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特定外来生物等の選定について
特定外来生物等分類群専門家グループ会合(昆虫類等陸生節足動物) 第7回セイヨウオオマルハナバチ小グループ会合 議事概要
1
日時
平成17年12月7日(水)10時30分~12時
2
場所
三田共用会議所D・E会議室
3 出席者
(委員)土田 浩治(座長)、池田 二三高、小野 正人、五箇 公一、横山 潤
(利用関係者)マルハナバチ普及会 光畑 雅宏、米田 昌浩
(環境省)野生生物課長、自然ふれあい推進室長、移入生物専門官
(農林水産省)生産局野菜課長
4 議事概要
〔セイヨウオオマルハナバチに関する情報およびこれまでの論点整理〕
(事務局から資料1および2を説明)
資料1で生態系への被害を挙げているが、農薬の使用等によって、在来のマルハナバチが衰退しているという部分については、これまで、あまり議論されてこなかったのではないか。
(事務局)この部分については前回までの資料と同じである。たしかに、議論されていなかったので、もしご指摘があればこの場で議論していただいて、適切な表現にしていただければと思う。
マルハナバチが衰退するといった個体群動態のデータはないので、この部分は類推に基づくものと言うべき。生息場所の分断化等、環境自体の悪化は起きていることであろうが、「農薬の使用」の部分は影響評価が行われた訳ではなく推測に過ぎないので削除すべきである。
(事務局)削除する。
資料1の「被害の実態・被害のおそれ」のうち、生殖撹乱についての調査に前回会議後大きな進展があった。これまでに野外で採集された257個体の種オオマルハナバチの受精嚢の解析を終了した。その結果、北海道産エゾオオマルハナバチ147個体のうち3個体、本州産オオマルハナバチ110個体のうち1個体からセイヨウオオマルハナバチの精子が確認された。このことから、野外においてセイヨウオオマルハナバチの雄が在来種のエゾオオマルハナバチおよびオオマルハナバチ女王と種間交尾をしていることが明らかとなった。その他にも、セイヨウオオマルハナバチの精子DNAを含む個体がさらに多く存在する可能性が示唆されており、種間交尾をしていた個体が増える可能性がある。以上のことから、セイヨウオオマルハナバチ雄による生殖攪乱が野外でも確認されたということを追記していただきたい。
前回(第6回)会合のときに、在来種と交尾をしていた証拠として、別の在来種の精子がみつかったという報告があったが、それとは別のことか。
今回の報告はそれとは別のデータである。
ポリプダニの件、外国産と日本産とは同一種ということで良いか。
形態的には同一種と判断されるが、遺伝的には異なる系統であることが分かった。日本産と外国産の宿主と寄生者の転換が起きた際にどのような影響が出るかという点についての検証は行われていないが、相互作用が変わってくることは考えられる。
遺伝子が異なるということであれば、内部寄生性の「ヨーロッパ系統の」マルハナバチポリプダニとするべきではないか。
(事務局)そのように修正する。
〔セイヨウオオマルハナバチの取扱いについて〕
(事務局から資料3について説明)
野外での交尾の実態は不明確であるという表記を「野外での交尾も確認された」としていただきたい。
定着という言葉の定義が不明確である。「周年の活動」よりも「数年間にわたり周年の活動」という時間的な経緯を考慮した表現の方が、定着という意味では妥当だと思われる。
(事務局)提案のとおり修正する。
ポリプダニは海外においてマルハナバチ類に対する悪影響が報告されているということであるが、「海外での事例」と記述する必要があるのか。
マルハナバチポリプダニについては、カナダにおいてマルハナバチの適応度に影響を及ぼすということがわかっているだけで、そのダニがカナダ在来のものか、外来のものかは不明である。強調しておきたいのは、野外でのダニの感染率にくらべ、商品コロニーは感染率が高いといった状況があることである。そのようなコロニーが野外に出ることで、野外のコロニーの感染率が高くなる可能性がある。ダニの影響についての既存データは海外の知見しかなく、国内のリスクは不明である。あくまで海外の事例なので、国内のもとは区別して記述しておく必要がある。
生態系への重大な影響とは何か、何を持って重大と考えるのか。
(事務局)特定外来生物被害防止基本方針にある被害の判定の考え方が基本となっている。外来生物法の中では生態系、人の生命・身体、農林水産業のいずれかに重大な被害をあたえるものを特定外来生物として選定することにしており、セイヨウオオマルハナバチについてはそのうち、「生態系に係る重大な被害」に該当するということをここで明示したということ。重大な被害を及ぼすかということは、具体的には参考資料3の2ページ目のⅰ~ⅳの状況がもたらされるかということ。
被害が重大かどうかということについてあまり議論されていないと思う。「生態系への被害」という表現は、マルハナバチが生態系全てに影響を与えてしまうという印象を受ける。「マルハナバチ相への被害」とはできないのか。
これまでの議論をまとめた資料3にもあるように、在来のマルハナバチだけでなく、在来の植物にまで影響が示唆されていること、野外交雑も分かり、様々なインパクトが重なってくることが想定できるので、重大なという表現を残しておくべきであろう。
セイヨウオオマルハナバチについて負のデータばかりが多いが、プラスの部分を考えると、例えばセイヨウオオマルハナバチばかりになれば、訪花能力の高さから在来のマルハナバチより、多くの植物量を保つ可能性もあるのではないか。
(事務局)外来生物に対する根本的な問題であるが、外来生物により一見豊かになったように見える生態系が、守るべき日本の本来の生態系かどうかということがポイントである。
生物多様性の貴重さはその歴史の固有性であり、種間関係を含めた固有性が失われる可能性があるのであれば、管理するべきものと考える。
飼養が認められるということなので、許可を受けた上では飼養が許可されると考えてよいということか。
生業の維持という目的で、農家がハウスから逃げ出さない施設において逃げ出さない方法で飼養することは、許可を受けた上で可能である。
〔未判定外来生物および種類名証明書添付生物について〕
(事務局から資料4について説明)
未判定から除くものとして、北方四島の種類が入っている。それらが日本固有の領土だとしても、実際のところ、ほとんど調査はなされていない。種組成が分かっていない中で、今後の課題として議論していく必要がある。分類体系も今後変わっていく可能性がある。生物学的な知見に基づく原則を重視し、体系の変更や新たな知見が得られれば、適切な修正をおこなうようにしていただきたい。
現時点の判断として示しておいて、将来の分類体系などが変わった際には対応できるようにしておく必要があろう。
クロマルハナバチについては、輸入に際し種類名証明書を添付するということで良いか。
(事務局)ご指摘のとおり
クロマルハナバチの場合でも、外国の政府機関が種類名証明書を発行するのか。
(事務局):原則としては外国の政府機関であるが、国内の証明書発行機関や、主務大臣の指定する外国の州政府又は公的機関等でもよい。
〔今後の検討の進め方について〕
(事務局から資料5について説明)
生殖攪乱についての追加情報は、明日の昆虫類専門家グループ会合の資料に反映させていただきたい。
〔その他〕
今回の検討では、室内実験のデータが野外でも証明されたという印象が強い。実験室内のデータでも、十分に吟味されたものであれば、野外の実態がある程度予測できると思う。
ハウスにおいて、逃げないように利用することになると思うが、代替品の可能性として、オオマルハナバチ亜属の中でより生態系へのリスクの低い種を選定することがこれから必要なのではないか。ひとつにはネットを張った上で、在来種クロマルハナバチを利用するということがあるだろう。クロマルハナバチであれば、エゾオオマルハナバチとはフェロモンが随分異なることから、交雑のリスクも低いと考えられる。農業用資材としての(在来種の)利用のガイドラインを踏まえた上で利用を考えていくというのはいかがか。
この議論は重要だが、外来生物法の枠の外の問題であるため、議論はここまでに止めたい。
日本の生物の遺伝子をどう守るかということも課題になっていくだろう、これからの積極的な対策を希望したい。
(事務局)これまで、7回にわたり熱心な御議論を頂き感謝する。これまで、農林水産省と連携してネット展張や使用済み巣箱の処理等、普及啓発に当たってきた。専門家会合の結論が最終的に決定となれば、引き続き農林水産省と協力し、飼養等許可基準作りや飼養等許可のシステム作りを考えていきたい。飼養する人の負担が大きくならないように工夫していきたい。委員の方々には、防除の検討等、今後も引き続きご協力をお願いしたい。
(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり)