1 日時 |
平成16年12月27日14時~16時 |
2 場所 |
経済産業省別館第827会議室 |
3 出席者 |
(委員)武田 正倫(座長)、岩崎 敬二、小野 展嗣、中井 克樹 |
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(環境省)野生生物課長、生物多様性企画官、野生生物課課長補佐 |
(農林水産省)水産庁生態系保全室長、栽培養殖課課長補佐、沿岸沖合課課長補佐 |
4 議事概要 |
〔特定外来生物の選定の進め方について〕
(事務局より資料1-2を用いて前回指摘を踏まえた修正部分について説明)
-修正案について特段の意見なく了承される-
〔特定外来生物、美判定外来生物、種類名証明書添付が必要な生物の選定について〕
(事務局より資料1-3,1-4を用いて説明)
- 事前に事務局から実務面について説明してもらって、あまり細かくみることは難しいということが分かった。サソリ科については、専門家ではない税関の職員がみて判断がつくか否かという観点では、オールオアナッシングにせざるをえない。
- 特定外来生物の選定が必要と考えられる生物のうちゴケグモ属については、ハイイロゴケグモを外して代わりにジュウサンボシゴケグモを入れた方が良い。前回は○○属を除く○○属全種となっていたので、良かったが、このようにするのであれば、ジュウサンボシゴケグモを入れるべき。ハイイロゴケグモについては未判定外来生物で良いのではないか。
- (事務局)ハイイロゴケグモはすでに国内で定着しているので、未判定にするよりは、特定外来生物に指定する方が良いと考えた。
- そうであれば、ハイイロゴケグモはそのままにして、ジュウサンボシゴケグモを追加すればよい。
- (事務局)前回から全体を整理し直したときに、特定外来生物に残し忘れたものなので、ジュウサンボシゴケグモは特定外来生物とする。それ以外にも同じようなものがあれば、特定外来生物に入れるが、ハイイロゴケグモはすでに国内にいるので、特定外来生物にすべきと考える。
- サソリ類は区別できるのか。
- 研究者の立場では分かるが、いろいろ事情を聞くと、特に税関での事情から、1500種のサソリのうち、これは良い、これはダメという措置は難しい。サソリについては、全部に種類名証明書をつけさせるかしないかという二者択一の問題。
- サソリを飼っている人は多いのではないか。
- 事務局がペット関係の人にヒアリングをする際に同席したが、いろいろ聞いていると、サソリは特別なペットではなく、は虫類などの延長線上にある。クモやサソリだけの問題ではなく、今ならそれほど流通量が多くはない。
- キョクトウサソリ科以外で致死性のあるものはあるか。
- ないと思う。
- ヒメグモ科の中でゴケグモ属とそれ以外は簡単に区別できるのか。
- それはある程度簡単にできる。
- 種類名証明書の添付をサソリ目1500種すべてにさせることは可能なのか。実際できなくて問題は起こらないのか。
- 普通の人が見たら、どういうサソリかは分からないがサソリかどうかはわかる。オールオアナッシングである。前回は全種までは種類名証明書を求めないという考え方であったが、環境省は全種、種類名証明書をつけさせるべきとの考えであって、それはそれで理屈が立っていると思う。
- (事務局)特定外来生物と未判定外来生物を税関でみるという整理。1500種すべてが分からなくても、キョクトウサソリ科ではない種類という証明でも良いので、証明を付けてもらうことが必要。
- サソリの輸入量は分かっているのか。そう多くはないという判断であれば、可能だと思う。
- (事務局)資料1-3の6(2)で、過去5年間で49種の流通が確認されているとある。1500種のうち国内に入ってきているものはわずかであり、また、パブリックコメントを実施する中で世の中の反応をみて、またご意見を伺っていきたい。
- 49種ぐらいなら可能だと思うし、もっともだと思う。
- キョクトウサソリ科全種とすると600種ぐらいになる。種から言えば、キョクトウサソリ科で致死性の毒があることが分かっているのは20から30種ぐらい。同じ科の1種で致死性があることがわかっていても他の種との比較はできない。なぜ、科全部を特定外来生物にするのかについて、環境省はその理由を明らかにしておいてほしい。最初、疑わしいものは入れないという考えでいたが、クモとサソリは全く状況が違う。
- この無脊椎動物の会合では、致死性のあるものだけを選んでいるという基準が他の生物分類群と違うということを説明しておくことが必要。
- 吸血性のダニは、人の生命身体に影響があるし、ハダニは農業被害も起こす。前回、吸血性のダニの問題は、それがくっついてくるほ乳類等の問題として扱い、ハダニは植物防疫法で対処しているという観点から、対象外にするということであったが、私は対象になると考える。今回の議論では取り上げないということだけで、そういう中で残されたものが今回のものである。
- (事務局)今回は、第一陣の指定という考え方。全く法律の対象外ではなく、今回の選定の対象外ということである。
- 今回は第一回の指定ということで、少し控えめかもしれないが、データがはっきりしているものだけを選んでいる。クモは単純明快だが、生態系被害はむずかしい。
- 特定外来生物には事務局案に加えてジュウサンボシゴケグモを入れることとし、種類名証明書などもこれで良いか。
-特段の異議なく了承-
〔要注意生物リストについて〕
(事務局より資料2を用いて説明)
- イッカククモガニとかははっきり問題がないとされている。
- このリストを作るにあたっての根拠は何か。岩槻委員長談話を読んでいると、外来ではない在来の生物の移動による問題と、在来であっても、海外から来ているものの問題が強調されている。また、委員長談話では、要注意生物リストであって要注意外来生物リストではなかった。今回は外来生物だけを問題にすると考えて良いか。
- (事務局)そう考えていただいて良い。
- 無脊椎動物については、特定外来生物になると被害があり、ならないと被害はないという整理がされているような気がする。具体的に言えば、ムラサキイガイが「導入・利用形態別のグループ毎に影響評価の仕組みの構築を図る必要がある外来生物」というのは一般の人にはわかりにくい。これは、「知見が不十分であって十分な影響評価ができない生物」であるという扱いになると思うが、ムラサキイガイについては、競合、遺伝子浸透について指摘する文献もあるし、農林水産業被害の観点でも、マガキに対する汚損の被害もある。このようなはっきりしている被害があるにもかかわらず、ここに入れることで被害がぼんやりしてしまう。防除は困難だとは思うが、こういうものを出されるとムラサキイガイには被害がないのかということになって問題がある。
- (事務局)1の特に注意を要する外来生物は、意図的に持ち込まれているものを入れており、非意図的なものは2に入れている。植物ではこういう整理がしっくりするが、無脊椎動物については事務局の整理がうまくできていない面もある。先週、植物分類群の会合があって議論があり、このリストにあがったものについて、どこに注意が必要であって、何が問題なのか、個々に説明書きをしていった方が良いということになった。リストそのものをもっと整理したいと考えており、今日、ご意見を伺った上で整理したい。
- 「影響評価の仕組みの構築を図る必要がある外来生物」が分からない。
- 2の言い訳の仕方が足らないのではないか。意図的、非意図的で割り切って分けるべきである。影響があるのは分かっているが、広がりすぎてきて手のほどこしようがない。説明を個々に書くのか、それとも2のaと2のbに分けるのか、工夫した整理が必要。
- これから外してしまうのもありえるか。
- (事務局)影響評価の仕組みの構築がわかりにくいのだと思う。個々の外来生物について被害の態様をみて、判断していくのが科学的な積み重ねであるが、一方、新しく入ってくるものについて、知見がない中で判断していくためには、基本的にこういう生態的特性のあるものはこういう問題があるという整理をしていく必要がある。どういうふうに被害・影響があるのかを評価していきたい。
- 全般的な話かもしれないが、特定外来生物になると問題があるので全国的に防除がはじまると考えられている。このうち、非意図的導入ですでに広がっているものは今すぐに特定外来生物に指定することの弊害はどれだけあるのか考えるとあまりないのではないか。普及啓発のことも考えると、植物ももうちょっとシンボリックなものが入っておいて良いのではないか。一方、意図的導入のあるものは利用者への配慮が必要だと思う。
- (事務局)バラスト水のように非意図的なものを入れるのか否かについて、要注意生物リストには影響が分かっているものが入っているが、特定外来生物にするか否かは、バラスト水条約の動きもあり、非意図的なものについては防除をどうするのかの観点で選定している。個別にみた場合、現時点で議論する段階に来ていない。象徴的に普及啓発をしていくのであれば、特定外来生物に指定していなくても手だてはある。今回は、時間がない中でやらざるを得ないので、短期間で効果がありそうなものの選定を進めている。
- 海産と陸水で分けているのは意味があるのか。一つの表で良いのではないか。
- (事務局)場所に注目して分かるのがわかりやすいと考えて分けた。
- 時間がないというのは最大の懸案事項である。一般に出すときは、それも最初に説明しておくべきである。それが逆に時間をかけてやっていくという姿勢を示すことにもなる。要注意生物リストはどういう位置づけになってくるのか。これに入ることで普及啓発的な意味合いもあるとのことだが、備考欄に書いてあることは努力義務なのか、それとも何らかの効力があるのか。ウチダザリガニは是非1にあげておいてほしい。
- (事務局)要注意生物リストの位置づけについてだが、法上の規制の効果はない。ただ、外来生物法第27条に科学的な知見の充実のための措置に関する規定はあり、データを集めていかなければならない。基本方針の中では、より効果的な普及啓発を外来生物全般についてやっていこうということについて書かれている。
- 国民の理解の増進の観点で言えば、どうしてもこの区分けの仕方だと、特定外来生物には被害があって、他はないということになる。被害はあるが手の打ちようがないという区分も作った方が国民の理解の増進を進めやすい。
- 特定外来生物に指定してしまうと、国に防除が求められるという懸念もあるのかもしれないが、防除については国に予算的な支えがなくても、地域住民の取組を後ろから支えることの効果は大きい。シンボリックなものは一定の割合で必要ではないか。
- シンボリックなものという意味でアメリカザリガニをやると今になって何をやっているだということになる。
- ここに名前のあがっているものも文献で可能性が指摘されているものもある。
- この要注意外来生物リストについても第一次のものということになる。たとえば、リストに載っているヨーロッパミドリガニではなく、チチュウカイミドリガニが日本に入ってきている。これはチチュウカイミドリガニについての文献がないというのではなく、最近、両種が区別されるまでは、ヨーロッパミドリガニとして扱われていたので、チチュウカイミドリガニについての文献がないということによるのではないか。
- (事務局)公表にあたっては、修正をしていきたい。ウチダザリガニについては広がって問題になりつつある。しかし、文献に頼っていると大被害が出てこないと指定できない。
- ウチダザリガニについては、後2,3年すれば、論文が出てくる。
- ウチダザリガニはかなり広がっている。アメリカザリガニみたいにならないようにということでシンボリックになりえる。
- チュウゴクモクズガニについては生きたまま相当流通していると考えて良いか。
- 上野とか新宿とかでは路上でも多数販売されている。
- 食材として生きたままでなければないといけないものなのかどうか確認しないといけない。アメリカでは生きたままのものは輸入されていないはず。利用者の義務、責任をどうしていくのか。
- 以前から生きたものを売っている。水から出しても元気。なお、チュウゴクモクズガニの個票に「日本でも養殖」とあるが、これは畜養の間違いではないか。
- (事務局)前回のご指摘を受けて、各都道府県に照会を行った。まだ全都道府県の回答は出そろっていないが、6県(各県1~5経営体)で確認されている。導入の時期は平成10年頃から。ただし、漁業法に基づく免許したものではないので、すべては把握できていないかもしれない。4県では事前に養殖自粛の要請を行っており、在来種を使うようにしている。また、使う場合も逃散防止の徹底を指導し、野放しにしないように求めている。自然界における定着の確認も行ったが、東京湾お台場での定着の可能性があるほか、定着につながる情報はなかった。
- 養殖というとカニの幼生から飼わないといけないが、稚ガニを買ってきていると聞く。
- (事務局)あまり小さいのを買ってくると汽水を要求するため、山奥の休耕田などでは育てられない。ある程度成長し、淡水だけで育つものを買ってきているらしい。
- 日本産のものを使えば良いのだが。
- (事務局)県の担当者のところに相談にくれば、在来種を利用するよう指導している。しかし、相談にも来なければ指導にいく根拠もないので、対処のしようがない。やはり価格面での格差が大きく、中国からの輸入品だと1匹800円程度、中国から稚ガニを買ってきて日本で育てたものは1匹400円程度、これが在来モクズガニだと1匹200~300円程度となる。
- 移入種問題検討分科会、移入種対策小委員会、外来生物対策小委員会などの議事録を読んでみると昆虫を除く無脊椎動物についての議論がほとんどでていない。これは事務局がというよりも、このグループの準備がかなり遅れていたのではないか。また、アサリ、シナハマグリ、アカガイ、アゲマキを中国から輸入することの問題が顕在化してきたのは2000年以降。研究者が把握したのも1~1.5年前から。具体的にそういうことをしている専門家から事情をヒアリングしていただけないか。4人の委員は、節足動物2名と軟体動物2名でやっているが、それ以外のグループの情報を把握していくことが必要。
- (事務局)先ほどの影響評価の仕組みの構築とも関係する。それぞれの分野の中で専門家の知見の収集を進めていきたい。
- このリストをもっと充実させてはどうか。文献がないと充実させようがないとのことだが、無脊椎動物もかなり引いた印象がある。
- 「影響評価の仕組みの構築を図る外来生物」を見ているとなかなか理解できなかったところがある。他の分類群会合は、狭い分類群毎に検討しているが、この無脊椎動物分類群会合では、非常に多くの20門もの分類群を対象にしている。被害を判断するには、分類群毎に分けて把握した方がよい。防除などの対策をするのであれば、海産とか陸水といった区分や、意図的、非意図的といった区分がわかりやすいと思うが、被害の判定を見るには、貝類なら貝類と分けてしまった方が被害は見やすいのではないか。
- 今更ではあるが、クモとサソリは昆虫と一緒に議論した方が良かったと思う。
- まとめる側は、人間側の営みを重視している。海なら輸送に関係するし、陸水ならほとんどは混入による。一方、研究者は生物を見てしまう。要注意外来生物リストにはもう少し候補をあげても良いか。
- (事務局)全体会合で他の分類群と横並びでみていただくことになる。
- この分類群会合が貝と節足動物についてあげる場である。
- 全体会合では、個々の種について、この分類群会合以上の議論はできない。是非、入れておくべきものは、この会合でやるべき。
- (事務局)文献にある程度指摘のあるものを入れているのが基本的ルール。そうでないものを入れるには議論が必要である。
- 文献は一般に公表するのか。
- (事務局)参考文献のリストは公表する。
- クモ、サソリについても、ちょっと足りない気もするので、もっと文献の数を増やしてほしい。
- (事務局)個票を作成するにあたって、直接引用した文献のみをあげている。文献類については、集められるだけ集めているつもりだが、足らないものがあれば教えてほしい。
- 文献を集めきっているとすれば、要注意生物リストもこれ以上増えないと言うことか。
- 学術書ではなく、一般解説書ばかりになってしまうおそれもある。
- (事務局)学術論文を全部拾ったわけではないので、1月上旬までの間にご連絡いただければと思う。
- 文献はないが、日本に生息する無脊椎動物と同属の種であれば、日本に大量に入れられる場合、誰でも交雑のおそれについて論文をかけるが、輸入されていないので書いていないだけ。文献主義で文献にだけこだわるという姿勢には疑問がある。
- 各分野の知見に相当の差がある。文献主義であると被害が大きくならないと文献は出てこない。
- 全体的な問題であるが、第一陣の指定の候補には、思いの他、期待したものが入っていない。どういうタイミング、頻度でこういう検討が行われるのかを何からかの形で明らかにできないか。
- (事務局)6つの分類群ででこぼこがあるのは事実。今回の指定で概ね終わってしまうものと、新たにじっくりとやっていくものがある。植物や無脊椎動物については、入り口に立ったところであり、全体をみて体系的にやっていく。個別具体に問題のあるものがあれば、それは随時指定をしていく。事務的には、実務体制作り、実際に管理する体制の整備と平行してやって行かざるを得ない。検討の仕方自体についてもご意見をお聞かせいただきたい。年度あけになると思うが、別の専門家を呼んでヒアリングするなどしていきたい。
〔その他〕
- 他の法律による管理がなされているものについて、二重に網をかけるというのは法律的には考えにくいのかもしれないが、こちらの視点からの指定ができるようにしたい。
- これだけの資料を集めてもらって事務局には感謝。
- 集めた文献の数は、他の分類群よりももっとも多かったのではないか。
(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり)