1 日時 |
平成17年1月13日14時~16時 |
2 場所 |
経済産業省別館第1028会議室 |
3 出席者 |
(委員)石井 実(座長)、梅谷 献二、小倉 勘二郎、桐谷 圭治、五箇 公一、高桑 正敏 |
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(環境省)生物多様性企画官、野生生物課課長補佐 |
(農林水産省)生産局野菜課課長補佐 |
4 議事概要 |
(事務局から資料1-1~1-4,2-1~2-2について説明)
〔セイヨウオオマルハナバチの取扱いについて〕
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セイヨウオオマルハナバチの4回の会合での議論で、集中したのは、影響を評価する上でのデータが十分かという点。現実には、急速に輸入量が増えた結果、野外で見つかる個体が増えたが、影響は分からない。これからの1年間で十分検討するに足るデータの整備をし、農家に対する普及啓発によりネットを張る準備をしてもらい、将来的に環境が整った中で指定する。指定するタイミングを計っていくということになった。
- この昆虫類の会合は今回で終わりだが、セイヨウオオマルハナバチの会合は継続するということか。
- (事務局)継続する。
- 今の説明を聞いていると1年たって指定するかどうかを検討するということか。指定が前提ではないのか。
- 指定を前提にというのが本来の姿勢だが、科学的データに基づくのが前提なので、現時点で確約はできない。影響を否定する科学的データがこの1年間で出てくれば指定はできない。このため、指定を前提としながらもさらに検討するという姿勢である。仮に特定外来生物に指定された後でも、影響がないというデータが出てくれば指定が解除されることがありえるのだから、現時点で指定を前提とは科学的には言い切れない。
- どんな生物であっても外来生物を野外で使って影響が全くないということはありえない。1年たってどう判断するかは難しい課題。
- 1年という短期間でどこまでできるかと言うことだと思うが、実際には、各方面で生態リスクに関する研究成果は揃っている。これらの結果を整理することが必要だが、これを農林水産省の研究予算を使ってやる予定。これから1年以内という期間で検討を継続する理由は、今すぐ指定するとネット展張が十分に行われていない環境の中では、実質上飼養禁止になるという観点から農業生産に配慮したもの。ネットを張ることの効果は明らかになっているので、ネットを張るまでの準備期間が必要である。産学官共同で適正に管理利用する体制を作るという観点で1年間という結論になった。
- セイヨウオオマルハナバチは既に国内で生産されている。法律の施行は前には遡れないので、国内での生産体制への対応はどのようになるのか。
- セイヨウオオマルハナバチは管理して飼養するということが可能。飼養等許可などの許認可システムの構築も含めて、この1年間の検討課題である。
〔アリ3種の取扱いについて〕
- 指定に異論はないが、指定した以上、防除をしないといけない。両省において、防除について具体的なプランはあるのか。
- (事務局)環境省として現在、確たる防除の手法はない。見つけたときにどう対処するのか、情報をどう集めるのか、既に蔓延したものはどうやって計画的に防除していくのかについて、防除を既にやっている地域があるので、検討していきたい。
- (事務局)農業に対する被害は確認されていなので、農林水産省としては防除は行わないのではないかと考える。
- この3種を防除しようということになると、硫黄島などの現地に行って何らかのことをしないといけない。硫黄島ではナンヨウアシナガバチなども見つかっている。どうせ防除するのであれば、アリだけでなく、これらも対象にするよう柔軟に取り組むべき。
- アリのエラディケーションの可能性はあるのか。
- 難しいかもしれないが、これ以上の拡大は防がないといけない。
(桐谷委員より「昆虫類専門家グループ会合に対する質問とコメント」について説明)
- いただいたご意見・ご質問は、9のアリを除けば、主としてクワガタ類を想定したものと考えて良いか。
- よい。
- (事務局)1について、輸入経路などは分かっておらず、今後、調査を実施していくこととしている。2の種間雑種だけでなく親との戻し交雑による遺伝的かく乱については、ご指摘のとおり問題と考える。3について、交雑個体には妊性がなくとも、個体数が多いことにより、種間交雑により少数派の絶滅をまねくとのご指摘についても問題と認識している。4について、生態系への被害の防止が第一義であるが、効果的な規制の観点から実態を踏まえる必要があると考えている。5について、WTOの取り決めの範囲外ということはなく、WTO通報を実施して進めていく。6について、生物多様性条約の観点から原産国の保護の観点から規制すべきとのご指摘だが、法律は国内での規制を行うもの。条約に基づいた取組は、それぞれの国において進められるべきものと考える。7について、きちんと外来生物の影響を普及啓発する必要があると考えているところ。ただし、様々な相手に対し、それに合った普及啓発の進め方が必要と考えている。8については御指摘の点は危惧されるところ。9のアリ等の管理のあり方について、入ってくるときの監視体制のあり方を具体的な防除の中で考えていきたい。
〔要注意外来生物リストについて〕
(事務局から資料3を用いて説明)
- クワガタムシ科という表現で載っているか、これで十分カバーしているか。
- 今は広く扱うようにしているので、これで問題とされるクワガタ類は全部入るはず。
- クワガタ類については、マルハナバチ以上に難しい議論がなされたと思う。輸入量が多く、生きたまま国内各地で増やされている。本来、その数自体が脅威であり、指定して管理すべきであるが、どこに何匹いるかをどう調べるかが課題。規制のしようがないからと言って外しっぱなしにするのではなく、子供たちを含め注意喚起をする素地はできてきているので、より効果的に普及啓発を続け、研究と検討を継続して、規制をする効果的な手段を考えていくべく。クワガタ類については継続審議と言うことで考えていきたい。
- 基本は、特定外来生物に指定すべきであると考えていくべき。輸入個体数が多いため、どうしてもこれらが野外にでると、在来種の交雑を阻害し、在来種は絶滅していく。餌の取り合いよりも影響は大きい。
- クワガタ類は産業利用しているわけではなく、これを規制して何が困るのか。せめてDorcus属だけでも規制できないのか。販売・流通を禁止すれば効果はある。
- Dorcus属の生態影響については、セイヨウオオマルハナバチ以上に科学的な論文として知見の集積が遅れている。現在は、Dorcus属に焦点を当てて、特定外来生物に指定する可能性を念頭において研究を進めていくべき。大量に流通している中で、情報を末端まで伝達していかないといけない。急に指定することによる影響、大量遺棄の発生等を先読みしていかないといけないが、時間がない。要注意外来生物リストとして、環境省のリストに載せてもらえれば、お墨付きを得て、今後普及啓発はしやすくなる。
- 整理すると、アリのような特定外来生物、継続審議であるセイヨウオオマルハナバチ、クワガタなどの要注意外来生物、それ以外の生物と4分類される。要注意外来生物は、今後、誰がどうやって検討していくのかが分からない。この会合で検討していくのか。
- (事務局)クワガタ類については、適切な飼養管理を促していく。販売店や雑誌など関係者の協力を得て普及啓発していく。事務局で情報を集めて、方向性が見えてきた段階で、この会合に相談して、特定外来生物への指定を検討していただく。
- この会合は、一旦ここで閉じるが、情報を集めてもらい、適宜、会合を開催するということにしたい。
- あの昆虫類の会合は後ろを向いているということではいけない。説得力を持って説明できるようにするためには、新たな姿勢を見せていくことが必要だということを確認してほしい。
- 日本生態学会の意見書の5にもあるが、ここで審議をストップするわけではない。
- 要注意外来生物のホソオチョウを入れるのであれば、アカボシゴマダラもホソオチョウ同様放蝶によるものなので、ここに入れてほしい。
- ホソオチョウは1980年代に東京に持ち込まれ、明確に誰かに持ち込まれ放棄されたものであるが、ある自治体では天然記念物に指定しそうになるなど、最も歴史が古く深刻なもの。科学的な知見も多い。
- (事務局)今回は、文献に何らかの指摘があるものをあげた。アカボシゴマダラについては、文献が見あたらなかった。そういうご指摘を踏まえて、次回以降更新していくことはありえる。
- 更新していくのは大賛成だが、ネックとなるのは文献で指摘されてきたかどうかということ。文献がないとリストに載せられないのか。
- (事務局)何らかの科学的な知見が求められている。知見のある学識経験者の言うことも知見とみるという合意が今日なされるのであれば良いが、第一陣で要注意外来生物にあげたものは、どの分類群でも文献があるか否かで整理したところ。
- ホソオチョウをリストアップすることは賛成。アカボシゴマダラは、生態系への影響が指摘されている文献がないとのことだが、現在、論文として用意されている。文献というのを緩やかに考えてくれれば入って良いだろうと考えている。文献の問題に拘ったのは、緊急的に対処しないといけないものに対して指定ができない。
- どういう文献なら良いのか。日本生態学会の意見書の2では、「査読付論文及びそれに相当する評価の定まった知見を重視」とあるが、それでは文献の範囲が狭くなる。
- 外来生物が入ってきてから論文を発表していたのでは、泥棒が入ってから鍵をかけるのと同じ。正規の論文を待つのではなく、指定できるようにすべき。
- 科学的知見の線引きをどうするのか。一般紙にわずか数行でも書いてあれば知見とするのか。実際、生態学会に、データを論文に出そうとしても、生態リスクについては、よほどしっかりしたデータを出さないと評価できないとして落とされる。むしろ、昆虫学会として議論をし、学会として意見を提出するという場を設け、学会の中でオーソライズをすれば、その結果が考慮すべき対象になるのではないか。
- 専門家がここに集まっている。この委員会として決めたことを判断する外部のレフリーを決めて、オーソライズすれば良いのではないか。
- アカボシゴマダラは発見される情報は数多くある。
- 注意喚起する上でも是非入れていただきたい。
- アカボシゴマダラは、この会合として責任を持って全体会合にあげることにしたいと思うが。
- アカボシゴマダラは神奈川県で自力で分布を拡大している。また、それを採りに来てあちこちで飼っている人がいる。中には放し飼いをしている現状もある。
- そもそも科学的知見がはっきりしていれば、特定外来生物に指定すべき。この委員会レベルで、これもあるというものがあれば、リストに載せていいのではないか。専門家としては入れるべきであると考える。
- (事務局)必ずしも文献で実証データが示されているものに限定する必要はないと考える。専門家会合で影響があるかもしれないというものであれば良いが、その際の基準をどうするかは様々な人々に説明をする必要があるので、何も基準がなしというわけにはいかない。
- この専門家の会合で話に出たというのが重要。できるだけ早いほうがよい。
- 分布拡大については相当文献がある。この委員会の判定として、アカボシゴマダラを要注意外来生物リストに入れることにしたいと思うが。
- -特に異論なく了承-
- 防除について環境省は予算がないとのことであるが、ローカルな予算も含めて考えるべき。言い方を変えれば、環境省は何もしなくても良いので、積極的に取り組まれているようなものをリストに入れるべきではないか。この部分に関してこの会合を継続して公表していく場が必要。
- 一応、議論は、アカボシゴマダラで止めておいて、随時会合を開きたい。文献のあるものをお寄せいただいて、座長と事務局で相談しリストを作りたい。
- 継続的に議論をできるのであれば良いが、カブトムシやハナムグリなどのコガネムシ科を今いれるのか、今後入れるのかについて決めておきたい。
- 実際に数をあげれば切りがない。オープンな形で検討していくことが必要で、今年度、さらに追加するよりは、まずは活用法をじっくり考えていく方がよいだろう。
- 要注意外来生物リストへの違反者の罰則はないのか。
- (事務局)法の規制はなく罰則はない。要注意外来生物リストについては、体系的な整理ができていない状況。息の長い取組が必要であり、いろんな情報収集をやっていきたい。
- この要注意外来生物リストも第一陣。
- 全ての外来生物は野にいるだけで影響はあると思う。他の法律で取り締まれるものは除くということであるが、密輸されて販売されているものもある。テナガコガネの仲間は、やんばるで放されるとヤンバルテナガコガネの絶滅につながりかねない。現実にもっと取り締まっていってほしい。販売店も平気で密輸品を売っているようなところの取締りを行い、また、飼えなくなったらお店で引き取ることを義務づけるようにすることが必要。普及啓発が重要。
(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり)