1 日時 |
平成16年11月25日14時~16時 |
2 場所 |
環境省第1会議室 |
3 出席者 |
(委員)武田 正倫(座長)、岩崎 敬二、小野 展嗣、中井 克樹 |
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(環境省)生物多様性企画官、野生生物課課長補佐 |
(農林水産省)水産庁生態系保全室長、栽培養殖課課長補佐、沿岸沖合課課長補佐 |
4 議事概要 |
(事務局より資料を用いて説明し、質疑応答。)
(委員からの主な意見)
〔特定外来生物の選定の進め方について〕
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(資料2-2について)特定外来生物の選定の前提に関し、「我が国に導入された」という意味を確認したい。植物WGの資料をみると、イチイヅタの変異種についての資料が付されていた。イチイヅタは、沖縄や小笠原の海にも生育する在来種であるが、例えば、在来種だけど海外から入ってくることがはっきりしていて被害を及ぼしているものは、特定外来生物の選定の対象にはならないのか。
(事務局)法律上は、日本にいない種が対象となる。また、基本方針第2では、「原則として種(亜種又は変種がある種にあっては、その亜種又は変種とする。)を単位として行うものとし、必要に応じ、属、科等一定の生物分類群を単位とする」と規定されている。海外から入ってくるものが亜種、変種のレベルで分類されていないと、本法で規制することはできない。イチイヅタの場合、変異種は変種等のレベルではなく、在来種と区別することはできないと判断した。
〔無脊椎動物に係る選定の考え方について〕
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今までの各分類群会合の資料をホームページで見て、本当にこれだけの膨大な資料を作っていることに敬服している。ただし、資料3-2は未定稿とは書いているが、ベントスの分野では重要なものが抜けていると思う。また、チュウゴクモクズガニについても、2003年に飼育下で在来のモクズガニとチュウゴクモクズガニが容易に交雑することが文献で明らかにされている。我々の知っている文献も紹介していくので、さらに充実させていってほしい。また、ベントス学会が9月に出した外来種特集の記事に載っているような外来種もまだここには載っていない。
(事務局)資料3-2は、まだ不十分な点もあると思うが、これは改訂していくものではなく、第一陣の指定が終わったら役割を終える。次の指定に向けてはさらに知見を収集していきたい。
- 各委員とも、足りないとの印象はあると思うので、情報を事務局に提供してあげてほしい。
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資料3-2の中で、ダニはどうしてこれ1種なのかと思っていた。植物加害性のダニは植物防疫法の対象になるため、本法の対象外になるということは理解してはいるが、ダニが何故一つだけなのかは疑問。クモとサソリは納得できるが、文献はもっと充実させていってほしい。
(事務局)資料3-2のリストでは、植物防疫法の対象になるものは基本的に外しているが、若干整理されていない面もあるので、整理していきたい。
- 我々は農林水産業の専門家ではなく生態の専門家。植物防疫法で何が対象になっているかは分からないので、植物防疫法の対象になっている生物のリストがほしい。
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植物防疫法で対象になっているから本法では対象外で良いんだではなく、特定外来生物に重複して指定しても良いのではないか。また、植物防疫法で漏れているものがいれば、植物防疫法で指定してきちんとやれよという話はできないのか。
(事務局)植物防疫法で輸入規制はかかっているので、そちらで対象にしているのであれば、植物防疫法で対応した方が分かりやすい。
- であれば、具体的にどれとどれが植物防疫法の規制対象生物なのかを明らかにしてほしい。
- 逆に言えば、植物防疫法の対象になるものは、このリストから落としてしまって良いのではないか。その観点からこのリストに載せていないものもあるはず。
(事務局)植物防疫法で対象になっているものは外しているが、それ以外でよく分かっていないものは載せていない。
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資料3-3をみると、1特徴の欄に、他の5つの分類群では、被害のことを書いているのに、この無脊椎動物のものでは、被害については書かれていない。昨年のベントス学会の環境大臣への要望書の中でも、具体的な被害について書いてあるはず。特定の種について現に被害があるものはあるのに、無脊椎動物全般ということで括って被害について書かないのは納得がいかない。
- 無脊椎動物の分野での問題は、人間に対する毒の問題だけではないということをもっと強調した方が良いということか。
- 資料3-3が、このまま全体会合に出てしまうと、無脊椎動物については、生態系被害も農林水産業被害も留意しなくて良いということになってしまう。
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全貌が明らかでないのは、そのとおりだが、それを書くことにどういう意味があるのかも理解できない。全貌が明らかにならないと対策を講じないということなのか。定着状況も不明とあるが、50種くらいは定着状況も明らかになってきている。分かっているものもあるので、全体が分からないように表現するのは如何なものか。
- あまりに不明なところが多いということではなく、一部は明らかになってきているということを書けば良いのではないか。
(事務局)影響と被害とは少し異なると考えている。資料2-2で示された作業手順は被害をどう判断するかであるが、資料3-2のリストは影響があるものを示したものであり、それらの中から被害があるものを見出しにくいということもあって、資料3-3では、分からないものが多いという書き方になっている。
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個別の種をあげれば、哺乳類のこれは被害があるというのに、ベントスのこれは被害ではないのかと言いたいことはいっぱいある。だいぶん、認識が違うのではないかと考える。
(事務局)ここで書く特徴というのは、全体の概観であり、これをもとに指定するかどうかを判断するものではない。むしろ重要なのは2の留意点の方であり、今ある知見の中で何をみていく必要があるのかが重要である。
- 資料3-3をみて、節足動物の分野ではそうかなとすんなり受け止めたが、昆虫とかを想定して作ったものではないのか。
(事務局)哺乳類は有る程度被害が分かっている。しかし、植物や昆虫は余り分かっていない。このペーパー自体は分類群ごとに書き方に差はある。
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特徴の部分は、もう少しポジティブな表現に改めていただき、分類群によっては知見が一部蓄積されているといったような表現にしてほしい。この会合のメンバーは分かっているが、このペーパーをこの会合以外の人がみれば、無脊椎動物は、「えっ、そんなものか。」と軽く受け止められてしまうおそれがある。
- 1特徴の3つめの○の最後の文章は変えた方が良い。
(事務局)1特徴の文章を直すことについては具体的に検討していきたい。また、2の最後の○の影響評価の仕組みをどう作るかについて検討して頂きたい。膨大にある外来生物の中で、何故、これだけなのかという部分を説明するためにも、植物と同様、評価システムは必要と考えている。
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1特徴の2つ目の○の部分には事実誤認もある。「農林水産業被害を及ぼす無脊椎動物については、植物防疫法等により規制や防除が実施されてきている」とあるが、農林水産業被害のあるムラサキイガイの防除は植物防疫法では実施されていない。
(事務局)農林水産業被害と一括りにしているが、やっているものとやっていないものがあるので、書き方を工夫したい。
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2の留意点の2つ目の○でバラスト水について書かれているが、近年では、バラスト水だけでなく、船体に付着して入ってくるものが重要ということになってきた。IMOでバラスト水の条約が今年2月に出来て、日本政府はこれに加わるか検討中であるが、船体付着の問題については、IMOもこれからの検討課題とのこと。「バラスト水」という部分は「バラスト水等」とするか「バラスト水又は船体付着」としてほしい。
(事務局)バラスト水の問題は、条約に基づいて対策を実施するべきものであるが、防除について条約は対応していないので、外来生物法でやるべきという趣旨から書いている。
- 少なくとも「等」はつけておいてほしい。
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無脊椎動物で水の中にいるものについては、養殖や放流で野外に直接導入されるものが多いが、これらは新しい外来種の温床になる行為である。ある意味、植物の緑化と似た側面があるのではないか。養殖や放流での利用は、利用のあり方として注意を払うべきものとして書いておくべき。
- クモやサソリだけでなく、外来種問題はあるが、すでに植物防疫法で措置ずみのものもあるということを示すため、リストを一覧で示すべき。
(事務局)1特徴のところを書き直す作業を行う。リストの問題については、要注意生物リストを作らせる、普及啓発をするというのはあるので、ただちに法規制をかけるものではなくてもリストに載せていくこと考えていきたい。
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2の留意点の最後の○で、海産性、陸水性、陸上性の3つに区分して捉えられるとあるが、チュウゴクモクズガニ(上海ガニ)は海と陸水を行き来する生物であり、陸上を歩くこともできる。このような生物もいることを承知しておいてほしい。
(資料3-4について説明)
- 八重山諸島の在来種であるヤエヤマゴケグモについては、アカボシゴケグモと呼ばれているので、そちらの名前に修正すること。ジョウゴグモ科のAtraxとHadronycheは、オーストラリアでは、毒の強さから同等と考えられているが、Atraxが町中にいて人との接触が多いのに対し、Hadronycheはあまり人と生息域が重ならない。
- ジョウゴグモ科の他の種は指定を考えなくて良いのか。
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今の医学で確認されているものとして、致死例はない。念のため、言えば、クモはみんな毒を持っている。問題はその成分であり、35000種のうち数十種は脊椎動物に致死性の毒をもっている。今回は人間に致死性の毒ということでこの3つは確実にあげられる。ゴケグモ類はその属全部が同じ成分の毒を持っているので、属でまとめて指定した方がよい。また、クモの専門家はわりと多いので、アマチュアレベルでも同定はできると思う。
- ヤエヤマゴケグモという名称がまだ一般に使われているのであれば、アカボシゴケグモという和名の後に括弧書きで記しておいた方がよい。
- それは重要なご指摘であり、サソリ類も和名だけでなく括弧書きで流通名を書いておいた方がよい。
(事務局)当初は、毒のあるクモとしてタランチュラも想定されたが、委員に事前にご相談した結果、外した経緯がある。
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タランチュラというのは大型のけむくじゃらのクモの総称で、3つの科にまたがる。特にオオツチグモ科が中心となるが、オオツチグモ科による人の致死例は良く聞くものの、調べてみると孫引きが多くて、もとになった死亡例は1800年代のものであった。毒性試験は行われているが、ハツカネズミには致死的であることが分かったが、人間に致死的な影響を及ぼすかどうかは分からない。本当に調べるには人体実験をするしかないが、それはできない。最近、オオツチグモ科による人間の致死例はない。
- タランチュラには一般で関心の高い人も多い。
- ゴケグモは小さなクモで体調1cm。見た目も毒グモに見えないので、こういうものがかえって危険である。
- 人の生命・身体への被害は、判断が分かりやすい。しかし、生態系被害や農林水産業被害は判断が難しい。
- 他の5つの分類群で毒のあるものは全て入っているのか。毒ヘビは全て入ってはいないのではないか。
- 分類群毎に選定基準が余りに違うのは困る。座長会議の際に調整をしたい。
- 全体の中で、毒グモが選ばれた理由付けが必要なのではないか。サソリは流通しているので分かりやすいが、クモは人と接触する機会が余りない。
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サソリはカブトガニレベルの貴重な生きものであり、本来生息地で保護すべきもの。木材の輸入で非意図的に入ってきた種が6種知られているが定着はしていない。むしろ今は、ペットの問題が大きい。人間が改良してきた生物である犬や猫、ハムスター等を除いて、外国の野生動物をペットショップで買って飼うのは如何かと思う。
(事務局)人の生命身体に被害を及ぼすおそれのある動物は、動物愛護管理法の危険動物で対象にしているものがある。将来にわたって動愛法にまかせっきりではないが、今、優先的にやるべきものとして考えた結果、毒グモと毒サソリという結論になった。
- 動物愛護管理法は、飼育管理の法律であって、輸入制限の法律ではない。植物防疫法の場合と事情は異なる。
(事務局)植物防疫法と動愛法を対等に扱うことは考えていない。緊急性の観点からみて、現に全く管理されていない毒グモ、毒サソリからと考えた。
- 今回は、第一陣の指定ということだが、これだけでは物足りない。全然やっていない感じがするが、差し当たって、これらを候補とすることは良いか。
- 了承 -
(資料3-5について説明)
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養殖、放流のために利用される外来生物は、在来種の代用として、日本の国土の中で利用することを前提として使われる。つまり、養殖、放流には、在来種と非常に良く似たものが使われる可能性があり、競合や交雑の可能性は想定せざるを得ないという特徴を踏まえ、どういうやり方をやるのが賢いやり方なのかを考えていきたい。
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次回の会合では、具体的に何をやるのか分からないが、ベントスの場合は、養殖用の種苗に混ざって非意図的に日本に持ち込まれるベントスがいるという認識を持っている。次回は、そういった養殖・放流で利用する外来生物や非意図的に混入してくる外来生物について被害の現状から議論はできないだろうか。
- このままでは不完全燃焼。次回、クモやサソリを特定外来生物にあたると断定するのは良いが、もっと、こういう話をやっていきたい。
(事務局)今回は、全体のプライオリティ付けの中で、資料3-4で整理されているものが選ばれた。次回までに資料3-4で示されたような科学的なデータが用意できるかどうか限られた時間の中でわからないが、事務局でできる作業をやってみたい。
(その他について)
(事務局)養殖は、基本的に自分の管理するところで種苗を育てることであり、畑で作物を作るのと同じ。一方、放流は、公有の水面に生物を放つ行為であり、種や系統を超えて放流しないよう気をくばりながらやっている。外来種を放流することも当面やめてくださいと言っているが、きちんと真面目に養殖をしている人がいる一方で、一部の心ない人がたまに放流をしてしまう事例はある。全部が悪いということではない。
(事務局)要注意生物リストの作成や普及啓発の重要性も指摘されている。それで十分かどうかの検討はあるが、第二陣の指定に繋がっていくので、検討をしていきたい。
- チュウゴクモクズガニについては、これから検討すると言っていたのでは、(その間に広がって)実際に指定して効果があるのか微妙になってしまうのではないか。
(事務局)漁業権対象として養殖したいというのは正式に受け付けて判断することとなるが、休耕田にブルーシートをかぶせて池を作って飼うというようなものについては、水産庁のツールでは対処できない。この法律で特定外来生物に指定されれば、取組ができるが、そのためには科学的なデータが集められるかなど時間の問題もある。仮に第二陣以降にされてしまえば指定できなくなってしまうということではないと理解している
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(事務局)引き続き相談していきたい。
(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり)