環境省自然環境・自然公園特定外来生物等の選定について

第1回 特定外来生物等分類群専門家グループ会合(昆虫類)議事概要


1 日時 平成16年11月2日15時~17時
2 場所 経済産業省別館第944会議室
3 出席者 (委員)石井 実(座長)、高桑 正敏、桐谷 圭治、五箇 公一、梅谷 献二、小倉勘二郎
(環境省)野生生物課長、生物多様性企画官
(農林水産省)生産局野菜課課長補佐
4 議事概要
(事務局より資料を用いて説明し、質疑応答。)

(委員からの主な意見)

〔特定外来生物の選定の進め方について〕

○ 特定外来生物の選定の前提として、植物防疫法等他法令で規制されているものは選定しないとなっているが、植物防疫法で規制対象となっていても現に国内に持ち込まれているものがある。こういうものは外来生物法で規制しなくて良いのか。
(事務局) これは、法律と法律の関係の整理。本来、個々の法律できちんと規制されているのであれば、外来生物法で二重規制をかける必要はないと考えている。
○ 植物防疫法で輸入禁止となっていても、日本に持ち込まれ、勝手に増やされて、ペットショップなどで売られているようなものは、他法令では取り締まれない。
○ 本来、植物防疫法に違反して持ち込まれているのであれば、植物防疫法違反で取り締まるべき。どの程度の罰則を適用するかは難しい面もあると思う。
○ 植物防疫法は、農林業被害の観点だが、今回の議論は、主に生態系被害の観点から何を規制するかというもの。今までの法律では、害虫とされておらず、規制も検疫もされていないようなものが対象として必要。
○ 今後、天敵農薬として導入される微生物の中には生態系に影響があるものがあるのではないかと懸念。
(事務局) 輸入時に現実に識別ができるのかという実効の問題もあり、当面は対象外とされたところ。

〔昆虫類に係る選定の考え方について〕

○ アルゼンチンアリのように非意図的に導入されたものは対象にしないのか。生態系への影響はあると思う。
(事務局) 規制がかかるのは意図的な導入であるが、非意図的な導入についても防除の必要性のあるものについては対象になりえる。
○ 科学的知見というのは、どのレベルのものを知見とするのか。参考文献とされているものにも様々なものがある。査読を経た論文だけを対象にするのか、それ以外の資料でも構わないのか、この委員会ではどのように判断するのか。
○ 最終的には親委員会の責任であるが、掲載された文献の種類や著者が誰かによっても異なる。この委員会で個々の文献をどう評価するか議論すれば良いのではないか。
(事務局) 個別具体に見ていきたい。一般論で応えるのは難しいが、必ずしも査読を経た論文だけでなくても良いのではないか。
○ アカカミミアリなどは輸入時に取り締まろうとすると防除の対象にもなってしまう。実際、防除までするのは大変だと思う。
(事務局) 基本方針において防除の考え方も書いている。優先順位付けをして国、地方公共団体などが実施していくことになる。
○ 外来クワガタ類については、ヒアリングをした上でとのことだが、具体的な検討の進め方を教えてほしい。
(事務局) 本会合の中で、関係者からのヒアリングを行い、御議論いただくこととしたい。
○ 昆虫類の種の選定を行うのが本会合だが、外来生物に捕食されている側として考えた場合、昆虫類を補食するグリーンアノールなど他の分類群についても議論することはできないのか。
(事務局) この会合は、昆虫類の中から特定外来生物を選定するのが目的。ご指摘のような件については、事務局にご意見をいただければ、その分類群会合にお伝えする。
○ 先日の親委員会の中でも、各座長クラスのミーティングを開いたり、親委員会のメンバーは、必要であれば分類群会合に出て意見も言うことができることとされている。
○ 今後の進め方をまとめると、まず、外来クワガタ類と天敵農薬についてヒアリングを行いたい、また、セイヨウオオマルハナバチについては、別に専門家の小グループ会合を設けて専門的に議論をし、その結果を本会合にあげていただくことで良いか。
- 各委員了承 -

(セイヨウオオマルハナバチの小グループのメンバー案について事務局より説明)
○ セイヨウオオマルハナバチは生態系への問題は多いハチだが、かなり使われているという現状を考えると、利用側の人がもう少し入っていても良いのではないか。
○ 利用者側としては、マルハナバチ利用普及会から1、2名委員に入っていただくこと、また、現場の利用者として農家の方にもオブザーバーとして参加して頂き、お話を聞くなどしてはどうか。

(外来クワガタ類に係るヒアリング対象について)
○ 市場規模は100億円と言われており、利用・販売している側の意見も重要。ヒアリング対象としては、飼育関係者の中では、民間から小島啓史さん。販売分野では、むし社の藤田宏さん、学識経験者としては九州大学の荒谷邦雄さんに聞いてはどうか。
○ ヒアリング内容としては、まず、輸入の全体像の把握が必要。植物防疫法上規制のかからない五百数十種全部が大量に輸入されているわけではない。また、実際、国内でどのように増殖され、販売されているのかなど実態を把握しないと規制の仕組みも考えられない。また、子供たちが数多く飼っており、啓発のあり方についても考えていくことも必要。そうした中で、これは問題が大きいというものがあれば、指定を考えていくことになるのではないか。
○ 国内だけでなく、原産地における生態系のかく乱の問題も視野に入れるべきである。
○ 日本が大量に輸入することで、原産国で乱獲の問題が出ていることは議論の中に交えていただいて構わないと思っている。これが、啓発活動にも繋がっていく。
○ 小島さん、藤田さん、荒谷さん、五箇さんというのはクワガタの分野では神様のような人たち。この人たちに議論をしていただければ、それ自体がいろんな人たちに浸透し、啓発の効果がある。
○ ご推薦いただいた人たちを中心にして、座長が事務局と相談して次回の会合でのヒアリング相手を決めたい。また、次回会合では、農林水産省の農薬取締法の担当者からも天敵昆虫についての安全評価システムについて説明を聞くことにしたい。

〔個別の評価を実施する種について〕

○ アルゼンチンアリについては、農業被害も出ていると考えている。そもそも植物防疫法でも防除可能なのではないか。
(事務局) 農業面での被害はあってもわずかであり、生態系被害の方が大きいと考えている。植物防疫法の対象とはなっていない。
○ アリは捕食者として重要。以前から衛生害虫への規制がずっとなかったが、今回は良い機会であり、しっかりとした規制をすべき。また、アフリカミツバチも検討してはどうか。
○ アルゼンチンアリについては、環境省にあまり手足がないとしても、まだ十分に環境省で防除が可能な広がり具合だと考える。
(事務局) 手足がないというのは大きな悩み。地元で既に防除活動が行われているところもあり、国としては、技術開発や情報提供などの面で後押しを行い、防除が推進されていくようにしていきたい。環境省直轄でということになると、優先順位の問題から防除を実施するのは限定せざるを得ない。
○ アフリカミツバチも問題が指摘されているが、実際のところ、日本にミツバチが輸出できる国は限られており、これらの国ではアフリカミツバチはいないので、あまり心配ないのではないか。

○ 次回はクワガタ類、天敵農薬についてヒアリングを行うこととし、その際まとまれば良いが、まとまらない場合は、1月に第3回を開くこととしたい。

その他事項について

○ インターネットでハナムグリが売られているとは知らなかった。本来は植物防疫法でしっかり取り締まるべき問題である。植物防疫所はしっかりと調べて、警告を行うなり罰則をかけるなりの対策をとってほしい。
(事務局) 努力をしているが、実行上、全部を取り締まるのは難しい。
○ 輸入禁止品であるはずのテナガコガネ属も入ってきている。沖縄には在来のテナガコガネ属がいるので、ここで放されたら大変な事態がおきる。しかし、一般には、かわいそうなので友達がいるところに放してあげるということになりやすい。国内での飼養等を規制できないなら、外来生物法の対象にしてしまっても良いのではないか。
○ 植物防疫法に限らず、生物の輸入を規制している法律でも、一旦、違法に国内に入ってしまうと、それを取り締まることができる法律は余りないのではないか。一旦入れたものを取り締まるということをやらないと、業者は要らなくなるとすぐに捨ててしまう。海外からだけでなく、国内でも北海道にいなかった昆虫が業者に捨てられ、どんどん北海道で広がっている。何かの法律で罰するなり、回収するなりということをしないといけないのではないか。
(事務局) 現状からみると、違法に入ってきたものについては、それぞれの個別法において対処を考えて行かざるを得ない。
 外来生物法は海外由来の外来種問題に対応するものだが、国内由来の問題への対応については、基本方針を議論した中央環境審議会外来生物対策小委員会において示された委員長談話の1(1)において、国内由来対策もしっかり考えていくべきとの意見が出されている。環境省ではこれを踏まえ自然公園等保全の必要な地域においては、外部からの生物の持ち込みなど規制強化を検討中。いずれにしても知見の収集が必要となるので、知見の収集などの取組から行っていきたい。
○ 生物多様性条約第8条の定義では、侵略的外来種とは生態系に被害を及ぼすもの。この法律は、人の生命や社会経済などへの影響も見ている。「定着」という言葉の定義も曖昧な面がある。生態系への影響だけなら、セイヨウオオマルハナバチは特定外来生物にあたると考えるが、法律自体が社会経済的な被害(農林水産業の被害)もカバーしており、こういう観点も入ってくるとセイヨウオオマルハナバチを評価しようとしても、また、曖昧な部分が議論として出てくるのではないか。
(事務局) この法律は、生態系の被害、農林水産業の被害、人の生命・身体の被害の3つの観点で被害をみている。生物多様性条約第8条の範囲より広い。このグループは、この3つの観点から種の選定を検討して頂きたい。

(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり)