1 日時 |
平成17年4月5日(火) 14:00~15:35 |
2 場所 |
環境省第1会議室 |
3 出席者 |
(委員)石井 実(座長)、梅谷 献二、小倉 勘二郎、小野 展嗣、桐谷 圭治、五箇 公一 |
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(環境省)野生生物課長、生物多様性企画官、自然ふれあい推進室長、野生生物課係員 |
(農林水産省)生産局野菜課課長補佐 |
4 議事概要 |
- (事務局)第3回全体会合での議論を受け、今回から検討の枠組みが「昆虫類」から「昆虫類等陸生節足動物」となり、クモ類が専門の小野委員に加わっていただく。
(事務局より資料を用いて説明)
〔セイヨウオオマルハナバチに関する検討の進め方について〕
- 大変な調査になると思うが、調査費はどうなるのか。
- 研究費は、環境省から地球環境研究総合推進費でマルハナバチを含めた外来種の研究で6千万円、農林水産省から農林水産研究高度化事業として4.7千万円が出ている。
- 調査期間は一年ということなのか。
- 生態リスクの評価と防除体制の確立をメインテーマとして、今年度を含め3年間の計画を立てている。しかし、本法律の対応としては年内を目途に検討する。研究の結果、生態リスクはないなどのデータが出てくる可能性はゼロではないので、その時点で議論をする必要性も出てくる。あくまでも科学的議論に基づいてということである。
- (事務局)調査・研究は各大学・研究機関が自らの研究活動としてやっている。3年後の結果を見て検討するのではなく、随時調査から出てきたデータの状況を見ながら検討を進めていく。
〔今後の検討の進め方について〕
- 資料7に「在来生物と交雑を起こす可能性が高いこと」とあるが、交雑という表現は誤解をまねかないか。在来生物との交尾によって、在来種のオスと外来種のオスが在来種のメスをめぐって競合するなど、物理的に交尾の機会を奪うことを含め繁殖を阻害することが問題であって、雑種ができる、できないというのは二次的な問題だと思う。
- マルハナバチでも同じ議論をしており、雑種をつくることを含め生殖撹乱という形でリスクをとらえている。ここでも生殖撹乱に言葉をかえたらどうか。
- (事務局)そのようにかえたいと思う。
- 選定にあたって、「在来生物に対する捕食が生態系に大きな影響を与える」というのは、漠然とした概念である。もう少しわかりやすい言葉がいるのではないか。
- (事務局)資料7は選定の基準ではなく、情報を整理する着目点としてあげたもの。将来的には基準をつくって選定していく必要があるかもしれないが、現段階では情報を整理したうえで一つ一つ議論して特定外来種の選定を進めていただきたい。
- 第二次選定にあたって、「専門家会合での討議により生物学的根拠を記述し検討にあたっての根拠とする」ということだが、論文等の事実よりも専門家会合での討議を優先し、我々が生物学的根拠を記述すれば選定できるという意味なのか。
- (事務局)今までは選定の根拠を文献だけにしていたが、今回はそれに加え、専門家会合での討議の結果も根拠として採用することになっている。
〔第二次選定の検討対象種について〕
- 〈サカイシロテンハナムグリについて〉
- 沖縄本島固有のカナブンの一種、オキナワシロテンハナムグリと台湾からの外来種サカイシロテンハナムグリの交雑例が見つかり、学会で報告されたという報道がなされている。サカイシロテンハナムグリは検討対象種に入っていないが、入れたほうがよいのではないか。
- 科学的な議論に関しては、遺伝子解析等の検証が必要な状況。
- コガネムシ上科といわれるグループは種類も多く、輸入量も多いので扱い方が難しいところがある。あくまでも選択肢の一つだが、まとめて種類名証明書の添付を義務づければ輸入量が少なくなることが考えられる。
- 無秩序に大量の個体が入ってくる状況をどうすればいいのかが議論の的。
- サカイシロテンハナムグリは愛玩昆虫として入ったのか。
- 愛玩昆虫ではなく、30年以上前に非意図的にまぎれて入ったといわれている。シロテンハナムグリそのものも亜種という形で細分化して分類されており、交雑個体の発生に関しても分類学的に再整理する必要がある。
- (事務局)サカイシロテンハナムグリは植物防疫法にかかる可能性がある。
- サカイシロテンハナムグリについては、要注意外来生物リストに入れられるかどうかの検討をするという扱いにさせていただく。
- 〈テナガコガネ類について〉
- 流通量はクワガタ・カブトに比べると多くないが、東南アジアを中心に様々な地域のものが入っている。沖縄にヤンバルテナガコガネという希少種がいることを考えると優先順位は高いと考える。
- (外来クワガタムシ類について五箇委員より説明)
- 昨年の会合では、要注意外来生物リストに入れ普及啓発をはかることを優先し、そのうえで科学的知見を充実させて今後の対応を検討するという結論を出した。
- 第二次選定に向けて先日行なった学術経験者・愛好家・業者を交えた意見交換では、各者の統一的な意見として早急に指定すると大量放棄のリスクが高くなるので、現時点では慎重に対応しようという話になった。愛好家と業者の対応の流れ、科学的な知見の充実をそろえたうえで慎重に議論を進めていくということが現実的である。
- 生態リスクを軽んじているわけではないが、現時点での科学的知見の集積は十分でなく、緊急にデータをそろえる必要があることは一つの結論として出ている。
- 愛好家たちはすでに飼育モラル等に関する普及を推進するための会を立ち上げており、販売業者にも協議会のようなものを立ち上げていただき協議会でキャンペーンを行っていく。加えて研究者の方も研究データを集めているので、対応に関しては一つの方向性を持って積極的に進んでいる。
- (外来クワガタムシ類について意見交換)
- 国内の対応としてはわかるが、一番おそれているのは外国での乱獲である。保護規制がない国へ捕獲圧が集中してしまうこと、採られるのは大型できれいな希少種であることを考えると問題である。
- 一方ではこれを産業化しようとする国もないわけではない。また、普通の町中で生きた昆虫が購入できるような状況は日本だけである。
- 一番端的な事例としては中国がクワガタの輸出大国となっている。クワガタムシは保護動物に入っているが、なんらかのお墨付きを得て輸出が行われているものと思われる。
- 一番重要なのは外国のものを外国から捕ってきて飼っているという現実を認識することである。こういった議論は法律の枠とは別の生物多様性の保全という部分での議論であり、クワガタの流通販売が様々な問題を含んでいることを知るべきである。
- 余談であるが、パプアニューギニアのトリバネアゲハは政府がある集落に飼育を依頼し、飼育品のトリバネアゲハを外国に売ってそのお金で生息地を保全している。
- クワガタムシ科となっているが全種を対象にしているのか。
- 現在輸入の許可がでているのはクワガタムシだけで505種類ある。しかも分類学的にはっきりしていない種もあるので、クワガタムシ科という形で含まれるものすべてを対象にするということにしている。
- クワガタムシは生物分類学的にもやっかいである。例えば、日本のヒラタクワガタとスマトラオオヒラタクワガタが雑種をつくることが研究結果から出ているが、種名だけを見ると、同じDorcus titanus という種類で図鑑に載っている。亜種としては分類されているが亜種そのものははっきりしていないので、科学的な判定が困難になっている。
- 科学的な知見を集積しないと線引きが曖昧で対応ができない。要注意外来生物ということで注意喚起しながら行政・学会レベルで意識が高まり、研究が進むことを期待している。
- 〈その他〉
- あらゆるものが検討の対象となりうるなか、サカイシロテンハナムグリのように話題に上った種が逐次検討対象になる方法は対症療法でしかない。
- (事務局)海外の情報を活用して判定していきたい。広い対象範囲があるので同じように情報収集はできないが、順次進めていきたい。海外のものについてはIUCNのリストを活用したいと考えている。
- 植物防疫法に違反して入ってきたものについて取り締まりはどうなっているのか。
- ゴライアスオオツノハナムグリは密輸によって逮捕されているのに、テナガコガネ類はインターネットで流通しているのにもかかわらず逮捕の対象に入っていない。両方とも植物防疫法にかかっているのになぜそうなるのか。
- (事務局)植物防疫法では、植物に害をなすものはすべて規制対象としたうえで、有用な植物に害をもたらさないものに関しては個別に判定し、白と判定されたら輸入ができることになっている。ハナムグリは黒と判定されており、テナガコガネ類は判定について検討している段階である。仮に判定結果が白なら外来生物法の対象に入る可能性がある。
- 近年の大規模な昆虫の流通は歴史ある植物防疫法の概念からすれば想定外。対応ができない法律となっていると理解する方が良いのではないか。
- (農林水産省)植物防疫法については、次回までに資料を用意し説明させていただく。
(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり)