1 日時 |
平成17年5月13日(金)16時~18時 |
2 場所 |
環境省第1会議室 |
3 出席者 |
(委員)角野 康郎(座長)、岡野 邦夫、勝山 輝男、黒川 俊二、小林 達明、高橋 新平、濱野 周泰、矢原 徹一 (真鍋 徹委員は欠席) |
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(雑草リスク評価関係)西田 智子 |
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(緑化植物利用関係者)中野 裕司 |
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(環境省)野生生物課長、生物多様性企画官、自然ふれあい推進室長、移入生物専門官 |
(農林水産省)生産局花き対策室課長補佐、水産庁生態系保全室課長補佐、林野庁森林保全課森林保護対策室長 |
4 議事概要 |
〔特定外来生物等(植物)の第二次選定について〕
(事務局より資料を用いて説明)
- (事務局)第一次指定は水草3種だったが、第二次指定では緑化植物・園芸植物・雑草の取扱いも検討する必要がある。選定の考え方を議論して欲しい。
- 水草の中には水辺の湿性植物も含み、雑草の中には畑地雑草だけでなく荒地植物も含むという理解でよいか。
- (事務局)そのような理解でよい。
- 資料3 第2-2(1)アの関連 IVの在来生物の群集構造とはどんなものを指しているのか。人為的な影響の強い二次的自然も含めているのか。明治以前の群集を考えているのか。
- (事務局)二次的自然で影響のわかりにくい里山の群集についても、生態系・生息数・遺伝的構造を変化させてしまうものは選定対象になる。現在あるものに対して影響があるかどうかを判断するので、必ずしも明治以前を想定しているわけではない。
- 食物連鎖の中での関係において、特定の種が特に増えると他に大きな変化を及ぼすことがある。それに対し、対策をとることが必要ではないかと考える。
- (事務局)基本的にはそのように考えていくが、単に増えたからといって即指定、というのは飛躍があるとも考えた。
緑化植物の取扱いについて
(小林委員、中野氏、西田氏の順に説明)
(小林委員資料)
「生物多様性保全のための緑化植物の取り扱い方に関する提言」
- 緑化植物についてどう考えていけばいいか、枠組みを決め、共通認識をつくりたい。
- 緑化植物は防災、治山などにおいて様々な役割を担っており、必要な存在である。しかしこれまで、緑化には外来種が多く使われてきており、その取扱いにも問題があった。緑化の多くは公共事業で行われていることから、官公庁が取り組めば外来種の広がりを効果的に防げるのではないか。
- 対策にあたっては地域区分をしなくてはならない(遺伝子構成保護地域、系統保全地域、種保全地域、移入種管理地域)。現在は里山に絶滅危惧種が多く、この他にも新たな地域概念が必要かもしれない。
- 配布した基本指針8か条のような基準が満たされないと、緑化の代替技術は確立しない。
- 単にある種が特定外来生物に指定されるだけでは代替技術の開発が難しくなるので、包括的な取組がなされる必要がある。
(中野氏資料)
「平成17年4月特定外来生物等の選定に係る意見募集→要注意生物に関する意見書」
「在来植物を用いた国立公園域道路法面緑化・20年間の植生推移 造園技術報告集 3,2-5」
「見取り調査による三宅島切土法面緑化の植生推移 日本緑化工学会誌 30(2),383-388」
「法面緑化における自然回復緑化の基本的な考え方のとりまとめ 日本緑化工学会誌 29(4),509-520」
- 緑化植物の使用禁止などは急進的ではなく、段階的に進めて頂きたい。ある種をやり玉に挙げても、問題の解決にはならない。
- 足尾銅山では、攪乱されたところで急速に生育する牧草で土砂流出を食い止めた結果、他の植物が進入できるようになり、それにつれ牧草は消えていった。
- 緑化植物は自然状態に戻るまでの応急処置として使用され、効果も上がっている(自然が回復し、ツキノワグマ、カモシカが戻ってきたという例がある)。しかし、それが外部に拡散すると地域自然生態系を変化させてしまう。プラス面とマイナス面をどう客観的に判断するか議論する必要がある。
- 緑化植物としての在来植物の生産は十分になされていないため、現時点では在来種で全てまかなうことはできない。在来植物による緑化はコスト・時間がかかるため、その点、公益性と費用についてコンセンサスを得ることが必要である。
- 在来植物を用いた緑化に、外国産の在来種が使用される場合がある(例:中国産ヨモギ)。地域系統の遺伝子汚染につながる可能性がある。
(西田氏発表:雑草リスク評価モデルについて)
- Weed Risk Assessment (WRA) モデル:オーストラリアで使用されている、雑草リスク評価モデル。国内に入っていない種に関して、入れるかどうかを判断するときに用いられている(専門家へのアンケートにより、リスクを点数化し、点数によって入れるかどうかを決定)。日本でもこのモデルが使えるかどうか検討するために、300種類の植物を対象に、専門家20名に対し同様なアンケート調査を行っている。その結果、アンケートでの雑草性の判断と、WRAの結果には相関性が認められ、このモデルは日本でも使用可能な方法であることがわかった。しかし誤判定もあるため、そのまま使うことには検討が必要である。
- 水草については別のモデルがあるため、そちらを使った方がよい。
- (中野氏資料について)
- このような議論では過去の緑化政策にさかのぼった議論になりがちである。現在生じている問題点を解決することを議論の大前提にするべきである。外来生物がはびこる背景には人間が大きく環境を変えたなどの環境条件がある。生態系管理ぬきに特定の種だけを駆除するということには様々な問題がある。以上のような点を確認していけば、よい議論ができる。
- 足尾銅山などでの治山緑化と、法面緑化事業を一律に議論することは無理がある。現在生じている問題というのは、吹付をしなくても植生が回復するような場所で牧草を使った吹付がされていて、それが引き起こす問題である。
- 足尾銅山等の例を出したのは過去にさかのぼってということではなく、今後の災害等をふまえたうえで牧草をどう使いこなしていくかということを議論していただきたいからである。
- 緑化の基本目標をその地域の自然植生の回復にするのか、別の形で管理するのかによって大きく分かれる。自然植生の回復が目標なら、いかに回復を早めるかという点で技術開発していくことが重要。
- 外来植物を緑化に使うことの問題点はいろいろ検討されていると思うので、そういうことをふまえて総合的にこれからどうするのかを考えていくのが我々の課題。
- 緑化の技術開発は現在も進められている。在来植物や埋土種子での緑化には長い時間がかかり、その間に外来植物が入ってくることもある。積雪寒冷地などの地域性をふまえて、どう使いこなしていくか議論して欲しい。
- (西田氏発表について)
- オーストラリアの場合、法規制前にすでに入っているものに関しては、規制対象となっていない。すでに入っているものについては、別な扱いをする必要がある。雑草性の判断にはすでに入っているものにもWRAは使えると思う。植物の有用性については、雑草性との差し引きについてなど、また別の検討が必要。日本で使う場合にはアンケートにどんな質問を入れるべきか議論して欲しい。
- 里山周辺で園芸品種が利用されている。リスク評価をするうえで日本の自然なり在来の植物の状況を入れて作られるとよい。
- 日本での適用を考え、気候、土壌に関する部分を修正している。また自然交雑が起こるかどうかについて評価はしている。日本で使う場合、項目はこれでいいのかという議論はあってしかるべき。そういう意見があれば、今後に活かしていきたい。
- 外来生物については進化の問題を重視する必要がある。他地域へ侵入した後適応して、遺伝子が変化することはよくある。交雑して進化した場合、原産地に戻りはびこってしまったりする可能性がある(例:スパルティナ・アングリカ)。
〔今後の検討の進め方について〕
- 国内で問題となっているものが指定の中心であったが、資料5の●の4番目に示してあるように、将来的な被害が予測されるものについて今の段階で特定外来生物に指定することは重要である。
- すでに蔓延してしまっているものには、この法律で対応するのに限界がある。対応できないものについては、その理由と法律の限界を示し、他の対策が必要だということを説明していかねばならない。
- 国内に未定着のもののうち、定着の可能性が高いものについては選定作業をすすめるとあるが、定着初期にあって急速に分布を拡大しているものも指定をすすめるべき。
- それは二次選定のときにも考慮に入れていく。
- 資料5の(1)水草の部分で、広範に販売・栽培等がなされているものの扱いについての情報を別途整理するとあるが、これは園芸植物、緑化植物、雑草にもあてはまることだと思う。そのような認識でよいか。
- (事務局)基本的にはすべて情報を整理していく。
〔まとめ〕
- 緑化植物については、環境省・農林水産省・国土交通省による研究会が発足した。それを含めて、総合的なスタンスを明らかにして選定作業を進めていただきたい。園芸植物、雑草については、雑草リスク評価の考え方を参考に根拠をもって指定していきたい。二次選定の候補となる種については、次回までに事務局から提示していただけると思う。
(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり)