1. | 日時 | 平成17年12月8日(水)10:33~12:18 | |
2. | 場所 | 三田共用会議所D・E会議室 | |
3. | 出席者 | ||
(座長) | 石井 実 | ||
(委員) | 梅谷 献二 小野 展嗣 五箇 公一 |
小倉 勘二郎 桐谷 圭治 |
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(マルハナバチ小グループ会合座長) | 土田 浩治 | ||
(ヒアリング対象者) | 寺山 守 山根 正気 |
辻 瑞樹 | |
(環境省) | 名執野生生物課長 中島自然ふれあい推進室長 長田移入生物専門官 |
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(農林水産省) | 岡田生産局野菜課課長補佐 | ||
5. | 議事 |
【石井座長】 皆さんおはようございます。本日は年末のお忙しいところ、それから朝早くからお集まりいただきありがとうございます。それから、土田先生、寺山先生、辻先生、山根先生はまだご到着でないようですけれども、この会議のためにご出席いただき本当にありがとうございます。
それでは議事次第に従いまして、本日の議事に入らせていただきます。まず議題の1ですけれども、セイヨウオオマルハナバチの取扱いについてということになっております。本種につきましては、ご存じのように1年以上の時間をかけまして、土田先生を座長としましてセイヨウオオマルハナバチ小グループ会合を結成してご審議いただいてきたところでございます。
それでは、事務局の方から資料の1-1、1-2に基づきましてご説明お願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【長田専門官】 ご説明いたします。
今、座長からもお話がありましたけれども、昨日、第7回目のセイヨウオオマルハナバチ小グループ会合がございまして、セイヨウオオマルハナバチ小グループ会合としての外来生物法におけるセイヨウオオマルハナバチの取扱いについて結論をまとめていただきました。その結果についてこちらからご紹介をいたしたいと思います。
まず、資料1-1をご確認いただければと思いますが、昆虫会合でもいつも議論していただいているような個表の形でセイヨウオオマルハナバチに関する知見を整理をしていただいております。簡単にご説明させていただきます。
原産地はヨーロッパで、日本にはオランダ、ベルギー、イギリス、イスラエル等からコロニー単位で輸入をされているということで、もともと1991年に試験導入された後に輸入が本格化しております。96年の春に、北海道で野外越冬が初めて確認され、自然の巣も発見をされています。現在までに27都道府県で目撃されておりまして、その中にはトマト温室等のない場所も含まれております。それから、北海道の日高地方や千歳川流域においてはモニタリングが行われておりますけれども、こういった地域では確実な定着・増加が報告をされています。
評価の理由というところですが、在来マルハナバチとの営巣場所をめぐる競合や、それに伴う野生植物の健全な繁殖阻害などが生じており、生態系に被害を及ぼすおそれがあるとされております。それから、年間7万コロニーぐらいが流通・利用されていて、野外への逸出が多く、野外での繁殖例もあるということでございます。
生態系への影響ですが、北海道の調査研究では、類似した営巣場所要求性をもつと言われている在来のマルハナバチ、特にエゾオオマルハナバチとの競争が懸念されておりまして、マルハナバチ類はしばしば巣の乗っ取りを行いますけれども、本種も実験室において、在来種の女王を刺殺して乗っ取りを行った例が報告されております。
それから、セイヨウオオマルハナバチは盗蜜を頻繁に行うために野生植物の種子生産を阻害すると言われておりまして、特にエゾエンゴサクについては、今年の調査で種子繁殖に明らかな影響があることが確認をされております。
在来のマルハナバチ類は、生息場所の喪失、分断化等により、かなり低地等では衰退をしておりまして、さらに本種が在来マルハナバチ類を圧迫することによって、野生植物の健全な繁殖を損なうおそれがあると言われております。
北海道の日高地方や千歳川流域では明確なエゾオオマルハナバチの減少が確認されておりまして、今年の鵡川町の調査では、この3年間の継続観察の結果によってエゾオオマルハナバチの観察の比率が10分の1、個体数でいって15分の1以下に減少しているということも確認をされております。
イスラエルでは、ハナバチ相全般がセイヨウオオマルハナバチの侵入によって著しく衰退したという例が報告されています。
それから、新しい知見でございますけれども、これまでは実験室において在来種のマルハナバチに対する交尾行動というのが報告されておりましたが、DNAの解析によって野外でのエゾオオマルハナバチとの交尾も確認されました。これは、昨日の段階で新たに出てきた事実でございます。
それから、輸入されたセイヨウオオマルハナバチからはヨーロッパ系統のマルハナバチポリプダニというのが報告されておりまして、これによる疾患が懸念されているところです。
被害をもたらす要因としましては、マルハナバチの中でも特に活動の開始時期が早いために営巣場所をめぐる競争において有利であると。それから、高い増殖能力を持っていると言われております。
タスマニアでは、約25キロを年間の速さで分布が拡大しているということが知られています。特に、盗蜜によって野生植物が影響を受けやすいというふうにも考えられております。それから、細菌、ウイルス等の影響も報告をされています。
利用の実態としまして、トマトの施設栽培において栽培面積の約4割でセイヨウオオマルハナバチが利用されていると。そのほかにも、なす、いちご、果樹等で利用されているということでございます。
近縁種のところはちょっと省略をいたしまして、その他の関連情報としまして、今年の調査の中で、ビニールハウスで使われているマルハナバチですが、ハウスの開口部にネットを適切に張ることによって逸出を効果的に防止できるということがわかってきております。在来のマルハナバチの増殖の技術も確立しておりまして、商品化が行われているところです。カナダ、アメリカ等では輸入の禁止措置が取られておりまして、在来種を利用した授粉が行われているということです。それから、農家の自己負担によるネットの義務化、使用済みの巣箱処分、農協での巣箱の回収の仕組みなどが整えられている事例もございます。このセイヨウオオマルハナバチの導入によって、トマトを中心とした施設栽培において労力の軽減、ホルモン剤の代替等に大きな役割を果たしているということでございます。これが、セイヨウオオマルハナバチに関して小グループ会合で整理をしていただいた情報でございます。
続きまして、結論としての資料1-2、セイヨウオオマルハナバチの取扱いについてご説明いたします。7回の議論の結果としまして、小グループとしての結論をこのペーパーにまとめていただきました。
「セイヨウオオマルハナバチが生態系等へ与える影響については、次のとおり捉えることが適当である」としまして、定着の可能性については、北海道で継続的に自然巣が発見され、数年間にわたり周年の活動が確認されていることから定着の事実が明らかとなった。特に、毎年、継続的に大量な利用がされていることから、大量に野外に逸出する状況が継続しておりまして、その影響は大きいことが明らかになっております。
それから、在来マルハナバチ類への影響として、特に在来種エゾオオマルハナバチの明確な減少が確認されており、その原因として営巣場所、餌資源をめぐる競争が考えらましたが、このうち営巣場所をめぐる競争については、実験室内の在来種の巣の乗っ取りに加えまして、野外における営巣場所であるネズミの古巣をめぐるセイヨウオオマルハナバチ同士の競合が激しくなっているということが明らかになってきております。餌資源をめぐる競合については、生息密度との相関は不明確です。
それから生殖攪乱については、実験室では在来種との交尾による繁殖阻害が確認されておりましたが、さらに野外における交尾も確認をされています。
寄生生物については、マルハナバチポリプダニの感染拡大が確認をされています。
在来植物への影響については、野外において複数の植物種への盗蜜行動が確認され、特にそのうちの1種(エゾエンゴサク)については、授粉にほとんど貢献せず、結果率を低下させている事例が明らかになっています。
「利用状況及び逸出防止措置の実施状況とその効果については、次のような状況である」としまして、全国で約7万コロニーが流通されている。セイヨウオオマルハナバチの利用により減農薬、省力化、高品質・高付加価値等、生産面での効果が発揮されている。
ネット展張については、適切な方法をとることにより効果的にセイヨウオオマルハナバチの逸出防止を図ることができることが示された。野外へのハチの逸出を防ぐためのネット展張の普及が進みつつあることが明らかになった。また、使用済み巣箱の簡便な処理の方法として、ビニール袋を用いた方法及び熱湯を用いた処理方法が示されたということです。
毎年、継続的に大量のコロニーが利用されていることを考えますと、そのまま野外への逸出が続けば在来のマルハナバチ類及び植物群落への影響が増大し、我が国の生態系に対し重大な被害を及ぼすおそれが高いといえます。また、逸出防止の高い効果が期待できるネット展張及び使用済み巣箱の適正な処理を確実に実施することが極めて重要である。
「以上を鑑み、当小グループとしては、セイヨウオオマルハナバチの取扱いについて、以下のとおりとすることを提案する」としまして、1つ目が、「セイヨウオオマルハナバチを特定外来生物に指定すること」。2つ目が、「使用する場合には、逸出防止措置としてのネット展張及び使用済み巣箱の適正な処理がはかられることが不可欠である」。それから、「野外のセイヨウオオマルハナバチ等の状況に関する調査を継続し、必要な防除手法の検討を行う」ということでございます。
特に、今後まとめていただくに当たって、今年度いろいろな調査を進めていただいた結果というのは、参考資料の方にご参考までにおつけしているところです。
事務局からの説明は以上でございます。
【石井座長】 どうもありがとうございました。
そうしたら、議論に入る前に、マルハナバチ小グループの座長をしておられた土田先生からもコメントをいただければと思いますけれども、何かあったらよろしくお願いします。
【土田マルハナバチ小グループ会合座長】 昨日の会議では、新しい知見として野外における交尾による精子が確認されたということが新たにつけ加わっています。それは今ご説明のあったとおりでして、それがやはり非常に重要なファクターになっていると思います。そのほかについては特につけ加えることはございません。
【石井座長】 じゃあ、五箇委員お願いします。
【五箇委員】 資料の方で、少しちょっとつけ加えたい点が幾つかありまして、資料1-1の方で、これはきのうも議論したんですけれども、資料1ページ目ですね、資料1-1の1ページ目で、生態系への被害という黒丸の3つ目です。「在来マルハナバチ類は、生息場所の喪失や分断化等により、低地ではかなり衰退していると予測され」というこの部分に関しては、きのうは農薬の使用というものが入っていて、それは評価されていないからということで削除したんですが、実際にこの「衰退していると予測され」という根拠については何ら科学的データがこの議論の中でも示されていないので、この部分に関してはまずデータがあるのかどうかということをまず確認していただくと同時に、もしないのであればこういう形で単なる予測というより類推という形の文章を載せるということ関しては削除した方がよろしいのではないということは、きのう議論したところでありますので、この点に関してはもう一度検討していただきたいということです。科学的データがあるというんであれば、それは示すなり何に基づいてこういう予測がされているかということを示していただければよろしいかと思います。
それと次、2ページ目、その同じ資料1-1の2ページ目で黒丸1つ目、「実験室において在来種のマルハナバチに対する交尾行動を示していることが報告されており、DNA解析により野外でのエゾオオマルハナバチとの交尾も確認されている」という部分については、エゾオオマルハナバチ及びオオマルハナバチ、この2亜種で、両方ともで確認されているということで、オオマルハナバチをつけ加えていただきたいと思います。
以上です。指摘に関しては以上です。
【石井座長】 どうもありがとうございました。今、五箇先生には小グループの方の委員の立場でちょっとご説明いただけたと思います。
それでは、今、五箇委員の方から指摘がありました資料1-1の生態系への被害の3つ目の黒丸ですね。在来のマルハナバチ類は云々ですね。衰退しているというくだりですが、これは科学的なデータ、根拠があるのかということですけれども、事務局いかがでしょうか。
【長田専門官】 ちょっと確認をさせていただいて、特に科学的なデータがないということであれば、全体会合に報告するまでの間にこちらで整理をして削除することにしたいと思います。
【石井座長】 五箇委員、それでよろしいですか。
【五箇委員】 はい、結構です。
【石井座長】 じゃあ、ちょっと預からせていただきたいと思います。
それから、2ページ目ですけど、1-1-2ですね。最近、本当にごく最近明らかになったことで、DNA解析により野外での交尾というのが、交雑例ですね、確認されたと。これは、ここの文にはエゾオオマルハナバチだけが書いてありますけれども、これに「オオマルハナバチ」というのが加わるということですね。確認ですけど、エゾオオマルハナバチは北海道のみに分布する亜種、オオマルは北海道にはいないんですね。
【五箇委員】 はい。これは同じ学名でBombus hypocritaという種類で、2亜種ありまして、エゾオオマルハナバチの方がBombus hypocrita sapporensisという形で北海道に分布しているものを、それから本州のものをオオマルハナバチ、Bombus hypocrita hypocritaというふうに分けて分類しております。
【石井座長】 ということは、要するに北海道でも本州でも確認されたという意味ですね。ありがとうございます。
ということで、以上で説明は終わったわけですけれども、実質の審議に入りたいと思います。ご提案の方は、資料の1-2の2枚目にあります3点でありますけれども、まず、これまで継続審議してまいりましたセイヨウオオマルハナバチにつきまして、二次指定において特定外来生物に指定すると、これが1点ですね。それから、使用する場合には逸出防止措置、ネット展張、それから巣箱の適正な処理ということですけれども、これが不可欠であると。それから3点目としまして、モニタリング調査、それから防除手法の検討というのを継続してほしいということであります。
ここの会議として重要なところは、まず1点目の二次指定の特定外来生物ですね。これに指定するかどうかということでありますけれども、ではご議論いただきたいと思います。どなたかご意見、ご質問等ございますでしょうか。
梅谷委員、どうぞ。
【梅谷委員】 特定外来生物に指定した上で、さらにこの第2項を見たら条件つきで輸入ができるということですか。その場合には条件つけろという、そういう意味の提案ですか、これは。
【石井座長】 ちょっと、じゃあ確認しましょうか。事務局いかがでしょう。
【環境省 名執課長】 特定外来生物にした上で、飼うこととか輸入すること、あるいは運搬することについては規制がかかるんですけれども、その場合、学術研究なんかの目的で許可を受ければ、確実に外に出ないような施設のもとで取扱いがきちんとされれば許可を得てそういうことができるという仕組みになっています。その目的の1つに生業の維持というのを入れておりますので、トマトの栽培農家なんかがこれを使う場合は、しっかりハウスから外に出ないような施設を持った上で、許可を受けて使用できるということになります。
【梅谷委員】 学術研究のために輸入するというのは全然別な話でして、既に植物防疫法でも細かく規定されています。そうじゃなくてここで言っているのは、産業用に利用することもある条件を満たせばいいですよということを提案しているわけですか。
【石井座長】 事務局。
【名執課長】 いや、それはもう既に法律をつくった段階で、施行規則の中で生業の維持というものも飼養の許可できる目的の1つとして整理してございます。
【石井座長】 よろしいですか。厳重な管理のもとにということになると思いますけれども。ほかの観点ございますでしょうか。
よろしいでしょうか。ということでありましたらば、セイヨウオオマルハナバチについて、二次指定ですけれども、特定外来生物に指定すると、このような結論にさせていただいてよろしいでしょうか。
(異議なし)
【石井座長】 では、どうもありがとうございます。
続きまして、関連の資料の1-3というのがございますけれども、これは今のに関わりましてセイヨウオオマルハナバチに係る未判定外来生物・種類名証明書添付生物対象リストということで、この案がついてございます。これについて事務局からご説明お願いいたします。
【長田専門官】 ご説明いたします。
資料1-3、一枚紙ですけれども、セイヨウオオマルハナバチについても特定外来生物に指定すべきという結論がございましたので、あわせて未判定外来生物として指定をして、一定期間の輸入に関する制限をかけて、必要に応じて輸入を希望する者がいる場合には一定期間に被害があるかないかというのを改めて判定をするという仕組みでございますが、についても検討しなければなりません。
それから、輸入をする際に税関等でセイヨウオオマルハナバチに似ている生物を識別をするために、輸出国等が発行する種類名を証明する書類を添付しなければいけない生物の範囲としまして、種類名証明書添付生物についても整理をする必要がございます。
事務局の案としまして、昨日、小グループ会合にご提案してご了承いただいたものがこちらの資料でございますが、未判定外来生物の範囲としましては特定外来生物を除くマルハナバチ属全種、これらについては生態系に係る被害について十分な知見がございませんけれども、セイヨウオオマルハナバチと類似の生態を有しているために同じような影響を及ぼす可能性が否定できないということで、未判定外来生物の候補というふうにしたいと考えておりますが、未判定外来生物は在来種を指定することは当然できませんし、指定をする効果もありませんので、在来の種・亜種を除いたマルハナバチ属全種を未判定外来生物というふうにしたいというふうに考えております。
種類名証明書添付生物につきましては、在来種も含めたマルハナバチ属全種について、輸入をする際にはその種が何であるかということを証明した書類を添付して輸入してくださいということで、輸入の規制そのものではございませんが、そういう仕組みでございます。
在来の種・亜種でございますが、下の方に表がありまして、全部で種としては15種ということになります。この中に海外に同じ種に属する別の亜種がいるような場合、その場合は種を丸々未判定外来生物の候補から除くのではなくて、在来の亜種の分だけ未判定外来生物から除くというような形をとりまして、基本的に日本にいないマルハナバチ属の種と亜種については未判定外来生物になると。セイヨウオオマルハナバチを除いてですね。というような形で整理をしたいと思っております。
昨日、ちょっと委員の方からご指摘いただいたのは、その分類学的な知見も流動的であって、今後変わり得る可能性があるので、そういった変化があれば柔軟に検討を改めてするという必要も起こり得るだろうと、そういうことを認識するようにということでございました。とりあえず、現在の最新の知見に基づいてこういった形で未判定外来生物と種類名証明書添付生物を選定をしたいということでございます。
以上です。
【石井座長】 どうもありがとうございます。
確認ですけれども、表の中の数字226と239は、これは亜種の数になりますか。
【長田専門官】 これは種の数。亜種にしますと非常に膨大ですので、とりあえず種の数で整理をしておりまして、そうしますと、226に在来の15を足しますと241になるんですが、それにセイヨウオオマルハナバチと、それから亜種単位でやっているものとがあるので、単純な足し算にならないということでございまして、ちょっとややこしいんですけれども、とりあえず参考の数字でしかございませんが、一応種の単位で書いております。
【石井座長】 わかりました。というふうなご提案であります。
ただいまのご提案ですけれども、ご意見、ご質問あったらお願いしたいと思います。
いかがでしょう。五箇委員、何か補足ありますか。
【五箇委員】 今、事務局からも説明がありましたように、実はこれについてはきのう少し議論しまして、Bombus属のマルハナバチについてはまだ分類がしっかりできていない。できていないというか、まだ非常に流動的な部分が非常に多いので、今後、そういった新知見が追加なりされた場合には、随時、その都度環境省の方でも見直しを図っていただきたいという要望は出してあります。
その中で、若干議論もあったんですけれども、例えばクロマルハナバチなど在来種、もう既に商品化されている部分もあるということで、そういったものの種類証明書添付は、じゃあ、どこの機関がやるかという部分に関しては、輸出国機関が行うというふうなことになっているんですけれども、実際はクロマルハナバチの原産国は日本なわけですね。製品輸出国はオランダということになるんですけれども、この本来の種類証明書添付というものの原則というか概念というのは、原産国が種類証明を出すという概念であると考えれば、ちょっと少しややこしい話になるであろうと。その辺に関しては、また随時議論はしていただきたいと。日本においても種類証明書添付を行える機関というものを、窓口というものを準備しておく必要があるであろうということは指摘しております。
あと、これは法律の枠外の話になるんですが、いずれセイヨウオオマルハナバチに関してはこれが指定されるということで在来種の利用というものも適宜考えていくと、置きかえというものもこれから進めていくことになると思いますけれども、先ほど言いましたようにマルハナバチそのものの分類、あと分布というものを考えたとき、在来種というくくりでそれを議論していくということにはいずれまた限界が来ることは目に見えていますので、その部分に関してもいつかまた別途議論はしていくべきであろう。
例えばクロマルハナバチについては、日本に分布している種類ですが、同時にアジアにも広く分布している種類であるということを考えますと、そういった場合に例えばアジア産のクロマルハナバチというものが、いざ入ってくるというときはどういう議論をすればいいのかということはある程度準備しておく必要はあると。ただしこれは、この外来生物法はすべて国境線をもって外来種をくくっておりますので、この場ではその議論はできないということはありますけれども、そういうことも将来的には起こるということは少し考えておく必要があるであろうということは意見として記録に残していただければと思います。
【石井座長】 大変ややこしい話ですけれど、この表を見ると、クロマルハナバチというのは亜種が認められていないということなんでしょうか。これはそうでいいんですか。要するに世界的に見て認められていないという。
【五箇委員】 今のところ、Bombus ignitusはBombus ignitusのみです。中国にもいますけれども、それもBombus ignitusとなっております。ただし、だから、それについてもやはり細かい調査をしてみないとわからないことはまだあるであろうということです。非常に分布が広い分、地理的な系統とかそういったクワガタと同様のケースというものも考えられますので、今後その調査は進めていきたいというふうに考えています。
【石井座長】 わかりました。
ということで、今のような補足がございましたけれども、この件に関しましてご意見、ご質問があったらお願いしたいと思います。いかがでしょう。小野委員、どうぞ。
【小野委員】 資料の1-2の先ほどのお話で、特定外来生物に指定はするけれども飼養は認めるという方向性でということは理解できたのですが、例えば巣箱の適正な処理とかというのを指導する、あるいはその調査ですね、モニタリング調査等は環境省の方で指導されるのか、あるいは農水省でやられるのか。どこが、だれが、どうやるのかという具体的な話があるのか。両方で遠慮し合うと話が進まないので、省庁間の連携とかそういうことがあるのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
【石井座長】 ちょっと議論がバックしましたけど、どうぞ事務局。
【長田専門官】 使用済みの巣箱の適正な処理ということにつきましては、外来生物法の中では飼養等の許可をする際に許可の基準というのを定めまして、その中で飼育、飼養をする施設についてと管理の方法についてチェックをしていくということになりますので、一義的には環境省がということになりますが、実際に農家さんにどういう処理が適正なのかとかということをお伝えしていくという部分では農林水産省と一緒になってやっていきましょうという話をしておりまして、実際に農家さんに情報を伝えるツールを持っている農林水産省と一緒になって進めていきたいと思っています。
【石井座長】 主導は環境省であると明言されたと思います。それで、農水省の協力を得るという形でよろしいでしょうか。
【小野委員】 はい。
【石井座長】 それでは、未判定外来生物、それから種類名証明書添付生物の対象ですけれども、これはいかがでしょうか。これでお認めいただけますでしょうか。
(異議なし)
【石井座長】 では、特にご意見がないようでしたら、この未判定外来生物と種類名証明書添付に関する原案を認めたいと思います。
では、ただいまの2件に関しまして、12月19日に全体会合というのが予定されておりますので、私の方からそこに報告させていただきたいと。そこで専門家会合としての結論を得るという段取りにしたいと思います。
それでは、土田先生、特に長い間ご苦労さまでした。でも、そのままいていただいて結構ですので。
では……。
【梅谷委員】 今伺いましたマルハナバチ類というのは分類学的にもまだ確定してない部分がかなりあるようで、そうするとこれはここでいろいろ決めても将来ずっと分類が進んでいく、それから代替種が開発される、そういうことでやっぱり追跡のチェック機関がどうしても要ると思うんですが、これが終わったら今の小委員会などは解散してしまうわけですか。これ。
【石井座長】 認識としては、きょうここで土田先生を解任しているというふうな感じでやっているんですけれども。ですから、もしもそういう事態が起こったら、この会合で受けるということになると思います。それで受けて、もしもややこしい事態になったらもう一回結成するということになるんではないかと思いますけれども。
環境省、その辺の理解、よろしいですか、それで。
【名執課長】 基本的には昆虫類のこのグループ会合で決める。
【梅谷委員】 ああ、そうですか。
【石井座長】 よろしいですか。これは別にマルハナバチにかかわらず、分類学の進展というのはどの分野でも起こっていることでして、その都度対応しなきゃいけないと私は思っております。よろしいですか。
それでは、時間の関係もありますので、2題目にいきたいと思います。第二次の特定外来生物指定候補の取扱いについてということで議論させていただきます。これにつきましては、先ほど言いましたけれども、寺山先生、それから辻先生、それから山根先生、本当にご出席ありがとうございます。順番にご意見をいただきたいと思います。それで、正式のここの委員ではありませんけれども、ご自由に発言をいただきまして、土田先生にもぜひともご発言いただいて、かなり微妙な部分がございますので、ここで一定の結論に持ち込めればというふうに考えております。
それでは、本日の討議の資料ですけれども、まず資料の2-1と2-2に基づきまして、ご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【長田専門官】 ご説明いたします。
資料2-1をまず御覧いただければと思います。本日2つ目の議題としましては、アシナガキアリとツヤオオズアリの2種について先生方にご検討いただきたいと思っておりますが、これまでの背景と論点を整理しましたのでご説明いたします。
まず、第5回の特定外来生物等専門家会合、8月5日に開催されましたけれども、そこで外来生物法に基づく特定外来生物の第二次指定の候補種として42種類の特定外来生物の選定していただきました。当然それまでの段階において、この昆虫グループ会合等において具体的に2種の候補についてご議論をしていただいたということでございますけれども、その中に本日ご議論いただきますアシナガキアリとツヤオオズアリの2種も含まれておりました。専門家会合の後にパブリックコメントを実施いたしましたけれども、そのパブリックコメントの中でアシナガキアリ、ツヤオオズアリの2種について、今回の指定を見送るべきではないかという意見、それから、それに関連する情報が複数と書いてありますが、2件提出をされております。これを受けましてこの2種の指定の適否について専門家会合で再度検討を行うこととしまして、まず専門家会合の全体会合の委員に対して事務局から専門家グループ会合、この昆虫グループ会合においてまずその取扱いについて再度検討を行うということについていかがでしょうかということを委員の方々に文書で照会をいたしまして、了承をいただいております。本日の検討結果について年内に開催予定の第6回専門家会合、全体会合に報告をして、最終的な結論を得たいというふうに考えているところでございます。
提出された意見でございますが、4名のアリに関連する研究者の方々から合計2件、つまり連名で出されたものがあるということですけれども、2件のご意見が提出されております。意見としては、指定はひとまず見送り、今後の生態や分布の拡大に関する研究・調査結果を待ってから慎重に判断するのが賢明と思われる。それから、本2種を含めた外来アリ類の総合的な研究が行われており、その結果を待って指定してもよいのではないかということでございました。
ご指摘の内容は以下の3点でございます。要約しますと以下の3点ということになりますが、まずアシナガキアリ、ツヤオオズアリの2種は比較的長い間南西諸島に定着しているということがわかっておりますけれども、これが自然分布、つまり意図的、また非意図的に海外から持ち込まれた生物ではない可能性があるという指摘がございます。それから、この2種は南西諸島の分布域において、自然林の内部には分布をしていないことから、日本では生態系に著しい被害を与えない可能性があると。それから、本種の移動や飼養の規制は、地域の経済活動や本種の研究に大きな支障を及ぼす可能性があるということでございます。3番目のアリの移動や飼養の規制の経済活動への影響ということですが、法律上は非意図的な移動については規制の対象とならないということになりますけれども、この1つ目と2つ目はまさに科学的知見に基づく意見として提出されておりまして、この中には専門家会合の事務局である環境省があらかじめ把握していなかった事実も含まれております。このために、専門家会合の際に検討の前提としてこちらでお示しをしました知見との間に重要な差異が存在する可能性もございますので、それを明らかにする必要があるというふうに考えて本日改めてご検討をお願いしているところでございます。
2ページ目にいきまして、この2種のアリに関する知見でございますけれども、まず事務局で当初二次指定の検討において選定候補と判断した理由を簡単にご説明をいたしますと、まず外来生物であるかどうかということにつきましては、アシナガキアリについては中国原産説とアフリカ原産説があるということは了知しておりましたけれども、そのほかの同じ属、アシナガキアリの属する属のほかの種がすべてアフリカ原産であることがわかっていることをもとに、アジアでは外来種である可能性が高いというふうに判断をいたしました。
それから、ツヤオオズアリについては、アフリカ原産説が海外の研究者によって提唱されているということと、我が国における確認記録が比較的最近であることから外来種であると判断をいたしました。それから、日本で被害をもたらすおそれがあるかどうかということにつきましては、日本における知見がないというふうに事務局で判断をしまして、両種ともIUCNの「世界の侵略的外来種ワースト100」に掲載されていて、海外の島嶼で大きな被害を及ぼしていることから、日本の無脊椎動物や鳥類の繁殖にも大きな影響を与えるおそれがあるというふうに予測をいたしました。
今回ご提出いただいたパブリックコメントとの関係でございますが、パブリックコメントにおいて指摘された事項のうち、事務局が把握をしていなかった情報が含まれると。それから、これが重要な科学的知見である可能性があるということでございます。まず外来生物であるかどうかについては原産地に関する議論についてはまだ検討の余地があるのではないかということ。もう一つは日本のアリ類の研究者のグループが、まさにDNAによる系統地理解析を予定をしているということでございました。
それから、我が国で被害をもたらすおそれがあるかどうかということにつきましては、沖縄本島北部のやんばる地域等では、自然林の内部で両種が侵入できていない。確認されていないというような知見がございます。広くは公表されていない情報でしたので、事務局はあらかじめこの件については把握をしておりませんでした。それから、自然林に侵入できない原因としてアリに寄生するダニの影響の可能性なども示唆されているということでございます。
それから3ページにまいりまして、特定外来生物被害防止基本方針、この外来生物法の基本的な考え方を整理した基本方針ですけれども、この中で前提条件として整理をされていることについて、改めて今回の指摘に関連する部分をかいつまんでご説明をしたいと思います。
まず、外来生物というのをどう整理しているかということですが、アンダーラインを引いているところをご説明しますが、ある地域に人為的に導入されることによって、その自然分布域、ここではこの生物が本来有する能力で移動できる範囲により定まる地域と定義しておりますが、を越えて存在することとなる生物は一般的に外来生物と呼ばれと整理をしておりますが、法律の中では海外から、次のアンダーラインですけれども、「海外から我が国に人為によって意図的・非意図的に導入されることによりその本来の生息地又は生育地の外に存することとなる生物」を外来生物というふうに定義をしております。ですから、日本の中に潜在的な分布域があるものはこの法律の中では外来生物としては取り扱わないということでございます。
それから、選定の前提としましては、2つ目の囲いのアのところですけれども、我が国において生物の種の同定の前提となる生物分類学が発展し、かつ、海外との物流が増加したのが明治時代以降であるということを踏まえて、「概ね明治元年以降に我が国に導入されたと考えるのが妥当な生物を特定外来生物の選定の対象とする」ということであります。
それから、被害の判定に関する考え方としまして、3ページの一番下のアンダーラインのところから説明をいたしますが、生態系等に係る被害というものは、もしくはまだ侵入していない等によって「おそれ」ということもありますけれども、そのおそれに関する国内の科学的知見を活用しますということが前提です。なお、被害のおそれ、つまり具体的被害が生じていない場合に関しては現に被害が確認されていない場合であっても、既存の知見により被害を及ぼす可能性が高いことが推測される場合には、その知見を活用するものとしますと。
それからイの方ですが、国外で現に生態系等に係る被害が確認されており、又は被害を及ぼすおそれがあるという科学的知見を活用すると。国外知見も活用すると。ただし、国外の知見については、日本の気候、地形等の自然環境の状況や社会状況に照らし、国内で被害が生じるおそれがあると認められる場合に活用をするということで、海外の知見をそのまますべて無条件に使うということではないということでございます。
それから選定の際の考慮事項としましては、原則として生態系等に係る被害の防止を第一義に、外来生物の生態的特性や被害に係る現在の科学的知見の現状、適正な執行体制の確保、社会的に積極的な役割を果たしている外来生物に係る代替物の入手可能性など特定外来生物の指定に伴う社会的・経済的影響も考慮し、随時選定していくということにしてあります。
それから第5のところに、非意図的に導入される特定外来生物にどう対応するかというところが整理されておりますが、まず「人体や物資に付着あるいは物資に混入するなどして持ち込まれる特定外来生物のうち、輸入、飼養等その他の取扱いの意思なくなされる導入については、本法の直接的な規制の対象とはならない」と書いてありますが、「非意図的な導入についても、主務大臣は関係者と調整をして導入経路や存在状況の把握に努め、被害が生じ、又は生じるおそれがある場合は、必要に応じ防除等の措置を採る」ということで、対策は必要だというふうに整理をしております。
それから、資料2-2でございます。資料2-2の方は、アシナガキアリとツヤオオズアリについて前回昆虫会合に提出をいたしました資料でございます。評価の理由のところだけ簡単にご説明をいたします。アシナガキアリについては、海外では高い採餌能力と攻撃性による他種のアリとの競合・駆逐、捕食等による他の動物への影響が知られている。日本でもすでに南西諸島に定着しており、在来の無脊椎動物に捕食や競合により大きな影響を及ぼすおそれがあるとしました。
ツヤオオズアリにつきましては、3ページですけれども、評価の理由の欄に、基本的には同じことを書いているところでございます。参考にしたものは主な参考文献というところにあるもの、それから専門家に対するヒアリングでございます。
資料2-2についても説明を終わります。
【石井座長】 どうもありがとうございました。事務局の方から、検討の背景と論点ということでまとめていただきました。アシナガキアリとツヤオオズアリに関しましては、ここの会合で決めさせていただいて、専門家会合でも二次指定の候補としてなってきたわけですけれども、パブリックコメントの中で少しこれについて疑義があるということであります。この間、実はアリ類の専門家の方にご意見を聴取すべきだったんですけれども、これを少し怠った面もありまして、これについてはおわびしたいと思います。
きょうは、そういうことで寺山先生、辻先生、山根先生から専門家としてのご意見をいただきまして、これをもとにしまして我々もう一度考え直したいというふうに考えております。
それでは、最初は寺山先生の方から海外で知られている被害の知見等についてということで、ご説明いただきたいと思います。資料は2-3ということであります。
【寺山委員】 寺山です。今の事務局からの説明と重複する部分がありますけれども、アシナガキアリ及びツヤオオズアリにつきまして、知見の概要を説明させていただきたいと思います。
まず、アリでは本来の生息地域以外から記録が見られる種類が約150種ほど報告されております。それらの中で、特に人類の交通に便乗して世界に広く分布を広げている種がありまして、それを放浪種と特に呼んでおり、約30種ほどがこれに該当いたします。放浪種はすべて生態系に大きな被害を及ぼすというわけではなさそうです。この放浪種、主に放浪種の中で侵入先で個体群密度を著しく高め、分布を拡大し、生態系にダメージを与える種類がおりまして、これを侵略的外来種、インベーシブ・スピーシズとアリでは呼んでおります。判断基準によって数字が多少異なってきますけれども、6種から8種類がインベーシブ・スピーシズに該当すると判断されます。アシナガキアリ、ツヤオオズアリはともにこれらに含まれるわけです。IUCNのワースト100を紹介しているグローバル・インベーシブ・スピーシズ・データベースというのがありまして、実はここにコンパクトにこれら2種の世界における動向がよくまとめられております。お手元にある資料2-3のところに、データベースのアシナガキアリとツヤオオズアリのところを提出させていただきました。
アシナガキアリですけれども、熱帯アフリカ起源、中国起源といった説がありますけれども、アリの分類学者でバリー・ボルトンという人がいまして、ボルトンの1995年ではこのAnoplolepis属というのはアフリカの属でして、世界に広く分布しているのはこのアシナガキアリ1種のみであるということからアフリカ起源の可能性が高いのではないかということが述べられております。
現在の外来とされる分布は、IUCNによりますと、合衆国からサモア、ソロモン諸島、ポリネシア、オーストラリア、ニューギニア、マリアナなど多くの太平洋諸島、アジアではインドからマレーシア、インドネシア、インドシナ、香港、台湾、日本というような形で多く報告されております。
このアシナガキアリの被害、大きく3つの点になるんではないかと思います。1つは、生態系の攪乱者であるということで、昆虫やほかの節足動物を攻撃する。あと鳥とか爬虫類、小型の哺乳類の個体群密度を減少させるという報告も海外では出ております。これらの研究例につきましては、インベーシブアント6種類のレビューが2002年に発表されておりまして、それのアシナガキアリとツヤオオズアリの部分を書き出したものをお手元にお渡ししてあると思います。資料2-3のアシナガキアリですと1ページ目、それから裏の2ページ目というのがこれになります。このリストは他種アリとの関係は除いてあります。また、農生態系のものにつきましては、食植性種に対してのみのリストになっております。
2点目としては、カイガラムシ、アブラムシなどを保護するということで、農作物に二次的な被害を与えるというようなこと。さらには農村地や農家あるいは家屋への侵入が海外では頻繁にあるようで、家屋害虫、不快害虫という位置づけもあるようです。特に、蟻酸を家屋内に侵入して放出するということで、皮膚の炎症とか角膜が刺激を受けるといったような被害が出ている様子です。日本では奄美諸島まで分布しております。熱帯、亜熱帯性のアリですので、気候的に生息が可能な地域に一通り生息しているかなといった感があります。ほかに火山列島の硫黄島に入り込んでおります。少なくとも硫黄島の例は戦後の侵入と断定することができると思います。
次に、ツヤオオズアリの方なんですけれども、こちらの方はアフリカ起源と言われておりますけれども、論拠はまだ弱い様子です。具体的な侵入時期を確かめるということはなかなか世界でも難しい様子ですけれども、余り具体的にいつ侵入したというデータは多くない様子です。ただ、こういうツヤオオズアリの世界の文献を見てみますと、18世紀から19世紀のところで、ヨーロッパや南米に広まっており、メラネシアとかグアム島へは20世紀に入ってから記録されております。東アジアの記録も20世紀になってからの記録という形になります。現在の分布は、中南米、北米、オーストラリア、ニュージーランド、ミクロネシア、ポリネシアなどのやはり太平洋諸島、あとフィリピンとかサモアなどで記録されている種類です。
このツヤオオズアリの主な被害としましては、やはり昆虫類とかクモなどのような生物を撃退すると。攻撃して撃退してしまうというようなこと。それと、脊椎動物にも被害が出ているようだということです。IUCNは生態系への影響が最も大きいアリの1つというふうに述べております。さらに雑食性でして、種子も好むということで植物にも影響が出る可能性があります。さらに、やはりアシナガキアリと同じように、カイガラムシとかアブラムシを保護します。それによる農作物の二次的な被害というのが出ております。やはり資料の2-3の3ページ目以降、ツヤオオズアリの具体的な研究例というのを提示しておきました。さらに、電話線とか電気の配線をかみ切られる。電話線とか電気の配線がかみ切られるというような被害も報告されているようです。
日本の分布においては、やはり奄美諸島まで琉球列島では見られます。生息しております。そのほかに、小笠原と、あとやはり火山列島から記録されております。少なくとも小笠原諸島の記録というのは2000年に生息が確認されております。小笠原諸島は、これはよく調べられてきた状況がありまして、ツヤオオズアリは少なくとも小笠原諸島へは近年の侵入であると判断をすることが可能かと思います。また、火山列島の硫黄島への侵入もやはり戦後であろうというふうに推定することができると思います。
以上、2種ともに少なくとも海外ではいろいろと被害とか研究例が多く報告されておりますけれども、肝心の日本国内におきましては、生態系への影響への有無とか程度を調べるというような研究がまだ十分にはなされていないということ。それが一番大きな問題点であるかというふうに思っております。
そういうことで、やはりそういうようなアシナガキアリ、ツヤオオズアリとほかの生物との種間相互作用の大きさなどを定量的に調べるような、信頼度の高い調査研究、これを早急にやはり進めていく必要があるのではないかというふうに考えております。
以上です。
【石井座長】 寺山先生、どうもありがとうございました。
そうしたら、まず寺山先生の今のご説明ですけれども、これについて質疑応答しておきたいと思います。寺山先生の件に関しまして何かございますでしょうか。
山根先生、どうぞ。
【山根委員】 アシナガキアリの火山列島と、それからツヤオオズアリの小笠原父島ですね。これの侵入の、どういう経路でどういう方法で入ったかということについて、何か考えられることはありますか。
【寺山委員】 まず、火山列島なんですけれども、戦後米軍基地になってかなり物資の行き来は自由自在でした。あくまでも可能性ですけれども、そういう米軍物資に附帯しての侵入である可能性がまずあり得るのではないかなと思います。それから、あと小笠原諸島ですね。これは、小笠原諸島のケースにおきまして、ツヤオオズアリのケースにおきましては、現在発見されているところがJAの倉庫の外、周辺に生息しているというふうなことで、倉庫だからというわけじゃないですけれども、やはり物資に附帯してという可能性があり得るのではないかというふうに推定しております。
【石井座長】 よろしいですか。
ほかの観点、ございますでしょうか。特にないようでしたら、時間の関係もありますので、次の方に移りたいと思います。
次は、ではパブリックコメントを寄せていただきました辻先生の方から代表してご意見いただければと思います。よろしくお願いします。
【辻委員】 よろしくお願いします。琉球大学の辻です。
我々のグループと、それと九大の緒方先生、たしかこの緒方先生の方のパブリックコメントは、日本蟻類研究会の会長の久保田先生と連名になっていたと思うんですが、単名でしたか。わかりました。それで、出しまして、この2種が外来種か在来種かということに関しては、現時点では不明であるというようなことはどちらも出しました。そのことについてはここに記してありますので、現在それについて突きとめるべく個体群間の分子系統の調査を実行中であると。私が特にここで説明すべき点としましては、パブリックコメントによって初めてこちらの省の方が把握したという、南西諸島におけるツヤオオズアリとアシナガキアリの状況ですね。分布状況と生態系への影響の実態ということで、実はこれに関しては完全に未発表のデータがあるというわけではなく、何年か前に、もうかれこれ10年ぐらい前から少し発表されている論文があるわけです。私、すみません。パワーポイントで発表できると思いましたので、ここで急遽パワーポイントのコピーをつくっていただきました。それを配りました。
私のパブリックコメントの要点は、2種はかなり長い間入っている。少なくともアシナガキアリについては、南西諸島、琉球列島には70年以上前から入っていると。ツヤオオズアリに関しても、多分古いだろうと。正式な報告は73年ですが、オオズアリ属に関してまともな分類ができるようになったのが80年代以降なので、その前から入っていた可能性があると。そして、少なくとも状況から判断して南西諸島の大きな島では、それらはニッチというのを確立して他種と平和的に共存していると。特にこれらは、一般にアリの外来種、放浪種と言われるのは、攪乱依存種だと言われていまして、沖縄でも特に人が攪乱しない限り特に自然には侵入しないようだと。したがって、この2種は少なくとも海洋島、小笠原あるいは沖縄でしたら大東島とかありますが、そういうところ以外は脅威ではないんではないかなと。海外の知見を見ても、ハワイ、セイシェル、そしてクリスマス島とか、非常に大きな被害があったのはみんな海洋島なんですね。そして、今回の指定の効果にも少し疑問がありまして、これは基本的には非意図的に運搬されていくものだと。アリはすべて。この法律で規制するのは、意図的な飼育、放逐、リリース、譲渡というんですけれど、これで禁止したからといって、この分布拡大とかというのが阻止できるかというと疑問と。それで、入った後に外来種、害虫に指定しておけば防除ができるじゃないかというふうに言われていますが、海外の知見では少なくとも定着後の防除と、数を減らすこと自体も非常に難しいというのがアリの実態です。
もしも、ここで一番懸念される、例えば小笠原への侵入あるいは分布拡大というのを阻止したいのなら、物資の全チェック、検疫というのが必須ではないかと。現に一次指定でアカカミアリというのが指定されていますよね。それでも昨今、きのうおとといの新聞ニュースがあったように、九州で入っているのが見つかったと。この法律で規制しても現に入るのは入っちゃうという実態があるわけです。むしろ、データはないですが、沖縄ではそれなりのニッチを獲得しているので、沖縄というのはすごく海外から来る害虫のターゲットなんですが、それに対する防御というのか、天敵としての利用が考えられているというぐらいのステータスです。
それで中身の具体的なことについては、2ページ目をごらんください。まず、アシナガキアリ、ツヤオオズアリも含めて放浪種といわれるアリは南西諸島の、少なくとも自然林というのは、純然たる自然林というのは南西諸島にはありませんので、胸高直径が50センチを超えるかなり程度の高い林、そういうところには不在だというデータは90年前後にとられたデータで、山内先生、緒方先生が発表されたデータがパシフィックサイエンスに載っています。これが、どうしてなるのかというような理論的研究を我々がやっているんですが、それとはべつに、当時は入っていなくてもこれから入るんじゃないかという懸念もあるわけで、以後どうなっているのかという追試を、完全に同じ場所ではありませんが、我々がこれまでやっています。そうすると、2ページ目の下の追試1というやつですけれども、これは自然林と2次林とオープンランドというところでやんばるだけではなく西表でも比べまして、そうすると黒いところがいわゆるこの中にトランプスピーシズ、外来種というのが含まれるわけですけれど、自然林にはゼロです。そして、この傾向というのは大陸島では一般的に言えるようで、ジャワでも同じような傾向があって、これは放浪種の率というのが自然林の中ではゼロになると。もちろんエッジ効果がありますから、境の部分で調べると両方入るんですが。これが95年前後の調査です。それから、もっと新しい2年ほど前のデータで、Yamaguchi
-Ogataが調べた地点とそれと海岸、もっとアシナガキアリやツヤオオズアリが分布することがわかっている海岸地点で調べたのが、この3の上にあるところですが、細かいですけど、1から10という地点がいわゆる自然林で、11から19というのが海岸です。そういうところでアシナガキアリとツヤオオズアリというのが、ここで示したのがいたかいないかですけれど、見ると内陸自然林にはいないと。しかし、海岸にはいると。ツヤオオズアリはかなりいますね。9分の7で見つかっていると。というわけで、少なくとも15年ぐらいやんばるあるいは西表でもそうかもしれませんけれど、自然林に侵入していないところを見ると、これはこれから入るというよりは、この状態で平衡が続いていると見た方が妥当なのではないかというふうに我々は考えています。
さて、しかし、次のページをお願いします。攪乱は続いているわけで、例えばやんばるでもどんどん林道というのができていますけれども、こういう林道というのがつくられると森林が変わってアリの分布というのがどんどん広がっていかないかという懸念もありますので、そういう調査もしております。これはやんばるの林道、これはいろんな開通年がわかっていて、なおかつ周りの環境もすべてわかっているという状況で、これは割とホットなデータなんですが、1カ月ほど前の。1キロごとにプロットをつくりまして、そこにアシナガキアリがいるかどうかというのを目視とべイトトラップというので調べた結果ですが、そうすると、海岸線にはやはり四角で書いたところというのがアシナガキアリがいるところでいますが、内陸の例えば縦にずっと続いているのはこの問題がある大国林道なんですが、ここにもポツポツといるわけですよ。これが、広がっていかないかという懸念があるわけです。
そこで我々が別の調査をしまして、次の5ページ目を見てください。大国林道と伊地林道というところで、大国林道というのは開通されてから25年以上たっているところで、伊地林道というのはまだつくりかけで、5年ぐらい、以内の新しい林道です。それぞれでトランセクトを5本ずつつくりまして、森林の内部にどれくらいいろんな外来種のアリが侵入しているかというデータをとりました。3回繰り返しやったんですが、そうすると、これ非常に小さくて見にくくて恐縮なんですが、どうやって見ますかと言いますと、このここにアリの種類がいろいろ書いてありまして、両側に大国林道と伊地林道の、真ん中に近いところが林道に近いところです。それから直角にずっと森林の内部に50メーターまで入っていったところにそれぞれアリが見つかるかどうかというデータをとってあるわけですが、そうすると、上の広域分布種の一番上のAnoplolepis
gracilipesというふうに書いてあるのがアシナガキアリなんですが、そうすると大国林道3回見つかっていますけれど、林道でしか見つかっていないです。これは非常に意外だったんですが、5メーター以上中には入りません。ここにはツヤオオズアリは載っけていないですけど、ツヤオオズアリは本当に海岸の一部にしかいなくて、道路でも見つからないという状況なので、載せませんでした。
それで、次のページをお願いします。これがどうしてかというのは6に環境パラメーターをはかってあるんですが、これはちょっと飛ばしていただきまして、アシナガキアリの分布状況、やんばるを中心とした分布状況を要約しますと、海岸近くの開けた土地あるいは畑などの人為的な攪乱環境に多いと。確かに山間部の森林帯でも林道沿いには時々見られると。しかし林道のエッジ効果、林道がもたらした環境の森林の部分的改変というのが及ぶ範囲は狭く、林道から5メーター入った時点で既にアシナガキアリというのは見られなくなると。
次です。ツヤオオズアリの詳細分布状況です。アシナガキアリについてはまだまだ未発表なんですが、このツヤオオズアリについては、そろそろ論文が出始めているところです。これは、ツヤオオヅアリは本当にたくさんいるところというのは海岸付近しかないですから、少なくともツヤオオヅアリがいた、あるいはいそうな海岸近くの5地点をつくりまして、ここで、この中でそれぞれで50メーター間隔でトランセクトをつくりまして、そこにピットホールを仕掛けて、ツヤオオズアリとほかのアリというのがどれくらい入るかという個体数、アバンダンスの調査をしました。すると、結果がこれでして、次のページの8の上です。棒グラフがピットホールトラップでとれたツヤオオズアリの働きアリの個体数で、折れ線グラフが他種アリの数です。そうすると、確かにツヤオオヅアリが多いところはほかのアリの数が少なくなるという競争排除の傾向は示しています。ただ、いるところ、一番多いところ、国頭村の海岸のところでも、他種のアリと共存しているわけですよね。このピットホール、全く同じ方法でオーストラリアの研究でやったんですけれど、ピットホールに入っている個体数が300弱というのは、オーストラリアの3分の1ぐらいの個体数です。それほど多くはないと。どの場合でも、他種と共存していると。また、いないところも多いと。
これらの結果を要約しますと、ツヤオオズアリに関しては、海岸の一部に非常に高密度になるところがあり、ややほかの種類のアリを排除する傾向はあるだろうと。しかし、最高密度のプロットでも、国外の研究よりはかなり密度が低いと。そして、これはまだ未発表なんですが、非常に密度の高かったところに次の年に行くといなくなっている。全くゼロということがあるんです。安定ではないんじゃないかと。
じゃあ、これがやんばるなどのかなり自然環境というのが重要なところでの、これらの2種のインパクトですが、人為的な環境ではどうかというので、我々はそれでも調べています。典型的な人為的な環境である那覇市内につくられた、いつつくられたか、そしてどんな樹種が植わっているかというような履歴がわかっている26の公園で、同じ方法でどんなアリがいるのかというような調査を一斉にやりました。2002年から3年にかけてです。それで、調べましたところ、大体3分の1から4分の1弱の公園にアシナガキアリ、ツヤオオズアリはいまして、確かに普通種なんですけれど、攪乱環境でも発見頻度というのはその程度です。それで、じゃあアシナガキアリとツヤオオズアリがいるとそういう攪乱環境で他種のアリが少なくなったり、排除されたりすることはないかというのですけれど、右がツヤオオズアリがいるところといないところで、上が在来アリについて、それからアリ全種についてというのを見たところ、ツヤオオズアリに関しては若干アリの数が減るという傾向が見られなくはないですが、これは統計学的に有意ではないです。ところが、左のアシナガキアリがいるところ、プラスですよね。いないところと比べるとむしろアシナガキアリがいるところの方が少なくとも全アリ種数に関しては、リッチネス(種数)は、種数が高いと。だから共存している可能性が高いというので、これらのデータから人為的な攪乱環境でもこれらが非常に優勢になり、ほかのアリを排除しているというような証拠はないと。ほかの生物に関してはどうかというんですが、アリに関しては一般にまず競争者排除が起こって在来のアリというのがほかのアリに変わってしまうと。そうすると、このアリに、そのアリの間接的な影響でそれが好きな餌が食われてしまうとか、あるいはそれが好きなアブラムシが非常に数が増えてしまうという間接的な影響が出ますから、まずほかのアリがたくさんいるというようなところからして、他のアリ以外の生物への影響というのも今まで報告が、見た目の明らかな報告もありませんし、多分そういう他の生物への影響というのも多分少ないだろうと。
それで結論で、次のページ、こう書きました。今、これはもう口で言いました。攪乱環境でも影響は少なそうだと。そして、じゃあなぜ、例えばワースト100のかなりひどいツヤオオズアリというのがこれほど日本では、沖縄では猛威を振るわないのかというのの原因をいろいろ解明するために調べておりまして、1つ見つかったのは世界で初めてこいつに寄生する……、寄生者というのが見つかりました。それは、世界で初めてです。これは下の未同定のイトダニ科のアリの捕食者です。おなかのところに取りついて完全に殺しちゃいます。それで、その寄生率というのがひどくて、コロニー単位で言うとほとんど90%以上のコロニーが寄生されていて、個体数でいくとそれは寄生されていないやつも含めて延べでいくとソルジャーというのが、兵隊アリが70%ぐらい殺されちゃうんです。これが原因じゃないかと。ツヤオオズアリは外来じゃないかというふうに言っていますけど、こういう重要な寄生虫が海外では報告されてないやつのようなものが見られるというところも含めて、国内種であるという、在来種である可能性はあるんじゃないかと思っています。
それで、そしてこれらの、ちょっと飛ばしまして、沖縄ではこれらが天敵として、沖縄というのは非常に害虫のターゲットでして、外国からどんな害虫が入ってきたのかというのを有名なやつだけ抜粋してもこれだけ頻度が高く入ってくるわけです。それで、沖縄というのは、非常に農家の家計は貧しいですけれど、でもその中で占める農業所得の比率というのは非常に高くて、沖縄は結構農家は頑張っていると。しかし、沖縄では、例えばこのサンゴに影響がわかっているようなDDVPというのは全国並みに使っていたりとか、あるいは実際には農薬も使えないことが多いんですよね。内地にはないようなマイナーな作物というのが多くて、農薬が登録されてないと。そうすると、こういう実際にいるような捕食者というのを天敵として利用するというのが非常に重要なんじゃないか。特に外国ではこれらの害虫に対してツヤオオズアリとアシナガキアリというのが非常に効率よく捕食する天敵になり得るということが報告されているので、以上のことから考えますと、これらを指定して防除するというのは少なくとも沖縄にとってはいいことはないんではないかと考えます。
以上です。
【石井座長】 はい、どうもありがとうございました。
そうしたら、時間がちょっと厳しいんですけれども、ただいまの辻先生のお話に関して何かご意見、ご質問があったらお願いします。
事務局、どうぞ。
【長田専門官】 1つだけ、辻先生のお話の中でアカカミアリが最近の報道で見つかったということで、指定しても侵入してくるんじゃないかというご指摘があったんですけれども、実際はアカカミアリの関係は、指定したことによって環境省に水際で確認されたという連絡が入りまして、こちらの方で税関等と調整をして、実際に輸入されたコンテナの燻蒸処理をしてもらったというようなことがありまして、実際にアカカミリ以外でも指定したことによって水際で確認がされて止まったという事例が幾つかありまして、それは環境省としては逆に指定の効果だというふうに考えております。
【石井座長】 ありがとうございます。
山根先生、何か。
【山根委員】 辻さんにちょっと伺いたいんですが、これら2種はもう完全にバディングによるコロニー増殖だけなんですか。
【辻委員】 そう言われているんですが、少なくとも侵入地と言われているところではそれが強いんですが、翅を持っていますから、それで筋肉もついています、ちゃんと。ということは、場合によっては飛ぶ可能性があると思っています。
【石井座長】 ちょっと今の解説して、何、バディングって言いましたか。それはどういう意味かちょっと、皆さんおられるので。すみません。
【山根委員】 受精した女王は自力で飛行して、あるいは自力で移動して新しいコロニーを女王一匹でつくり始めるんじゃなくて、女王が主に巣内で交尾するか、あるいはよそから飛んできたオスと交尾して、働きアリを引き連れてコロニーが分裂する格好でふえていく。その両方の繁殖形態があるんですが、この2種はそういうバディングが、後者の方ですね、これがメインだと言われているんですが、そうしますと分散スピードがものすごく遅くなるんです。ほっておけば。ですから人間が運んでいるという1つ証拠になるわけです。
【石井座長】 そういう観点ですね。わかりました。
【山根委員】 それでちょっと伺ったわけです。
【辻委員】 外国でのそういう分散方法、特にアルゼンチンアリではそういうのは盛んなんですが、ほとんど長距離分散というのは人間が行っていると。自然の分布拡大は1年で10メートルとか数十メートルの単位だというのがアルゼンチンアリでは知られています。
【石井座長】 ありがとうございます。
ほかは、何かございますか。だんだんこの12時までに終われという話が難しくなってきていて、よろしかったら、じゃあちょっと山根先生の方に行かせていただきたいと思います。山根先生にはさまざまなことを踏まえて総合的にちょっとお話しいただけるということになっております。
【山根委員】 そういう能力はないんですけれども。
【石井座長】 よろしくお願いします。
【山根委員】 これは2種の生態系に及ぼす影響という点については、私は辻さんとほぼ同じような見解を持っています。ただ、辻さんのように精密な生態学的な調査をやったわけじゃありませんけれども、東南アジアをずっと歩いていて印象としてしか言えませんが、このアシナガキアリとツヤオオズアリがその辺一帯を覆い尽くして他のアリを全部排除しているというような状況は、少なくとも海洋島以外では多分ないんじゃないかと私は思っています。
それで、根本的な問題なんですが、ここの基本方針における外来種の外来生物ですね、これの定義なんですけれども、非常に私、これは今ずっと議論を聞いていて問題があると思いまして、例えばつい最近香港にヒアリが入りましたよね。今、中国南部において猛烈に広がっております。台湾に入る可能性もあるわけですね。台湾はまだ正式な記録はありませんけれども。そうしますと、これは多分人間がもたらしたものだと思うんです。ところが、台湾に入った後、自力でですよ、ヒアリはちゃんと女王が飛びますから、自力で例えば八重山に入ったとしますよね。そうするとこれは外来生物に入らないですよね。要するに海外から我が国に人為によって意図的・非意図的に導入される。これは、自然分布になるわけですよね。ですから、この外来法生物の法律自身が根源的な矛盾を持っていまして、仮にアシナガキアリが日本の在来種であることがわかったとしても、仮にそうであって外来種じゃないということになったとしても、これが小笠原に入ったら大変な問題になりますよ。ですから、そこのところはもう根源的な矛盾を持っていて、速やかに法的な再構成をしないとほとんど効果はないと。何をやってもですね。というふうに私は思っています。その点が第1点です。
それで、そういうふうになりますと今度は小笠原とか大東とか、日本における数少ない海洋島ですね。こういうところにどうやって侵入を阻止するかということになりますけれども、こういうところにおいてはこの2種だけじゃなくて、恐らくあらゆるアリが潜在的に非常に危険であると私は思っています。海洋島の場合はそうなんです。つまり、元来のアリのコミュニティーは非常に弱いですから、そういうところに入った場合に、これら2種だけが特別に何か悪いことをやるとは限らないわけですね。意外なやつが広がる可能性もあるわけです。そうしますと、こういうところにとにかく外から、外国からじゃなくて、外からアリが入らないようにする方策を立てるのが一番重要であって、その場合に今回二次指定をやることがどれくらい意義があるかということです。つまり、メリットとデメリットの問題ですよね。デメリットは、パブリックオピニオン出てきたのは研究がおくれるとか、それから農業生態系におけるプレデターとしての役割がそがれるんじゃないかということが出てきまして、そういうところと指定した場合の、先ほど言いました水際作戦ですかというところで引っかかるようなメリットとの兼ね合いじゃないかなという気が、私はしております。
それから、昆虫の場合は通常、意図的導入というのは非常に少ないですね。もちろん最近ペットとしていろいろ飼われている虫の場合はあり得るわけですけれども。そういう意味では、ブラックバスとかとは本質的に違う問題を持っているわけです。分布を防ぐ方策として。意図的導入としては、アリも最近、実はペット化しつつあります。私のつかんだ情報では、鹿児島市内の個人が沖縄のアリのコロニーをネット販売しています。その中には、どうもオオズアリ属と思われるやつも見られます。ですから、これは1つの危険性として浮上してきているということがありまして、これをどう規制するかというのが1つあると思います。
それから、研究ですよね。研究の場合に非常に重要なのは、そもそもその種がいる地域の中でコロニーを飼育するのと、それからどっか遠くに運んで飼育するのと全部同一視して取り締まるのがいいのか悪いのかという問題が多分出てくると思います。非常に厳密な、絶対逃げないような施設で飼育せよと。これは、お金もかかるし非常に大変で、この条件を満たさなければ飼育しちゃいかんということになると、これら2種の生態研究は大幅に遅れるというふうに考えていると。
それから、例えば研究者しか飼育を申請できないのか、日本のアリの場合は在野の方々のいろいろな研究調査が非常に役立っているわけですね。そうしますと、そういう方が申請した場合は研究者じゃないからだめだと、自宅で飼うのはあかんということになってきますと、いろんな意味で情報が入りづらくなるという可能性が1つあると思います。あとは悪意によって、本当にこれを広めて何か悪いことをしてやろうという人間がいた場合には、これは確かに取り締まりの対象になるわけですけれども、これは今のところは余り考えなくていいんじゃないかなというような気がします。
ちょっといろいろ散漫になりましたけれども、指定のメリットとデメリットをはっきりさせて、その上で最も効果のある阻止の方法は何か、当面は小笠原ですよね。ここに侵入しない阻止の方法を考えることだと思います。
【石井座長】 どうもありがとうございました。最後の部分はなかなか難しいところがありましたけど、それで12時までに終えたいというのはちょっとあきらめまして、もうちょっとかかるかもしれませんけどお許しいただきたいと思います。
それで、議論の方向はもちろん2つでして、原案どおりで二次指定でこの2種のアリを特定外来生物に入れる。もう一つは、もう少し時間をかけて検討しましょうという方向だと思うんですけれども、ここの辺に絞ってちょっと議論させていただきたいと思います。
それでは、山根先生に対するご質問なんかも含めてご意見あったらお願いしたいと思います。いかがでしょう。
五箇委員、どうぞ。
【五箇委員】 大体この外来生物法ができたときから大きく、特定外来生物に指定するという部分に関しての影響評価というのは大きく2つのカテゴリーに分けられまして、まだ全く入っていないという生物と既にもう日本に入ってある程度定着したりして影響を及ぼしているという種類、この2つに分けられます。オオクチバスとか、あと今回出てきましたセイヨウオオマルハナバチといったものは既に国に入って随分の時間もたち、利用もされているという状況の中でどうするかという議論が非常に行われてきた。今まで、これまで全く入ってきていないという部分に関しては、これはもう予防原則で海外での報告などをもとにIUCNで指定されているとか、そういったことだけでもある意味オーバーエスティメイトとして「危険である」と言ってしまうことは簡単であるけれども、特にセイヨウオオマルハナバチなんかでももめたというか、議論になったのは、既に入って使っちゃっているという状況です。そういった中で、じゃあ問題となるのは本当に野外で影響があるのかということが見なくてはならないという状況になってしまう。つまり、もう既に国内に入っているものについては、実際の影響評価というものを野外レベルで実証しないことには、全員一致の結論は得られないであろうということで、セイヨウオオマルハナバチに関しては実に1年近くかけて野外での影響評価を行ったということがあります。
今のアリの話をずっと聞かせていただいて思うのは、ほぼ同じですね。これはやっぱり既に日本という、沖縄という日本領土に今入っていて定着をしていると。そういった状況の中では、やはりその中で実際に影響があるのかないのかということを、やっぱり調べるという必要性が出てきてしまうということですよね。今、そういった中で辻先生なんかからもこういった形でかなり細かい生態調査も今進められているということを考えますと、科学的データが今既にテーブルに並べられつつあることを考えれば、こういったデータにも基づいて議論は進められるべきであるということを考えなくちゃならないということですね。指定するか、しないかについては、皆さんでの意見を聞いた上でということになると思うんですけれども、この状況を考えると、こういったデータを無視することはやはりできないということはあると思います。と言うのは、この法律はあくまでも科学的データをもとに、科学的な根拠をもとに指定するということが大前提になっていますので、その中で今こういった科学的データが浮上してきているということは、これは十分に吟味して議論する必要はあるということで、若干何らかの形で議論する場というものをもう少し置く必要があるんじゃないかなというふうに考えます。
【石井座長】 具体的には、措置として小グループなり検討の組織をつくって、そこで少し時間をかけましょうと、こういう感じですかね。
ほかの観点ございますでしょうか。はい、どうぞ。
【辻委員】 今後の研究の障害になるということに関しては、あえてここでは言わなかったんですが、今の法律で、例えば飼育だけが許可されるんですよ。それで、ちゃんと申請すれば飼育はできる、研究はできるんですが、野外における運搬とか意図的な移動、これは例外なく禁止になってしまうので、そうすると、例えば我々野外で個体数推定のときにマークリキャプチャーなんていう方法を使いますよね。これはもう使えないです。あるいは、影響があるときの群集生態学の、かなり実証的な研究というのは取り除き、つけ加えということを、もちろんそれは既に分布しているところでやることになるでしょうが、そういうこともできなくなっちゃうんです。これは法律に抜け道がつくられていない。それは非常に私が懸念するところで、あとはアルゼンチンアリを研究されている方が今申請しようとするとき、この法律はアライグマを飼うような、個体数を幾つ飼うのかとかというような指定になっているわけです。アリだと、例えばコロニー単位にするとか、あるいは女王の数にするとか、もう少しやりやすい指定といいますか、そういうのにすべきではないかというような意見も私のところに来て言っといてくれというのがありましたので、言わせていただきます。
【石井座長】 ありがとうございます。
ほかはございませんでしょうか。もう少し時間をかける、これをここの会合の意見としてよろしいですか。
桐谷先生、いかがでしょう。突然振って申しわけないですが、やはり生態と言ったら桐谷先生。
【桐谷委員】 私も今皆さんのご意見を聞いていたら、結論的にはそれでいいと思うんです。今、辻委員がおっしゃったようにやっぱり研究上のそういう問題というのは、それも含めて考えていかないと、コロニー単位であるか、確かに個体数というようなことまで一たん指定されたらそうなるというのは、これは今度は防除の方式を、例えばセイヨウオオマルハナバチでも防除の方式を考えるとかって個体数まで規制されたら、これはそんなことを研究すること自体がやっぱり無理になりますから、その辺はもうちょっと、もっとソフトに考えられるようなことは必要じゃないかなと思いました。
【石井座長】 その観点はちょっと別にして、だから特定外来生物に今回指定することに関して見送るということで。
【桐谷委員】 見送る。それで結構です。
【石井座長】 梅谷委員、どうぞ。
【梅谷委員】 これは沖縄で記録されたのは何年ですか。
【辻委員】 正式に記録した、アシナガキアリに関しては、緒方先生のパブリックコメントに……。
【梅谷委員】 およそでいいんですが。
【辻委員】 1929年で。ツヤオオズアリは73年です。
【梅谷委員】 やっぱり在来種じゃないとしたらそのころの、自然分布種としてもそのころの侵入種という。
【辻委員】 それは、それ以前の記録がないですから、南西諸島には、そもそも。
【梅谷委員】 例えば自然帰化昆虫の可能性も。
【辻委員】 あります。
【梅谷委員】 あるということですか。
【辻委員】 そのころではなくて、それ以前の可能性が高いですね。
【梅谷委員】 それならば、この外来種とは何かという規制がいい悪い別として、これもう閣議決定されている項目ですからね。今はだからこれに従わざるを得ないんですけど、そういう疑いがあるなら、それでいいんじゃないですか、もうちょっとはっきりするまで。
それから個体数まで申請するというのは、これはもう過剰に、例えば1万匹とでも書いておけばどうにでもなる問題ですから、枝葉末端のことだと思うんですけど。
それから、やっぱり日本でも今回は討議しないですけど、小笠原というのはもう特別な場所だと思うんですよ。僕も行きたいの。あれ、まさにガラパゴスで、ああいう環境省としてはああいう小笠原だけはちょっと特例を設けて審査の対象に僕すべきじゃないかなと。実際オールオアナッシングで、いいとなったらこれは小笠原に運んでいいのか。法律に違反しないというのは、これ、かなりおかしな話になるんじゃないかなという気がします。これとは別にそういう検討は昆虫部門としては申請してもよろしいんじゃないかなと。昆虫に限らないでしょうけどね。鳥もそうでしょうけど。
【石井座長】 わかりました。それは全体会合に反映させます。
【梅谷委員】 とりあえずは、もう今回この措置でいいと思う。
【石井座長】 見送るということですね。
【梅谷委員】 ええ。
【石井座長】 ほかのご意見ございますか。小野委員、小倉委員、いかがでしょう。
【小倉委員】 今回、指定を見送るということで僕も賛成なんですけれども、要するにさっき言った火山島における被害というのは非常にあるということですね。硫黄島とか小笠原、小笠原は外来生物の宝庫みたいなひどいところですけれども、ガラパゴス島行っても特に植物はもうどうしようもないですね。意図的にあれものすごい持ち込んでああいうふうにしたせいもあるんでしょうけれども。やっぱりそういうようなところへこういうふうなアリを持ち込むという、例えばほかのものでも植防法で規制するというのは幾らでもあるんでしょう。島ごとに。例えば沖縄にあるものをこっちへ持ってきちゃいけないとか、特に農作物の場合ありますよね。だから、その中でこれを入れてもらうというふうなことではできないんですかね。ちょっと環境省の部分と農水省の部分と違うと思いますけれども。
【石井座長】 事務局いかがですか。
【長田専門官】 そうですね、植物防疫法は、法律の目的自体が先生方よくご存じのように、有用な植物に害をもたらすものについて規制をするということになっておりますので、今回ツヤオオズアリ、アシナガキアリが有用植物に害をもたらすというような知見は少なくとも今まで指摘をされておりませんので、植物防疫法の枠組みでやるのはなかなか難しいんではないかと思います。
先ほど個体数の話がちょっとあったんでご説明しますけれども、基本的には外来生物法で外来生物の飼育の許可をしたときに、トレーサビリティーというか、ちゃんと現実に個体の移動が管理されているということを重視しておりますが、例えばアリとか具体的に言いますと、個体が例えば死亡したり繁殖したりしたときに、例えば届け出を義務づけたり、個体数の飼育の上限を設けたりするのは、爬虫類、鳥類、哺乳類だけにしておりまして、その他のものについては譲渡とかそういうときには、ちゃんとだれからだれにというようなことをこちらで把握をしておくというような仕組みをとっておりますけれども、例えばアリが3匹死んだからどうだとか、何匹までしか飼っちゃいけないとかということはやっておりません。
【石井座長】 そうしたら、小野委員、いかがでしょう。
【小野委員】 私は昆虫全体の指定のことなのですが、ほかの動物に比べて非常に遅れているというのは十分に審議を尽くしているということだと思うのです。けれども、今回のことはこれからの前例になると思うのですね。それで、先ほどお話を伺っていて、まず自然分布か人為分布かということですが、私は保全生物学といいますかね、人間がもう自然を管理する時代というような考え方からすると、自然に分布を拡げてきたとは思えないのです。八重山に入ったということは、飛んできたから自然だと言えばそういうことかもしれない。現象としてはそういうことかもしれないけれども、しかしそれが沖縄本島に入ったということには明らかに人為が関与しているので、私は、特定外来生物に指定するということではなくても、人為的に日本に入ってきた外来生物というふうに判断しても良いように思います、1つは。
それから、先ほどあったように、研究上のいろいろな都合も、私は確かにあると思いますので、結論には賛成です。
以上です。
【石井座長】 ということで一当たり聞きましたけれども、見送るというのが強いかなと。ただ、私、座長としては責任もありまして、ちょっとそれでいいのかなというのは思っています。というのは、やはり指定すること自身の効果というのはあるんですね。生物多様性条約に源を発しての生態系被害ということですので、これを指定した場合に例えば小笠原に入るというのを未然に防げるという可能性というのは少し出てくるのかなと思うんですね。監視という目が高まればですけれども。
沖縄については、現状それほど生態的な被害がないのではないかということですけれども、あくまで
【梅谷委員】 実際の生態系に与える影響というのは侵入種が人為であるかどうかということとは関係なく、自然分布であっても十分おそれあるものがあるわけで、一旦入ったものにする措置としては人為かどうかということは余りこだわらないように変えたらどうですか。例えば、オオモンシロチョウは飛んできたと言われていますが、あれがもしも大変な害を与えたらそんなこと言っておられないわけですよね。非常に難しい問題ですけど、人為じゃないから除外するというようなのはちょっと違うような気がするんです。
【石井座長】 まあ、そうではあるんですけども、法律の中でやっている会合でありまして、法律で自然分布に関してはそれは多分扱えないと思うんですね。すごい強い言い方したら法律違反になるのではないかというふうなこともありますので、その辺の知見は集める必要があるのかなと思うんですね。
ということで、五箇委員の言い方を借りれば、科学的な知見という意味ではいまいちかなと。もう少し不足しているのではないかということを理由にして今回見送る。ただし、永遠に見送ると言っているわけではなくて、検討するということなんですけど、ちょっと事務局いかがでしょう。
【名執課長】 小グループというお話もございましたけれども、我々としては今の段階の知見ではなくて、何か新たな科学的知見が出てきたというような場合には、この昆虫グループ会合とご相談して、必要があれば小グループでの検討ということもあり得るのかなというふうに思っております。
【石井座長】 その件いかがでしょう。五箇委員。
【五箇委員】 アリの部分に関しては特に、例えばマルハナバチの場合と違いまして、ここに来て新たな知見がとくかく得られているということですので、当面はやっぱりこの昆虫会合の中で議論を進めていき、随時専門家の方々にも研究データをまた取りまとめていただきながら検討するという方向性が一番よろしいかと思います。
あと、意見というか、先ほどから小笠原というキーワードがたくさん出てきていますけれども、はっきり言って小笠原を問題にするんであれば小笠原に入ればどんな種類でもはっきり言ってもう有害種です。はっきり言えば。だって、セイヨウミツバチだって、あそこではもう野生化していろんな影響をもたらしていると言われています。そういうことを言い出すんであれば、もう小笠原というところでものを言い出すんであれば、全種類が指定されなくてはならないということを考えなくちゃならないんですね。小笠原は、先ほど梅谷委員からもほかの先生方からも言われたように、あそこはもう特殊事例であるということで、そこの部分での議論を云々するよりも、今現状としての沖縄という部分での影響評価というものをまず重視して、科学的に議論を進めるということに注力すべきであろうと思います。小笠原の部分に関する懸念というのは非常にあります。生態学的には重要なポイントであることはわかっていますけど、これはこの法律で議論をする以前の話だと私は考えています。
実際にセイヨウオオマルハナバチだって小笠原に入れようかという話もありましたが、それはもう法律云々で議論される以前から、もうそういうことは絶対してはならないということは既に一般の方々あるいは学者の方々からもそういう意見が出てそういうことはやられていないわけですから、そういうことは少しきちんと専門家自身も少しその辺は線を引いて考えるべきことじゃないかなと思います。
結論としては、今言いましたように、この専門家会合の中でもう少し新しいデータを取りまとめながら議論を進めるということで考えてはどうかというふうに思います。
【石井座長】 そういうことで、小グループを特につくるというのではなく、新しい知見を待つということですけども、先ほどどなたかからのご説明にありましたけれども、実際に今そのような研究も進んでいるということですので、その成果を待つということですけれども、この件もいかがでしょう。それでよろしいでしょうか。
そうしますと、まとめますと、今回の二次指定について、この2種、アシナガキアリ、ツヤオオズアリについては見送ると。科学的な知見の集積を待って、ここの昆虫会合でまた議論をしていくということになりますけれども、この結論でよろしいでしょうか。
じゃあ、特に異議がないようでしたら、この方向で取りまとめたいと思います。これは12月19日の全体会合の方に反映させていきたいというふうに思います。さまざまな意見もありましたけども、これについてもコメントを述べていきたいというふうに思っております。
それで、その他というのが少しありまして、環境省から少しクワガタ捨てないでキャンペーンの話等があるようですけども、事務局、簡単に説明をお願いします。
【長田専門官】 すみません、簡潔にご説明します。ポスター、カラーの色刷りをちょっとお配りさせていただいたんですけれども、クワガタについては今まさに科学的知見が十分にそろってないということで、知見の集積をお願いをしながら並行して遺棄そのものについては非常に問題であるのでということで、要注意外来生物リストに載せて注意喚起をするのと合わせて取扱いについて普及啓発をしているところですけれども、特にこの夏、大量に日本に輸入されてきたというような情報もありまして、夏休みがちょうど終わるころの8月末から9月いっぱいにかけて、クワガタについては外来のカブトムシ、クワガタムシを逃がさないで、捨てないでということで緊急キャンペーンというのを環境省として行いまして、環境大臣が販売店を訪問して遺棄防止を呼びかけたり、販売店向けにこれのポスターのバージョンを広くお配りをして掲示をお願いしたり、それから販売店の方には販売する際に捨てないでくださいということをちゃんと子供とかに伝えていただいて、その上で販売をしてくださいというようなお願いをさせていただきました。ポスターについては全国約5,000店舗ぐらいに配布をいたしまして、そのほかに都道府県さんの協力をいただきながら、市町村ですとかそういうところにもポスターを配っていただきました。ご参考までに。
【石井座長】 その他の件で、ほかに何か。委員の方からございますでしょうか。
【梅谷委員】 このセイヨウオオマルハナバチについては、この分科会から提案されたこれがそのまま答申になるんですか。
【石井座長】 そういうことになると思います。
【梅谷委員】 文章に問題ありませんか。
【石井座長】 文章のチェックですか。何かあったら。お気づきの点あったら。この辺についてもちょっと預からせていただきたいなと思っているところなんですけど。いいでしすか。また大きな修正があったら委員の皆さんにはメール等で連絡させていただきたいと思います。
ほかは、ないでしょうか。そしたら、きょうは土田先生、どうもありがとうございました。それから寺山先生、辻先生、山根先生にはどうも本当ご出席ありがとうございます。引き続き研究の方でもご協力いただければと、さまざまなまた相談させていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。
それでは、時間を15分ほど超過しました。どうもありがとうございました。これで、閉会にいたします。
すみません。名執課長からごあいさつというのがありました。すみません。
【名執課長】 環境省の野生生物課長の名執でございますけれども、本日は年末のお忙しい時期にご参加いただきましてありがとうございます。また、土田先生には7回にわたってマルハナバチの小グループの取り仕切りをやっていただきましてありがとうございます。また、寺山先生、辻先生、山根先生、アリの件でありがとうございました。
このマルハナバチと、それからアリ2種、きょうご議論いただいた話というのは、ある意味で外来生物問題の象徴的な部分があると思います。マルハナバチについては、一方で生態影響、一方で利用という面がございますし、アリについては科学的知見の充実という話もございますので、環境省といたしましては今後とも科学的知見の充実に努めまして、あくまで科学的な根拠に基づいた取扱いを進めていきたいというふうに思っておりますので、今後ともご協力をお願いしたいと思います。
それから、今日はいろいろ小笠原の話も出ておりましたけれども、小笠原については世界遺産の候補地ともなっておりまして、世界遺産に登録申請していく上で外来生物対策、これ、外来生物というのはこの法律の外来生物ではなくて、本来もともと小笠原にいなかったものが意図的・非意図的に持ち込まれるということだと思っておりますけれども、その外来生物対策というものも進めていく必要があるというふうに考えているところでございます。
1つ、国内移動の問題については自然公園法の施行令の改正をいたしまして、国立公園特別保護地区に新たな生物を放すことについては、この1月1日から規制の対象となるような対策もひとつきっかけとして進めているところでございます。今後ともこの外来生物対策につきましてご理解、ご協力をいただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。
本日は、どうもありがとうございました。
【石井座長】 どうもありがとうございました。