種を使おうという形でやってきたことが、結果として今になってみるといろんな問題点があるというのがわかったと。それをさかのぼって議論するというのは、私は話を複雑にするだけでよろしくないと思います。
例えば、自然保護で言いましても、かつては木を切ったりすることは非常に批判的に見られたわけですけども、今では二次林の管理にはもう間伐は不可欠で、草地の管理にも火入れをした方がいいとか、二次的自然に関しては、人がかかわることが必要だという認識になってきておりまして、そういう考え方の変化というのは当然あるわけですから、ですから、現在生じている問題点を今後どう解決していくかということを議論の大前提にするというのがひとつ必要かなと思います。
それからもう一つ、中野さんのご指摘で私も大変重要だと思ってきょう言おうと思っていたことは、外来種がはびこっている背景には、単に種が広がっているだけでなくて、それが広がる環境条件というのがあるわけですね。河川敷にしても、水域にしても、人間が大きく環境を変えてしまっていて、そこに広がっているという面がありますので、生態系管理抜きに、特定の種だけを駆除するというのはさまざまな問題を引き起こす場合があると思います。それでそういう点は私も中野さんと全く同意見です。そういう点を確認した上で議論すれば、もう少し冷静な議論ができるんじゃないかなと思って、その2点を確認させていただきました。
その上で、中野さんのご指摘に関してはやや一面だけを強調された嫌いがあると思います。1つは、足尾銅山等の例ですけども、重金属汚染が進んだ場所というのは、相当対策をとらないと森林回復しませんので、そういうところで、私は適切な対策をとられたと思いますけども、そういうところで行われた治山緑化と、それから例えば道路の法面等の治山緑化を一律に議論するというのは、やっぱりちょっと無理があって、現在生じている問題というのは、足尾銅山のようなケースではなくて、むしろ吹きつけをしなくても、十分にその植生が回復するような場所でも一律に牧草を使った吹きつけがされていて、それが引き起こしている問題というのは2つあって、それをどうするかということだと思います。
それから、種子吹きつけ等では、必ず何か土砂が崩れてしまうような印象をちょっと紹介をされているように思うんですけども、九大の新キャンパスで相当大規模な工事をやっている中で、いろんな形の吹きつけを試みたりしているんですけども、団粒構造を作る団粒化吹付工法とかだと、基盤だけ吹きつけても相当な強度を確保できますので、もちろん大規模な法面等になればまた別途のやり方が必要になるわけですけども、むしろ牧草等を入れない方が植生が早く回復するという場合は、条件によってはあります。
ですから、私は緑化の基本目標をその地域の自然植生に回復させるのか、それとも別の形のもっと管理をするのかで大きく分かれると思うんですけども、自然植生に回復させるという目標の場合には、それをいかに早めるかという点で技術開発を今後していって、今あるいろんな問題点をクリアしていくということが重要で、その中にはもう種の吹きつけをしないということが有効な場合も多々含まれるんじゃないかなと思っております。
【角野座長】 確かに中野さんのお話は緑化工の有効性あるいは必要性というのを強調される立場から話されたもので、今、矢原委員からご指摘があったような点もあったと思いますが、その外来植物を緑化に使うことの問題点は小林委員からもご指摘があったようにいろいろ検討されていると思いますので、そういうことを踏まえて、総合的にこれからどうしていくのかというようなことがやはり考えられなければならない。それが我々の課題であろうかと、そういうふうに思います。
ほかにご意見、ご質問。どうぞ。
【中野氏】 すみません、補足を。話をちょっといろいろはしょりましたので、補足をさせていただきます。
足尾等の例ということでございますけども、こういった例を持ち出しましたのは、過去にさかのぼってという話ではなくて、今後、いろんな激甚災害等といったときのことも踏まえた上で牧草をどう使いこなしていくかという形でご議論をお願いしたいと。そういったものの観点が抜けますと、大きな災害等で、急速に土砂の流出等を防ぎたいといった場合に、なすべき重要な技術的手段が1つなくなってしまうということを憂いております。
それと、団粒化吹付工その他、浸食されにくいといった工法、厚層基材吹付工もその一つですけれど、そのような技術的な開発はいろいろ進められております。ですから、中でお話し申し上げましたように、むしろ問題になるのは、道路法面等、従来はモルタルコンクリート等で覆ってきたところを今後どうしていくかというところになろうかと思います。そうした場合において、小林先生その他話がありましたように、無播種施工あるいは埋土種子を使った工法、こういったものについて、かなりの長年月にわたって私どももやっておりますけれども、うまくいった場所、うまくいかない場所といったものがございます。
