環境省自然環境・自然公園特定外来生物等の選定について

第7回 特定外来生物等分類群専門家グループ会合(昆虫類等陸生節足動物)
セイヨウオオマルハナバチ小グループ会合 議事録


1. 日時 平成17年12月7日(水)10:30~11:55
2. 場所 三田共用会議所D・E会議室
3. 出席者  
   (座長) 土田 浩治
   (委員) 池田 二三高
五箇 公一
小野 正人
横山  潤
   (利用関係者) マルハナバチ普及会 光畑雅宏
マルハナバチ普及会 米田昌浩
   (環境省) 名執野生生物課長
中島自然ふれあい推進室長
長田移入生物専門官
   (農林水産省) 豊田生産局野菜課長
5. 議事  
【環境省 長田専門官】 それでは、予定の時刻になりましたので、ただいまからマルハナバチ小グループ会合の第7回会合を開催させていただきたいと存じます。
 まず、初めにいつものとおりお手元にお配りしました資料の方の確認をさせていただきたいと思います。順に確認させていただきます。クリップを外していただきまして、上から順番に、まず一番上が議事次第でございます。次に委員の名簿、それから、その下が資料一覧でございます。その次が資料1、セイヨウオオマルハナバチに関する情報(案)というのがございます。それから資料2、一枚紙ですけれども、小グループ会合で提起された論点の整理というのがございます。その次が資料2に関連する図表、カラーのものですね。資料2、図表というのがございます。その次が資料3、セイヨウオオマルハナバチの取扱いについて(案)、セイヨウオオマルハナバチ小グループというのがございます。資料4は横長の資料ですけれども、セイヨウオオマルハナバチに係る未判定外来生物・種類名証明書添付生物対象リスト(案)でございます。資料5も1枚紙ですが、今後の検討の進め方について(案)。それから、以下は参考資料でございますけれども、まず、参考資料1、これも横長の資料になりますが、マルハナバチに関する調査の結果概要。基本的には、前回の会議でお配りしました資料と同じでございます。それから次に、参考資料2、2005年度のマルハナバチに関する調査結果について。細かいところ、前回のご指摘を受けて直してあるところもありますが、これも基本的には、前回お配りした資料のとおりでございます。それから、参考資料3、これは全体会合や各分類群グループ会合でご議論をいただいた第二次以降の特定外来生物等の選定の作業手順、基本方針と選定方針の関係を整理してある資料でございます。それから最後に参考資料4として、前回11月18日に開催されましたセイヨウオオマルハナバチ小グループ会合の議事概要をお配りしております。あと、委員の皆様には机の上に冊子として特定外来生物被害防止基本方針をご参考までにお配りしております。
 もし資料に不備等がございましたら、事務局の方にお申しつけいただければと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、議事の進行につきましては、座長の土田委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【土田座長】 それでは、これより本日の議事に入らせていただきます。
 本日の議題は、セイヨウオオマルハナバチの取扱いについてとなっております。本日は、前回までの検討結果をまとめて、小グループ会合としての結論を取りまとめたいと思います。
 まず、事務局から資料1、資料2について、続けてご説明いただきたいと思います。

【長田専門官】 それでは、資料1と資料2についてご説明をさせていただきたいと思います。まず、資料1でございますけれども、資料1は以前、このセイヨウオオマルハナバチ小グループ会合の中でご議論をいただいたものを、前回までの知見に基づいてリバイスをした資料でございます。基本的には前回のものと大きくは変わっておりませんけれども、定着実績、評価の理由、被害の実態といったものを整理している資料でございます。
 原産地はヨーロッパ。日本へはオランダ、ベルギー、イギリス、イスラエル等から輸入をされると。それから、91年に試験導入された後、輸入が本格化した。それから、96年の春に、北海道で野外越冬が初めて確認され、自然巣も発見された。それから、現在までに、27都道府県で本種が目撃されており、これが前の資料では25都道府県というふうになっていたと思いますが、2県確認された場所がふえまして、27都道府県ということになっております。周囲にトマト温室等のない場所でも目撃をされていると。それから、北海道の日高地方、それから、資料として入ってなかったですけども、千歳川流域においても、確実な繁殖や個体数の増加が報告をされているということでございます。
 簡単にセイヨウオオマルハナバチについて整理をいたしますと、在来マルハナバチとの営巣場所をめぐる競合や、それに伴う野生植物の健全な繁殖阻害などにより、生態系に被害を及ぼすおそれがあるということです。それから、年間約7万コロニー、これは以前のデータですけども、流通・利用されており、野外への輸出が多く、繁殖例もある。
 具体的に、生態系への被害でございますが、在来のマルハナバチ全般との競争が懸念されている。北海道での調査研究では、特に類似した営巣場所の要求性をもつといわれているエゾオオマルハナバチの個体数の減少が確認されていると。それから、マルハナバチ類は、しばしば乗っ取りを行うが、本種も実験室において、在来の女王を刺殺して乗っ取りを行った例が報告されているということです。それから、在来のマルハナバチも盗蜜行動を行うけれども、セイヨウオオマルハナバチは短舌であり、盗蜜を頻繁に行うために、野生植物の種子生産を阻害するといわれ、前回ここまでだったんですけども、具体的に、エゾエンゴサクの種子繁殖の阻害が確認されているということでございます。それから、在来のマルハナバチ類は生育場所の喪失や分断化、農薬の使用等により、低地ではかなり衰退していると予測され、サクラソウ等々の野生植物の種子生産に影響をもたらしているといわれており、さらに、本種在来マルハナバチ類を圧迫することによって、野生植物の健全な繁殖を損なうおそれが指摘されている。これは以前の資料と同じでございます。それから、北海道の日高地方、千歳川流域でセイヨウマルハナバチとの置きかわりが生じていると。特に、エゾオオマルハナバチの明確な減少が確認されており、前回も議論がありましたけども、鵡川町の5月から7月の調査では、2003年から2005年にかけてエゾオオマルハナバチの観察比率が10分の1以下、観察数で15分の1以下に減少していると。イスラエルでは、本種によって、ハナバチ相全般が著しく衰退した例が報告されているということです。
 2ページにいきまして、実験室において在来種のオオマルハナバチ、エゾオオマルハナバチやクロマルハナバチに対する交尾行動を示していることが報告をされていますと、これも前回の資料と同じでございます。それから、輸入されたセイヨウオオマルハナバチから内部寄生性のマルハナバチポリプダニが報告されていることから、在来のマルハナバチに疾患を生じさせることが懸念されると。これまでの資料では、20%のセイヨウマルハナバチからというのがあったんですが、最近は減少しているというお話が前回もございましたので、その数字は削っております。
 それから、被害をもたらす要因ですけれども、まず、マルハナバチの中でも、花資源をめぐる競争や女王バチの活動の開始時期が早いことによる営巣場所をめぐる競争、高い増殖能力等を大きな競争力をもつと言われていると。タスマニアでは、侵入以来約25、これ前回30になってたんですが、より正確な文献を参照して25キロの速さで拡大している等、高い分散能力を持つことが報告をされている。盗蜜を頻繁に行うために、在来のマルハナバチにより受粉されている植物が影響を受けやすい。それから、輸入されたセイヨウマルハナバチのコロニーから多くの細菌、ウイルス、微胞子虫の検出報告があり、在来のマルハナバチに感染して衰退をもたらすことが懸念をされていると。ニュージランドでもそういった例が報告されているということでございます。
 それから、現在のトマトの栽培施設においては、栽培面積の約4割で本種が使用されており、年間約7万コロニーが流通・利用されていると。そのほかに、なすやいちごでも利用されているということ。それから、小規模ですけれども、屋外における利用もあるということでございます。
 特徴のところは省略をいたします。特徴のところに、日本在来のマルハナバチ属は15種が分布すると、文献16とありますが、これちょっと間違いでございまして、文献16というのはございませんので、削っておいていただければと思います。
 それから、その他の関連情報としましては、まず、ハウスの開口部にネットを適切に張ることにより、逸出防止が可能である。これは前回ご検討いただいたことでもあります。在来のマルハナバチの増殖技術も確立しており、商品化も行われている。それから、海外の例ですと、カナダ、アメリカ合衆国では輸入禁止の措置が取られており、在来種が利用されている。それから、農家の自己負担によるネットの義務化、使用済みの巣箱を処分し、農協で回収する仕組みなどが整えられている事例があるということです。本種の導入により、トマトを中心とした施設栽培において労力の軽減、ホルモン剤の代替等に大きな役割を果たしているということでございまして、これがセイヨウオオマルハナバチという生物そのものについての情報を客観的に整理した資料になります。
 続きまして、資料2についてご説明をしたいと思います。
 資料2ですけれども、図表とペーパーと2種類用意してございますので、両方を照らし合わせながらご確認をいただければというふうに思います。これにつきましては、前回までの調査結果を踏まえた第6回会合の議論の中で、具体的にご指摘があったことについて委員の先生方からお答えいただいたことを、さらにちょっとデータを後からいただいたりして、事務局側で整理をしたものでございます。
 まず、論点の1つ目として、セイヨウオオマルハナバチの目撃場所は道路沿い等開発が進んでいる場所に限られていて、今後国立公園等の原生的な環境に分布を拡大しないのではないかというご指摘がございました。基本的な考え方としましては、保全の対象とすべき自然環境というのは、国立公園の特別保護地区等の極めて原生的な環境には限定はされないと。ただ一方で、セイヨウオオマルハナバチの分布は、そういった我が国の固有で貴重な生態系を有する地域にまで迫ってきておりまして、これらの地域に対する予防的な観点からの対応というのも非常に重要な状況にあるということです。
 資料として、図表の方でお示ししましたのは、北海道の例でございますけれども、図1の北海道の地図は、1996年から2005年にセイヨウオオマルハナバチが野外で確認された市町村でございます。非常に多くのところで確認をされているのと、それから、星をつけてあるところが5カ所ございますが、これは例えば、自然公園の中とかそういったところで、原生的な環境に近いと考えられる場所で、かつその個体がちゃんと確認されたものの標本の保存場所もはっきりしているものの例を挙げております。場所については、表1のところに示してあります。それから、経年的な変化でございますけれども、もちろん確認の努力量が全く同じというわけではございませんが、2000年から2005年にかけて、野外で目撃採集がされている地域がどんどん拡大をしているというのが、地図を見ていただいてわかると思います。一度確認されたところは、ほとんどの場所がその後継続して分布が確認をされているというような状況になっております。
 それから、論点の2でございますが、詳細な調査を行った二宮地区の報告について前回ご説明をいたしましたけれども、例えば、ここは餌資源が豊富にあるので、在来種が別の場所に移動しただけで、在来種が駆逐されたのではないという可能性もあるのではないかというご指摘がございました。鵡川町においてセイヨウオオマルハナバチの増加と在来のマルハナバチ類の減少の著しい傾向が確認されていて、これはやはりセイヨウオオマルハナバチと在来のマルハナバチ類が競合して、在来種が駆逐されていると推察できるのではないかと。あわせて同一の巣穴から複数のセイヨウオオマルハナバチの死体が確認されている事例が増加しておりまして、これは営巣場所をめぐる競合が発生しているということではないかということでして、資料2の図表の、1枚めくっていただいて2ページ目、図2というところをご覧いただければと思うんですけれども、これが鵡川町の調査データでございますが、グラフを見ていただくとわかりやすいと思うんですが、グラフの青色のふえているのが、この3年間でのセイヨウオオマルハナバチの確認数でございます。それから、その青いバーの隣にあります紫色のバー、こちらがエゾオオマルハナバチの確認個体数ということでして、前回横山委員からもご指摘がありましたように、今はもう鵡川町というのは、エゾオオマルハナバチが住める場所ではなくなってしまっているということでございます。
 ですから、今回、同一の巣穴から複数のセイヨウオオマルハナバチが確認されたということでございますけれども、2005年の比率を見てみますと、エゾオオマルハナバチが巣穴から出てこないというのも妥当だというふうに考えられるのではないかと思います。
 表2の方に、その巣穴の中から確認された女王の数が出ておりますが、3年間分ですので、その横にバーが引いてある部分から1年ごとに違うということです。最初の年が1、2、1、次の年が1、3、1、1、そして今年が3、6、4、6、2、7と明らかに一つの巣から確認されるセイヨウオオマルハナバチの女王の数が増えているということが確認できるかと思います。
 それから、論点の3でございますが、エゾエンゴサクの繁殖への影響についての議論でございました。エゾエンゴサクは多年草であり、かつ北海道に広く分布をしていると。また、訪花する昆虫もマルハナバチだけとは限らないので、単純にセイヨウオオマルハナバチの盗密によって結果率が下がったことで、エゾエンゴサクの存続に重大な影響があるとは言えない可能性があるのではないかというご指摘がございました。
 エゾエンゴサクについては、図表の方の資料の図3の下のところに書いておりますが、簡単にご説明しますと、北海道からサハリンに分布をしておりまして、昔は本州のものと同種とされていたようですが、近年、別種として区別をされております。4月の中旬から5月の上旬にかけて開花する北海道の代表的な春植物ということでして、越冬から明けてすぐのマルハナバチ女王が蜜源として利用する植物として重要だというふうに言われております。これまで知られている主な送粉昆虫は、在来のマルハナバチ類、アカマルハナバチですとかエゾオオマルハナバチ、セイヨウミツバチがいる場合はセイヨウミツバチもよく利用するということですけれども、それが塊茎を形成する多年草であって、基本的には栄養繁殖という繁殖形態はとらないだろうというふうに考えられております。もっぱら種子形成によって繁殖が行われていると考えられています。それから、ヒメウスバシロチョウ、ウスバシロチョウといったチョウ類の重要な食草になっているという植物です。
 この植物について、やはり種子繁殖に依存しているということがほぼ明らかであって、かつ多年草ですので、調査を行っている短期間ですぐに群落が消滅するような影響は確認されませんが、訪花昆虫のほとんどが在来のマルハナバチであったということが、今回の場合確認されております。これは、その上の図3のところに訪花昆虫の比率を表とグラフにしておりますけれども、63%がセイヨウ、それから在来が26%、残りがハエ類とビロードツリアブですが、この2種については形からエゾエンゴサクを受粉させることはまずできないんではないかと、受粉に貢献する可能性は極めて低いと考えていいということでございます。
 それから、セイヨウオオマルハナバチの訪花頻度が高い場合に、結果率が有意に低くなっていますので、エゾエンゴサクに対しても、経年的には時間が経っていけば、重大な影響をもたらす可能性が高いのではないかということでございます。
 前回の議論の整理でございました。ご説明は以上でございます。

【土田座長】 ただいまの一連の説明につきまして、ご意見、ご質問がありましたらお願いしたいと思います。

【池田委員】 生態系への被害の3番目のところになりますが、今までの本会の会議の中では、在来マルハナバチ類は、というところですが、農薬の使用等によって衰退していると予測されているとありますが、この議論については一切されたことがないように思うんですが、いかがでしょう。

【長田専門官】 この資料自体は、冒頭ご説明しましたように、以前に資料としてお配りして議論をしていただいたものについて、新たな知見があった部分についてリバイスをしたというものでございまして、ここの部分の記述は、今回はいじってはおりませんが、たしかにここはあまり議論はされていなかったと思いますので、もしご指摘があれば、この場でご議論をいただいて、より適切な表現にしていただければと思いますけど。

【五箇委員】 在来マルハナバチの衰退が予測されるという部分に関しての、いってみれば個体群動態ですね、それに関するデータはないので、これははっきり言って、予測というよりももう本当に単なる類推にすぎないというふうに考えられますから、少しちょっと記述は考えた方がいいかなと思います。特に後、その生育場所の喪失や分断化というのは、たしかに近年の人工構造物の増設ということを考えれば、あらゆる生物に当てはまるのですけど、農薬の使用等に関しては、これ影響評価というのはほとんどなされてないので、これは削除した方がいいのではないかと考えます。

【土田座長】 ほかの方、よろしいでしょうか。では、削除していただくようにお願いいたします。
 ほか何かご意見、ご質問等ありますか。ではよろしければ、五箇委員の方から。

【五箇委員】 影響評価の方で、資料1の方で、被害の実態・被害のおそれというところで、ここでは2ページ目の実験室において在来種のオオマルハナバチ、エゾオオマルハナバチやクロオオマルハナバチに対する交尾行動を実験室レベルで種間交尾をするということがデータとして得られているということが、前回までに報告されておりまして、その後、この種間交尾によって繁殖撹乱が起こる。つまり、セイヨウオオマルハナバチの雄が在来のマルハナバチの女王バチと交尾をしてしまうと、セイヨウオオマルハナバチの精子によって在来の女王バチが受精してしまうんですけれども、その受精した後、生まれてくる卵が孵化しないということで、結局、不妊化させてしまうおそれがあるということが、室内の調査でわかっていたというところまでが、これまでのデータだったわけですけれども、その後、実は、国立環境研究所の方で、野外の在来マルハナバチの受精嚢の中の精子DNAを調べるということで、実際に野外で在来の女王バチがセイヨウオオマルハナバチと交尾をしているかどうかということを精査しておりまして、実は、前回までの調査結果では、それが検出されていなかったというふうに報告してたんですけれども、実は、今週に入りまして、結果が出まして、その結果についてちょっと報告をしておきたいと思います。よろしいですか。
 それで、できましたら、参考資料2、2005年度マルハナバチに関する調査結果についてというところで、4ページ目、問題点、生殖撹乱についてというところですね。これに関して、進捗状況の部分について追記をお願いするということになります。今から、ちょっと結果の方を申し上げますので、記録の方をお願いいたします。
 まず、最後の丸、北海道旭川地域及び青森県黒石市から十和田周辺、栃木県、福島県、奈良県、山梨県の在来種オオマルハナバチ(エゾオオマルハナバチを含む)の女王ですね、これここから以下次のように書きかえます、女王257サンプルの解析を終了しましたと。その結果、エゾオオマルハナバチ147個体中3個体の受精嚢よりセイヨウオオマルハナバチの精子DNAが検出されました。
 また、本州のオオマルハナバチ110個体中1個体からセイヨウオオマルハナバチ精子DNAが検出されました。このことから、野外においてセイヨウオオマルハナバチ雄が在来種エゾオオマルハナバチ女王及びオオマルハナバチ女王と種間交尾を行っていることが明らかになりました。そのほかにも、受精嚢内にセイヨウオオマルハナバチ精子DNAを含むと考えられる個体が、さらに多く存在することが示唆されておりまして、現在DNA配列の精査を進めていると。つまり、さらに種間交尾をしていたという個体は増える可能性があります。
 以上をもって、結論としては、セイヨウオオマルハナバチの雄はかなりの高頻度で在来のオオマルハナバチ及びエゾオオマルハナバチと種間交尾を行っているということが示唆されたということで、生殖撹乱のリスクについては、野外においてそれが実際に起こっているということが今回検証されたということをここに追記したいと思います。

【土田座長】 もう一度確認しますが、エゾオオマル147個体中3個と、オオマルハナバチ110個体中1個体と。よろしいでしょうか。

【マルハナバチ普及会 光畑氏】 五箇先生、第6回の会合のときに、エゾオオマルハナバチとオオマルハナバチの中で、在来種と交尾をして、その精子が確認されたという報告がありましたが、それとは全く別に出てきたということですか。

【五箇委員】 はい。

【土田座長】 そのほかよろしいでしょうか。

【池田委員】 2ページの一番上の方になるんですが、上のポリプダニの件なんですが、これまでのご説明の中では、外国産も日本産も同一種だというふうなことをちょっとお聞きしていたんですが、それでいいですか。

【五箇委員】 形態上は同一種になります。遺伝子解析の結果、海外から入ってきているポリプダニと国内の在来種にもともと寄生していたというポリプダニが遺伝的には異なる系統であるということがわかっているということです。

【池田委員】 ですから、その結果として懸念されるという、そういう結論なんですね。

【五箇委員】 そうですね。要は、在来のハチと在来のダニとのインタラクションと、外国のダニと外国のハチのインタラクション、これが組みかえが起こったと。つまり、在来のハチに外来のダニが寄生した場合に、そのときにどういう影響が出るかということが、今のところまだ影響評価ができていないということで、現時点では宿主と寄生生物の組み合わせがかわるということによる病害の発生や、あるいはアウトブレイクといったものが懸念されるという段階であるということです。
 あと、実際に、特に北欧の方では、このダニが重度に感染した場合には、適応度に影響するというデータは実際にも出ており論文化されております。

【池田委員】 そうなると、この表現なんですが、このままマルハナバチ、ポリプダニ、これは和名になっているわけですね、正式な和名になっている。中が遺伝子的にちょっと違うということになれば、系統の異なるマルハナバチポリプダニがというふうな追記をした方がいいんじゃないかと。

【五箇委員】 そうですね、正確にいえば、ヨーロッパ系統のマルハナバチポリプダニという表現が正しいかと思います。

【池田委員】 このままでおくと、もし同一種だけで考えてみれば、日本にも在来いるわけですから、最後の懸念されるというのはちょっとおかしいので、懸念されるというのを強調したいんであれば、ちょっと別系統であるよということを明記した方がいいんじゃないかと思いますけど。

【五箇委員】 ご指摘のとおりで、この辺は種としては同一種だけども、肝心なところは形は同じでも中身は違うということを強調すべきということで、その意味では、この文章に関しては、輸入されたセイヨウから内部寄生性のヨーロッパ系統マルハナバチポリプダニというふうな形で区別していただければと思います。

【土田座長】 わかりました。そのほか何かございますか。
 では、引き続きまして、小グループ会合としての結論の案に当たりますセイヨウオオマルハナバチの取扱いについて(案)について事務局からご説明ください。

【長田専門官】 それでは、資料3、セイヨウオオマルハナバチの取扱いについて(案)。セイヨウオオマルハナバチ小グループとしての結論の文章の案でございますが、こちらについては、読み上げさせていただきたいと思います。
 本グループでは、セイヨウオオマルハナバチに係る定着実績、在来マルハナバチ類への影響、在来植物への影響、現場での利用実態と逸出防止措置の実施状況・効果等について7回の会合を重ねて議論を行ってきた。以下、小グループとしての検討結果を報告する。
 セイヨウオオマルハナバチが、生態系等へ与える影響については、次のとおりとらえることが適当である。
 定着の可能性については、北海道で継続的に自然巣が発見され、周年の活動が確認されていることから定着の事実が明らかとなった。特に、毎年、継続的に大量な利用がなされていることから、大量に野外に逸出する状況が継続しており、その影響は大きいことが明らかになっている。
 在来マルハナバチ類への影響として、特に在来種のエゾオオマルハナバチの明確な減少が確認されており、その原因として、営巣場所及び餌資源をめぐる競争が考えられた。このうち、営巣場所をめぐる競争については、実験室内で在来種の巣の乗っ取りに加えて、野外における営巣場所であるネズミの古巣をめぐるセイヨウオオマルハナバチ同士の競合が激しいことが明らかとなった。
 餌資源をめぐる競合については、活動地域の餌資源量と、セイヨウオオマルハナバチ及び在来のマルハナバチ類の生息密度との相関は不明確である。
 生殖撹乱については、在来種と共通の誘引・忌避物質を含み、実験室では在来種との交尾が確認されているが、野外での交尾の実態は不明確である。これは後で、五箇委員に訂正なりのコメントをいただければと思います。
 寄生生物については、セイヨウオオマルハナバチから感染した外国産マルハナバチポリプダニの感染拡大が確認されている。我が国のマルハナバチ類への具体的影響は不明だが、海外でマルハナバチ類に対する悪影響が報告されている。
 在来植物への影響については、野外において複数の植物種への盗蜜行動が確認され、特にそのうちの1種(エゾエンゴサク)については、受粉にほとんど貢献せず、結果率を低下させている事例が明らかになった。
 次に、現場での利用状況及び逸出防止措置の実施状況とその効果については、次のような状況である。
 全国で年間約7万コロニーが流通されている。セイヨウオオマルハナバチの利用により、減農薬、省力化、高品質・高付加価値化等、生産面での効果が発揮されている。ネット展張については、適切な方法をとることにより効果的にセイヨウオオマルハナバチの逸出防止を図ることができることが示された。野外へのハチの逸出を防ぐためのネット展張の普及が進みつつあることが明らかになった。また、使用済み巣箱の簡便な処理の方法として、ビニール袋を用いた方法及び熱湯を用いた処理方法が示された。
 裏面にいきまして、毎年、継続的に大量のコロニーが利用されていることを考えると、そのまま野外への逸出が続けば、在来のマルハナバチ類及び植物群落への影響が増大し、我が国の生態系に対し、重大な被害を及ぼすおそれが高いと言える。また、逸出防止の高い効果が期待できるネット展張及び使用済み巣箱の適正な処理を確実に実施することが極めて重要である。
 以上を鑑み、当小グループとしては、セイヨウオオマルハナバチの取扱いについて、以下のとおりとすることを提案する。
 セイヨウオオマルハナバチを特定外来生物に指定をすること。
 使用する場合には、逸出防止措置としてのネット展張及び使用済み巣箱の適正な処理が図られることが不可欠である。野外のセイヨウオオマルハナバチ等の状況に関する調査を継続し、必要な防除手法の検討を行うということでございます。
 先生方にご議論いただければと思っております。

【土田座長】 ただいまの説明について、ご意見、ご質問がありましたらお願いしたいと思います。

【五箇委員】 生殖撹乱の方は先ほどご報告しましたとおり、不明確だったものが一応明確になったということで、そこは追加報告しておきます。
 ここで書きかえるとすれば、実験室で在来種との交尾が確認され、交尾後、生殖隔離により繁殖撹乱がもたらされるということが示されており、野外での交尾も確認されているという形で、後ほどまた、その辺に関しては、文言の整理をしていきたいと思います。

【池田委員】 一番初めのところなんですが、定着という言葉にひょっとしてずっとこだわってきておりますし、また、この定着というのは、今後、いろいろな外来生物の基本的なことになりますので、環境省としても、この辺の定義というのをしっかりしていただきたいという要望でございます。
 そのことを踏まえますと、北海道で継続的に自然巣が発見され周年の活動が確認されていることから定着の事実が明らかになると。これだと定着の定義がちょっとおかしくなるんじゃないかと思いますよ。むしろ私は、これは周年の活動というよりは、数年間にわたり、というふうにした方がいいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。ですから、発見され数年間にわたり周年の活動が確認されたと、その数年間という時間的な経緯を示された方が、定着ということについての定義では妥当じゃないかと考えますけどいかがですか。

【長田専門官】 そういう形に修正した方がよろしいでしょうか。

【横山委員】 私もその方が適切だと思います。

【長田専門官】 では、そのように修正させていただきたいと思います。

【土田座長】 ほかに何かございますか。

【池田委員】 また、ポリプダニの件になりますが。そうしますと、最後のところになりますが、海外でマルハナバチ類に対する悪影響が報告されているとありますが、この根拠がちょっと私もそういう文献見ていませんが、海外では、在来のポリプダニがやはりいたわけですか。で新しいヨーロッパのタイプが入ったので、それの影響が強くなったという報告ですか。そういうことであれば、これは妥当なんだけど、もし何にもいらないところへと入っていけば、当然見込んでおると思うんですが。日本では、在来の方がいるわけですから、その影響のことを考えると、ここのわざわざ海外というのを入れる必要があるのかな、どうかなという感じがしますが、いかがですか。

【五箇委員】 重要なご指摘だと思います。実はこれ、適応度が下がるという影響評価のデータというのは、結局、室内レベルでの飼育実験での話なんですね。その意味では、室内で大量にアウトブレイクさせた状況で起こっているということで、特にカナダで報告されているんですけれども、そのカナダ産のポリプダニがどこのポリプダニかは明記はされていません。実際に、カナダのダニがカナダのハチに大量寄生させた結果なのか、それとも、そのポリプダニが、実は海外から入ってきたものなのかは、その論文からは判定することはできません。ただ、そういったアウトブレイクが起きれば、繁殖力、適応度に大きな影響を及ぼすということが示されているというところまでです、今の現時点でのデータでは。
 特に、マルハナバチポリプダニというダニそのものの遺伝的な差を調べているのは我が国だけでして、日本において我々の研究グループだけが、そういう形でDNAレベルで分析した結果、ヨーロッパやあるいはカナダも含めて、日本、ヨーロッパ、カナダのダニは系統的に全く異なるということが示されているというところです。実際に、それぞれの系統がそれぞれのハチに対してどういう影響を及ぼすかということは今後の課題になりますけれども。
 一つ、注意しなきゃいけないのが、野外におけるダニの寄生率というのは、ヨーロッパにおいても、あるいは日本においても極めて低いんですね。ということは、もともとそのダニは感染するとやはり不都合が生じるがゆえに、野外における感染率は低いものと推定されると。そういった中で、商品という形で流通しているセイヨウオオマルハナバチについては、場合によっては非常に高い感染率を維持したままコロニーが生産されて流通しているということが実際に起こっていて、国立環境研究所の調査では、野外で捕獲されたセイヨウオオマルハナバチにおけるダニの感染率が、通常、日本のハチ、野外のハチの感染率の場合は数パーセントのところが、この野外のセイヨウオオマルハナバチにおけるダニの感染率は約20%以上という高い確立で感染したまま野外で使用しているということが示されています。これは、恐らく商品レベルで感染した状況で外に逃げ出しているがために、通常より高い確率でダニに感染したまま外に出ているということが考えられます。
 そういった状況で、ダニを、要するに、大量に持ったまま外に出るということで、ダニの感染確率を野外において高めてしまう可能性はあると考えられます。実際に外国産系統のダニが、既に北海道のエゾオオマルハナバチの中からも発見され始めているということですので、今後、それがどれだけ感染拡大するかということは、モニタリングは必要であるというふうに考えています。

【池田委員】 そうすると、やはり海外でというこの文言は入れる必要があるということですか。

【五箇委員】 現時点で影響評価がなされていて、そのデータが科学論文として出されているのは海外のみですので、ここではやはりあくまでも海外での事例ということで、日本での事例ではないということは区別すべきではないかと思います。
 だから、今後のモニタリングと影響評価調査結果によっては、日本のハチの場合にはまた異なった結果が出る可能性もありますので、その意味においては、現時点での既存データとしては、海外のデータに基づいてこういう形で評価しているというふうに区別して表記すべきというふうに考えています。

【池田委員】 ただ懸念されるだけじゃまずいですか。こだわるんですが。先ほどのちょっと関連がありますので。

【五箇委員】 だから、悪影響が懸念されるという形ですね。その辺は、ちょっとそうですね。要は、実際にそういう科学的な例証がなされているかどうかということが、この法律における特定外来生物指定において、科学的根拠という部分が、実際にパブリッシュされているかどうかということも非常に重要なポイントになりますので、海外では、そういう報告があるということはやはり明記したいというふうに考えています。

【土田座長】 よろしいですか。では、ほかにございますか。

【池田委員】 裏ページになるんですが、上の方のところに、ちょっと文言のことで意見があるんですが。3行目にあるんですが、我が国の生態系に対し重大な被害を及ぼすおそれが高いと言えるとありますが、わざわざその重大だという文言を入れる必要があるでしょうか。この重大というのは、どういうことを示しているんですか。

【長田専門官】 重大なというのは、非常に抽象的なというか、数値化できない表現ですので、なかなか判断が難しいかもしれませんが。
 ちょっとご参考までに、参考資料の3をご覧いただけますでしょうか。実際には何をもって重大とし、何をもって重大としないのかというところは非常に難しい議論だと思うんですけれども、外来生物法の基本的な考え方を整理しております、お手元に冊子でもお配りしております特定外来生物被害防止基本方針でございますけれども、この中で特定外来生物の選定に関する考え方の中に、1ページの下の四角なんですけれども、被害の判定の考え方というのがございまして、ここで被害の判定については、特定外来生物については、以下のいずれかに該当する外来生物を選定するというふうに書いてありまして、生態系に係る基準についてこの四角の中に書いてあるんですけれども、生態系に係る被害を及ぼし、及ぼすおそれがある外来生物として、[1]在来生物の捕食、[2]競合による駆逐、[3]生態系基盤の損壊、[4]が交雑による伝的撹乱等、そういったものによって在来生物の種の存続、または我が国の生態系に関し、重大な被害を及ぼし、または及ぼすおそれがある外来生物を選定するということで整理をしておりまして、さらに、この「重大な」が何を指すのかというのは、非常に難しいご議論ではございますが、前回まで、先生方に議論していただいたところの結果をもって、この「重大な」に該当するというふうに事務局側では判断をして、重大なという表現を使っております。
 もうちょっと補足してご説明をいたしますと、2ページの方に、基本方針に沿って具体的にどういう影響が生じる生物をこの重大な被害を及ぼすというふうに考えるのかということについて、各分類群会合等、それから各分類群会合の座長等の専門家がお集まりの全体会合の中で議論をして整理したところが、この2ページの上のところに書いておりますけれども、その重大な被害を及ぼし、及ぼすおそれというのは、次の状況がもたらされるかどうかを検討するんだということにしておりまして、大きく4つに分けております。
 1つ目と2つ目は、在来生物の種もしくはその在来生物の地域的な個体群の絶滅をもたらす、またはそのおそれがあることと。3つ目は、在来生物の生息または生育環境を著しく変化させ、またそのおそれがあることと。4つ目は、在来生物相の群集構造、種間関係または在来生物の個体群の遺伝的構造を著しく変化させ、またはそのおそれがあること、というふうに整理をしております。
 実際には、これらに該当するものが分類群ごとに具体的にどういう特性をもっているのかというようなことも分類群会合の中で議論をしていただきながら、先の二次選定の検討はしていただいてきたというところでございます。
 以上です。

【池田委員】 選定基準のご説明はわかりましたが、その重大なやっぱり定義というのを、これまでのこの議論の中でされたかどうかということになると、私はちょっと重大というのは極論じゃないかというような感じがするんですが、いかがでしょうか、皆さんのご意見は。

【小野委員】 今までの資料の3の内容をチェックのところを見てきて、例えば、このセイヨウオオマルハナバチが在来の生態系にもたらすリスクが、単に在来のマルハナバチだけではなくて植物にまで及ぶということもかなり強く示唆されているわけですよね。在来の生物についても、巣穴をめぐる競合とか、あるいは餌資源をめぐる競合とか、さらには、先ほど五箇委員から話があったように、野外で実際に交雑しているとか、非常に幾多にもわたる負のインパクトがわかってきているわけで、そういったものが重なってくるということが、ここで明らかに認識できるので、僕はここの部分は比較的被害の中でも重い方だというふうな表現を残しておく記述でも妥当じゃないかなというふうに思います。

【池田委員】 今までのデータの中では、どっちかというと負のデータが多いんですが、むしろ、今度は逆のことを考えていく場合で、セイヨウがものすごく増えちゃったときに、セイヨウに全部取ってかわっちゃったというときになると、日本の植物だってもっと豊かになるんじゃないかなという気もしないではないですね。全体像を考えると。非常に訪花能力が強い、それから、いろんな植物に訪花する。在来のマルハナバチよりよほど訪花能力がすぐれているということがわかったわけですね。そうなってくると、むしろプラスになるんじゃないかという考えもなきにしもあらずですね。それは、全然、今回の場合は検討されてないですが。そうなってくると、植物相そのものを、今度、論点にして考えれば、むしろプラスになるから、重大な被害というのはちょっと逆になってくるんじゃないかなと思うんですよね。
 ですから、マルハナバチ相に対する影響があるとかというんであったら、まだわかるんですが、全体的にこの植物群落のこともここに書いてあるんですが、これだけで、今までのデータで植物群落への影響が増大すると言い切るんでしょうか。

【環境省 名執課長】 今の池田委員のご指摘というのは、この外来生物の問題の根本の話だと思うんですけれども。我々、この外来生物法をつくった理由というんでしょうか、それは、日本の本来あるべき生態系に対して外来生物が与える影響を防止しようということでつくられた法律でございます。
 したがって、今池田委員が言われるとおりセイヨウが多くなると、植物相が豊かになるということはそういうことなのかもしれないんですけれども、その豊かになった植物相というのが日本の本来あるべき生態系かどうかということ、本来守るべき生態系かどうかということがポイントになるかというふうに思っております。

【五箇委員】 今、野生生物課長の方からも説明あったように、要は、固有性ですよね。生物多様性というのは単に生き物の種類が多いとか、草花がたくさん生えるという問題じゃなく、本来の生物種の構成及びそれらの間でも種間関係というものの、すべてのシステムでの固有性というものが守られるべきものであるというふうな観点に立って考えるとなると、実際には、たしかにセイヨウオオマルハナバチがいてくれた方がいろんな意味で植物の繁殖も助けるかもしれないし、あるいはいろんな意味で、生産性も上がるという部分もあるかもしれないけど、その分固有性が失われる可能性があるんだとすれば、やはりそこはこの法律に照らし合わせると、外来種として扱うべきものとして、その管理が求められるというふうな理解が必要なんじゃないかというふうに考えます。

【池田委員】 この文字というのは、非常に大事になるんじゃないかと思うんですが、ちょっと私がひっかかるのは、2行目の終わりなんですが、結論になってきますが、我が国の生態系に対し重大な被害を及ぼす、それが高い。この生態系というのはどこまでかという話になるんですが、これですと、マルハナバチがすべての生態系を破壊してしまうというふうな解釈に読み取れるんじゃないかという気がするんですよ。ですから、さっき言った植物群落ということを抜きにして、マルハナバチ相だけというふうにはいかないんですか。

【長田専門官】 ここであえて「生態系に対し重大な」と書いたのは、外来生物法との関係で、これまで議論していたことをどう整理するのかということを明確にしたかったという趣旨でございまして、外来生物法の中では、その生態系に対する被害と農林水産業に対する被害と人の生命・身体に対する被害、そのいずれかにおいて、重大な被害をもたらすおそれがあるものを選定の候補とするということにしておりましたので、ここでは、その3つの被害のタイプのうち生態系への被害が議論されているんだということを、もちろん先生方は当然認識をされてやっているわけですが、これがその小グループ会合の結論として、今後、外に出ていくということを考えたときに、明確にしておいた方がいいのではないかというふうに考えてこういう表現を使わせていただきました。

【土田座長】 よろしいでしょうか。では、先に進めさせていただきます。
 それでは、以上で質疑応答を打ち切らせていただきます。
 それでは、まだありますか、どうぞ。

【マルハナバチ普及会】 こちらでご質問させていただくのが適切かどうかわからないんですが、1点だけ確認させてください。
 最終的な結論のところなんですが、特定外来生物に指定することとなっています。特定外来生物に指定した場合には、原則として飼養、輸入等は禁止ということになるんですが、その次の行で、飼養する場合にはという文言がございます。ということは、一次のアライグマであるとか、ブラックバスに適用されているような、適切な飼養を行うことができると認められる目的、施設、方法等の要件を満たしているものに限り、主務大臣による許可をもって、国内での飼養等を認めることとするというものが、セイヨウオオマルハナバチに対しても適用されるということの理解でよろしいんでしょうか。

【長田専門官】 外来生物法の中では、許可の対象となり得る飼養等の目的というのが定められておりまして、その中の一つに生業の維持というものがございます。例えば、農家が生業の維持ということになると思いますけれども、そういった目的で逃げ出さないような施設で、逃げ出さないような方法で、適切に管理をするという場合には、許可を前提として飼養ができるというのが、外来生物法の基本的な枠組みになります。

【土田座長】 ほかによろしいですか。
 よろしければ、本資料3を小グループ会合としての結論とし、セイヨウオオマルハナバチを特定外来生物に指定すべきとの結論とすることでよろしいでしょうか。

 (異議なし)

 ありがとうございました。
 続いて、専門家会合として、もう1点、議論しておかなければならないことがあります。資料4、セイヨウオオマルハナバチに係る未判定外来生物・種類名証明書添付生物対象リスト(案)について、事務局からご説明ください。

【長田専門官】 それでは、資料4、横長の1枚紙ですけれども、これについてご説明をさせていただきたいと思います。
 これまで未判定外来生物・種類名証明書添付生物についてはご議論をいただいてきていませんでしたが、外来生物法に基づき特定外来生物が指定をされる際には、あわせて未判定外来生物と種類名証明書添付生物というのを検討するということになっております。
 未判定外来生物といいますのは、特定外来生物に似た生物学的特性を持っている可能性があるもので、特定外来生物と同じような被害をもたらす可能性があるものについて、その輸入に対して一定の制限をかけて、予防的観点から必要な規制を行うということを目的としているものでして、規制がかかるのは基本的には輸入ですので、我が国にコンスタントに輸入をされていたり、既に定着をしていたりするものではなく、特定外来生物に分類学的に近いものを原則的に未判定外来生物とするということになっております。
 未判定外来生物に指定をされますと、輸入について一定の制限がかかりまして、輸入をしたい方がいれば輸入をしたいという届出を出すということになります。輸入をしたいという届出が出ました場合には、それについて議論を、専門的な観点から再度検討をしていただいて、それについて、最終的には結論を出していくということです。
 それで、資料についてミスタイプがございましたので、ちょっとご修正をいただきたいんですけれども、横長の上の欄の中で、未判定外来生物(種数)というところの下のマスですけれども、特定外来生物、未判定外来生物を除くと書いてありますが、これ未判定外来生物について書くところですので、「未判定外来生物を除く」というのは間違いですので、未判定外来生物のところを消去していただければと思います。申しわけありません。
 説明に戻りますけれども、未判定外来生物については輸入ができないというもので、輸入がしたい方がいた場合には、専門的な観点から検討をして、6カ月以内にそれが被害をもたらすおそれがあるので特定外来生物にするのか、被害をもたらすおそれがないので輸入に関する規制のかからない種にするのかというのを判断していくという生物になります。
 種類名証明書添付生物といいますのは、特定外来生物や未判定外来生物それらを含めて、それらと見た目が似ているものを指定をしまして、税関等で輸入の確認をする際に、その生物が何であるかというのがわかるように、輸出国側の政府機関等が発行する種名を証明する書類を添付をした上で輸入をするというようなものになります。
 これらについて、この中でご議論をいただきたいと思っておりますが、もう少しちょっと説明をさせていただきたいんですけれども、参考資料の3、先ほどご覧いただいたものの5ページをご覧いただければと思いますが、未判定外来生物の考え方が出ております。参考資料の3、5ページです。
 選定の前提として、先ほどご説明しましたが、原則として我が国に導入された記録のない生物、または過去に導入されたが野外で定着しておらず、現在は輸入されていない外来生物を未判定外来生物の選定の対象とすると。
 それから、個体としての識別が容易な大きさや形態を有し、特別な機器、例えば電子顕微鏡とかそういったものを使用しなくても、種の同定が可能な生物の類群を未判定外来生物の選定の対象とし、菌類、細菌類、ウイルス等の微生物は対象としない。
 それから、これは特定外来生物も一緒ですが、別の他法令の措置によって、外来生物法と同等程度の輸入、飼養その他の規制がなされていると認められるものについては対象としないということでございます。
 未判定外来生物というのは、次の四角ですが、特定外来生物のように被害事例の報告や被害を及ぼすおそれの指摘はなされていないもののそのある特定外来生物と似た生態系特性を有していて、その特定外来生物と同じような被害を及ぼすおそれがあるものである疑いのある外来生物、それを当該特定外来生物が属する属の範囲、原則としてですから、科の範囲等でとっているものもほかの分類群ではございますが、属の範囲内で種を単位として必要に応じて属、科等一定の生物の分類群を単位として選定をするということです。
 その具体的な考え方としては、当該種の生態学的知見の多寡、利用の実態、海外における被害の情報、特定外来生物と同様の被害を及ぼす可能性を検討するとこういうことでございます。生態的な類似性については、生息・生育環境、食性、繁殖生態、分散能力の観点から、生態的な同位性や同じニッチを占めるかどうか等について検討をするということでございます。
 それから、6ページをご覧いただければと思うんですが、こちらは種類名証明書添付生物ですけれども、これは生態的な特性が似ているということではなくて、見た目が似ているということでございますが、特定外来生物または未判定外来生物に該当しないことを外見から容易に判別することができる生物は、種類名証明書の添付を要しないと。そのような生物としては、外来生物であるか在来生物であるかを問わず、原則として特定外来生物が属する属以外の生物を選定し、必要に応じてその属の中からも選定しますと。だから、裏返しの書き方になっていますが、証明書の添付を要しない生物はこういうものですという表現になっております。
 後、選定に当たって、税関で関税定率法というのがあって、関税率表というのを関税の関係で整理しているんですが、そういうものの区分がちょうどぴったり合う場合には使いましょうということですが、昆虫であればもう昆虫とひとくくりにされていると思いますので、なかなかそこは昆虫の場合は適用はしにくいと思います。
 この特定外来生物、未判定外来生物、証明書添付不要生物の選定は、同時に、かつ、相互調整しつつ行うこととするというふうになっておりますので、ここで案についてご議論いただきたいと思います。
 資料の4に戻っていただきまして、こちら事務局として準備しました未判定外来生物・種類名証明書添付生物の対象リストの案でございますが、基本的に未判定外来生物としては、当然外来生物ですから在来種は含まれませんので、特定外来生物を除くマルハナバチ属全種を対象とするということで考えております。
 種類名証明書添付生物については、それに加えて在来の種も含めて、在来種を輸入するということがどれぐらいあるかということもございますが、基本的に税関で識別が困難ということで、種類名証明書添付の必要な生物についてはマルハナバチ属全種ということにしておりまして、数が在来種が15種ということで未判定外来生物が226になっていまして、それに15を足しても239にはならないんですが、海外に同種に属するものの別の亜種がいる場合は、在来を除くときに亜種の単位で除くというのが適当だというふうに事務局側では判断をしておりまして、そのことを考えると単純な足し算にはならないということでございます。このリストについては在来種のリストで、結局、ここに挙がっているようなものを除くマルハナバチ属全種が未判定外来生物の対象となり得るのではないかということでご提案をさせていただきました。
 この目録自体は、その日本産昆虫目録データベースを参考にして、事務局の方で作成をさせていただきました。
 以上です。

【土田座長】 ただいまの説明についてご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。

【五箇委員】 セイヨウオオマルハナバチが指定されるということになれば、それに類似するものは未判定外来生物として指定するというのは当然のこと、というふうに考えますが、問題となるのは除くという部分ですね、その部分に関して一応日本産昆虫目録データベースをもとにしているということですが、これはちょっといろいろ多分この辺は考えなくてはならないのは、例えば、チシママルハナバチとかクナシリ、シュレンクマルハナバチ、ウルップシュレンクマルハナバチ、名前のとおりこれ北方四島のハチですよね。これに関しては、もちろん北方四島は日本固有の領土ということになりますが、そこに関するマルハナバチの種組成に関するデータというのは今はない、ないというか調べようがないというところもありますし、極端な話、万一そこ調べて、北方四島にセイヨウオオマルハナバチがいた場合はどうするとか、そういうことも考えなくてはならないわけです。そういうことも含めて、相当ここに関しては、もうちょっと生物学的な議論は慎重にしておく必要があるのではないかと。この場でどうこうというよりも今後の課題として。
 あと、マルハナバチ自体は非常に分布域が広いものもありますので、今後やっぱり分類体系もどんどん変わっていくと思います。亜種という部分に関しては、より細かくなってくる可能性もあるし、あるいは少なくなる可能性もあるし、同様のことは、例えば昆虫会合でも議論をされている、クワガタなんかでも同じような問題をはらんでいて、例えば、ヒラタクワガタやオオクワガタという同種なんだけれども、明らかに遺伝的に全く異なるというのが遺伝解析でわかってきて、その間で雑種ができるということで、あれに関しても、同じヒラタクワガタでも海外産のものは要注意外来生物という形で、注意を要する必要があるということは議論しているということを考えても、この場合も、やはり特に昆虫マルハナバチというものの種分化なり、あるいは地理的分布というものに関してはまだわからない点も非常に多いということを考えますと、この部分での特に除くという部分ですね、どの部分を除いていくかとか、そういう部分に関しては少し、今後、十分に慎重に議論していく必要があるだろうというふうに考えます。

【小野委員】 私も今の五箇委員の話に全く内容的には同感で、これからマルハナバチの研究が進んでいけば分類体系は変わってくるのではないかなと思います。
 ただ一方で、ものすごい長期的に考えていくと、種というのは一定ではないし絶えず変化していくものでありますし、こういった問題を考えるときに、現時点でどう判断するかという部分も大切なのではないかなというふうに考えます。将来、いろいろなことがわかってきたときに、また対応しなければいけないという備えはしておかなければいけないと思いますけども、今の段階で判断しなければいけないということに含まれることではないかなというふうに感じます。

【五箇委員】 ご指摘どおり法律の話ですから、現時点でこの法律は種分類に基づいて判定していくということになりますので、ご指摘のとおり今の段階での情報をもとに、ということで検討を進めていけばよろしいかと思いますが。今、小野先生の方からもご指摘があったとおり、生物学そのものは時代とともに変遷していきますし、当然種の分類体系、あるいはそういった亜種なり系統なりの体系もどんどん、また、新しい発見もあるだろうということもありますので、その都度、そういうことがあれば、また、環境省の方でも行政的にはそういった新知見に基づき、また、改定するなりそういった形でリバーシブルなものにしておいていただきたいということを、ひとつ要望として挙げておきたいと思います。

【マルハナバチ普及会】 確認の意味でというか、具体的な書面を挙げてご教授いただきたいんですが、既に何回か審議の場でも登場しましたクロマルハナバチ、在来種のクロマルハナバチが実用化されて、オランダ、ベルギー等の工場で生産されたものが輸入されてきております。この場合には、未判定外来生物には含まれないけれども、種類名証明書を添付する必要があるということでよろしいんでしょうか。

【長田専門官】 はい。

【土田座長】 よろしいですか。ほかにご意見がないようであれば未判定外来生物……。

【五箇委員】 ちょっといいですか、ちょっとだけ、1つだけ。種類証明書添付というのは従来の考え方からすると、外国産の生き物を持ち込むときに、外国の行政機関なりが発行したものをつけるということなんですけど、この場合ですね、今言ったクロマルハナバチのようなケースですと、もともと在来種ということで、この場合もオランダ政府が種類名証明書を出すということですか。

【長田専門官】 原則は外国の政府機関ですが、ほかに国内の証明書発行機関、それから、外国政府が指定をした、例えば州政府とか、それから国立の博物館ですとか、そういったものも証明書発行機関として定めることができるということになっております。まず、原則としては、外国の政府機関ということにはなっております。

【土田座長】 よろしいですか。ほかに意見がないようであれば、未判定外来生物・種類名証明書添付生物については、資料4のとおりにしたいと思います。
 続いて、「資料5、今後の検討の進め方について」を事務局からご説明をお願いします。

【長田専門官】 資料5についてご説明をいたしたいと思います。これは、今後の検討の進め方についてですけど、非常に簡単な資料でございますがご説明をいたします。
 これまでセイヨウオオマルハナバチについては、専門家会合において「年内程度を目途に指定についての検討作業を進める」とされておりまして、研究者グループによって、被害知見の集積等に係る調査が進められてきた。
 今般、この結果を踏まえて、セイヨウオオマルハナバチ小グループ会合として、先ほどの資料3「セイヨウオオマルハナバチの取扱いについて(案)」をとりまとめ、セイヨウオオマルハナバチを特定外来生物に指定すべきとの結論を得た。
 この結論につきましては、特定外来生物分類群専門家グループ開合(昆虫類等陸生節足動物)及び第6回特定外来生物等専門家会合(全体会合)に報告し、専門家会合としての最終判断を行うということで考えております。
 検討のスケジュールでございますが、本日の第7回セイヨウオオマルハナバチ小グループ会合における小グループ会合の結論のとりまとめを受けまして、明日の第6回の特定外来生物等分類群専門家グループ会合の昆虫類の会合が予定されております。こちらにご報告をいただきまして、最終的には12月の19日になると思いますが、第6回の特定外来生物等専門家会合、全体会合と言われている会合の中で、セイヨウオオマルハナバチについての外来生物法上の取扱いについての結論をとりまとめていただきたいというふうに考えております。
 以上でございます。

【土田座長】 質問ございますか。

【五箇委員】 さっきの審議の段階で、生殖撹乱の部分に関して追加情報を出したということで、これは本当に今回の会合の直前に出たということで、本会合ではこの資料のままということにしますが、できれば明日の昆虫会合におきましては、今、追加で出しました情報を新たに資料として加えていただき報告していただきたいというふうに、環境省の方にお願いします。

【長田専門官】 そうしましたら、その結論のペーパーのセイヨウオオマルハナバチの取扱いについて(案)、資料3だけでも、できましたら今、先生方と表現について最終確認をさせていただいて、その具体的な情報等については参考資料の方に反映させることにして、結論ペーパーについてはこの場で結論を得ていただければと思うんですけれども。
 まず、先ほどまでのご議論で1点ご指摘がありましたのが、表の1つ目の丸のすぐ下、定着の可能性についてはというところですが、「定着の可能性については、北海道で継続的に自然巣が発見され周年の」の「発見され」と「周年の」の間に「数年間にわたり」という文言を加えるということで、こちらはこれでよろしいでしょうか。
 それから生殖撹乱についてですが、この資料自体は、小グループ会合としての結論ペーパーですので簡潔であるのが望ましいと思っておりますが、野外での交尾の実態が明らかになったというのは非常に重要なことだと思いますので、例えば生殖撹乱のところの表現ですが、非常に簡単に表現をしますと「生殖撹乱については在来種と共通の誘引・忌避物質を含み、実験室及び野外で在来種との交尾の実態が明らかとなった」。より詳しい方がよろしいでしょうか。

【五箇委員】 交尾した結果、いわゆる生殖阻害がもたらされるということがどこかに明記されたいというところですね。単に交尾するだけじゃなく、それによって女王バチが繁殖能力を失うということが生殖撹乱というところにつながっているので、何らかの形で交尾が成立し、さらに繁殖撹乱がもたらされるという形で、文言をちょっとコンパクトにまとめていただければというふうに考えます。

【長田専門官】 そうしますと、「実験室及び野外で在来種との交尾が確認され、繁殖阻害」でよろしいんでしょうか。

【五箇委員】 そうですね。「生殖撹乱については」とは最初にあるんで繁殖阻害ですよね、この部分では。

【長田専門官】 繁殖阻害が生じている。

【五箇委員】 そこで、野外では交尾の実態はつかんでいます。繁殖阻害の部分に関しては、室内実験でしか確認のしようがない、今のところ確認されているのは室内実験レベルで繁殖阻害というものは確認されているので、そこは科学的にするんであれば、実験室で在来種と交尾して繁殖阻害をもたらすことが確認されており、野外でも種間交尾が確認されているという形にまとめていただきたいと。

【長田専門官】 では、今の表現でよろしいですか。

【土田座長】 よろしいですか。その2点をそれでは。

【環境省 中島室長】 では、今のをもう一度確認します。
 「生殖撹乱については、在来種と共通の誘引・忌避物質を含み」までは変わりません。その後ですが、「実験室では在来種との交尾と繁殖阻害が確認されており、さらに野外における在来種との交尾も確認されている。」

【土田座長】 ほかの委員の方よろしいですか。

【五箇委員】 結構です。

【土田座長】 では、その2点について修正をお願いいたします。
 そのほか何かございますか。よろしいですか。

 (なし)

 どうもありがとうございました。
 予定した議題についてすべてご議論いただきました。そろそろまとめたいと思います。
 本日小グループ会合として、セイヨウオオマルハナバチを特定外来生物に指定すべきという結論に達しました。本日の結論については、明日開催予定の昆虫会合に、私と昆虫会合委員でもある五箇委員が出席し、報告したいと思います。
 後、議題では、2、その他とありますが、この際何かご発言される方はございますか。

【小野委員】 私自身7回の会合にずっと出席させていただきまして、それで、結構この室内でとられた実験データ、これが実際、野外でどうかという点が今回問題になっていて、営巣場所をめぐっての競合であるとか、あるいは室内では種間で交尾が起きているけど野外ではどうか・・・・とか、それは実験室内ではデータとして確認されたけど、野外データがなければ信憑性が?という部分を随分、一方では気にしてきた部分があるんですけど、それらのことがすべて野外でも証明できたというところが、すごく今回の会議の中で印象が強くて、そして、こういう予防という措置を考えたときに、野外データを取る前に実験室内でのデータをとるわけですけれども、そのデータの範囲内でもある程度のことが言える、今回の場合に限るといってしまえばそうなんですけれども、そういったことをある意味では示した、具体的に示した例じゃないのかな、というふうに思っています。
 今後、このような形での議論というのが出てくると思うんですけども、野外における実際のデータをとるということが、最終的には必要かもしれないけど、十分に室内実験であっても、その内容が吟味されたものであれば、そのデータをもってして、野外を予測可能であるというようなことが今回の会合の中でも言えたんではないかなというふうにひとつ思います。
 もう1つ、これは今回の会合の主点ではないかもしれませんが、ただ会合の最初の方の資料の中では、代替種というようなことが挙げられていたことがあると思うんですね。今回、セイヨウオオマルハナバチ、これは非常に議論を醸したのは、トマトの受粉に利用されていると、そういう特殊性があって、そういう部分を考慮した部分が多かったんじゃないかと思うんですけれども、多分ハウスをネットで展張して、覆って、逃げないようにして扱っていくということが、これからこのセイヨウオオマルハナバチについては考えなければいけないことだと思うんです。結局、マルハナバチの種が問題なのではなくて、振動受粉するという行動形質ですね、それがトマトの農家の方にとっては大切なことで、それを考えると、マルハナバチの、特にオオマルハナバチ亜属に共通するものであって、そこのところなんですけれども、先ほど光畑さんの方からもお話がちょくちょく出てますけど、日本の在来のハチ、マルハナバチというものが、今一方では利用できるような形になっている。同じマルハナバチであっても、今回こういう形で、法律で規制されるとなると、扱いは随分変わってくると思うんですけれども、実際に、中に入れる昆虫、農業資材として、生物資材として使う種、今セイヨウオオマルハナバチとクロマルハナバチがあるわけですけれども、この使える種の中で、できるだけリスクの低い種を選定していく、それぞれが持っているリスクとベネフィットというのを引き出していって、よりリスクの少ないものを選んでいくという、そういう作業も必要になってくるのではないかなというふうに今考えています。
 ネットで覆うというようなことが条件で、クロマルハナバチを利用することが多分可能になってくるんだと思いますけれども、セイヨウオオマルハナバチと比べて、どちらがリスクが低いのかどうかという点について、僕自身も考えてはみたんですけれども、会合の中でいろいろお話をさせていただいたわけですが、フェロモン成分については、特にクロマルハナバチは日本にも在来しているということもあって、エゾオオマルハナバチとかとは随分違うものを持っている。それに対して、セイヨウオオマルハナバチは共通成分があって、実際に五箇先生が先ほどお示しになられたような147個体のうちの3個体が実際に交雑している例があったということなんで、そういうことが起きてしまっている。雄の制御というのはすごく難しいと思うんですけれども、逃げていくのを抑えるということは。
 そういう流れの中で、代替種としてのクロマルハナバチの利用という部分について、あるいはほかの種類の利用というものについて、農業資材としての利用上のガイドラインというものを踏まえた上で、こういうオプションもあるということをちょっと考えていくという機会が得られればいいのではないかなというふうに今は考えているのですけど、いかがでしょう。

【土田座長】 今のご意見につきまして、何かご意見ありますでしょうか。代替種、特に具体的に言えば、クロマルのオプションに関する機会についてですけれども。よろしいですか。

【池田委員】 すみません。ちょっと要望になるんですが。
 結局、根本的には、この外来種規制法の基本理念になると思うんですが、日本の生物、突き進めていくと、DNAをどういうふうにして、地域あるいは日本国全体に保護していくかということになると思うんですね。その辺の観点から、今後の対策というのも必要になってくると思うんですね、根本的には時間がかかる。本日はこれで終わりますが、その辺のところをやはり環境省としても十分に示されて、今後いい対策の方法をとっていただければというふうに要望しておきます。

【土田座長】 よろしいでしょうか。
 今の議論は重要であるとは考えますが、外来種法の枠の外の議論であると考えますので、委員からのご意見については、議事録としてテイクノートいたしますが、議論はここでとどめたいと思います。
 それでは、最後に事務局から何かあればお願いします。

【名執課長】 野生生物課長の名執でございますけれども、このセイヨウオオマルハナバチ小グループにつきましては、昨年の11月以来1年以上にわたって計7回、この在来生物法におけるセイヨウオオマルハナバチの取扱いについて非常にご熱心に精力的にご議論いただきまして、本日結論のとりまとめをいただきまして、ありがとうございました。
 環境省といたしましては、これまでもそうでしたけれども、農林水産省と協力いたしまして、普及啓発、特に逸出防止措置としてのネットの展張でございますとか、あるいは使用済みの巣箱の適正な処理、そういった部分について普及啓発を進めていきたいというふうに考えております。
 それから、先ほどご説明したとおりマルハナバチの最終的な取扱いについては、19日に予定されております専門家の全体会合で方向が出ることになりますけれども、特定外来生物に指定という方向が出た場合は、これを使用の許可を受ける場合の基準づくりですとか、それから、許可をしていくシステムづくりというものが必要になってくるとかと思いますけれども、これについても農林水産省といろいろ相談をさせていただいて、実際使用する方々の負担ができるだけ少なくなるような方向でいろいろ工夫していきたいというふうに考えております。
 本日でこの小グループとしての会合というのは最後になるかと思いますけれども、今後とも野外のセイヨウオオマルハナバチ等の状況に関する調査を継続いたしまして、また必要な防除の手法の検討等も行っていく必要がございますけれども、その際に、ここにおられる先生方のご協力を引き続き得ていかなければいけないというふうに考えておりますのでよろしくお願いいたします。
 本日は、どうもありがとうございました。

【土田座長】 それでは、以上をもちましてセイヨウオオマルハナバチ小グループの会合を閉会します。どうもありがとうございました。