環境省自然環境・自然公園特定外来生物等の選定について

第6回 特定外来生物等分類群専門家グループ会合(昆虫類等陸生節足動物)
セイヨウオオマルハナバチ小グループ会合 議事録


1. 日時 平成17年11月18日(金)15:00~17:00
2. 場所 経済産業省別館8階 821会議室
3. 出席者  
   (座長) 土田 浩治
   (委員) 池田 二三高
五箇 公一
小野 正人
横山  潤
   (利用関係者) マルハナバチ普及会 光畑雅宏
マルハナバチ普及会 米田昌浩
   (環境省) 南川自然環境局長
名執野生生物課長
中島自然ふれあい室長
長田移入生物専門官
   (農林水産省) 岡田野菜課課長補佐
5. 議事  
【環境省 長田専門官】 ただいまから特定外来生物等分類群専門家グループ会合の昆虫類等陸生節足動物のセイヨウオオマルハナバチ小グループ会合(第6回)を開催したいと存じます。
 まず、初めに私どもの自然環境局長の方からごあいさつを申し上げます。

【環境省 南川自然環境局長】 どうも皆様、お忙しいところありがとうございます。今日はセイヨウオオマルハナバチという、これについてぜひ突っ込んだ議論をしていただこうということで、お集まりをお願いしたところでございます。大変お忙しところご参集いただきまして、本当にありがとうございます。
 この問題、外来種の法律ができまして、一次指定、二次指定とやってまいりましたけれども、それの中で話題になって、特にこれについては詳細な調査が必要ということで、若干別扱いにした上で今日まで調査をしてきたわけでございます。特に野外における影響について十分な知見を得られていないということもございました。また、ネット等の問題についても普及啓発が必要というご指摘もございました。私たちもそういった指摘を踏まえまして、いろんな先生方のご識見を借りながら、また、農林水産省と協力し合いまして、屋外における影響についてを中心に調査をしてまいったところでございます。
 今日、その結果もご報告させていただきまして、また先生方の意見をぜひいただきたいと思っております。ぜひ突っ込んだ意見をいただきまして、何とか年内に結論を得たいと思っておりますので、できますれば議論の積み残しがないように、ぜひ活発な議論を賜ればと思っているところでございます。何とか年内に結論を得られますように、私どもも検討してまいりましたし、ぜひ今日もご議論を賜りたいと、こんなふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 途中、若干退席しますが、また戻りますので、引き続きよろしくお願いします。

【長田専門官】 それでは、引き続きましてお手元にお配りした資料の確認をさせていただきたいと思います。
 資料をお手にとっていただいて順番にご確認いただければと思いますが、まず、1枚目が議事次第、その次に委員名簿がございます。それから、その次に資料一覧がございまして、それから資料1という横長の資料がございます。その下が資料2。その先が資料3、今後の検討の進め方について、1枚ペーパーです。それから、参考資料の1としまして、5月のときにご検討いただきました検討の進め方について。それから、参考資料の2として、これまでずっと参考資料で配付させていただいておりますセイヨウオオマルハナバチに関する情報及び評価(案)。それから、参考資料の3が前回5月のときのこの小グループ会合の議事概要でございます。それから、参考資料の4は、ご参考で特定外来生物の一次指定、二次指定の際に寄せられましたパブリックコメント、これはセイヨウオオマルハナバチに関するパブリックコメントではございませんけれども、その中で提出されてきたご意見を参考までにお配りしております。それから、冊子としまして特定外来生物被害防止基本方針、これを机の上にお配りさせていただいております。
 資料に不足等ございましたら、こちらの方におっしゃっていただければと思いますけれども、よろしいでしょうか。
 それでは、議事進行につきましては座長の土田委員にお願いしたいと思います。土田先生、よろしくお願いいたします。

【土田座長】 それでは、これより本日の議事に入らせていただきます。
 本日の議題は、セイヨウオオマルハナバチの取扱いについてとなっております。本日は、前回実施することとされた調査の結果がほぼまとまっておりますので、ご報告いただき、ご議論いただきたいと思います。
 それでは、まず資料1、調査結果の概要について事務局からご説明をお願いします。

【長田専門官】 事務局から資料1、マルハナバチに関する調査の結果概要についてご説明をいたします。これに関する詳しいデータ等は資料2の方に入っておりますが、まず、こちらで資料1についてご説明をしたいと思います。
 表が3段になっておりまして、左の2段、つまりセイヨウオオマルハナバチに関する知見の状況、それから、それに対応してどういう調査をやっていくかというところにつきましては、前回の会議でご議論をいただいたところです。それに加えまして一番右の段、調査の進捗状況というのを今回加えさせていただいております。
 まず、定着の可能性でございますけれども、定着の可能性については、継続的に大量な利用がなされていることから、定着が確認されなくても同様の影響を与えるですとか、北海道で自然巣が発見されているということで、調査としては、野生化コロニー数推定のための調査、それから北海道におけるセイヨウオオマルハナバチの地理的分布実態、国立公園におけるセイヨウオオマルハナバチの監視調査等を行ってきたところでございます。進捗状況としましては、これから申し上げるような事実から、セイヨウオオマルハナバチの野外での繁殖と分布の拡大が明らかであると。また、野外で女王が営巣して働きバチが生産されていること、越年した女王が春先に確認されていることから、定着の可能性が高いと判断される。また、商品コロニーの使用によって、毎年大量の個体が野外に逸出することも定着と同様の影響をもたらすと判断されるということで、具体的には、毎年継続して早春から女王が野外で確認されておりまして、これは越冬した女王である可能性が高い。それから、旭川では野外において逸出したと考えられる大量のセイヨウオオマルハナバチが確認されておりまして、野外での影響は軽視できない。それから、道南・道東等では、ハウスから離れた場所にも、ハウスからの逸出とは考えられないセイヨウオオマルハナバチが生息しておりまして、分布拡大が明らかになってきた。多数のセイヨウオオマルハナバチの飛翔が確認されている地域では、在来のエゾオオマルハナバチをはじめとするマルハナバチの飛翔確認の比率が大幅に減少をしております。それから、国立公園の中ではまだ標本を伴う確認記録はございませんが、国立公園の付近で多数の飛翔個体が確認をされています。
 以上が定着の可能性についてですけれども、それから在来マルハナバチの影響としては、営巣場所をめぐる競争の可能性があるけれども、野外での実態は不明確だということと、餌資源をめぐる競合については不明確な部分もあるということで、在来種との競合にかかわる生態学的調査を行ってきたところでございます。その結果としまして、まず鵡川町周辺等では在来種のマルハナバチがセイヨウオオマルハナバチとの比率において極めて少ない状況になっている。それから、セイヨウオオマルハナバチの巣穴に複数のセイヨウオオマルハナバチの死体が確認されております。エゾオオマルハナバチの女王の死体は発見されておりませんが、これは巣穴に対して個体数が飽和状態になっていることを示唆しているというふうに考えられます。エゾオオマルハナバチも同様の資源をめぐる競争にさらされていると考えられております。在来種のセイヨウオオマルハナバチとの競合の実態が明らかとなってきております。
 それから、生殖攪乱についてでございますけれども、これについても実験室では交尾が確認されておりましたが、野外での交尾の実態は不明ということでした。現在、野外で採集した在来のオオマルハナバチ199個体のうち、2個体の精子の受精嚢からオオマルハナバチのものではない精子DNAが検出されたというところでございます。
 それから、寄生生物についてですが、寄生生物については確認されている生物がありますが、在来種への影響は不明ということでした。今回、調査の中で、商品コロニーのマルハナバチの中からマルハナバチポリプダニが検出されまして、DNA分析の結果、これが在来種に寄生するものとは異なる系統であるということが判明をしております。さらに、野外の在来種個体を調査した結果、外国産のダニの感染が拡大しつつあることが判明しました。近年の海外の研究例から、このダニの感染がマルハナバチの寿命を短くして、訪花行動にも変化をもたらすなどの生態影響が報告されているところでございます。
 それから、盗蜜行動について確認がされているところですけれども、この盗蜜行動が結実率に影響を与えているかどうかは不明確であるというところで、植物の繁殖に対する影響評価を行った結果としまして、マルハナバチ類の活動の初期段階の餌資源として特に重要な植物であるエゾエンゴサクがございますが、こちらが、セイヨウオオマルハナバチがエゾエンゴサクに対して、すべての確認できた個体が盗蜜行動を行っていると。訪花による結果率と種子形成数が極端に低いということもわかっておりまして、エゾエンゴサク群落の維持に対してセイヨウオオマルハナバチが影響を与えていることがわかっております。
 その他は参考でございますけれども、利用に関するものとして、野外へのハチの逸出を防ぐためのネット展張及び使用済み巣箱の回収処理については、その普及推進が図られているが、まだ普及率は高くないと。現在も引き続きマルハナバチ普及会等によって利用者に対するネット展張の適正な管理の普及等が進められているところでございます。それから、使用済み巣箱の回収による逸出防止効果等については、経年的な調査は行われていないということですが、今年度の調査の中で、ネットの展張の仕方が適切であれば逸出防止に効果があるということが、北海道以外の地域の調査でも明らかになってきているところでございます。
 それから、次の6ページにまいりまして、在来種のマルハナバチの商品化に関する調査等もやっておりますが、商品化については、ご存じのとおり、クロマルハナバチについて技術開発のめどが立っているという状況でございます。それから、DNAのデータマップの作成等の検討も進められておりますが、まだ今の段階ではこれについての結果は得られておりません。
 こういった結果を踏まえまして、次回の小グループ会合において、小グループとしての評価結果及び対応方針の取りまとめを行っていただきたいというふうに考えているところでございます。
 資料1については、以上でございます。

【土田座長】 引き続きまして、調査ごとの結果について、資料2に基づき各調査に関係した委員及び事務局から資料の下線部を中心に説明をしていただきたいと思います。
 最初は五箇委員の方からよろしいですか。

【五箇委員】 資料2の方で、まず問題点として定着の可能性についての評価を行う必要があるということで、対応としましては、まず対応1として、野生化しているコロニー数というのが実際どれぐらいあるかということを調査するために、分子遺伝DNAというマーカーを使うことで、野外に飛んでいるハチが一体どれぐらいのコロニーから派生しているかということを調べる手法の開発を行いました。
 進捗状況としましては、この1年間で、まず商品コロニーを使って数学的な開発手法の実用性を検証して、実際にあるコロニー数と、そこから得られるハチのDNA情報から得られる推定巣数とが一致するということがわかったので、この手法を用いて実際に北海道の平取町内で捕獲されたセイヨウオオマルハナバチ女王を対象としましてDNA分析を行い、この統計手法を、アルゴリズムを適用しました結果、捕獲された女王バチはすべて少数特定のコロニーから派生したものではなく、それぞれが別々のコロニーから派生しているということがわかり、そういったことから、野外に飛んでいるマルハナバチというのは極めて大量のコロニーから派生しているものと考えられると。そのうちのどれぐらいが野生巣であるかということは特定することはできませんが、少なくとも春先に飛んでいる女王バチの起源というものは多くのコロニーから派生していることから、野生巣も相当数存在するということが示唆されたという結果を得ています。

【土田座長】 では、続きまして対応2につきまして、横山先生、よろしいですか。

【横山委員】 対応2は、北海道においてセイヨウオオマルハナバチがどのような地理的分布をしているのかということの実態を把握するということで、国立環境研究所と、それから我々で現地調査を行っております。国立環境研究所の方では旭川地域を中心に調査を行っておりまして、旭川地域では、セイヨウオオマルハナバチの多数の個体が逸出していることが確認され、特に旭川市の中心に近いポイントでは20分に113匹もの個体が観測されているところもあるということから、本種での野外での影響というのは無視できる状況にないということが考えられると。
 それから、ただ、そういった多数の個体が外に出ている状況ではありますが、近隣のトマトハウスの数と、それからセイヨウオオマルハナバチの頻度との相関が強いことから、目撃されているセイヨウオオマルハナバチの大多数は使用中の商品コロニーからの逸出個体である可能性がこの地域では高いということが考えられます。
 6月の調査の際には、トマトハウスが存在する地域から30キロ離れた地域からも女王個体が観測されたことから、この個体が越冬に成功した女王である可能性が非常に高いと考えられます。
 また、8月の調査では、セイヨウオオマルハナバチのワーカーの出現頻度は女王の出現頻度より低く、商品コロニーの利用地域に分布が局在していることから、春に多数観測された女王バチは越冬女王である可能性が高いとはいえ、それらのほとんどが営巣に成功してワーカーを産出している状態とは言えないというふうな結果が得られております。
 東北大の方の調査では、道内のさまざまな地域を実踏しまして、実際に野外で今セイヨウオオマルハナバチがどのような状態で野生化しているのかということを調べております。そのうち北海道南部の鵡川町、それから東部の小清水町において越冬女王の分布調査を行いました。鵡川町は実踏で、小清水町は主に聞き取り調査なんですけども、この結果、2年前の発見当初に比べて、鵡川町では約9キロ北側に、それから小清水町では約5キロ東北側に野生化範囲が拡大している。これは越冬女王が確認される範囲がその範囲まで拡大しているということですけれども、そういった状態であるというふうに考えられます。
 また、北海道伊達市では、昨年度の調査で全くセイヨウオオマルハナバチが確認されなかったポイントで多数のセイヨウのワーカーが捕獲されました。それから、比布町でも、同様にセイヨウが確認された地点でセイヨウのワーカーが1頭捕獲されました。
 それから、旭川市、東川町、美瑛町、雨竜町では、2年続けて同一地点でセイヨウオオマルハナバチのワーカーが観察されています。
 また、北見市、それから洞爺村、大野町、七飯町で、野外よりセイヨウオオマルハナバチの女王が得られました。ただ、北見市では越冬女王の可能性が高く、洞爺村は7月ですので、これは越冬女王の可能性は低いと考えられます。大野町、七飯町は秋の報告ですので、これは当然越冬女王ではないと考えられますが、野生巣から出た可能性は否定できません。
 また、網走市、風連町、砂川市、七飯町で、野外より本調査で初めてセイヨウオオマルハナバチのワーカーが得られています。
 対応2については以上です。

【土田座長】 では、対応3について環境省から。

【長田専門官】 では、環境省から説明します。
 環境省では、国立公園におけるセイヨウオオマルハナバチの侵入状況の調査としまして、東京大学と協力しまして、地域の自然保護関係者にも協力していただいて、今年度、侵入状況の調査を実施いたしました。
 結果としまして、大雪山国立公園の中ですね、山の方では明らかな生息確認の情報は得られておりません。それから、大雪山国立公園の西側の調査を東京大学が中心になってやりまして、その結果をこの2の資料の最後のページにご参考までにおつけしているんですけれども、地図がございまして、緑色の線が大雪山国立公園の区域でございます。囲った右側の方が国立公園内ということになりますけれども、その周辺において、今年の8月27日から31日までセイヨウオオマルハナバチの分布の確認の調査をしたということでございます。国立公園の西側、一番近いところで3キロぐらい、広いところでは数キロのところで複数のセイヨウオオマルハナバチが確認されております。それから、別の調査の中では、知床半島ですね、知床国立公園の基部に当たります斜里町の美咲地区といったところでもセイヨウオオマルハナバチが捕獲をされております。
 以上でございます。

【土田座長】 どうもありがとうございました。
 では、続きまして次の問題点に行きます。営巣場所をめぐる競争について、まずその第1の対応、在来種との競合に関する生態学的調査について横山先生の方からお願いします。

【横山委員】 在来種との競合に関しては、セイヨウオオマルハナバチの捕獲数が多い地点において、自然巣の探索と、それからラインセンサス法によるセイヨウオオマルハナバチ及び在来マルハナバチ類の個体数調査を行いました。これによって、セイヨウオオマルハナバチの野生化が確認されてない地域と比較して、種間競合の強さを確認することを目的としています。
 現在の進捗状況ですけども、調査を主に行っておりますのは、鵡川町及びその近隣である厚真町なんですけども、鵡川町二宮地区、これはセイヨウオオマルハナバチの多い地域ですけども、ここでは5月から7月前半期におけるセイヨウオオマルハナバチの、ここでは占有率と呼んでいますけれども、飛翔訪花マルハナバチ総数におけるセイヨウオオマルハナバチの割合が2003年から経年的に増加していることを確認しています。在来マルハナバチの比率は逆にすべての種で昨年より減少しておりまして、特にエゾオオマルハナバチの巣の減少が顕著で、2年間で10分の1以下、観察個体数は15分の1以下に減少しております。
 一方、比較を行っております厚真町豊岡地区では、これまでの観察数の集計ではニセハイイロマルハナバチが多く、エゾオオマルハナバチは全体の12.6%、セイヨウオオマルハナバチはその約半分に過ぎない状況です。餌資源量、競争の原因となっている可能性のある一つとして、蜜とか花粉の資源となっている花の資源量が考えられるんですけども、これを春の調査で鵡川町と厚真町で比較しております。これは夏の調査も行っておりまして、春の調査では、鵡川町の花の資源量に比べて厚真町の花の資源量というのは5分の1から6分の1程度。これは夏の調査も合わせると大体3分の1ぐらいになるんですけども、その程度で、厚真町の方が花の資源量は少ないんですけども、エゾオオマルハナバチの観察数は逆に厚真町の調査の方が多く、鵡川町で調査された数より少ないということから、餌資源をめぐる競合というのは、少なくともエゾオオマルハナバチの減少ということに関しては、余り関係していないのではないかというふうに考えられます。
 このような個体数の減少というのは平取町でも観察されておりまして、後ほど植物の繁殖に対する影響についてお話をしますけれども、その調査を行っている場所で観察されたエゾオオマルハナバチにおけるセイヨウオオマルハナバチの割合というのは、2003年には23.2%でしたが、現在では71.8%に達しています。一方、エゾオオマルハナバチは、2003年は35.7%だったのが、今は3%程度に過ぎないという状況になっています。コマルハナバチの減少も観察されています。
 今年、鵡川町でセイヨウオオマルハナバチの自然巣を14発見していますけども、このうち、この段階では6巣でしたけども、現在7巣の分解が済んでおりますが、分解調査を行いましたところ、この巣をつくった女王のほかに2から6頭のセイヨウオオマルハナバチの女王の死骸が発見されました。過去2年間で分解を行った巣では、2巣で創始女王以外の女王の死骸が見つかっているのみで、その他の巣ではそういった状況は観察されませんでした。こういった巣の中にその巣本来の女王以外に見つかる女王の数というのは、過去2年の平均に比べて8.6倍になっております。また、越冬女王も含めた1つの巣穴当たりの女王数というのは3.3倍に増加しており、この状況から、資源の競争としては営巣に適した巣穴の場所、巣をかける場所の環境収容力というのがかなり重要で、現在のセイヨウオオマルハナバチの鵡川町二宮地区での女王数というのは、その環境収容力をはるかに越えた状況にあるのではないかというふうに考えられています。
 このことから、セイヨウオオマルハナバチの野生化が拡大されていると考えられる地域が存在していて、その地域では巣をかける穴をめぐる競争というのがあって、それによって在来種が圧迫されていることが強く示唆されるというふうに考えております。
 以上です。

【土田座長】 では、続きまして生殖攪乱について、対応1、五箇先生からお願いします。

【五箇委員】 まず、生殖攪乱についてですけれども、セイヨウオオマルハナバチの雄が在来種の女王バチと交尾をするということで、受精まで行ってしまうと。セイヨウオオマルハナバチの雄の精子によって受精まで完了するけれども、受精の結果得られるいわゆる雑種の卵については孵化しないということから、結果的には、野外でそのようにセイヨウオオマルハナバチの雄が日本の在来のマルハナバチの女王と交尾してしまうと、その相手の女王バチの生殖能力を奪ってしまうおそれがあるというリスクがあるということで、実際にそういった交雑が野外で起こっているのかということを調査するために、在来種の女王の体内の精子貯蔵器官である受精嚢を取り出しまして、その精子の遺伝子(DNA)を分析することで交尾相手を判定するという調査を行いました。
 現時点では、まず室内の実験から、受精しているということ、それから胚発育の途中で成長が止まるということが岐阜大の調査で判明しております。そして、実際に野外で在来の女王バチを採集しまして、その精子貯蔵器官の受精嚢を摘出して精子DNAを分析するという実験を、現在のところセイヨウオオマルハナバチの飛翔が非常に激しいとされる北海道の旭川地域などから、在来のオオマルハナバチですね、これを採集しまして分析しております。現時点では女王バチ199サンプルの受精嚢精子DNAの解析を終了しまして、その結果、うち2個体の女王バチの受精嚢からオオマルハナバチ以外の精子DNA、しかもその2ケースについては得られたDNAの塩基配列は同一配列であるということが検出されました。この精子DNAについては、とりあえずオオマルハナバチ以外のDNAであったということから、野外において、このオオマルハナバチ女王は別の種類の雄と交尾をしているということが示されました。
 その得られた精子DNAについて塩基配列を詳細に分析しました結果、交尾相手は、しかしながらセイヨウオオマルハナバチではなく、日本の在来の別種のマルハナバチであるということが現時点では判明しています。そういった意味から、現時点では、セイヨウオオマルハナバチによる種間交尾及びそれによる生殖攪乱の証拠は、この1年間では得ることはできませんでした。

【土田座長】 では、対応2について。誘引トラップの開発について、お願いします。

【小野委員】 マルハナバチの生殖行動に関しては、この会の以前の会でお話しさせていただきました。雄バチが生産するフェロモンに未交尾の女王バチが誘引されて来るという非常に変わった行動を持っているのがこのマルハナバチの特徴なんですけど、そういった意味で、雄バチのフェロモン成分を種間で比較するということには、交尾前の生殖隔離が存在するかどうかという点から非常に関心があるわけです。
 そういうことで、雄のフェロモンの成分の分析をまず最初に始めたわけです。オオマルハナバチ、本州にいるものですけれども、それと同種の北海道亜種、エゾオオマルハナバチの雄の下唇腺から生産されるフェロモン成分に関しましては、同一のものであるということが確認されています。一方、本州ではクロマルハナバチとオオマルハナバチが同所的、同じ場所に生息している地域があるんですけれども、そういった意味でのクロマルハナバチの雄の下唇腺抽出物については、オオマルハナバチとは全く別のものが検出されている。これは以前から実験をしていたわけですけども、それが追認されています。
 一方、問題となっているセイヨウオオマルハナバチの雄のフェロモンについてはどうかといいますと、これも再確認されたわけですけども、クロマルハナバチとオオマルハナバチのフェロモン成分の両方を兼ね備えているということになりました。雄のフェロモンを感知した新女王は雄のところに誘引されてきて、そこでコーリング行動といいまして、みずからまた別の多分フェロモンを出している行動と考えられるんですけども、そういう行動を行い、戻ってきた雄と交尾するという、そういう配偶行動のシステムを持っていると考えられるわけですけれども、実験室内ではセイヨウオオマルハナバチとクロマルハナバチ、あるいはオオマルハナバチが、前の五箇先生のお話の中にもありましたけれども、実際に交尾してしまうということ、コーリング行動が起きてしまうというようなことが観察されています。
 実際には、そのフェロモン成分を合成したものを組み合わせて、野外あるいは温室内でそれを設置することによって逃げ出した雄バチなり新女王バチなりを回収するという、技術的な部分で活用されることが期待されるわけですが、主要成分の一種が標準品として市販されているものではなくて、当方で新たに合成しなければいけないという、そういう性質のものでありまして、現在その合成に少し時間がかかりそうであるというような段階です。

【土田座長】 それでは、次に寄生生物についてですが、これも五箇さんの方からお願いします。

【五箇委員】 海外産のセイヨウオオマルハナバチコロニーというものが輸入されるということで、当然生きた状態で入ってきますから、そのハチに付随して寄生生物も一緒に外国産のものが入ってくるおそれがあるということで、国立環境研究所の方では、その中で特に体内寄生性のダニであるマルハナバチポリプダニの感染持ち込み状況というものを調査し、さらに野外においてそれが感染拡大しているかということをこれまで調査を行ってきております。
 結論としては、これまでの調査結果から、まず商品として輸入されているコロニーの中からこのマルハナバチポリプダニというものが感染しているという実態を既に把握しているということ、それから在来種の野外個体を採集して解剖してきた結果から、マルハナバチポリプダニの外国産系統が、北海道及び青森県の在来種オオマルハナバチ、それから長野県のクロマルハナバチに感染しているという実態を既に把握しております。こうしたことから、商品コロニーから逃亡したセイヨウオオマルハナバチより、この外国産のダニが野外の在来種にも感染しているということが強く示唆されています。
 また、このダニに感染することによりハチにどのような影響が生じるかということについては、海外の文献事例が出ておりまして、カナダ及びヨーロッパからの報告では、このダニに感染することによりマルハナバチの寿命が短くなるということ、それから訪花行動パターンを変化させてしまうということから、結果的にはマルハナバチと花との間の送粉生態系というものにも影響を及ぼすおそれがあるということが既に報告されています。
 以上です。

【土田座長】 それでは、在来種植物への影響について、横山先生の方からお願いいたします。

【横山委員】 在来植物への影響に関しては、セイヨウオオマルハナバチが在来植物へ訪花した際に、主に種子繁殖にどういった影響を与えているかということを、在来植物を使って評価するということを目的としておりまして、今年度はエゾエンゴサクという植物を使って研究を行っております。
 調査は平取町で行っておりまして、観察されたマルハナバチの実に70.4%がセイヨウオオマルハナバチであって、すべての個体が盗蜜行動を行っております。
 1回訪花当たりの結果率は、適法訪花、正しく正面からとって花粉をつける方法を行うはエゾコマルハナバチの女王ではほぼ100%に達するのに対して、盗蜜行動を行うセイヨウオオマルハナバチでは5%に過ぎないということがわかりました。
 また、その際の種子形成数も、エゾコマルハナバチでは4.6個、1回訪花すると4.6個の種ができるのに対して、セイヨウオオマルハナバチは1回訪花しても0.1個しか種ができないというような状況で、非常に種子生産が落ちてしまうということがわかりました。
 また、セイヨウオオマルハナバチの訪花頻度が高い調査区では、訪花頻度の低い調査区に比べてマルハナバチ類を自由に訪花させたときの結果率というのも低下していました。
 これらのことから、セイヨウオオマルハナバチの訪花は、エゾエンゴサクの種子形成にはほとんど貢献しておらず、在来植物の繁殖に悪影響をもたらすものというふうに考えております。
 以上です。

【土田座長】 どうもありがとうございました。
 次はネット展張に関することですが、これは……。

【五箇委員】 防除策としてのネット展張の効果、それから使用が終了した巣箱を回収していかに処理するかという点について検討を、野菜茶業研究所と愛知県農業総合試験場の方にお願いしてやっていただいております。
 まず、その内容としましては、実際に施設にネットを展張するということで、どれだけ逃亡を防止するかということを調べるということ。それから主要産地、実際にマルハナバチを使用しているというところで、どれだけネットの展張が今現時点でなされているかということを調査するということ。それから、使用済みコロニーを処理する簡単な方法というものを探索するということを調べております。
 その進捗状況としましては、愛知県を中心にトマトハウスというものを調査した結果、側面にネットを張るというケースは非常に多く見られるんですが、天窓までは張ってないことが多く、そこから多くの個体が逃亡しているということがわかっています。
 そういった結果を受けて、ネットの展張効果というものを、実際に実験ハウスを用いまして、ハウス開口部、ハウスの外とつながっている部分についてネットを張って、どの部分にネットをきちんと張るということが一番大事であるかということを検証しました結果、やはり天窓の部分についてネットを展張するということが必要であると。また、そこにネットを張ることで逸出防止効果というものが非常に大きくなるということも明らかになっております。
 また、巣箱の処理方法については、ビニール袋に入れて日中ひなたに置くということで、中にいるハチを蒸し焼き状態で殺すという方法をテストした結果、夏場の高温期では非常に有効に、短時間にすべての個体を死滅することができたんですが、秋以降の低温期になるとほとんど殺虫効果は認められなかったと。そこで、ふたを開けた巣箱の上から熱湯をかけるという、非常に乱暴な方法なんですが、これでやれば簡単に殺虫できるということで、薬剤処理をしなくても、何らかの物理的な方法によってコロニーの処理は可能であるということが今わかっております。
 以上です。

【土田座長】 それでは、2番目の有効なトラップの開発について。

【小野委員】 逃げ出したセイヨウオオマルハナバチを野外で回収する、あるいは温室の、使用しているハウスの中から外に出さないという意味で、このトラップの開発を試みております。ただ、それに先立ち精密な分析が必要となっていまして、化学成分の特定には至っているんですけれども、メジャー成分については簡単に入手できるという成分ではないものですから、ちょっとその合成を進めなければいけないという段階になっています。もう少しこれについては時間をいただきたいというふうに考えています。

【五箇委員】 同じくトラップについては、このマルハナバチというのは土の中の哺乳類の巣穴の古巣の跡とかに巣をつくるということがわかっておりますので、そういった構造を利用した誘引巣箱ですね、マルハナバチの女王を特異的に誘引させて、その中でトラップするという装置の開発を環境研の方で今行っております。簡単なテスト段階では、屋外にてコマルハナバチ女王を誘引する効果があるということは判明しており、この冬の間に実際に人工巣穴というものを設置しまして、来春、効果があるかどうかというのを検討する予定になっています。

【土田座長】 それでは、その他の対応1ですが、在来種の商品開発について、これは米田さんの方でよろしいですか。

【マルハナバチ普及会】 これについては、既に在来種のクロマルハナバチがオランダに持っていかれて、逆輸入されてくるという形で1種類商品開発されています。今回はエゾオオマルハナバチという北海道にいる種類を実際増殖しているんですけれども、増殖が完成するまで、つまり1年じゅう供給できるようになるまでは最低で3年、例えば100匹の女王バチをとってきて、それが全部生きて工場の中に運ばれた場合に、いろいろ変動はあるんですけれども、大体、その3割前後、30%前後が恐らく70匹から80匹の働きバチを出すという商品としてのクラスにまでは到達するだろうというふうなあたりのデータは今のところ出ております。

【土田座長】 それでは、対応2についてお願いします。

【五箇委員】 対応2として、在来種マルハナバチのDNAデータマップを作成するということもあわせて今検討中しております。この目的は、在来のマルハナバチといえども、やはり地域によって種組成ですね、住んでいる種も違うし、あるいは同種であっても地域によって個体群の遺伝子組成が違うということをまず最初にデータベースとして明らかにした上で、在来種の商品化というものを検討する必要があるだろうと。そのデータベースをつくるということで、各地域の在来種個体群のDNA変異を調べるということを、これはまだ現在進行中です。本年度採集した分について、DNAを今生成して、これから変異解析をすると。また、来年度以降も、同様にさまざまな地域個体群についてサンプルを収集して調査するという予定になっています。

【長田専門官】 1つだけ、追加の説明を。

【土田座長】 はい、お願いします。

【長田専門官】 資料2の一番後ろのところに、もう一つ参考として配らせていただいたグラフがあるんですけれども、これは東京大学の保全生態学研究室からご提供いただいたデータなんですが、日高の門別町で、個人の方で、自分の家の庭に来るセイヨウオオマルハナバチを継続的に観察して捕獲を続けている方がいるということでして、原則としてほぼ毎日自宅の庭で観察をしながら、確認できた女王バチは捕獲をするということを続けているようなんですが、1999年に初めてセイヨウオオマルハナバチを確認して、それから経年的に捕獲をして得たデータというのが、ご参考までにこちらに上がっております。毎年毎年、かなりの数が増えているというようなことでございました。
 以上です。

【土田座長】 どうもありがとうございました。
 ただいまの一連の説明につきまして、ご意見、ご質問がありましたらお願いしたいと思います。どうしましょう。これ、全部一括でやりますか。それとも1つずつ見ていきましょうか。では、まず最初の問題点、第1の問題点の定着の可能性について、ご意見とご質問等をお願いいたしたいと思います。

【五箇委員】 質問というよりは意見なんですけれども、この種に関しては、これまでの外来種問題と違って、マングースを1回導入して、その後分布拡大しているとか、そういうのとは違って、商品として流通していると。毎年、それが流通しているということがやっぱり問題であって、定着能力があるなしにかかわらず、商品が常に開放系で利用されている状況というのが問題であると考えれば、定着の可能性云々以前に毎年市場が拡大していると。要するに毎年夏、トマトの生産シーズンになれば、自動的にセイヨウオオマルハナバチは商品としてそこに導入され、そこから自動的に働きバチと女王バチ、さまざまなカーストがそこからあふれ出ているということを考えると、定着しているのと同等な効果があるというふうに本来は検討すべき種類であると。従来の侵入害虫とか、あるいは侵入害獣のように、1回導入したあるいは1回逃がされたものが分布拡大しているという解釈とは、また違う次元で検討すべき材料ではないかということをちょっと考慮した方がいいのではないかと思います。

【池田委員】 前段、そういう話で導入されていますので、今までのケースですと結論としては、大量に、かつ継続的になされておる個体群にどういう影響があるかと。また、それをずっとそのまま放置していけばわかるじゃないかという、それは確認事項でいいですね。私は、これまでの分布と、その範囲がどこまで進むかということですけど、本当はデータが欲しいんです。ですから、この前に言っていまして、前回、これのまとめというのが、先ほど外来の話がありましたが、そこにも書いてありますが、やはり日本の気候風土、植生等にマッチしたものというのは、今までずっと農業害虫でいうと、一旦増えると右肩上がりに10年間ぐらい増えてくる。そういう現象があります。これはフィールドワークは、ここの人たちもですけれど、余りやってないもので、気がついてない人が多いんですが、実際には地方の試験場の連中というのはみんな、私を含めて防除対策をやってきましたから、そういう意識が非常に高いですね。それがまたそういう中で見ていくと、いわゆる自然林というのは原生林もあるし、あるいは二次林もありますね。それから草原というのもありますが、そういうところの方までは行かないんですよね。なぜか私たちの農業をやっている農耕地、及びその周辺にとどまる。そして、そのうちに減っていくというのがみんな実感しているところです。
 これについては、なぜかというのは、答えが出てきません。私もこの問題を考えたいと思いますが、私も結論めいたことは出ておりませんが、そういう現象があるんです。ですから、この調査をやっていただいたときに、非常にそういう面で興味がありまして、ぜひ、そういう日本の本来の自然というんですか、二次林が、先ほど言いましたように、本来の形かはわかりませんが、一応、日本の自然植生でもって成り立っているこういった自然域まで入っているかどうか。そこをやっぱりちょっと考えないと、私たちの生活環境域、あるいは農業を営んでいるにしろ、いかないだろうし、そのところというのは、もう本来完全に自然環境が破壊されているわけですから、ごちゃごちゃになっているだろうというので、そこがまた安定していません。見ているとあれがついたりこれがついたりしていますから。そういう不安定な要素のある生態系の中でここの虫が入ってきて、じゃあ、その不安定要素の中の生物まで守る必要があるのかどうかというのが、やはり一番問題になっているんですね。その辺のところというのは非常に難しくて、今回のこの調査の中でもはっきり言ってやってないですね。恐らくだれかがやろうとしたかもしれないし、私は全体のことは知りませんが、手を挙げなかった人がいたかもしれない。やろうと思っても、ちょっと時間的に難しいなという意見もありますから、やらなかったんじゃないかと思いますが、一番大事なところはその辺じゃないかと思いますね。
 ですから、今問題になっているというのは、恐らくこれは2つのことのような気もしますが、恐らく分布してどんどん拡大しているというのが、人間の生活環境域であるところとか、農業に対するニッチのところではないかなと。そこまで本当に守っていかなきゃならないのかなというのがまず1つあります。
 そういう意味で、ちょっと規制をかける、あるいは保護する、その辺のところを、これは時間がかかるんでしょうが、ある程度明確にしおいた方がいいんじゃないかなと思います。今後のこともありますからね。

【横山委員】 今回、確かに池田先生のご指摘のとおり、大体、今回調査したところというのは主に攪乱環境が多いですので、そういった意味では明確な答えになっていない部分もありますけど、1カ所、今回、これは今年調査を、我々は調査を始めたばかりなんですけれども、小清水町という道東の、この地域はすぐ近くに小清水原生花園という網走国定公園がありまして、今年はその小清水原生花園の中でもこういった状況が実は入っていまして、これがどう動くのかというのをちょっと今後注意する必要があると思いますけども、そこは草原生態系になって、あれは一応、日本の原生の自然生態系としていいものだと思いますので、森林生態系に入るのは、確かにこの種類は非常に難しいファンクションを抱えていますが、特に北海道の中の海岸周辺にある自然の草原生態系には、しかもあそこはすぐ農業環境と隣接していますので、十分入っていくものとかはあるんじゃないかなと思います。この点については今後十分注視していく必要があると思います。

【五箇委員】 環境研の方の調査では、先ほど資料2の1ページの方で対応2の進捗状況の方でもご報告しているんですが、旭川地域なんかを見ると、今、池田さんがおっしゃったように、実際はハウスを中心に実は個体が確認されていて、自然分布というよりは、やはり逃亡個体という捉え方をする方が正しいだろうということは言えるわけですね。ただし、女王バチ一つとると、飛翔能力がかなりあるようで、かなりハウスから離れたところへも飛んで行くことができると。それが定着に成功するかしないかは別にしても、やはりそういった個体数が増えるということは、瞬間的にしろそのシーズンなりにしろ、そのときにインパクトをやっぱり毎年与え続けるということが続くということが考えられると。ただ、もちろんそれは現時点では推測の域は出ない。ただ、余りにもこの産業そのものが経済的にも非常に大きな意味を持つ、イコール、今後も成長していくことを考えれば、そういった意味で農耕地も拡大するであろうし、それに合わせて、やはりそういった自然との境界線というものにもどんどん迫っていく可能性も考えられると。定着はしてなくても、その部分では、インパクトを波及効果として何らかの形で出る可能性は捨て切れない。逆に現時点で野生化そのものが大きく進行していないというふうに捉えられるのであれば、今のうちに網をかけてしまえば十分にその影響というものは抑止はできるであろうし、その意味では、今後、このハチの生態影響というものはコントロールできたということが証明できるのであれば、その形での使用継続が可能になるのではないかというふうに捉えることもできるであろうというふうに考えています。

【池田委員】 それは同感です。

【五箇委員】 今度、逆に対応3の方で国立公園における監視調査をしていますけれども、特段、国立公園というものを重要視するという意義から進められているのはわかりますが、万が一、これが国立公園内で見つかったというときは、これは環境省としてはどういう対応をとるということになるんでしょうか。

【環境省 中島室長】 これは指定をしていない今の段階で。

【五箇委員】 まあ、そうですね。

【中島室長】 予防的な考え方から言えば、大雪山国立公園の高山帯のお花畑を守るということで、捕獲をすべきだというふうに考えております。今回の監視調査においても、監視をするだけではなくて、見つけたら捕獲をしてくださいということで、調査員の方に頼んでいるという形で、今年の調査もやったというところであります。

【五箇委員】 その意味では、防除目的というふうに考えれば。

【中島室長】 そうですね。

【土田座長】 具体的には、まだですか。国立公園の中では、まだ。

【中島室長】 はい。

【土田座長】 わかりました。他に。

【長田専門官】 今、大雪山国立公園の中では見つかっていませんが、例えば阿寒国立公園の阿寒湖畔とか、そういうところも国立公園ですが、そこに訪花するセイヨウオオマルハナバチが確認されたりという事例はあるということですけれども。ですから、国立公園もかなり広くていろんな環境を含んでおりますので、大雪のような原生的な環境では、今の段階では確認されていないと。

【池田委員】 資料1の2ページのところにある、「国立公園内ではまだ標本を伴う確認記録がないが」と書いてありますが、そのことですね。

【長田専門官】 そうですね。標本を伴うものについては、今の阿寒の例もないのではないかと思いますが、最近、知床のウトロでも目撃されたという話はありますけれども、それも多分……。

【横山委員】 羊蹄山では、標本になっているんですけれども、採集記録はあります。多分、逃げ出しだとは思うんですけれども、秋に働きバチが捕獲されています。

【池田委員】 この調査の概要というのがどこまで公表されるのかわかりませんが、やっぱり逸出すると、標本がないのは目撃記録だけですので、だれが目撃したか、そういうことになると思うんですね。それが信用できるかできないかということがあるわけですから。もしそれを本当にというのであれば、目撃された方は、やはり何らかの形で責任を持ってやはり報告されるというのが必要ではないかと思うんですね。そうでない段階であって、今日の資料だけではわかりませんが、これ。公表されるかどうかわかりませんが、この2行ちょっとが気になりますね。それをご検討ください。

【長田専門官】 記録については、標本ありの記録をちょっと整理をして、次回までにお示ししたいと思います。

【池田委員】 ぜひ、目撃記録でも、一応本人の責任でもって発表できるわけですから、それはそれでどこかへと発表していただければと思います。ちょっと責任者不在の中で未確認のことを載せるのはどうかなという気がいたします。

【五箇委員】 あと気になるのが、セイヨウを目撃したというだけの事例の場合、非常に似た種類としてノサップマルハナバチというのがいますよね。その辺との区別というのは、多分、普通の肉眼ではできないということもありますから、かなり慎重に検討する必要があるんじゃないかなというふうに思います。

【長田専門官】 今回、紹介した大雪山国立公園の地図の目撃情報も、あの範囲の中でも、より国立公園に近いところで目撃したというような話もあるんですけれども、標本がないので、一応、それは点として落としておりません。次回までに標本のある確認情報と、それから標本がないけれども具体的に整理をされて例えば公表されている確認情報を、区別をした上で整理してご提示したいと思います。

【小野委員】 今、国立公園の中で見つかった場合についてということを議論しているということの前提には、やはりセイヨウオオマルハナバチが生態系に何らかのネガティブなインパクトがあるということが前提になっているということですよね。もしそれがなければ、別に入ってもいいということになってしまいますけど。

【中島室長】 それは違います。
 国立公園の先ほど問題にしていたのは、大雪山国立公園のお花畑なんですけども、これは国立公園の特別保護地区にすべて指定されているんですね。国立公園特別保護地区の管理の方針として、植物であろうが何であろうが、とにかく外来のものが来たら、それはもう排除するというのが基本的な考え方として我々の管理の方針の中にあるものですから、個別にどういう影響があるかどうかというところはまずちょっと置いておいて、外来のものであれば、それは……。

【小野委員】 いなかったものが入ってくるということ自体が、それが問題になるということですか。すみません、ちょっと誤解していました。

【五箇委員】 一種の聖域ということを考えていたんですけどね。だから、そこでさっき聞いたのは、そこにいたということが特定外来生物という部分に加味されるのかどうかという、法的な対応として、そこは生かされるのかどうかということ。国立公園にいたというだけで特定とまでいくか。

【中島室長】 それは国立公園の特別保護地区という法的な枠組みの中ではなくて、北海道の高山帯のお花畑に分布を広げているかどうかという意味では関係が出てくると思いますけれども、国立公園だからどうかというような話とは、この問題の判断に影響を与えるかどうかというと、ちょっと違うような気がしますが。
 あと、特定外来生物に指定するかどうかは、我が国の生物多様性に、生態系等に影響、大きな被害を与えるかどうかというところで検討していただいていると思っています。

【土田座長】 ほかに何かございますか。定着というか、いわゆる池田さんの言う話に沿えば、人間の攪乱地における定着ということのデータがかなり出ているんですが。なるべく疑問点等を残しておきたくないものですから、意見がございましたら、よろしくお願いします。

【マルハナバチ普及会】 池田先生のご意見に対してなんですけれども、今までの害虫の発生動向とやっぱり決定的に違うのが、一旦入ったものがそのまま自分で増えていくわけではなくて、五箇先生がおっしゃったように、常に常にストレスをかけていくこと、そうなってくれば、自然そのものの持っている在来種のマルハナバチの増殖率というのがもちろんあったとして、こっちからは片一方で商品としてどんどんどんどん流入してくる、要はこのスピードの差だと思うんですね。なので、そういうのを抑止するという意味では、やっぱりちょっとこれまでの害虫のあれとは考え方が若干どこか違うんじゃないかなという気が、気がするだけなんですけど、その点に関しては。

【池田委員】 だから、そういうたくさんやってきた中でも、要するに自然林へ入っていけるかどうかというのがやっぱり根本的な問題だと思うんですよ。だから、入ってきたいんだけど、連中のやっぱり生理・生態的な面で、もう本能的にも入っていけないのか、あるいはもっと個体群が増えてくれば、どんどんどんどんどこまでも行ってしまうのか。花が咲いていれば、あるいは餌場所が適していれば、どこまでも行っちゃうのかという、これはやっぱり今までの農業害虫とは違うでしょうね。だから、その辺のところというのはやっぱり今後必要じゃないかと思うんですよね。他の種類のことも考えましてね。

【マルハナバチ普及会】 そうすると、これまでの農業害虫以上に、その点については警戒する必要があるということでしょうか。

【池田委員】 だから、農業害虫と私は全く共通すると思うんだけれども、経年的なデータというのがやっぱり農業害虫の方はないんですよね。確かに昔は多かったけど、今はいなかったというような、そういう感じだけなので、数字的には出てないんですよね。数字的には出てないから。それだからやった人もいないわけですから。たまたまこういう機会があるんですから、先の会議にも言ったんだけど、ぜひ、その分だけでも環境省が、この分野だけでもいいから継続して予算化してもらえればと思います。今後生きてくると思うんですね。あと20年ぐらいしたら。

【五箇委員】 あと、それと逆に、さっきの繰り返しにもなりますけど、逆にここで網を張っちゃった後どうなるかというのもモニタリングしてみたらいいんじゃないかと思いますよ。一旦網張って、途端にもう外での数が激減してしまうというのであれば、これはもう定着云々じゃなく、やはり逃亡個体というものが随分目撃者の中で大きな数を占めていたんだろうということが言えるだろうと思いますし、そういった意味でも、一度網を張るということはやはりやってみるべきことでもあるんじゃないかなというふうに考えますが。

【土田座長】 これは草原の生態系に入る可能性として考えられたら、草原の生態系みたいなところが懸念されますかね、一番。

【横山委員】 森林生態系に深く入り込むかどうかは、今のところは不明と言わざるを得ないですね。確かに春先に森林内で観察されたことはありますが、調査を行って、それこそ林床の植物ですので、そういったところにたくさん訪花しているという状況は実際に観察されますから、時期によっては、特定の花が多いときに、そういった花に訪花しているということはあると思います。それが林内で営巣するとかということは、今のところ、調査が及んでないところもありますけども、観察されていませんので、どこに優先順位を置くかというと、やっぱりまずは草原生態系ということになるかと思いますけれども。

【マルハナバチ普及会】 横山先生が言われた草原生態系というのは、いわゆる中部山岳地帯に広がっている標高の高い草原も含むということですか。

【横山委員】 そこは高山帯も含めて考えております。高山帯の場合には、どうしても間に森林が入りますので、そこを例えば徐々に分布を広げていくというよりは、恐らくぽんと飛んで行くという感じになると思いますが、北海道の場合だと、海浜に草原生態系がかなり広がっていますので、ああいったところでは農業環境から全く障壁なしに届く範囲にありますので、そういったところはすぐにでも分布は広がる可能性はあると思います。今、小清水の状況はまさにそういった状況になっているのではないかと思います。ここはもう網走市まで分布が広がっているように、そう見なさざるを得ないような働きバチの発生状況がございますので、高原地域はどうしても許可が必要ですので、そんなに丹念に調べることはできないですけども、きちんと調べれば、もう既に小清水の原生花園の中は入っている可能性が高いんじゃないかと私自身は考えています。

【土田座長】 他にこの件に関して何かございますか。

【池田委員】 だから、草原の中には入っているんですね。何回も言うんだけど、安定して継続して多発生がどんどんどんどん続くのかどうか、その問題なんですね、一番問題になるのは。そこを私は現地で確認してないんだけれど、今の仮に草原の中へ、帰化植物も入っていると思うんですよ。帰化植物も種子で持ち込まれるというのはすごく多いと思うんですが、それがやっぱり他の地域と違って、そういうところというと、恐らく増えてないんじゃないかという気がするんですよね、恐らく。普通だと、もうどんどんどんどんふえちゃう。
 それで、例えば同じ国立公園であっても色々とありますが、国立公園のお花畑というのは、駐車場であるとかホテルであるとか、そういう建物の回りといったら帰化植物でいっぱいでしょう。ヒメジオンを初めとしてね。だけど、やはり本当にお花畑だなというところになってくると、全くないんですよね。入ってきませんよね。だから、そういう現象じゃないかと思うんですね。だから、そこになぜ入って行けないのか、あるいはなぜ今度増えていかないのか、そういうのが欲しいんですよね。それはだれもまだ答えを出してないので、ぜひ何らかの形でもって解明していただきたいと思うんです。私は非常に興味があるんだけど、じゃあなぜかといったときに、疑問点は出せるんだけれど、確たる返事は出せませんよね。だろうと言うぐらいだけで、無責任な話になっちゃうと思うのでやめているんですが。ぜひ、そういうのを、やはり時間的なある程度のデータの蓄積がないと、やっぱり物が言えないと思いますけどね。
 それから、やっぱりこういう問題というのは、根本的にはやっぱりサイエンスで考えていかないと。だからサイエンスのデータがないと、目撃記録までぱっと行っちゃうと、やっぱりちょっとおかしくなっちゃうんじゃないかなという気がしますけれども。

【中島室長】 国立公園の中の自然の植生のこと、まず1つの事例として、尾瀬の湿原とか、尾瀬の何とかという、そういう生態系がありますけれども、その中にはかなり外来植物は既に入り込んでいる例がありますし、何年かたったら消えているというような状況ではありませんので、ちょっと先ほどの先生の仮説が当てはまるようには私には見えないんですけれども。

【池田委員】 それは沿道ですよ。登山道とか遊歩道の回りでしょう。

【中島室長】 いや、それは湿原の中です。

【池田委員】 だから、そういう遊歩道のところを、だから何でかということになるかもしれませんが、遊歩道沿いにはかなり入ってきますね。

【中島室長】 ええ、もちろん遊歩道沿いは多いのは多いですけれども、湿原の中に、じゃあ自然生態系の方に入っていってないかと言われると、それは入っているのもたくさんあるということです。それは例えば戦場ヶ原のオオハンゴウソウでもそうですし。

【池田委員】 そのついでなんだけど、ある場所へ行って、国立公園の中なんですけど、そうすると、ビジターセンターへ入ったら、今見られるここの地域のお花ということで紹介があったんです。生物ということで、花とか鳥が。その中にヒメジオンがあるんですよ。ビジターセンターにですよ。その中にある。私は、これはウォンテッドで、指名手配で、これがあったら抜いてくださいと言うところだと思うんだけれども、登山者向けのビジターセンターのところには、そうして張ってあるというケースがやっぱりあるんですよね。ですから、花が咲いていればきれいだという、それはもう単純なことですが、それがだから外来種なのかどうかということになりますよね。ちょっと、だからそういう問題があるのでね。

【五箇委員】 尾瀬ヶ原のケースに関しては、それはやっぱりあそこが本当に、じゃあ今の現時点の尾瀬ヶ原がいわゆる自然生態系と言えるかどうかというのは、もっと慎重に議論すべき話だと思いますね。むしろ水質汚染もあそこは非常に激しいですし、現実にやっぱり観光地として周囲ももうどんどんどんどん狭くなっていることを考えれば、見た目と中身というのはやっぱりもっと変わってきているからこそ外来種が入っているというようなことも考えなきゃいけなくて、そういうふうに考えれば、今後、やっぱり自然生態と言われる部分も、ますます開発がどんどん周囲で行われることで、その国立公園の中で何も起こってなくても、その周囲の環境が変わることで、その天然の生態系というものもリンクしていますから、そこで弱ってくると、そこに外来種が入り込むというような図式になるというふうな形で、もっと系として考えて議論すべき話だと。だから、尾瀬ヶ原に外来種が入る、だから自然生態系にも入りますというような単純な議論ではなく、尾瀬ヶ原がかつての尾瀬ヶ原とどれだけ変わっているかということをもっと定量的に評価した上で、そういう話は本来すべきじゃないかなというふうに考えますが。
 だから、言いたいのは、環境省がそうやって尾瀬ヶ原のケースを出しても、逆にそういう反論が出るような状況にありますよということで、外来種の議論というのはそれほど簡単なものじゃないということですよ。

【池田委員】 私も戦場ヶ原へは何回か行っていますが、戦場ヶ原というのは真ん中に遊歩道があって、向こうに何とか牧場とあるけども、見えるんですよね。あのぐらいの規模であれば、あれで本当に自然生態系かなという気もしますよね。そんな感じしますよね。

【長田専門官】 今、自然生態系の話が大分あったので、一応、念のために外来生物法上の基本的な立場というか、特定外来生物に選定すべき種をどういうものを検討してきたかということを念のために申し上げると、在来の種なり個体群なり、生態系の種間構造に著しい影響をもたらすものについては、生態系に影響があるということで指定をしようということになっていますので、全く人為が入っていない生態系自体が今の日本にはほんのわずかしかございませんし、そういうところにもし入れば、もうものすごく大きな問題になるということはほぼ明らかだと思いますが、そうでなくても、人の手が入っている、適度に攪乱された環境に依存している種なり個体群というものがあったときに、それに影響が大きいのであれば、それはやはり環境省としては保全すべき生態系であって、その影響を抑えるという基本的な考え方があって、この後の議論が具体的な影響の話なので、こちらは後の議題の話になるのかもしれませんけども、そういうところでも影響が出ているということであれば、生態系に対する被害の中に入り得るというふうには思います。

【土田座長】 私も、これ、具体的な議論に関しては今回余りそれほど問題ではないと思っていますので、どちらかというと、そういう基本的な姿勢みたいなものはやっぱりちゃんとしておいた方が問題なく進むのではないかと。あとの小さな問題、と言ったら失礼ですけれども、具体的なデータに関して疑問点が出ても、それほど時間はとらないと思いますので、その辺はちょっと流して、今の話をもう少し続けたいなという私の勝手な気持ちがあって、しばらく聞いているんですけど。

【五箇委員】 要は、この特定外来生物被害防止法で今指定されている種類を並べてみても、その疑問は絶対やっぱり出てくるんですよ。片一方で、アルゼンチンアリみたいに、本当にあれはじゃあ自然生態系にいるのかといったら、あれこそ人為攪乱のところでしか今のところは確認されてなくて、だけど、この先のリスクを考えて指定しているという状況もあるわけですよね、片一方では。片一方ではそうなっている。片一方では、行くかどうかわからないから、もちろん農業用の経済的な影響及び社会的な影響というものも加味されるのはわかってはいるんですけれども、そういうもの以前に、環境省の法律として、生態系影響をまず第一義とするということで、いまひとつコンセンサスがきちんととれてないというのがやっぱり専門委員としても感じるところであるし、環境省としては、そこははっきり答申してもらわないと、逆に議論は進めようがないというところですよね。

【小野委員】 今のお話を伺っていると、当然、人間が生活しているわけですから、生活圏の生態系、宅地造成にしろ何にしろ起こるわけですね。そうすると、在来種であっても、その生物相には当然変化が起こってくるわけですよね、在来種の間で。そういうふうに攪乱されたところに外来種が持ち込まれると、つけ入る隙があるとするのであれば、そして、その外来種がその攪乱された在来種の生物相の移り変わりに対して影響を与えるとするのであれば、それは特定外来種にし得るという、そういうことであって、天然だから、人工だからという線引きはないという、そういう話が今示されているのかなと思うんですよね。それで、結局、そこで人間が生活しているところが攪乱されていて、そこに外来種がつけ入る隙があってはびこってくる、そこで力を蓄えて自然生態系の方にも順次入ってくるというようなことになってくると、それからでは遅いので少し予防的なところを考えなきゃいけないという、そういう見方というのも出てくるんじゃないかなとは思うんですよね。
 実際に尾瀬で確認されたさっきの植物などは、どういう経路で尾瀬ヶ原の中に入ってきたとかという、そういう侵入経路みたいなものは、最初は人間が生活しているところから入ってきて、それがだんだんとかという、そういう具体的な経路というのがわかっているものはあるんですか。

【中島室長】 調査をされているものはないと思います。ただ、登山道沿いだとか攪乱されている環境にまず多いので、工事のときとか、それから登山者の靴についているとかというようなことが言われてはいます。きちっと調査したというのは、多分事例はないと思います。

【小野委員】 例えば登山者の靴に種子がついてきたとか、いろいろな形で入ってきた場合、それはいわゆるもっと他のところにその植物が繁茂している場所があって、そこを歩いた人の靴についていたものが中に入り込んだという、そういうことになるんですかね。

【中島室長】 恐らく予想としてはそうだと。

【土田座長】 よろしいでしょうか。
 ということで、攪乱生態系であろうが、自然生態系であろうが、在来の生態系に与える影響が大きいと判断されれば、これは特定外来生物であるという姿勢でよろしいでしょうか。そういうふうに理解してよろしいですか。

【中島室長】 はい、結構です。

【土田座長】 では、その観点で具体的に個々の問題、次のところから入っていきたいと思います。では、まず競合に関する点ですが、この辺に関して何か疑問点、ご質問等はございますか。
 僕の方からちょっと、言葉の使い方だけなんですけれど、創始女王ですか。

【横山委員】 越冬女王といいます。春先に出てきて巣をつくった女王です。越冬創始女王というのは、その巣をつくった女王という意味です。それ以外に、その巣を、どういう経路で入ってきたかわからないですけども、結果的にその巣を使えなくて、その巣の中で殺されたか死んだかわかりませんけども、死んでしまった女王が、一番下の例ですと、各巣当たり2頭から6頭ぐらいいると。

【池田委員】 越冬女王と言った方がいいんじゃないですか。これね、ちょっと疑問点があるんだけれども。私、マルハナバチのことはわかりませんが、例えばアシナガバチなんていうのは、女王バチが越冬して巣をつくりますよね。そうすると、今度は未交尾で越冬した女王があるわけですね。それは巣をつくらないですよね。そうですね。そして、もとあった、もとというのは、その巣をつくったのを手伝うんですよね。そうすると、1つの初期巣の中に、女王バチが3頭、4頭いるという例が結構あるんですよ。そういう現象というふうにはならないですか。

【横山委員】 これは少なくとも越冬女王の場合は、これは全部死んでいるので。

【池田委員】 だから、死んじゃうもので、そのときに殺すというのかね、だから、お手伝いに来たのを殺しちゃうという、極論なんだけど。アシナガバチの世界ではそういうのがあるわけですから、そのところを考えると、今のは越冬というふうにしておいた方がいいんじゃないかなと。必ずしも巣をつくろうとした意思を持ったものが100%なのかなと。その辺が解明されてないでしょう。ご存じですか。
 いや、だから手伝うわけですよ、貸すというより。産まないですよ、それは。巣づくりを手伝うわけですよ。

【マルハナバチ普及会】 マルハナの場合ですと、ほとんど100%近くもう交尾しちゃっているので。ただ、変なものに感染しているやつだと、侵入して感染させるというんでしょうかね、そういう目的でみたいなものはありますけど、他種はブラジルの1種類でしか今のところ報告が、他種というか、それはごく最近……。

【池田委員】 いや、アシナガバチなんかでも、例えばフタモンだとかは少ないですね、そういう意味ではね。僕が見ていると、キアシナガバチだとかセグロアシナガバチというのは、そういうケースというのがすごく多いですよ。場所によって結構違っているもので。

【マルハナバチ普及会】 共同で巣をつくったというのが、1例だけ坂口先生の報告か何かのやつはありましたけど、それ以外ではないですし、日本のやつでもいろんな種類をとってみてもやっぱり死体は残っていますので、最後まで女王バチ、いわゆる越冬女王だか、創始女王だかというのが2匹共存して巣が大きくなるという例は、強引にやればできますけど、強引にやっても、途中からどっちかが殺されてしまうというのが今のところわかっていることです。

【土田座長】 極めて稀なケースと考えてよろしいでしょうね。
 他に何かございますか。

【池田委員】 そういう今度巣の場所ですね、だから営巣する場所の乗っ取りということになると思うんですよね。それで排他的に、一番強い女王が、侵入者が殺しちゃったかもしれないしね。もとがやったのか全然わかりませんが、やっぱりそういうのでね、逆に言うとある程度それを繰り返していって将来安定してくるんじゃないですか。余分なものが多いのでね。

【横山委員】 その過程で結局セイヨウが一番最初に出てきちゃうので、セイヨウとエゾは全く同じような営巣場所を使いますから、セイヨウオオマルハナバチの方が先に越冬から覚めて、まず適切な巣場所を探してしまって、その後、オオマルハナバチの方が出てくるという状況になるので、恐らく現状だとセイヨウオオマルハナバチが先に適切な巣場所を押さえてしまうということになるんですよね。ですから、セイヨウオオマルハナバチの個体数はあるところで一定するかもしれませんけども、その過程でエゾオオマルハナバチが結局営巣できなくて、いなくなってしまうという可能性が十分あるんじゃないかと考えています。

【池田委員】 もう一つは、エゾオオマルハナバチの方が、在来の種ですから北海道なら北海道という地域にもっと適応しているとなれば、どこか周辺で増えているということはないですか。そういう解釈はどうですか。

【横山委員】 厚真町では、これは厚真町の調査は今年しかやってないので去年の状況はわからないんですけども、ただ、例えばそれまでの鵡川町の状況に比べて特に多いという状態にはないですし、あと、どのくらい遠くまでを見なきゃいけないのかよくわかりませんけど、我々、別にモニタリング調査をしていまして、道内全体でセイヨウオオマルハナバチのいるところいないところ関係なしにマルハナバチの数を調べていますけども、増えているところもあれば減っているところもあるので、そういったことが全くないとは言えない状況にあると思いますけども、ただ、目立ってそういう影響でどこかで増えているという印象では、正直言ってないですよね。そこはもちろん調べる必要はあると思いますけど。ただ、少なくとも鵡川町ではエゾマルハナバチが住めない状況になっているというのは、やっぱりそれは影響として十分加味すべき点になるんじゃないかなと思います。

【池田委員】 その比較になっている厚真町ですか、こことの花の資源量の推定で、先ほど3分の1から5分の1ぐらいだというふうなことをちょっとおっしゃいましたね。植生というのは大体同じなんですか。

【横山委員】 同じです。

【池田委員】 ほぼ同じような状態。鵡川と一緒。

【横山委員】 ええ。

【池田委員】 そうすると、やっぱり面積的にも大して違わないね、余り。

【横山委員】 そうですね。ある程度は基本的には同じです。

【五箇委員】 調査時期が鵡川町で5月から7月前半期となっていますけど、もっと夏場になると、例えばワーカーの占有率とかというのはどういうふうになりますか。

【横山委員】 夏になるとワーカーが少し戻してきますので、実際には占有率はもうちょっと上がってきます。

【五箇委員】 えっ、オオマルハナバチ。

【横山委員】 オオマルハナバチです、はい。

【五箇委員】 ちょっと、そこが要するに春先のセイヨウオオマルハナバチの捕獲数というのはものすごい確かに増えているんですけれども、それは実際は商品コロニーそのものの流通数が増えていることとも大きく相関する話だと思うんですね。結局、そのうちのどれだけが営巣に成功して、夏の間もどれだけ資源を占有しているかという、いわゆる1年の中でのダイナミクスというものも少し考慮はしていく必要はあるんじゃないかなというふうには考えますね。

【横山委員】 ただ、全体で見ても、今年はこの時期で83.4%ですけども、もちろん若干減りはしますけども、昨年の57%に比べるとはるかに大きくセイヨウオオマルハナバチが野外で観察されていることは事実ですので、ほとんど、例えばその場所で観察されるマルハナバチの3分の2以上はセイヨウオオマルハナバチという状況は、自然の状況から考えるとかなり異常な状態と言わざるを得ないのかなと思いますけど。

【土田座長】 その他、この点についてよろしいですか。
 よろしければ、次は生殖攪乱ですね。この点に関して何か疑問点、質問等ございましたらお願いします。
 精子の件ですけども、これは具体的にどのマルハナバチかはまだわからないということですか。

【五箇委員】 相手ですか。

【土田座長】 相手です。交尾の相手です。

【五箇委員】 いや、わかってはいるんですけれども、ここで言うべきなのかどうなのかというのが……。要は種間交尾はしていたと。しかも、その相手がセイヨウではなく在来種の全く違う別種であったということで、それの持つ意味というのは、その意味では生態的なハザードは見つからなかったんですけれども、学術的にはかなりこれは珍しいケースになってしまいまして、その意味では、ちょっとこの評価という部分とは切り離して考えて……。種名そのものは確かに皆さん気になさるところは多々あると思うんですが、正式に学会の方で公表はいたしますので、それまで待っていただければということで。

【土田座長】 1%ですか、これは。

【五箇委員】 そうですね、はい。

【土田座長】 結構……。

【五箇委員】 高いですね。しかも、その見つかった別種とされる相手が、いわゆる1つの種類だったんですね。同じ塩基配列ということで。その意味では、より種間交尾そのものの確証性が、2例も出てしまっているので、より高いと考えざるを得ないと。しかも違う地域で、北海道と本州という別々の地域で出ているので、進化生態学的にはかなり興味深い現象であると言えます。素直に、だからサンプル数の問題がありますので、ある意味、集団遺伝のレベルからすれば、やっぱり100、200という数字は本当は足りないんですね。捕獲されている女王バチ、野外で捕獲される女王が、やっぱり普通につかまえても1,000、2,000と言われている状況で、解析できる能力としては、今、この段階までしか来てないわけで、その意味では、これをもってだから大丈夫とは到底言えないです。ただ、現時点では種間交尾、いわゆる生殖攪乱という部分について、野外でそれをクロと証明するデータは得られていないというふうな結論しか今はできないということです。だから、引き続きこれに関してはモニタリングは当然続けていくことにしています。

【土田座長】 わかりました。
 あとフェロモンに関して、合成にこれはかなり時間を要しているというお話でしたよね。

【小野委員】 そうですね。異性体がちょっとはいってくるので。

【土田座長】 目途はあるわけですか。

【小野委員】 できると思います。

【土田座長】 わかりました。他に何かございますか。
 では、寄生生物に関して何かございますか。

【マルハナバチ普及会】 現在、流通している商品からも継続的にポリプダニが見つかっているかどうかということと、それから、あと野外個体、在来種のマルハナバチから検出された水平感染の経路が推定されているか、もしくはある程度明らかになっているものがあるか教えていただきたいんですけど。

【五箇委員】 まず、流通しているコロニーに関して、海外から直接輸入されているものについては、どうやら海外の工場の方で駆除がかなり進んでいるようで、大きく減少していると。もうほとんど見つかりません。ただし、国内でまだやっぱり流通している部分については、まだ感染が残っているものもあるということです。それと、実際に野外で見つかったいわゆる海外産のダニと言われるものの経路ですけれども、やはりオランダ及びベルギーで発見されているダニと同じ遺伝子ということで、輸入当初、やっぱりそういった外国から入ってきたものから流出していると考えられます。

【マルハナバチ普及会】 野外での水平感染経路みたいなものは。

【五箇委員】 感染経路、要するにどういうチャンスでということですね。それは不明です。要するに、このダニそのものの感染するという行動生態について、まだ不明な点が多く、いつどのチャンスで感染しているかということについてはまだちょっとわからないことが多いので、実際問題、野外のどの場面でどういうふうにそういったセイヨウから在来へと感染しているかということについては不明な点がまだ非常に多いです。

【池田委員】 これは日本でも近似種があるようなお話を受けましたが、それは今回の調査の中では感染経路は見つかっているんですか。

【五箇委員】 日本のダニは、毎年継続的に見つかっています。日本在来のダニというものも生息はしていまして、それも継続的に見つかっていて、その中に海外の遺伝子型のダニが今混じり始めているという状況になっています。注意すべきは、同じポリプダニという同種にはなるんですが、やはり生産地が異なってくるダニ同士ですから、そういった意味では、ホストとのインタラクションという部分で何らかの違いが出てくる可能性がありますから、現時点で適応度評価という部分に関してはまだ国内では行われていませんけれども、この報告書にも記してありますように、海外の方では、やはり生態影響という部分に関して評価も進められていまして、やっぱり感染すると何らかの適応度なり、あるいは行動というものに影響を及ぼすというデータはやっぱり出ているということで、今後、こういった海外のダニというものが感染拡大していくということが起こるとすれば、こういった部分についてのリスクというものも考慮する必要があるだろうと考えています。

【池田委員】 同種というのは、形態的に同種。

【五箇委員】 形態的に同種です。

【池田委員】 バイオタイプのようなものと考えていいわけですか。

【五箇委員】 そうですね。まだそのダニ同士のいわゆる交尾とか、そういうことがまだできていないので、実際にそういうふうに生殖的に全く異なるタイプとして扱うべきかどうかはまだわからないんですけれども、系統的には異なる系統であるというふうに捉えられます。

【池田委員】 それがもしバイオタイプであれば、セイヨウに特異的に依存したものではなくて、結構、ホスト範囲が広いということになって、日本の在来種が……。

【五箇委員】 ホストスイッチを起こすことは可能であるということになりますね。

【池田委員】 日本にもいるんだ、それは。

【五箇委員】 そこがあれですよね。今の特定外来生物でもたびたび議論になるように、形態的に同種とされるものは、同一種として在来種とみなされるというふうに議論してしまうと、このダニについても外来種ではなくなってしまうことになるんですが、今言ったように、今の生態学的な分析技術をもってすれば、中身が違うということも今だんだん証明され始めていますし、マルハナバチと違う議論で、クワガタムシなんかでもオオクワガタ、ヒラタクワガタと名前はついているけれども、やっぱり外国のものと日本のものは明らかに遺伝的に異なるということから、今、生態リスク評価が進められているということもありますので、その部分については、やはりデータが出ればそういったデータに基づいて議論を進めるべきものであろうというように考えています。

【小野委員】 この寄生生物の問題というのは、本当に重要な問題じゃないかなと思うんですよね。ただ、特定外来生物、セイヨウオオマルハナバチという流れの中で、この中でも何回か出てきていますけども、農業の授粉用に利用する商品としての位置づけというのが多分セイヨウオオマルハナバチでもあると思うんですけども、結局、商品のクォリティーコントロールというか、商品として売り出すものには、そういうダニであるとか、あるいはまだ未知の寄生性生物もいるかもしれませんが、そういったものを生産者の方できちっとコントロールしてもらうということしかないのではないかなというふうに思うんですけれども、どうですかね。

【土田座長】 その他、ございますか。よろしいですか。
 なければ次、在来植物への影響。

【池田委員】 これ、実験的な手法というのがわからないんですが、セイヨウオオマルハナバチ区で0.1という数字がありますね。0.1個ということだけど、これは1回訪花して、そのときに、あと訪花しないように網か何かで遮断して、2回目以降阻止したという、そういうデータですよね。そうですね。

【横山委員】 そうです。

【池田委員】 そして、放任にしていたのが高頻度区、低頻度区というところのデータですね。そうでしたね。高頻度区だと75.9%、低頻度区では88.6%と、こういう値になったということですね。ここでちょっとお聞きしたいのは、エゾエンゴサクの繁殖というんですか、あるいはエンゴサクが今度は繁殖を維持していくためには、やっぱりどうしても種子生産というのが絶対的な条件になるんですか。

【横山委員】 はい、必要です。

【池田委員】 そうですか。それがもし途絶えたとすると、栄養繁殖的に、あれは多年草ですから、それだと限度があると、そういうことになりますか。

【横山委員】 ほとんど株分かれとかしないんですね。増えていくのは種子で。

【池田委員】 そうすると、その高頻度区の低頻度区のデータというのが76と89と、基本的にしてね。これも何で差があるんですか。自然界では問題とする数字なのかなと。

【横山委員】 どれぐらい実生が定着するかというところがよくわからないので、現状としてデータが余りないので評価が難しいところなんですけれども、ただ、これはコマルハナバチがまだかなり数がいますので、先ほどちょっとデータを出しましたけども、現時点でも2割ぐらいコマルハナバチの訪花がありますので、それにほとんど完全に依存していると言っていいと思うんですね。ですから、この部分がどれくらい今後減ってくるかによって、このあたりの結実率というのが変わってくると思いますので、現状でコマルハナバチが、以前は比率にして37%ぐらいあったのが20%ぐらいになって、それで結実率が13%ぐらいに落ちているので、こういったのがもっと下がってくれば、あるとき急に結実率が悪くなるということもありますし、ちょっと来年はコマルハナバチの構造なんかも見たいと思っているんですけども、一緒に咲く他の花とのタイミングで、コマルハナバチがエゾエンゴサクを早く放棄してしまうという可能性も考えられるものですので、そういったことが起こると、もっとコマルハナバチがエゾエンゴサクに訪花する頻度というのが下がってきてしまう可能性がありますから、この値は私は決して小さくないと思っています。

【池田委員】 このデータをどうとるかについてと、あとは、じゃあ今コマルが出ましたが、その他にこういうデータはないのかと。それでウエイトはどうなっているのかというのがありますね。

【横山委員】 今回観察した調査地では、マルハナバチ類以外に訪花が観察されたのはビロードツリアブと、あとハエ類。両方とも、ほとんど……。

【池田委員】 もう一つは何ですか、ビロードと。

【横山委員】 ハエです。ハエになると思います。ほとんど訪花の結実には影響がありません。セイヨウオオマルハナバチ、コマルハナバチ、オオマルハナバチの3種類を合わせると、訪花頻度はもう95%近くになると思うので、他のマルハナバチの訪花頻度というのは、ほとんどそれらに比べると余り影響を受けない。また、エゾエンゴサクの開花時期というのは、他にあと開花時期に合うのはコマルハナバチなんですけども、この地域ではコマルハナバチは非常に少ないので、それが主要な方向になることはないと思いますので、コマルハナバチの減少というのはかなり大きいかなと。

【池田委員】 その高頻度区、低頻度区でもいいけど、自然受粉したというのは、ほとんどコマルハナバチに依存した結果だということになるわけですか。

【横山委員】 そうですね。

【土田座長】 他の植物はご検討されていなかったと。

【横山委員】 盗蜜を起こしている植物を中心に、何種類か他の植物の調査を検討しています。来年以降はぜひ。今年はちょっと報告とかもありましたし、手がなかなか回らなかったんですけど、ぜひやろうと思います。

【池田委員】 ちょっと気になるのは、75%も結果率があればいいじゃないかとか、それがやっぱり心配だというのと、その解釈だなと思うんですが。私は、自然界の中で見れば、全くこれはいい加減な話なんだけれども、それだけあれば十分じゃないかなとは思うんですよね。
 もう一ついいですか。ついでなんだけど、一番最後のところが気になるんだけど。アンダーラインが引いてあるんですが、在来植物の繁殖に悪影響と書いてあるんだけど、やっぱりこれがそのまま出ていっちゃうと困るので。これはエゾエンゴサクじゃないですか。在来植物じゃなくてエゾエンゴサクの繁殖に影響が出ているとの、結論じゃないと思うんですね。ある程度推定とかしたということはありませんか。だって、4分の3あるんだもの。

【五箇委員】 言い方を変えれば、在来植物の繁殖に悪影響をもたらす事例が示されたという。

【池田委員】 示されたとか、そういう感じでね。だから、示唆されたぐらいでいいんですが。結論というのはちょっとやっぱりオーバーじゃないかなと。これを見ていると、在来植物全部ということになっちゃいますからね。そういうことを言ったら。やっぱり用語の方をちょっと慎重にお考えいただきたいというふうに思いますが。

【土田座長】 その方が確かにいいと思います。他にございますか。
 それでは、なければネット展張に関して、対応1の方はいかがでしょうか。
 これは熱湯を1リットルかける。熱湯処理ですね。かなり残酷に映りますけど、どうなんでしょう。

【五箇委員】 生き物を殺すというのは、どの手段をとっても残酷なので。要はこちらの方で試験場の方にお願いしているのは、薬を使うという以外にまだほかにあるかねということで、選択手段として人間にとっては余り害がなく、健康被害がなく、ハチを非常に俊敏にかつ簡便に殺す方法はないかということを検討していただくという方法をとっていますので、その中での1つと考えていただいて、これを推奨するとかそういう話ではなく、いろいろ殺傷するに当たってはこういう方法もあると。変温動物ですから、お湯をかけたりとか、あるいはビニール袋に入れて熱くしたりするということで、死亡させるということはできますよということを、今後、そういった形でだれがやっても簡単にできるという方法を検討していく必要があるだろうということを示しているということです。

【土田座長】 これはよろしいですか。

【池田委員】 これ、巣の最後の処理というのは、前提条件として薬剤を使わないという方向で何か新しい道を開発して、新しいというか、簡単な技術をと、そういうことですか。

【五箇委員】 薬剤を使うのも一つの方法ではあると。ただ、薬剤を使うとなると、薬剤という一つの化学物質のコスト、お金もかかるということもありますし、できるだけ安価で単純な方法でやれるならば、そっちの方がより普及性は高くなるのではないかということを考えて実施をしているということをご理解いただければと思います。薬を否定しているというものではないということです。

【池田委員】 薬の可能性があるとすると、これはどういう害虫の区分になるんですか。農業害虫、衛生害虫。

【五箇委員】 いや、処分するときに関しては、これはなかなか難しい解釈だと思うんですが、農耕地での使用から外れますので、農薬取締法とはまた外れてしまいます。したがって、これに関しては行政の方でいろいろ考えていただかざるを得ないだろうと。その枠組みをどうするかですね。いわゆるシロアリとか不快害虫と同じように法律の枠外になるので、逆に投入しようと思えば砒素を投入しても構わないというような議論まで起きてしまいますので、そこは行政サイドの方でしっかり考えていただかざるを得ないと思っています。

【マルハナバチ普及会】 これは生産者の方が殺すとなると、安易にというか、薬剤を例えば自分たちが普段使うとき、農薬を使われると思うんです。やっぱりこれは適用外使用という形になるんですよね。

【五箇委員】 いや、その適用外使用という部分も、結局、農耕地の農作物に違うものをまいたら適用外使用になるんですけれども、農耕地から一歩外へ出て、家の中でまいたりとか、そういう部分にはこの法律はたしか適用されないはずですよ。それは適用外使用にならないはずなんですけどね。

【池田委員】 別途登録があるんですよ。要するに衛生害虫だから。

【五箇委員】 衛生害虫だからそうなるんです。だから、不快害虫の場合は当てはまらない。薬事法も引っかからなくなりますから。

【マルハナバチ普及会】 そういう意味では、今話をさせていただけるのは、衛生害虫のハチ用の、ハチノックとかハチジェットとか、ちょっと商品名を出しちゃって申しわけないんですけど、軒下に出ているアシナガバチとかを駆除する薬が一般的にホームセンター等で売られていますよね。ああいったものをかけてくださいという話はさせていただいているんですが、やっぱり死ににくいみたいなんですね。綿の下に結構やっぱり成虫が残っているものですから。そういう意味では、この1リットルの熱湯をかけるというのは非常に簡便だとは思うんです。

【五箇委員】 薬よりは早いかもしれないですね。

【池田委員】 だから、農薬というか、薬剤は使いませんよということ、あるいは使ってはいけませんよというぐらいの形でやっぱり出していかないと、そういう予防的な使用というのが起きてくると思うんですね。

【五箇委員】 そこはまじめに、薬剤に関しては、少しきちんと行政の方でもある程度対策を考えていかないと。

【池田委員】 これはやっぱり指導をしていくときには重々その辺のところまで配慮していかないと、いわゆるさっき言ったように農薬の法的な使用ということにもなってきますのでね。

【マルハナバチ普及会】 これは逆に話をしてしまっていいんですよね、生産農家さんに。

【五箇委員】 お湯をかけるという、それはいいと思います。ただのお湯ですから。

【土田座長】 その他ございますか。

【池田委員】 トラップの方の話は。

【土田座長】 いや、入りません。そのままでいきます。まず、ネットの関係だけを今やって、あとのは最後までひっくるめて何か。これ、全部あとは進行中で、それほどまだ具体的なデータが出ていないものですから、この対応2以降に、全体に関して何か質問はございますか。

【五箇委員】 研究段階としては、ここまでがリスク評価のメインで、これ以降はいわゆるリスク対策の部分になりますので、この委員会としては、リスク評価をもってこの種をどう考えるかということがまず先決だったので、そっちを優先的にやっていて、リスク対策については今からというふうに理解していただきたいと思います。

【池田委員】 結果は出ているからちょっと質問しますが、トラップの開発がありますよね。あるいは誘引箱の開発とあるんですが、このトラップの方は防除を目的としたということで考えているんですか。

【五箇委員】 一応、防除目的です。

【池田委員】 私は多分無理じゃないかと思うんですよ、これは。要するにフェロモントラップをしていろんな個体群を誘殺するというのは、農業害虫では完全に失敗していますし、多分無理だと思う。むしろその研究は必要なんですが、その場合、やっぱりモニタリングの方法に使うというような形で使用目的を変えていった方が私は無難じゃないかとは思いますが。やっぱり大上段で防除目的というのは、初めからちょっと疑問だなというふうに思いますがね。

【マルハナバチ普及会】 先ほど小野先生がちらっと言われていたんですけども、要はハウスの中で使用継続が可能になったときに、使用する際に要は生殖虫をハウスの外に逃がさない一つの手法として、ネットと同時に使えるのではないかというところが一つ研究目的の中には入っています。

【池田委員】 ハウスの中で、もう常時。

【マルハナバチ普及会】 そうです。ハウスの中に吊るしておいて、生殖虫を出さない一つの手法として。

【池田委員】 それでも9%なのね。

【マルハナバチ普及会】 だから、併せてネットがあってというところですね。併せ技というか、一重にも二重にもそういう対策をとっていくという一つの手法です。

【池田委員】 もう一つは、だから目的の中に、今言いましたようにモニタリングに利用すること。そうすれば、さっきの大雪山の回りを全部やればいいんだから、努力が簡単だし。そうすれば、横山さんの調査努力も非常に楽になって継続できますから。

【五箇委員】 それは、そういった多目的に使えるようにまずは開発すると。手法として開発していくということで。

【池田委員】 ぜひ、その辺のところは開発してもらって。

【土田座長】 他はよろしいですか。質問し残したようなことでも構いませんけれども、よろしいでしょうか。

【小野委員】 先ほどの6ページの、横山先生が話をされたところなんですけれども、高頻度区と低頻度区で76%と89%の差云々というところなんですけど、これは例えば76%の結実率というのは、在来のマルハナバチによってもたらされているんですか。

【横山委員】 そうですね。今回の1回訪花のセイヨウオオマルハナバチというのは、結実率を考えると、ほとんどが在来のマルハナバチ、在来のマルハナバチでも特にコマルハナバチ、オオマルハナバチを除く他のマルハナバチによってもたらされたものと考えられます。

【小野委員】 つまりセイヨウオオマルハナバチだけになったら、こんなふうにはならないと。

【横山委員】 セイヨウオオマルハナバチだけになってしまうと、恐らくこの1回訪花の状況が出てきます、数パーセントとか、そのぐらいの結実率が。

【小野委員】 そういうことになってしまう。だから、この値というのは、在来のマルハナバチがまだいるという状態のもとで……。

【横山委員】 それでも、やはり高頻度区では非常に高く盗蜜を受けていますので、そういった形でセイヨウが例えば花を傷めてしまうとか、あるいは先に蜜をとってしまうとかということがあって、在来のマルハナバチはいても、結局この程度までしか上がってこないという状況で今整理しているという。

【小野委員】 セイヨウオオマルハナバチが増えて、在来のマルハナバチがどんどん減ってくれば、この差は開いてくるというふうに考えてよろしいですか。

【横山委員】 はい。

【土田座長】 他は何かございますか。よろしいですか。
 他にご意見がないようであれば、ご指摘のあった点について、次回までに事務局では資料の準備をお願いします。
 続いて、事務局から資料3についてご説明をお願いします。

【長田専門官】 資料3、1枚紙でございます。今後の検討の進め方についてというペーパーですけれども、ございますでしょうか。これまでの議論をされてきた事項について、確認も含めまして簡単にご説明いたします。
 セイヨウオオマルハナバチにつきましては、特定外来生物等専門家会合の中で「年内程度を目途に指定についての検討作業を進める」とされて、これまで研究者の方々によって被害知見の集積等に係る調査を進めていただいております。今般、この結果を踏まえて、特定外来生物の指定に関する検討について、年内に専門家会合としての結論を得たいというふうに考えております。
 1月の時点での専門家会合における結論としましては、野外における影響について十分な知見が得られていないので、この点に係る調査を重点的に実施すると。それから、ネット展張等の逸出防止措置を農家等に対し普及啓発をすると。そして、これらの状況を踏まえつつ、1年程度を目途に指定について検討するということでございました。
 これまでの調査の結果を踏まえまして、次回のマルハナバチ小グループ会合においてセイヨウオオマルハナバチの取扱いの案を取りまとめていただきまして、年内に開催される予定の昆虫会合、それから全体会合においてご議論いただき、専門家会合としての結論を得たいというふうに考えております。
 主に検討する事項とされておりましたのは、分布の状況調査、営巣や採餌の競合関係に係る調査、種子繁殖への影響調査、野外での交雑の確認、それから効果的なネット展張方法の開発、ネット展張の効果の確認ということでございました。
 今後のスケジュールでございますけれども、本日、第6回のセイヨウオオマルハナバチ小グループ会合を開催しておりまして、12月上旬と書いてありますが、今、ちょうど日程を先生方にお伺いしているところですけれども、中旬になるかもしれませんけれども、早急に日程を確定させてご連絡を差し上げたいと思います。この場で小グループ会合としての結論を取りまとめていただきたいというふうに考えております。その後、昆虫グループ会合においてその結果をご報告いたしまして、年内に全体会合を開催しまして、セイヨウオオマルハナバチの取扱いについて結論をまとめていきたいというふうに考えております。
 簡単ですけれども、以上でございます。

【土田座長】 ただいまの説明につきまして、何かご意見、ご質問等ありましたらお願いいたします。どうぞ。

【マルハナバチ普及会】 管理体制の検討となっていますけど、管理体制というのは具体的にはどのようなことですか。

【長田専門官】 これまでの検討課題の柱になっていたネット展張の話、ちょっと今回は結果として抜けておりました。

【土田座長】 他はよろしいでしょうか。他になければ、そろそろまとめたいと思います。
 本日は、セイヨウオオマルハナバチの被害知見について調査結果をもとに議論いただきました。本日の結果では、被害知見が十分に示されたと思いますが、次回、本日指摘のあった事項に関する説明資料を準備していただき、まとめの議論を行って、小グループ会合としての結論としたいと思います。
 あと、議題では2のその他とありますが、この際に何かご発言されることはございますか。よろしいですか、事務局。
 それでは、以上をもちましてセイヨウオオマルハナバチ小グループの会合を閉会とします。どうもありがとうございました。