こういった施工の仕方というのは、数年というオーダーで、かなり長い時間裸地のまま残しておかないとねらった植物がついてくれないということがあります。それだけ時間をかけなければならないわけですから、技術的にコントロールできない気象の問題等ありますので、それにゆだねながら見ていかなければならない。計画したとおりになかなかならないということになります。そういった中で、1つ問題が出てきておりますのは、裸地の状態を長く続けた中で、セイタカアワダチソウでありますとかアメリカセンダングサでありますとか、別の強害雑草が法面にはびこってしまうといった現象も起きております。なかなかこういったものまでコントロールできませんので、そういった状態も踏まえ許容した上で無播種施工、埋土種子を用いた緑化の方向でいくんだという観点も必要だろうと思います。
それから、九州の場合は台風がありますが、その他の面では非常に気象条件がいい。東北その他積雪寒冷地、こういった部分はかなり気をつけてやらないと、凍結土壌その他の問題でやはりこれもなかなかねらった状況にならないで、流されてしまったりといった現象もございますので、地域性も踏まえた上で、いろんな制限等、いろんなものがあると思いますけれども、一律ということではなくて、その場その場に応じた形で、どう使いこなしていけるかというふうな形でご議論願えればありがたいと思っております。
以上であります。
【角野座長】 ほかにいかがでしょうか。
どうぞ。
【岡野委員】 緑化工のその技術的な問題はちょっと置いておきまして、中野さんのお話のポイントの1つは、例えば緑化植物の持つ環境に対する悪影響というものはあるんでしょうけれど、一方で国土保全のようなそういう有用性を同時に評価してほしいということであったと思うんですけれど、その辺で、じゃあ、具体的にそれをどういうふうにするかというところで西田さんのお話にあったところに行くんですけれど、この雑草リスク評価モデルの中で、雑草性とそれから有用性とおっしゃいましたが、その辺評価するんですけど、例えばある植物で雑草性が10点で有用性が5点であれば、差し引いて総計5点というふうなそういう言い方を、評価をするんでしょうか。西田さんにお聞きしたいんですけれど。
【西田氏】 それは、まず、このオーストラリアのウィード・リスク・アセスメントモデルそのものは、有用性というのは一切考えておりません。ですから、私の今の研究段階では、有用性というのは、あくまで補助的なデータだと考えております。ただ、そのウィード・リスク・アセスメントモデルを日本でどのように使うかというふうに考えたときに、このモデルの点数から有用性を引く、そういう使い方は十分考えられますけれども。その辺は運用になりますので、私の今の研究段階では、そこまでは考えておりません。
【岡野委員】 先ほどのイチジクとゴマの有用性の話は、これ、一般的に有用だという意味でおっしゃったんでしょうか。
【西田氏】 ええ、そうですね、モデルの精度を考えた場合に、誤判定というのをどうしていくかというのはやっぱり1つ問題だと思うんですけども、誤判定と判断された植物にどのようなものがあるか。もし、それが雑草性が低くても全然有用性が低かったから恐らくだれも問題にしないと思うんですね、それは入れちゃいけないよと言っても、入れたい人がいないわけですから。ただ、雑草性が低いと大体の人が考えていて、モデルでは、雑草性が高いと出て、しかもそれは有用であるといった場合には、当然、それを輸入したいという力も加わるわけですから、それについてどう対処するかというのは、(有用性の評価を)モデルそのものに組み込むか、その後の運用で対処するかは別として、それに対する対策は考えていかなくちゃいけないと思っています。今の説明でよろしいでしょうか。
【角野座長】 どうぞ。
【小林委員】 関連でよろしいですか。
今のお話というのは、やはり非常に重要な前提があるということを認識して議論する必要があると思うんですけども、前回、第一次の審査のときも話題になっておりましたが、オーストラリアの外来種規制の場合は、法施行以前にあるものに対しては規制の対象ではないわけですね。ですから、基本的に新たに来るものに対してのお話ですね。ですから、先ほどの緑化の話のように、従来あって、有用性があるもの、それについては先ほどのモデルでは多分扱えない。それらは、別に政策的な便益を評価するような方法というのをやっぱりとらないといけないだろうと思います。
【西田氏】 その点に関して、扱えないというのは私の方としてはちょっと違和感があって、その雑草性を判断するという部分では使えるけれども、その有用性をどう判断していくかという部分は別個になるというふうに考えていただいた方がいいと思います。
【角野座長】 私の方からも西田さんに質問があるんですけども、実際にその日本の植物について、例えば質問事項でもこのオーストラリアと同じであっていいかどうかというのを検討しなければいけないと思いますし、具体的に検討されている種類を、もう、日本の植物で検討されているような段階なんでしょうか。
【西田氏】 はい。先ほど説明をはしょったんですけれども、日本に存在する300の植物について、(ウィード・リスク・アセスメントモデルのスコアをつける場合は)日本にないという前提で判断していただいております。雑草性そのものは日本の専門家の方に、日本の現状を見て、雑草かどうかというのを判断していただいております。
【角野座長】 それと輸入が可か不可かという場合には、例えば、やはりもう既に入ってきて、その植物について知らないと、いいランキングができないわけですよね。そういう意味で、ちょっと、要するに輸入が可か不可というふうな結論を出す以前に、リスクの評価ということがやっぱりポイントになるんじゃ……。もう既に入ってきているものを含めてですね。だと思うんですけれども。
【西田氏】 その辺ちょっと整理させていただきますと、輸入制限をかける場合には、日本の国内にないか、あっても分布が限られていて、しかも公的防除の対象になっている植物というのがFAOの規定で決められているそうなんです。それ以外の植物は、検疫対象種として輸入規制をかけるのは、不可能ではないにしてもかなり難しいという前提がありまして、このウィード・リスク・アセスメントモデルというのは、今後新たに入ってくるものを防除しようという観点から出発したというのが1つあります。
ただし、そういう場合には、日本国内に(その植物が)ない状況において、今後日本で雑草化するかどうかのリスクを評価するわけですから、情報としては海外のものになるわけですね。それで、そのモデルを評価する場合は、海外の情報、原則的には海外の情報だけで評価します。ただ、その答えはどうかというのは、日本にない植物では答えがわからないので、このモデルが本当に使えるかどうかの段階としては、日本に存在していて、日本で雑草かどうかというのがわかっている植物について、もし仮にそれが日本になくて、情報が海外にしかない場合に、このモデルでちゃんと、これは雑草であるとか雑草ではないとか、正しく判断することができるかどうかというのを見たのが先ほどのグラフとなります。
【角野座長】 わかりました。
ほかに。どうぞ。
【濱野委員】 今、西田先生のお話とちょっと関連するんですけども、300種の中でパンジーは扱われましたでしょうか。
【西田氏】 パンジーは入っていないと思います。
【濱野委員】 そうですか。といいますのは、今、公共性の話ですとか、大変広い面積の話をされているんですけども、里山の保全ですとか、スミレが多いですね。私、高尾でちょっと観察会をやったときに、タチツボスミレにビオラの品種がかかったようなもので、柄の部分が短くなっていまして、どうもタチツボのその形態変化の中では出てこないだろうと。ちょっと遺伝子が専門ではないものですから、また、その辺は研究を進めたいと思っているんですが、恐らく今のその里山周辺でいろいろな園芸品種が根が入って利用されていると思うんですが、どうしても在来のものと、ここでも確かに同属に雑草があるかというのがありますけども、こういう評価をする1つ1つ項目を選ぶときに、日本の自然なり、あるいは在来の植物の来歴からつくられるといいのかなという気が、ちょっとしました。
特に日本ではインベントリーといいますか、植物のその戸籍に関することがかなり軽視されていますから、その辺のところをちょっと強化するような意味合いを含めて、日本の気候風土なり、あるいはその立地というものを勘案するといいのかという、ちょっとまだまだこの影響評価の勉強をしていないものですから、もう既にされているのかもしれませんけども、ちょっと気になりました。
【角野座長】 どうもありがとうございました。
何か。
【西田氏】 ちょっと細かい話ですけれども、この表の質問項目において、オーストラリアの気候に適しているかといったような部分は、日本での適応を考えた場合には修正いたしました。それから、土壌に関する部分を修正いたしております。
また、先ほどパンジーとの交雑の話が出たんですけれども、一応、6.03で自然交雑が起こるかどうかというのは評価しております。
また、先生がおっしゃったように、じゃあ、これ、本当に日本で使う場合に質問項目の変更、質問はこれでいいのか、あるいはもっと別の質問を加えた方がいいのではないかという議論は当然あってしかるべきだと思いますし、そういう意見があれば、今後の研究に生かしていきたいので、そういう意見はぜひ、ありましたら私の方まで知らせていただけるとありがたいと思います。
【角野座長】 どうもありがとうございました。
ほかにもご意見やご質問おありかと思うんですけれども、この点についてはいろんな問題がかなり出尽くしたと思うんですね。
どうぞ。
【矢原委員】 全然出ていない観点で一言申し上げておきたいと思うんですが、私は進化という問題を外来種ではこれから重視すべきだと思います。というのは、私は外来種新法で次に指定する種の中で筆頭に挙げるべきなのは、スパルティナのアングリカという種だと思っているんですが、これは北米産のスパルティナ・アルティシナというのがイギリスに入って、イギリスの在来種のスパルティナ・マリティマという種と交雑をして、新たに進化をした結果、強害雑草が生まれて、それが北米に戻って、自生の塩湿地に拡大し、今ではニュージーランドに入って、最近中国にも入ったということが確認されています。
そういう形で、新しい環境で外来種がはびこっていくときに、もともと持っていた遺伝的な多様性の中から、その新しい環境、例えばアメリカから入ってきたセイタカアワダチソウが日本の環境に適応して変化していくということがかなり一般的であるということがわかってきています。
その結果、例えばアキノエノコログサなんかは、アメリカに出ていったものが向こうで変化してさらに日本に返ってくるというようなことが起きているわけですね。恐らくシナダレスズメガヤ等もかなり遺伝的に多様な系統を使ってしまったために、それがどんどん逃げ出した結果、河川敷なんかに適応した新たなエコタイプみたいなものができている可能性があるわけですよ。もし牧草を利用するときに、完全に均一なクローンを使っていれば、そういう問題は起きなかったかもしれない。
そういうリスク管理という点からすると、例えば先ほどのゴマとかイチジクのようなものが、単一品種として入ってきて、遺伝的にほとんど多様性がないということであれば、それだけリスクは低いと思うんですけども、さまざまな系統が遺伝的に多様なものが、例えば栽培されるとかということになったら、それだけ適応進化して野外に逃げ出すリスクは高くなると。牧草にしても、吹きつけのときに遺伝的に多様なものを使えば、それだけ日本の環境に適応して、新たな害草を生み出すリスクは高くなる。そういう視点が評価のときに私は大変重要じゃないかと思っています。
【角野座長】 ただいまの問題は、緑化植物の中でももちろん重要な問題ですし、もう外来植物一般を考えるときにもぜひ考えなければならない重要な問題であると思います。
それでは、きょうは時間の関係もありますので、外来植物の件はまた、ただいまのお話などを参考にして、農水省、国交省を交えた研究会が立ち上がっておりますので、そこで検討していただくことにしていただきいと思います。
最後に資料5の今後の検討の進め方についてというところについて、もう一度確認したいんですが、この点についてご意見、ご質問等ございましたら、お願いします。
4つのグループですね、水草、園芸植物、緑化植物、そして雑草というふうに分けて、それぞれについてどういう方向で進めていくのかということ、それ以前に、総論というのもあるわけですけども、こういう方向で進めていくということで、もちろん議論の過程で新しい問題点というのは当然出てくると思いますが、この資料について、資料並びに先ほどのご説明について、ご意見、ご質問ございましたらよろしくお願いします。
どうぞ、黒川委員、お願いします。
【黒川委員】 この進め方についてのこの黒丸の4番目ですよね。これまで、やはり国内で問題になっていたものの指定というものが中心だったと思うんですけど、やはり将来的なそういう被害というものを今の段階で効果的に防ぐという意味では、こういう、国内では今のところそうでもないけども、今後、入ってくることで大きな問題になるものというものを優先的にやっていくという方向がやっぱり一番重要かなというふうに最近思います。それだけです。
【角野座長】 これは先ほどちょうど矢原さんが言われたスパルティナの問題のように、今後、いろいろ情報を集めるという作業も大変ですけども、やはり非常に重要な課題であろうかと私も思っております。これが入っているということは、非常に重要なことかと思います。
ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
【勝山委員】 進め方としてはよろしいんですけれども、1つはこれ、選定作業、特定外来生物として指定、次にどうして決めていくかというのを選定作業で進めていかなければいけないんだけれども、前回のパブリックコメントなんかでも、結局、現在非常に蔓延していて、被害が出ているものというのに対しては一般の人も結構関心が高くて、結局、そういうものを、前回のときにも指定をしていくのは、特定外来生物としてやっていくのはいろんな要因があって無理だろうと。今回のこの法律では、植物に関してはかなり、まだ日本に蔓延していないもの以外は、蔓延しちゃっているものに関して非常に限界があるわけですよね。でも、その辺のところをやはり今回、いろんな形で選定候補とか、あるいは検討の俎上にするものをこう絞って、影響が大きいものは挙げたので、それについては特定外来生物ではやはりだめなら――だめというか、何というのかな、指定ができないのはどういう点でできないのか。というのは、やはり違う対策が必要ということなんですよね。その辺を明確にしていかないと、また、今度出していって最終的に絞られても、パブリックコメントをやると、この委員会、あれは手ぬるいんじゃないかというようなまたおしかりを受けるようになっていってしまうのでね。やはりこの法律の限界というのは、そこのところにあると思う。
きょう、いろいろいいお話を聞かせてもらって、小林先生の話にしても、中野先生の話にしても、もっともな部分、たくさんあるわけなんですよね。その辺との整合性の中で、特定外来生物で規制ができるもの、できないものはできないから、今後やはりこういう対策が必要なんだというようなことを述べていかないといけないんじゃないかな、選定だけじゃないんじゃないかなというふうに、前回の3種類を選定するに当たって思ったことなんですけど、それは今回も同じじゃないかなと思いますので。
【角野座長】 はい。きょうの会合で、いきなり候補種を挙げずに、いろんなヒアリングなんかを行ったというのは、勝山委員が今言われたような意見を、こちらの事務局の方も認識してのことだと思います。
それで、まだまだご意見がおありかと思うんですけども、時間の都合もありますので、基本的にきょうの議事を確認したいと思うんですけれども、まず、緑化植物については環境省、農水省、国交省での研究会が発足したという報告がありました。これについて、きょうのヒアリングを踏まえて議論が進むようでして、これについてはまた、これ、次回以降の会合で報告がありますので、それを含めてどういうふうにしたらいいのか。やっぱり総合的に緑化植物についてはどういうふうに扱うのか、そういうスタンスを明らかにした上で、特定外来種に指定すべきものはする、難しいものはできないということがやっぱり決まってくるかと思うんですね。そういうことで、ちょっと緑化植物については進めたいと思います。
また、園芸植物や雑草については、今、西田さんの方から説明がありましたような、リスク・アセスメントの方法、これ、やはりぜひ、試行的にでも導入してやるというんですか、客観的にやっぱり根拠を持って指定したいということで、そういう方向で進めればいいかと思います。
具体的に二次選定の検討対象になる種については、次回までに事務局の方で、資料も含めて整理して、提示していただけると思います。一応、候補種としてはきょういろんな表が上がっているので、その中から主に選ばれると思うんですけれども、その中で、特に問題になりそうなものを次回提示していただればと思います。
そういうことでまとめたいと思うんですが、何か言い足りないことといいますか、ぜひ一言ということは。矢原さん、どうぞ。
【矢原委員】 今後の進め方のところで、まだ、国内に未定着のうち定着の可能性が高いものについては挙がっているんですけれども、定着初期にあって急速に分布を拡大しているものというものも私は指定を急ぐべきだと思うんですよ。既に広がっているものをどうするかというのはかなり難しい問題がありますけども、今、急速に拡大しつつあって、今たたけば抑えられるというものに関しては、早急に指定して対策をとった方がよいと思います。
【角野座長】 はい。それについては一次選定のときにも、やはり指定することの意味がある種ということで、今、矢原さんが言われたようなことは1つの根拠になったと思いますので、それは二次選定の場合も考慮に入れていきたいと思います。
ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
【高橋委員】 手短に1点だけ。
資料5の(1)(2)それから(3)(4)というところで、(1)の水草の最後のところに、「その扱いについての情報を別途整理することとする」という、これ植物の取り扱いのことに関係することですので、今までの話をお伺いしていますと、それはすべて、園芸植物にも緑化植物にも当てはまることかなと思いますので、そういう表現というか、そういう認識で解釈してよろしいかどうかということをちょっとお伺いしたかったなと思っております。
【角野座長】 では、事務局の方からお答え願いますでしょうか。
【中島室長】 はい。すべての植物の扱いについてその情報を整理していくというのは、基本的に念頭にありますのは、要注意外来生物のリストを暫定版で前回つくったものを、第二次選定の最終的な段階でもう一度整理し直そうというふうに考えておりまして、その中で選定しなかったものについての問題点を整理して、あるいは、これからそれをどういうふうに取り扱っていけばいいのかというような情報を整理していこうということでございまして、基本的にはすべてにわたってそういうことをしていきたいということでございます。
【角野座長】 はい。ちょっと予定時間を20分も過ぎてしまいましたので、あれなんですが、特になければ、この後の議論というのは2回目以降の会合で進めていきたいかと思います。
最後に、事務局の方から何かございましたら、ご発言をお願いします。
【長田専門官】 特にございません。
【角野座長】 課長はいいですか。
【名執課長】 はい。
【角野座長】 そうしましたら、以上をもちまして、今回、第3回の特定外来生物分類群の専門家グループ会合(植物)を閉会したいと思います。
どうも、長時間、ご苦労さまでした。