1 日時 |
平成17年5月30日(月)13時30分~16時 |
2 場所 |
経済産業省別館1115号会議室 |
3 出席者 |
(委員)武田 正倫(座長)、岩崎 敬二、中井 克樹、風呂田 利夫 |
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(環境省)野生生物課長、生物多様性企画官、自然ふれあい推進室長、移入生物専門官 |
(農林水産省)水産庁生態系保全室長、栽培養殖課課長補佐、沿岸沖合課課長補佐 |
4 議事概要 |
(岩崎委員より資料を用いて説明)
(事務局より資料を用いて説明)
〔外来水生無脊椎動物による被害の構造とその実例について〕
- (事務局)チュウゴクモクズガニでは肺吸虫の問題があるということだが、相当はっきりしているのか。日本では話題になっていないが、中国では話題になっているのか。
- 日本ではあまり話題になっていないが、寄生虫博士で有名な藤田紘一郎さんの本には中国で食べてウェステルマン肺吸虫に感染したことが書かれており、はっきりしていると思う。
- 日本のモクズガニにも肺吸虫はいるが、昔から食べている地域では危ないのがわかっているので必ず火を入れて食べている。料理中に液が飛び散っても危ないが、それをわかっていない人が食べると危ない。中国では老酒に漬けて食べる習慣があるが、これは危ない食べ方である。ウチダザリガニにも寄生虫がいるが、食べる人がいて問題になっている。
- ヨーロッパミドリガニとチチュウカイミドリガニについて、分類学者は厳密に分けているが、生態その他の関係者は両者を混同しているケースが多い。両者をそんなに区別しなくてもよい気がする。
- イガイダマシについてオーストラリアで根絶事業が行われたとあるが、もう少し詳しく聞かせてほしい。
- オーストラリアの場合は、外部から閉めきることが可能なマリーナの中で発見され、人力ではぎ取った後、次亜塩素酸の投入によって根絶した。このような方法を一般の湾で行えるかどうかはわからない。
- フジツボはイガイベッドのようになるのか。
- フジツボは一層にしかならない。競争的には劣位で、取水施設等への被害はあるが、生態系への被害は弱いというのが一般的な考え方。
- カサネカンザシ、ムラサキイガイのような外来種が侵入していなくても在来種により同じような被害があったのではないか。ムラサキイガイについて量的・質的により大きな影響を与える可能性があるかどうかを聞きたい。
- 多重層構造をつくるものは在来種ではあまりいない。外来種が来たことによる被害だと思う。
- ムラサキイガイにプラス面はあるのか。
- 重金属を選択的に体に取り込むので、重金属の水質モニタリングで使おうと考えられている。また、ろ過能力が高いので、九州の海岸では水質浄化の研究もされている。しかし、教育上・啓蒙上それが許されていいのかと思う。
- 東京湾にイッカククモガニがたくさんいるが、悪者ではないのか。
- イッカククモガニは開いた空間、オープンニッチを使って増えており、在来種への影響は評価しにくい。おとなしいので他生物への影響は少ないだろう。しかしそれが良いことなのか悪いことなのかは別の問題であり、もう少し慎重に評価する必要がある。
〔第二次以降の選定について〕
- アフリカマイマイ、スクミリンゴガイなどは一般にも関心が高く外来種の筆頭といえるのに、植物防疫法で対象種となっているためリストからはずされている。情報発信する際には、そうした理由を伝える配慮をしていただきたい。
- 第一次選定では時間的な制約もあり指定しやすいものからやったが、第二次選定で白黒はっきりするのか、第三次指定まで想定しているのか。
- (事務局)事務局の気持ちとしては第二次指定ではっきりさせたいと考えているが、指定に伴う社会的・経済的影響の部分で判断つかない場合は次に持ち越すということもありえる。
- 文献や情報がないものについて、モニタリング的な体制をどうとっていくかという方向性を出してもらいたい。
〔第二次選定に際しての留意点と進め方について〕
- 資料5に「一般的に拡散能力が高いため、防除が困難」とあるが、少なくとも日本の海産外来種については海外、陸上の動物より分散速度が遅いという調査結果が出ているので、削除してもらいたいと思う。
- 事務局は何か理由をつけて海の生物をはずそうという意識が大変強いように思える。“不明”、“困難”というマイナス面を表現することが多い。被害に関する文献は少ないが、第二次指定では文献が無くても検討することになったのだから、ポジティブな表現に書き換えた方がよい。
- 「流通量等の把握は困難なものが多い」とあるが、努力すれば把握することは可能。「把握されていない」というような表現にした方がよい。
- 資料6にいくつかの特性があげられているが、すべて該当しないといけないのか、一つでもいいのかなど、これをどう使っていくのかを聞きたい。
- (事務局)資料6にあげられたものは、作業していく中でどういうことに着目し情報を集めていくかという着目点をあげたもので、基準ということではない。
- 資料6に「在来生物と比べ繁殖能力が高い」とあるが、実際的には個体群の増加率が高いという意味になると思うので、「密度増加率が高い」という表現にかえてもらいたい。
- 資料6に「在来生物と生息場所が重なる」とあるが、「競争的排除能力が高い」といった表現にかえてもらいたい。
- 資料6に「水産資源を捕食する能力が高い」とあるが、水産資源に影響を与えているのは捕食だけではない。「捕食・致死させる能力が高い」といった表現にかえてもらいたい。
- 資料6に「寄生生物を伝搬する」という文面を入れたらどうか。公衆衛生にも関わってくるので一般的な関心も高いと思う。
- (事務局)寄生生物などによって在来生物が影響を受ける場合は対象となるが、人間に対する影響となると別の法律で規制されるので別の整理ということになる。
- 在来種への寄生虫被害、感染病原菌の伝搬はあるので、是非加えたほうがよい。
- 資料6に「非意図的導入による無脊椎動物については、本法律による規制の効果は小さい」とあるが、無脊椎動物の非意図的な移動の阻止についてはということではないのか。それを入れないと誤解されてしまう。
- (事務局)そのようにかえたいと思う。
- 資料6に「固有の貝類等に影響を及ぼす」とあるが、貝に限らず、在来生物に影響を及ぼす、でいいのではないか。
〔第二次選定の検討対象種について〕
- カワヒバリガイについては日本では水道の保守管理をしているところで被害にあっている。水道法ではカワヒバリガイなど特定の生物を規制しているということはないのか。病原菌に対する感染症法などでも規制されているものはあるのかどうか、調べた方がよい。
- (事務局)おそらく輸入、流通を規制するということは水道法ではできていないと思う。次回までに調べて整理したいと思う。
- 資料7に「検討対象種一覧に被害に係る一定の知見はあり、被害の防止に向けた普及啓発・防除手法の具体的検討を進めつつ、引きつづき、指定の適否につき検討する外来生物」とあるが、一定の知見とはどういうことか。
- (事務局)各分類群を横並びになんとか表現しようとした結果このような表現になったが、もし適切な表現があったら教えてほしい。
- この中に入っている生物について、海外での被害に係る知見は十分あるといえる。一定の知見ではなく、十分な知見でよいのではないか。
- 選定には生態学的被害の尺度以外にも勘案しないといけないことがある。そうしたことを正直に書くべき。生態的な評価が不十分だというニュアンスでとれることが研究者側としては受け入れにくい表現になっている。
- (事務局)無脊椎動物に関しては十分な知見としても問題ないが、他の分類群では十分と言えないもの含まれている可能性がある。検討してから次回に提出したい。
- それほど蔓延しておらず移動は人為的な要素が大きい、ウチダザリガニとチュウゴクモクズガニは同じカテゴリに入っている他の生物と質的に違う。流通情報も把握してさらに検討すべき。
- わが国で被害を及ぼすおそれは高くない生物として、ツノクラゲの一種とオオメミジンコ科の一種が入っているがその根拠は。
- (事務局)ツノクラゲもオオメミジンコも非常に閉鎖性の強い水域で増殖するという見解から日本でそういう場所は想定されないということで、このような整理とした。
- 閉鎖性が強い海域の特徴である貧酸素状態などは日本の海域の中で頻繁に起こっているので、そうした部分については、生態的な議論が必要である。
- (事務局)ヨーロッパミドリガニは被害があるが、チチュウカイミドリガニは国内に入っていても被害は不明確。別種にしているが、どう考えればよいか。
- チチュウカイミドリガニに関する文献は少ないだろう。もともと一種であったものが最近2種に分かれたため、文献ではヨーロッパミドリガニとして書かれている可能性が高い。生態はどちらも同じだと思う。
- 形態的には異なるが、日本に侵入したものはハイブリッドの可能性が高い。別種ではなくなる可能性があるため、同種として扱った方がよい。チチュウカイ型のほうがより閉鎖的環境を好む傾向はある。
〔その他〕
- 植物防疫法でザリガニが規制されているが、どうするのか農水省とも打ち合わせした方がよい。
- 植物防疫法で規制されているが、外来生物法の方がより規制の効果がある場合、移しかえることはできるのか。
- (事務局)有用植物への害が無ければ植物防疫法の対象からはずれる可能性はある。その場合、外来生物法で対象にすることはありえる。
- 税関対策はどうなっているのか、植物防疫法では入ってくるものを水際で防ぐことができたが、それと同じ効果はあるのか。
- 水際でくいとめるための体制について環境省はどう考えているのかという情報、資料がほしい。
- (事務局)外来生物法の輸入時のチェックは、水際体制の中心となっている税関、植物防疫所、動物検疫所に協力してもらうことになっている。同定できないなどの問題が出てきた場合は、環境省が専門家の方に協力要請してやる体制を考えている。
- (事務局)植物防疫所、動物検疫所については、それぞれ対象とする範囲があり、その部分については協力するということになっている。税関は全部通関するので全部見るという形になっている。同定で困った場合などは専門家に協力要請するということを考えている。
- スピードが問題になる。その時に同定できる専門家がいなかったらどうするのか。水生無脊椎の場合は同定がややこしい。それを同定する人たちがしっかり体制をつくれているのか。
- (事務局)それは悩ましい問題。今のところ輸入は成田、関空、中部空港の3つに限られている。できるだけ近場でいろいろな専門家のネットワークを確保しなければいけないと考えている。
- (事務局)特定外来生物に指定されると、外見上似ているものについては種類名証明書をつけるという義務がかかる。義務がかかったものについては3空港以外の輸入をしてはいけないということになっており、特定外来生物に該当するかしないかのチェックは3空港でやることになっている。
- 検疫機関の義務として、少なくとも外来生物に該当するかどうかの見極めはできねばならない。
- (事務局)ある程度の見分け方のマニュアル集を現場の税関に配布したり、インターネットを含め常時相談を受ける体制づくりをしている。
- 調査関係にも生物同定に詳しい人がたくさんいる。講習を通した民間の人材育成を考えて、それを含めてネットワークをつくってもらいたい。
- (事務局)分類のできる人を確保するのは重要。生物分類技能検定というのがあるが、そうした中で協力できる人を確保するといったことも検討している。
- 植物防疫法では国内に入ってきたものへの対応はどうなっているのか。
- (事務局)積極的な防除をやる法律上の仕組みもあると聞いているが、ペットショップでの販売といったことに対して積極的に対応する枠組みはない。植物防疫法で対象外のものを外来生物法で対応していく場合はより適切に対応できると考えている。
- 2つの法律は目的が違う。また、スクミリンゴガイはゴールデンアップルスネイルという観賞用として入ってきているし、国内では生きた除草剤として有効利用するという動きもある。こういった抜け道に関してどう考えていくかが気になる。
- 要注意外来生物の扱いに関しては、全体会合でさらに検討を重ねるということになったのに、朝日新聞に誤った形で要注意外来生物の定義が掲載されてしまっている。こうしたことに早急に対策を立てないでいいのか。海産生物は科学的知見や情報があっても、規制が難しいので要注意外来生物に入っているものがたくさんある。
- 被害はあるが、いろいろな問題で指定できないものも含まれるということを要注意外来生物の定義として入れてもらわないと、外来生物の研究上・教育上有害になる。要注意外来生物をつくったことには感謝しているが、取り扱いについては注意してもらいたい。
- (事務局)要注意外来生物リストについては暫定版でもあり公式発表していないが、会議は公開でやって資料も全文ホームページにのっている。これを基に書かれた記事を個別にチェックすることは難しい。あくまでも第二次の選定を通じてどういう位置づけをするかを整理していきたい。
- 少なくともホームページで要注意外来生物はこういうものだと公表する必要があるのではないか。
- (事務局)最終的に環境省として公表する際にはインターネットでということは前提となるが、どのタイミングで出すかはいろいろな情報をふまえ検討していきたい。
- 一律に要注意外来生物を定義づけすることは難しいかもしれないが、難しいなら各分類群ごとに定義づけしてもいいのではないか。
- チュウゴクモクズガニの対応に関しては、海外で被害はあるが食材として流通しているということを正しく公表していた。このように正確に対応してもらいたい。
- (事務局)二次選定では検討対象種すべてに対して情報整理をしている。個々の種の問題を明らかにすることは重要なので、最終的によりわかりやすくする必要があると思う。
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生態学的な情報に関してはよいが、その他の関連情報は足りない部分があるので、特に注意してやってほしい。
(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり)